2025年過労死防止対策推進シンポジウム愛知会場

東別院
本文とは関係がありません

 2025年11月14日、過労死等防止推進シンポジウム愛知会場がありました。

 

 今年の講師は、毎日新聞社会部記者の東海林(とうかいりん)智さん。

 東海林さんは、過労死の事件を多く取材を多くし、愛知県の事件も取り上げていただいてます。

 

 この日は「雇用者会に蔓延するハラスメントの背景に迫る~新聞記者の視点から」と題して講演をいただきました。

 

 印象に残ったのは、なぜ過労死事件で遺族は企業に謝罪を求めるのか、ということでした。

 東海林さんは、過労死の遺族は企業に真摯な謝罪を求めている。

 真摯な謝罪があって、初めて過労死の原因に向かい合い、有効な再発防止対策を行うようになる。

 謝罪がなければ、過労死防止にならない。だから遺族は納得されないのだ。

 

 過労死で家族を失った家族の悲しみ、怒りに真摯に向き合って取材をされた東海林さんの心からの叫びのように聞こえました。

 

 謝罪まではしてもらえない、あるいは、口外をしないことを前提に解決をする事案もあります。

 そのような事案は、本当に企業が再発防止をするのだろうか、過労死と向き合って誠実に対応してもらえたのだろうか。

 解決をめざすことを弁護士の仕事としてやっていると、遺族の思いとは違うところに目が行ってしまうことがあります。

 思いを新たにさせられました。

 

 春日井製菓株式会社さんが、「笑顔で働ける会社を目指して」という題で、人事の取組の発表をされました。

 東海林さんのお話は、過労死は、労働者が分断している中でおこってくる。特にハラスメントはそのような背景があるとの講演でした。

 この会社は、たとえば育児休業中の従業員が子どもを連れて会社に来る機会を設けて、休みを取りやすく、会社との関係が途切れない(もちろんいい意味で)工夫をしている等の報告がありました。

 

 過労死遺族の訴えは、他県のかたでしたが、過労死で家族を失い、大変な思いをして闘ってこられたというお話がありました。お名前は匿名とのことでした。いろいろな困難があって、この場に立っていただいたと思います。内容も分かりやすく、思いが伝わってきました。

 労災が認められて本当によかったと思う者の、それでも大切な家族は戻ってこないのですから、悲しみはずっと続くとおもいます。

 この日会場に来られた方皆さんが、過労死するというのは大変なことであることを感じていたたと思います。

 

 東海林さんは、会場からの質問にも丁寧に答えてくださいました。

 実りのあるシンポジウムでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

11月は過労死防止 啓発月間です

 11月になりました。

 11月は、過労死等防止対策推進法5条により、過労死等防止啓発月間と定められています。

 2025年の過労死白書も発行されました。

 

 今月は全国でシンポジウムが開催されます。

 愛知でも11月14日に行われます。新聞記者の東海林さんにお越しいただきます。

 是非、各地のシンポジウムに足をお運びください。

 

令和6年度 過労死等の労災補償状況が発表されました

令和7年6月25日、厚生労働省が、令和6年の過労死等の労災認定状況について公表ました。

 

全体の状況は、以下の通りです。

 

過労死等に関する請求件数 4,810(前年度比212件の増加)

決定件数 4,312件(前年度比1,033件の増加)

支給決定件数 1,304(前年度比196件の増加)

うち死亡・自殺(未遂を含む)件数 159件(前年度比 21件の増加)

 

 脳・心臓疾患については

 

請求件数は1,030件で、前年度比7件の増加。

   うち死亡件数は前年度比8件増の255件。

支給決定件数は241件で前年度比25件の増加。

   うち死亡件数は前年度比9件増の67件。

 

 精神障害については

 

 請求件数は3,780件で前年度比205件の増加。

  うち未遂を含む自殺の件数は前年度比10件減の202件。

支給決定件数は1,055件で前年度比172件の増加。

 

  うち未遂を含む自殺の件数は前年度比9件増の88件。

これまでの傾向をグラフにしてみました。

   全体の件数をグラフにしてみます。

 

   特に精神障害の請求件数、認定件数が、上昇し続けていることが分かります。

次に認定件数だけをグラフにしてみました。

 精神障害の認定件数が急増していることが分かります。特に2022年からの増加は顕著です。

 認定基準は2023年9月に改訂がありました。その前からの増加率がそのまま続いています。

 脳/心臓疾患はこの間、減少傾向にあったのですが、2022年から増加傾向にあります。

 

 次に、死亡の認定件数だけをグラフにしてみました。

 死亡についての認定件数は、脳/心臓疾患については減少傾向にあったのですが、2022年以降2年連続で増加に転じています。

 精神障害については、横ばい状態でしたが、やはり2022年以降増加傾向にあります。

 

 このような増加の要因はどういうところにあるのでしょうか。

 

 令和3年には脳・心臓疾患の労災の認定基準の改定がありました。

 令和5年には精神障害の労災の認定基準の改定がありました。

 これらによって、救済の範囲が広がったので、労災の認定件数は増加傾向にあるのだ、という説明も可能かもしれません。

 

 かつて、脳・心臓疾患は2001年に新しい認定基準が発出されたことで、認定件数が急増しました。

 また、精神障害については1999年の判断指針ができてからようやく認定されるようになり、それが徐々に改定され、2011年に認定基準となったころが最も多い件数となっています。

 

 また、認定基準の改定などにより、過労死等が労災として認められることがより周知され、請求される方、認定される方が増加傾向にある、という説明も可能かもしれません。

 

 ただ、精神障害の請求件数の伸び率、精神障害の認定件数の伸び率をみると、認定基準が改定になる令和3年より前から増加傾向にあり、その伸び率が続いています。一方労災の認定率は減少傾向にあります。

 単純に、認定基準の改定などにより救済される方が増えただけでは説明できず、脳・心臓疾患も精神障害も増加傾向にある。過労死等が増加傾向にある。そういう可能性があり、なお、分析が必要であると考えています。

 

 私のところにも、相談に来られる方は減っていない。むしろ、一定の割合で相談があり、増加しているのではないかと感じられます。

 

2025年 過労死110番 6月21日

 2025年の過労死110番は6月21日に開催されます。

 

  

2025年6月21日 10:00~16:00 実施

 

ご相談は全国統一ダイヤル

℡ 0120 - 322 - 099

まで

 

全国どこからかけても,かけた場所から近くの会場の電話につながります。

愛知県は、当事務所で対応します。

 

 

 

 

2025年 過労死110番 番号が決まりました。

 2025年6月21日 過労死110番 が行われます。主催は過労死110番全国ネットワークです。

 

 番号は 0120-322-099

です。この番号は、6月21日の午前10時から午後4時までしかつながりません。

電話をしていただくと、お電話した地域の弁護士などにつながります。

 

 

 

2025年 過労死110番

 2025年6月21日、過労死110番ネットワークが主催する過労死110番が行われます。

 電話番号は、これから発表されますが、当日はフリーダイヤルで全国統一の番号になります。

 

 電話をしていただくと、近くの地域の相談担当者が電話に出ます。

 過労死110番は、過労死弁護団全国連絡会議の弁護士等が、1988年から、毎年実施しています。

 

 最近は、過労死問題が社会的に認知されてきているので、日常的にも相談があります。

 始めた当時は、「過労死」なのかどうかも明らかではなく、また当時は認定基準も今ほど精緻なものはありませんでした。

 

 過労死であっても、過労死として労災が認められたり、会社に対する損害賠償が認められる可能性も分からない状態でした。

 そんななかで、苦しんでいる家族の相談にのるために、当時、有志の弁護士が過労死弁護団を結成し、全国で一斉の電話相談をはじめました。

 

 今も過労死はなくなりません。

 過労死等防止対策推進法が施行されて11年目になりました。

 啓発のいみをこめて、今年も過労死110番が行われます。

 

 注目していただければと思います。

 

 

 

 

 

過労死等防止対策推進シンポジウム

 2024年11月24日、過労死等防止対策推進シンポジウム愛知会場が開催されました。

 今年は、津野香奈美さんをお呼びしての講演がありました。

 津野香奈美さんは、「パワハラ上司を科学する」(ちくま新書)の著者で、神奈川県立保健福祉大学の教授です。

 

 パワーハラスメントの研究をされています。

 この講演では、パワーハラスメントをする上司について、分析をし、どのように解決するのか、具体的な解決策を示していただきました。

 歯切れの良い、分かりやすい話で、参加者が引き込まれました。

 

 ちくま新書も読みましたが、パワーハラスメントについて研究がすすんでいること、経験が蓄積されていることも分かりました。

 パワーハラスメントがどのようなもので、これはダメなことということはかなり集積されてきましたが、そのメカニズムや、これに対する対策が解明されてくると、このような被害に会わないための予防も進むと思います。

 

 また、なかなかパワハラと理解してもらえない事案についても、パワーハラスメントであることや、その対策が必要なことが理解してもらいやすくなると思いました。

 

 ご遺族のお話がありました。

 NHKの取材があり、ニュースで放映されました。

 大切なお子さんを亡くされ、辛い気持ち、その後裁判までして大変な苦労をされたことを話していただきました。あらためて、このようなことが、起きないようにしたいと思いを新たにしました。

 

2024年過労死等防止対策推進シンポジウム

 毎年11月は過労死防止啓発月間です。

 これは、過労死等防止対策推進法に定められています。この月に、全国で過労死等防止対策推進シンポジウムが開催されています。

 このシンポジウムの最大の特徴は、必ず、過労死等の遺族、当事者からの発言があることです。

 過労死等はいけない。働き方改革をしなければならない。これは、皆さん共通の理解だと思います。さらに、実際に過労死で家族をなくした当事者や、実際に精神障害になった当事者の声を聞くとはっとさせられます。

 そういう意味で、是非多くの方に参加いただきたいと考えています。

 

 

 参加できないというかたに、オンラインでお話が聞けるサイトがあります。期間限定ですが、紹介します。

 下記は、オンラインでお話が聞けるサイトの冒頭の挨拶の動画です。主催者、家族の会、弁護団がそれぞれ挨拶をされています。

厚生労働省のごあいさつです。

全国過労死を考える家族の会 代表 寺西笑子さんのご挨拶です。

過労死弁護団全国連絡会議 川人博弁護士のご挨拶です。

令和5年度過労死等の公務災害補償状況について(地方公務員)

 地方公務委員災害補償基金は、令和5年度過労死等の公務災害補償状況について公表しています。

 

1 脳・心臓疾患に関する事案の公務災害補償状況

○ 受理件数は35件(前年度50件)であり、認定件数は11件(同17件)

○ 職種別では、「義務教育学校職員」が受理件数7件(同11件)、認定件数7件(同5件)で最も認定件数が多く、次いで「その他の職員」が受理件数16件(同17 件)、認定件数3件(同7件)

 

2 精神疾患等に関する事案の公務災害補償状況

○ 受理件数は266件(前年度224件)であり、認定件数は75件(同49件)

○ 職種別では、「その他の職員」が受理件数141件(同124件)、認定件数47件(同24 件) で最も認定件数が多く、次いで「義務教育学校職員」が受理件数56件(同32件)、認定件数10件(同9件)

○ 業務負荷の類型別の認定件数は、「仕事の量(勤務時間の長さ)」が 27 件(同 12件)、「対人関係等の職場環境」が25件(同19件)」

 

こちらは、民間と同じ傾向で、精神疾患の受理件数、認定件数が増えています。

 

令和5年度過労死等の公務災害補償状況について(国家公務員)

人事院は、国家公務員の過労死等の公務災害補償状況をまとめています。今年は令和6年6月28日に公表しています。

 

脳・心臓疾患については

○ 各府省等における令和5年度の判断件数は5件(前年度2件)、認定件数は3件(同2件)

○ 認定件数(3件)のうち死亡件数は2件

 

精神疾患については

○ 各府省等における令和5年度の判断件数は10 件(前年度22 件)で、このうち認定件数は6件(同9件)

○ 認定件数(6件)のうち、死亡件数は1件

協議件数も認定件数も少ないので、傾向は分かりませんが精神障害の民間のようにどんどん協議件数や認定件数が増えているわけではないという状況のようです。

令和5年度「過労死等の労災補償状況」の公表

厚生労働省から、令和5年(2023年)の過労死等の状況の発表がありました。

過労死等に関する請求件数は、4,598件と前年度比1,112件の増加です。

また、支給決定件数は1,097件であり、前年度比193件の増加です。

うち死亡・自殺(未遂を含む)件数 135件前年度比14件の増加です。

請求件数、支給決定件数も過去最多です。

(なお死亡の件数はもっと多い時がありました。)。

 

脳・心臓疾患

請求件数は1,023件で、前年度比220件の増加。

   うち死亡件数は前年度比29件増の247件。

支給決定件数は214件で前年度比20件の増加。

   うち死亡件数は前年度比4件増の58件。

 

精神障害

請求件数は3,575件で前年度比892件の増加。

  うち未遂を含む自殺の件数は前年度比29件増の212件。

支給決定件数は883件で前年度比173件の増加。

  うち未遂を含む自殺の件数は前年度比12件増の79件。

 

すべてにおいて、2022年を上回っています。

 

 厚生労働省は、増加した原因について次のように述べています。

「厚生労働省の担当者は、「脳や心臓の病気については、55歳以上の労働者が増えたことが関係していると考えられる。また精神疾患については、過労死やパワハラへの認識、理解が進んだため、申請が増えたのではないか」と説明しています。」(日本テレビニュースより)

 

 脳・心臓疾患については令和3年に認定基準が改定されています。また、精神障害は、令和5年9月に認定基準が改定されています。その影響もあったのではないかと考えられます。

 

 認定率は

 脳・心臓疾患 全体の認定率は 32.4%(昨年は38.1%)

        死亡の認定率は 31.0%(昨年は32.1%

  精神障害  全体の認定率は 34.2%(昨年は35.8%)

        自殺の認定率は 46.5%(昨年は43.2%)

 脳・心臓疾患の認定率が2023年より下がっているのが気になります。死亡については過去5年で最低です。

 自殺の認定率は高くなっています。

 

 なお、愛知県のデータを見ると

脳・心臓疾患 請求件数は77件、うち死亡は13件

       支給決定件数は15件、うち死亡は3件

精神障害   請求件数259件 うち死亡は17件

       支給決定件数は62件 うち死亡は4件

という状況です。やはり精神障害が多いですね。自殺の認定数が請求件数に比べて少ないように思います。

 

 

 

2024年6月15日(土)「過労死・ハラスメント労災110番」全国一斉電話相談を実施します

 

2024.6.15(土) 

過労死110番全国ネットワーク(主催) の 過労死110番を行います。

 

今年は「過労死・ハラスメント労災110番」と題して行います。

 

10:00-16:00

 

TEL 0120-777-654

 

※事前の問い合わせは、03-3813-6999

 

 上記フリーダイヤルは、実施日時以外はご利用になれませんので、ご注意ください。

 

 上記フリーダイヤルにおかけいただきますと、お近くの窓口につながります。

 

 窓口によっては受電時間が異なる場合がありますが、 その場合は他の窓口につながるように設定されています。

 

  本日の過労死110番は終了しました。合計30件の相談がありました。相談された方が、電話での相談により、今後につながることを祈念しております。(6月15日 追記)

名古屋過労死を考える家族の会

 5月18日、名古屋過労死を考える家族の会の総会が開かれました。

 過労死弁護団の一員として参加してきました。

 

 今裁判を闘っているご家族。事件はおわって、久しぶりにお会いしたご家族。

 何人もの方にお会いできて良かったです。

 

 全国過労死を考える家族の会 » 全国各地の家族の会 (karoshi-kazoku.net)

 

 皆さんで集まって出てくる話は、裁判官のこと。

 

 皆さん、事案はそれほどかわらないのに、認められなかったり、認められたり。

 裁判官はくじなのか。

 

 そんな愚痴が出ました。

 過労かどうか、最後は社会通念がどうか、みたいなところになるので、その裁判官の価値観、人生感が、結果に追う聞く影響する印象を持つことになるだろうと思います。

 

 

 

 

 

公立学校の教員の給与について

学校の先生 労働時間 過労死
写真はイメージです。

 教員の給与のあり方や働き方改革を議論してきた中教審の特別部会は、残業代を支払わない代わりに支給している上乗せ分を、現在の月給の4%から10%以上に引き上げるべきだとする素案を示した、と報道されました。

 

 公立学校の教員は、いわゆる「特級法」によって、事実上残業代が支払われません。

 今回の素案は、この問題の制度を、上乗せ分を引き上げることにして、解決しようとしています。

 これは、実質的に「固定残業代」と同じように、残業のすべてに残業代を払われないことになりかねず、問題を残すものです。

 

 特級法の趣旨は、学校の先生の労働は、通常の労働と違って労働と労働でない時間の区別がつきにくいからと言われています。

 しかし、私立学校の先生については労働基準法の適用があります。また、国立大学法人の附属の学校の先生についても、現在は国立大学法人の職員という立場にありますから、労働基準法の適用があります。特級法の適用はありません。したがって、残業代を支払う必要があります。

 

 同じように学校の先生をして、私立や国立大学附属であれば、「仕事」と「仕事ではない」ことについて、厳格に区別する必要があり、公立学校の先生は、「区別がつきにくい」というのは、不合理と言わざるを得ません。

 

 学校の先生の過労死等の事案は、報道されているだけでもたくさんいらっしゃいます。

 公立学校の運営は、学校の先生の無償奉仕によって成り立っているといっても過言ではありません。

 労働時間を管理し、時間外労働には残業代を支払う。労働時基準法の原則を適用する。このように運用することで、ようやく外の職場と同様に残業時間を短くする努力が本気で行われるのだと考えます。

 少なくとも働いただけの賃金は先生に正当に支払われなければなりません。

 

 残業を管理すると、残業を隠すようになる、と言われます。確かにそのような動きが一部に生じるかもしれません。

 しかし、それはどの職場でも同じです。先生だけが特殊なわけではありません。

 しかし、先生の命と健康(健康には心の健康もふくまれます。)を守るためには、まず、労働時間を把握し、残業代を支払った上で、削減の方法を考えるのが、正しい道筋だと思います。

 

時間外労働 2024年4月問題

法律による上限 
労働時間の上限規制(厚生労働省ホームページより)

 現在、時間外労働の上限は上の図のように規制されています。

○原則として月45時間、年360時間(限度時間)以内

○臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間以内(休日労働含む)、限度時間を超えて時間外労働を延長で きるのは年6ヶ月が限度

 2019年4月、このように規制する法律が施行されています。

 

 ところが、この適用がない業種があります。

 建設業、自動車運転の業務、医業に従事する医師等です。

 

 2024年4月から工作物の建設の事業には適用されることになります。

 

 2024年4月から、自動車運転の業務、医業に従事する医師の規制も始まります。

 しかし、これらの業種の場合に、この規制が、とても緩いのです。

 

 自動車運転の業務の場合、特別条項付き36協定を締結する場合の年間の時間外労働の上限が年960時間となります。

 これは、要するに、毎月、時間外労働を80時間、1年続けていいということになります。

 過労死ラインは、発症前の2から6カ月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働時間数があるばあいに、労災と認めるというものですから、規制をまもったとしても過労死が発生する可能性があるというものです。

 

 医師の場合にはもっと緩いです。

特別条項付き36協定を締結する場合の年間の時間外・休日労働の上限が最大1860時間(※)です。

この1860時間というのは、時間外・休日労働の上限です。年間の労働時間ではありません。

なんと、1か月155時間時間外労働をしてもよいということになっています。

週40時間労働が労基法の原則です。1年は52週間と1日ありますから2088時間となります。これを1860時間超えて良いということは3948時間働いてもよいということになります。これを365日で割ると、10.8時間 =10時間48分

毎日、10時間48時間休みなく働いてもよいなどという規制は、規制の意味がないように思います。

 

早く、全ての仕事で過労死ラインが違法となるような規制が望まれます。

 

※特別条項付き36協定を締結する場合、特別延長時間の上限(36協定上定めることができる時間の上限)については、

 A水準、連携B水準では、年960時間(休日労働含む)

 B水準、C水準では、年1,860時間(休日労働含む) となります。

 なお、医業に従事する医師については、特別延長時間の範囲内であっても、個人に対する時間外・休日労働時間の上限

 として副業・兼業先の労働時間も通算して、時間外・休日労働を、

 A水準では、年960時間/月100時間未満(例外的につき100時間未満の上限が適用されない場合がある) 

 B・連携B水準・C水準では、年1,860時間/月100時間未満(例外的に月100時間未満の上限が適用されない場合が

 ある)とする必要があります。

 

新しい精神障害の労災認定基準が発出されました

1 新しい認定基準が見られる場所

 2023年(令和5年)9月1日、新しい精神障害の労災認定基準が発出されました。厚生労働省のホームページに掲載されています。

 下記のホームページからみることができます。

 精神障害の労災補償について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

 ここには新しい認定基準

 001140931.pdf (mhlw.go.jp)

 どこがかわったかを説明している 留意点

 001140932.pdf (mhlw.go.jp)

 があります。

 認定基準のもととなった専門検討会の報告書

 001139689.pdf (mhlw.go.jp)

 も報道発表のところに載っています。

 

2 発病後増悪の要件が緩和

 新しい認定基準で、大きく変わったのは発病後増悪の問題です。

 今までの認定基準は、

 「別表1の特別な出来事があり、その後おおむね6か月以内に対象 疾病が自然経過を超えて著しく悪化したと医学的に認められる場合」にしか、「悪化した部 分について業務起因性を認め」ませんでした。

 今回は、

 「特別な出来事がなくとも、」「悪化の前に業務による強い心理的負荷が 認められる場合には、」

悪化した部分について業務起因性を認め」る可能性があることを認めました。

 

3 一回でも「執拗」(パワハラ)  

 また、パワーハラスメント等について「一定の行為を「反復・継続するなどして執拗 に受けた」としている部分があります。これは、「執拗」と評価される事案 について、一般的にはある行動が何度も繰り返されている状況にある場 合が多いが、たとえ一度の言動であっても、これが比較的長時間に及ぶものであって、行為態様も強烈で悪質性を有する等の状況がみられるときにも「執拗」と評価すべき場合があるとの趣旨である。」と認定基準に記載されました。

 

4 労働時間について

 精神障害が認められる時間外労働の基準は長すぎると批判してきましたが、今回は、大きな改正はありませんでした。

 

5 カスハラの項目が入りました

 「社会情勢の変化等を踏まえ、業務による心理的負荷として感じられる出来事 として新設された。」と新設の理由が説明されています。顧客や取引先、施設利用者等から、暴行、脅迫、ひどい暴言、 著しく不当な要求等の著しい迷惑行為を受けたことの心理的負荷を評価する項目です。 

 

 9月1日から新しい認定基準で運用が始まります。すでに労基署で調査している事案も新しい認定基準で調査を行います。

 

 より適切に認められるように希望します。

 

 

2022年(令和4年)の「過労死等の労災補償状況」

過労死 

厚生労働省が、2023年(令和4年度)の過労死等の災害補償状況を公表しました。

令和4年度「過労死等の労災補償状況」を公表します|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

1 脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況

(1)請求件数は803件で、前年度比50件の増加。

    うち死亡件数は前年度比45件増の218件。

(2)支給決定件数は194件で前年度比22件の増加。

    うち死亡件数は前年度比3件減の54件

 

(3)認定率

   38.1% 昨年 32.8%

   昨年よりアップしています。

   うち死亡認定の認定率は

   38.8% 昨年 33.7%

  

   認定件数が多くなっているのは残念です。

   死亡事案は減少しています。

   その上で死亡事案も認定率はアップしています。

   ただ、請求件数は、死亡事案も増えていますから、令和5年になって過労死認定の数も増えるのでは 

  ないかと心配されます。

   認定基準が改訂されて1年たちました。その影響もあると考えられます。

  

 

2 精神障害に関する事案の労災補償状況

(1)請求件数は2,683件で前年度比337件の増加。

   うち未遂を含む自殺の件数は前年度比12件増の183 件。

(2)支給決定件数は710件で前年度比81件の増加。

   うち未遂を含む自殺の件数は前年度比12件減の67件。

(3)認定率

   35.8% 昨年 32.2%

   うち死亡認定の認定率は

   43.2% 昨年 47.3%

    

   請求件数、認定件数は増えています。請求件数が337件も増えているのはおどろきです。20年前

  は、一年間の請求件数が300件を少し上回っていました。2001年は全体で264件の請求件数で

  した。

   認定されたものの多くは、パワーハラスメント、いじめ、いやがらせ、上司とのトラブルであり、こ

  れらで全体の4割程度を占めています。パワーハラスメントをなくす対策が必要です。  

   

  なお、令和4年度に、審査請求、再審査請求、行政訴訟で,不支給が取り消された件数は

  脳・心臓疾患は 9件 (うち死亡6件)

  精神疾患は  25件 (うち死亡1件)

 過労自殺案件で、審査請求、再審査請求、行政訴訟で取り消された件数は全国で1件しかありませんでした。

 

 件数が減る方が望ましいのですが、増えているのは悩ましいところです。

 

 これが権利を行使し、救済される件数が増えているので、どこかで過労死等が実際にも減少し、請求件数も減少していくといいとおもいます。当面は、さらなる救済を求めていくことが必要かと思います。

 

 

 

脳・心臓疾患 精神障害 過労死等 認定件数

  厚生労働省の発表を元にグラフにしてみました。

 精神障害の請求件数と認定件数が年々上昇していることがわかります。

 脳/心臓疾患はやや減少系傾向です。

 

中部電力事件 名古屋高裁2023年(令和5年)4月25日判決

2023425日、名古屋高当裁判所民事第3部(長谷川裁判長)は、中部電力に勤務していた従業員が入社してわずか半年後の201010月末に自殺した事案で、名古屋高等裁判所は、過重労働を認めて、津労働基準監督署長の労災保険法に基づく遺族一時金の不支給決定を取り消す旨の判決をしました。

 

この判決は、この新入社員の従業員に対しパワーハラスメントが行われていたことを認めました。また、新入社員に、難易度の高い業務の主任を担当させ、十分な援助をしなかったことを認めました。

これまで、労働基準監督署長、労働者災害補償保険審査官、労働審査会、そして名古屋地方裁判所が認めなかった業務による自殺であることを名古屋高当裁判所が認めたのです。

この判決がなされるまで、当該従業員の方が自殺してから12年半、2013年に労災の請求をしてから10年の年月がたっています。

 

パワーハラスメントについては、亡くなった従業員が、生前に職場のことを職場外の友人知人や違う職場の同期に話していた内容が信用できるか、それがパワーハラスメントといえるかが問題になりました。この事件ではパワーハラスメントをした本人や、その周囲の先輩の同僚従業員が、その事実を否定しました。そのため、一審では、パワーハラスメントであることは否定され、心理的負荷の強度も弱とされてしまいました。しかし、控訴審では、職場外の友人に話していた事実について、十分に信用できるとされ、その内容も事実であると認められました。

 

次に、業務についてですが、一審では会社側の説明に沿って、新人にとって若干困難であってもその業務は、「強」とまではいえないとされていました。高裁では、担当していた業務について一つは「中」、そして最も困難であった業務については「強」としました。

新人にとって困難で心理的な負荷となるかどうかを判断するに際し、会社の説明は、どうしてもある程度経験のある者の説明となります。原告は、その説明は不当で、本来新人にとっては困難な業務であると主張してきました。高裁は、原告側にその内容を釈明しました。また、一審では採用されなかった中部電力のOBのかたの証人請求を採用し、当時の業務について立証の補充を認めました。

 

一審と控訴審では、業務について裁判官の見方が全く異なることになりました。

原告である母親は、本人に何があったかを知りたいと考え、会社の関係者に面談を求めました。知人、友人に会って話を聞き、本人が残したパソコンのメールをみて、資料を集めました。中部電力のOBの協力者に支援を求めました。

支援の会を結成し、多くの方に賛同を求めました。過労死防止の活動にも参加しました。

本当にやるべきことをすべてやり尽くした活動でした。

 

これらの地道な証拠の収集と裁判への運動に応えて、名古屋高等裁判所は、丹念に記録を精査し、証拠を採用し、業務の過重性を認めました。

 

原告の活動と、それを認めた高等裁判所、そして、それらをとりまとめた主任の森弘典弁護士に本当に敬意を表したいと思います。控訴審の尋問を担当した長尾美穂弁護士も尋問が判決つながりました。

 

弁護団は、森 弘典弁護士、長尾 美穂弁護士、そして当職です。

 

以下は弁護団が当日だした声明です。

2023年4月25日

声     明

 

中部電力新入社員労災裁判弁護団

 

 本日、名古屋高等裁判所(民事第2部Ec係、長谷川恭弘裁判長)は、中部電力株式会社(当時)に新入社員として採用された26歳の労働者(以下「被災者」という)が入社して7か月も経たない2010年(平成22年)10月30日早朝(推定)に自死した事件で、津労働基準監督署長が業務外とした処分について、第1審の名古屋地裁判決を取り消し、業務外の処分を取り消す判決を言い渡した。

 判決は、第1審判決と異なり、上司から被災者に対するパワーハラスメントを認定している。第1審判決は、被災者から上司の発言を聞いたという友人の証言があるにもかかわらず、伝聞に基づくものであることなどを理由として認めなかった。本判決は、友人の証言の信用性は高いと認め、証言内容も具体的などとして、パワーハラスメントを認定しており、密室で行われがちで、被災者が死亡している事案では直接体験した事実を語れる証人がいないパワーハラスメントの認定方法として重要な意義を有する判決である。

 判決は、業務の過重性について、第1審判決と同じく平均的労働者基準説に立ちつつも、新入社員が未経験の業務を担当させられたという点に着目し、基準となる対象労働者を新入社員あるいは未経験者に限定して、業務の難易度を検討している。その上で、入社後わずか半年程度の新入社員でありながら難しい案件を主担当として行わなければならない状況を十分に考慮した指導や支援が行われていなかった状況を踏まえて、業務による心理的負荷を検討し、業務起因性を認めたものであり、極めて高く評価できる。

 ほかの裁判例の中にも、平均的労働者基準説に立ちつつも、新入社員や未経験の業務という点に着目し、基準となる対象労働者を新入社員あるいは未経験者に限定して、業務による心理的負荷を評価するものがあるが、本判決はその論理が正しいことを裏打ちするもので、裁判例としても重要な意義を有する。

 折しも、精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会では、心理的負荷の強度を客観的に評価するに当たり、どのような労働者にとっての過重性を考慮することが適当かが論点となっており、その内容を明確化するため、同種の労働者についての例を示すとともに、同種の労働者は一定の幅を内包することを明示してはどうかとの意見が示されている。そして、同種労働者についての例として、新規に採用され、従事する業務に何ら経験を有していなかった労働者が精神障害を発病した場合には、「同種の労働者」とするとの意見も示されている。

 当弁護団は、厚生労働省、三重労働局長、津労働基準監督署長が本判決を真摯に受け止め、上告しないように強く求めるとともに、精神障害による過労死の認定基準の運用にあたって、新入社員、未経験業務の視点を考慮するとともに、今後の改定にあたっては、全面的に採用することを求める。

 

以 上

 判決に対し、国は上告、上告受理申立てはせず、判決は確定しました。(2023年5月10日)

三重大学の過労死事件で記者会見を行いました

 2022年12月28日、三重大学で勤務していた産科医の男性が死亡した事案が、過労死であり、労災であると認定された事案で、記者会見を行いました。

 

 内容は報道されている通りです。亡くなった方にあらためて哀悼の意を表します。

 

 新聞、テレビ局のニュースに取り上げていただきました。

 2022年にこのような事件が報道された。今後は医師の働き方について考えなければならない。労働時間が適正になるように配慮しなければならない、と考え、防止につながる一助になればと願っています。

 

 医師の時間外労働規制は、過労死が起きても、労働契約自体は適法となるような緩い基準しか考えられていません。それを改善することができないのは、医師が不足しているからだそうです。

 

過労死防止月間

 11月は、過労死防止月間です。「過労死等防止対策推進法」により、定められています。

 この月は、厚生労働省主催の過労死防止対策推進シンポジウムが各都道府県で行われます。

 

 2022年も11月29日に岐阜市で、30日には名古屋市で開かれました。

 今年は、どちらの会場でも佐戸未和さんのお母様にお話しを聞くことができました。

 

 31歳NHK女性記者「過労死」8年苦しむ遺族の証言 | 未和 NHK記者の死が問いかけるもの | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)

 

  佐戸さんは、NHKの記者。入局後9年目、31歳の若さでなくなりました。2013年7月でした。

  それからまもなく10年が経とうとしています。

  しかし、佐戸さんの御両親は、いまもいえることのない悲しみの中にいます。

  今年の9月には、2019年におなじくNHKで働くかたが過労死と認定されたと報道がされました。

 

  たしかにNHKはたくさんの方が働いているのでしょう。しかし、過労死の起きた組織で、他にも発生してしまった。

  防ぐことはできなかったのでしょうか。

  佐戸さんの死は、過労死防止のために、働き方を改革することはつながらなかったのでしょうか。

  残念に思います。

 

  あらためて、過労死はだれにでも生じる可能性があること。

  そのことを多くの人に知ってもらいたいと思います。