入社間もないドラッグストアの薬剤師の過労死。会社の賠償責任を認めさせる。

スギヤマ薬品事件(名古屋高裁平成20年9月17日判決 労働判例970号5頁)

ドラッグストア
写真はイメージです。本件ドラッグストアとは関係がありません。

 愛知県豊田市内にあるスギヤマ薬品の永覚店に勤務していた薬剤師((当時24歳)が、2001年6月7日に死亡した事件について、過労死と認めた名古屋地方裁判所の判断を維持し、さらに遺族であるお父さん、お母さんの固有の慰謝料合計400万円を認め、総額8700万円の損害賠償請求を認めた判決。

 

 この薬剤師は、豊田労働基準監督署長から業務上のし棒であるとして労災の認定を受けていた。

 

 スギヤマ薬品は、会社の責任をみとめた一審判決(名古屋地方裁判所2007年10月5日判決)に対し、労働時間や死因を争い控訴していたが、名古屋高裁はこのような控訴を理由がないとして棄却した。

 

 一方で、若くして息子さんを亡くした両親の固有の慰謝料を認め、2200万円の慰謝料を認めた原判決の慰謝料金額をさらに400万円増額し、慰謝料として2600万円、総額約8700万円の損害賠償責任を認めた。

 

 判決は、その死亡する前1か月間においては、労働時間が300時間を超え,時間外勤務時間も130時間を超える状態で,しかもその間に2日しか休みがなかったことなどから,過重な業務の継続による疲労の蓄積等により,突発性心室細動等の致死性不整脈が原因となって死亡するに至ったものと推認することができ、これによれば、薬剤師の業務と死亡との間には相当因果関係が存するということができるとした。

 

 判決はホームページでご遺族が公開している。

 

スギヤマ薬品の薬剤師は何故過労死したのか?

 
 弁護団は、水野幹男弁護士、中谷雄二弁護士、岩井羊一

ポイント

 会社に訴訟を起こす前に、労災の認定がなされました。労災認定は、遺族である御両親が会社の同僚、アルバイトなどの関係者に面談をして労働状況をきいたり、専門家の意見を求め、証拠を集めたことと、労働時間が上記のように相当長時間である事が分かったことで認められました。