トヨタ自動車(豊田労基署長)事件 2021年(令和3年)9月16日判決

トヨタ自動車株式会社 本社 トヨタ自動車
トヨタ自動車本社

 名古屋高等裁判所は2021年(令和3年)9月16日、トヨタ自動車の従業員が自殺下事件について、労災と認めなかった名古屋地方裁判所の判決と取消し、豊田労基署長の労災と認めなかった判断を取り消す判断をした。

 労災だと訴えていた遺族の訴えを認めて逆転勝訴をさせた。

 

 私は、弁護団ではなく、この事件については詳細は把握していないが、諦めないで、裁判を戦ったご遺族の方、そして、弁護団の水野幹男弁護士、梅村浩司弁護士、加計奈美弁護士に心から敬意を表したい。

  

 この労働者の自殺は2010年(平成22年)のことであるから11年が経過して、ようやく労災であると認められたのであり、ご遺族の苦労は計り知れない。

 

 判決では業務に関して次のような心理的負荷が指摘されている。

 

 「達成は容易ではないものの、客観的にみて努力すれば達成可能であるノルマが課され、この達成に向けた業務を行った。」と評価できることが「中」

 

 「弱」であるが、他の業務と並行して上記業務を進行させる責任を負っていたという点において相応の心理的負荷があったと考えられる出来事がある。

 

 はじめての海外業務を担当することについて「仕事の内容の大きな変化を生じさせる出来事があった」に該当する精神的負荷があった。(心理的負荷としては「中」相当)

 

 そして、パワーハラスメントについては次のように認定されている。

 

 グループ長から、他の従業員の面前で、大きな声で叱責されたり、室長からも、同じフロアの多くの従業員に聞こえるほど大きな声で叱りつけられたりするようなことは,軽視できない。同様な叱責を受けていた○○をして、後日、本件会社の退職を決意させる有力な理由となるほどのものである。

 

 このような事実を否定したグループ長、室長の証言は、他の証言等を理由に信用できないと退けられている。

 

 そして、このパワハラを、2020年に改定された精神障害の労災の認定基準に当てはめをして

 

 「他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責」であり、その「態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える精神的攻撃」と評価されるのが相当である。

 

  と判示した。

 

 さらに、その叱責は少なくともグループ長から週1回程度、室長から2週間に1回程度だったと認定している。

 

 心理的負荷については、次のように判断している。

 

 個々的にみれば「中」には相当する。

 それらの精神的攻撃は、グループ長のみならず、室長からも加えられている。

 そして、これらの行為は、平成20年末頃から本件労働者が発病に至るまで(発病は平成21年10月頃とされている)反復、継続されている。

 

 判決は、これらの事実を踏まえ、

 

 一体のものとして評価し、継続する状況は心理的負荷が高まるものとして評価するならば、上司からの一連の言動についての心理的負荷は、「強」に相当する。

 

 と判断している。

   

 判決は、

 

 上記の出来事の数及び各出来事の内容等を総合的に考慮すると、平均的労働者を基準として、社会通念上客観的にみて、精神障害を発病させる程度に強度の精神的負荷を受けたと認められ、本件労働者の業務と本件発病(本件自殺)との間に相当因果関係があると認めるのが相当である。

 

 と判示した。

 

 この事案、リーマンショックの後で、時間外労働は厳しく制限しており、当該労働者もほとんど時間外労働は行っていない。

 しかし、業務の変化の大きさや,パワーハラスメントの実態を認めて、業務上の疾病と認めている。

  

  1審判決は、パワーハラスメントについて、

 「本件労働者に対する業務指導の範囲を逸脱しており,その中に本件労働者の人格や人間性を否定するような言動が含まれ,あるいはこれが執拗に行われたものとは認められない。」

  として、その心理的負荷が「強」とは認めなかった。

 

 改正前の認定基準では、「人格や人間性を否定するような言動が含まれ」ていなければ、心理的負荷が「強」にはならないかのようにされていた。

 

 判決からは、当のパワハラをしていたという上司の証言の信用性は否定されているが、パワハラをした当人が、そのことを全く認めないというケースは、私にも経験がある。これを立証するのは、なかなか困難である。現に1審判決は控えめな評価で労災と認めなかった。

 

 高裁の事実認定をみても、原告側でいろいろな角度から立証の努力をしたのだろうと推測される。当事者と弁護団の相当の努力が会ったのだと考えられる。

 

 これを記載している9月19日は、上告、上告受理申立の期間内ではあるが、事実認定が大きな争点であるから、上告、上告受理申立理由はなく、被告国も上告、上告受理申立はしないのではないかと予想される。

 

 損害賠償請求訴訟が別に1審に係属している。被告トヨタ自動車株式会社は、労災が認定された事案とは異なり、本件では、争う姿勢を見せているようであるが、高裁判決がパワハラ等を認めて労災であると判断したのであるから、これを尊重し、早期に全面的な解決に向けて態度を変更するべきである。

 

2021 過労死等防止対策推進シンポジウム

過労死防止対策推進シンポジウム  岩井羊一法律事務所
当事務所でもポスターを貼っています。

 2021年も、厚生労働省主催の過労死等防止対策推進シンポジウムを開催します。

 愛知会場は、高橋幸美さん(電通で過労自死した高橋まつりさんのお母様)と、その事件を担当した、川人博弁護士がお話をされます。

 

これらの話を通じて、過労死の問題について考えます。

今年は、コロナウイルス感染症の問題がありますので、予約制です。参加するためには申込みが必要です。

 

すでに、申込みが多く、早めに予約した方が良さそうです。

なお、この過労死防止対策推進シンポジウム、会場によっては、お名前を公表したくないご遺族がお話をされるところもあります。

 

そのため、コロナウイルス感染があっても、オンラインでは開催することが難しいようです。

 

愛知会場は

  11月8日月曜日午後2時から

 

このころには、コロナウイルス感染症の拡大が収まって、感染対策をしながらの会場開催ができるように祈っています。

 

是非ご予定下さい。

 

↓申込みは下記からです。

 

過労死等防止対策推進シンポジウム (p-unique.co.jp)

厚生労働省がパブリックコメント募集中

 2020年6月、脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会が厚生労働省に設置されました。そこで、2001年に発出された脳・心臓疾患の労災認定の基準について、検討がなされてきました。

 

 2021年7月、脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会の報告書が公表されました。

 これにもとづいて2021年9月頃、あたらしい認定基準が策定されようとしています。

 

 新しい認定基準の概要はパブリックコメントの頁に掲載があります。これについて、現在、パブリックコメントの募集がなされています。期限は本年8月19日まで。

 

 2001年から20年ぶりの認定基準の改定です。

 これまで、仕事が原因ではないかと考えられる事案でも時間外労働時間が少ないために認定されず、裁判になった事案がありました。

 幸い、訴訟において認定されることになった事案もありますが、認定されなかった事案もあります。

 より適切なないようになるように、さらに毛一歩声を上げたいと思います。

 

 

  

 

 

厚生労働省 令和2年「過労死等の労災補償状況」を公表

 6月23日 令和2年度の「過労死等の労災補償状況」が厚生労働省から公表された。

特徴をいくつか指摘する。

 

脳・心臓疾患については、請求件数が昨年度から152件減って784件となった。

これは、コロナ禍で、長時間労働をする人が全体として減ったからだと思われる。報道によれば、厚生労働省もそのように分析しているようである。

 長時間労働を減らすことが過労死等の防止になることはより明らかになったといえる。

 なお、請求件数、認定件数とも道路貨物運送業がもっとも多い職種であるとのことである。業種別の対策もさらにすすめるべきである。

 死亡の認定数は67件であった。認定率が、令和元年の36.1%から31.8%に減少していることは気になる。

 

 精神障害については、請求件数は昨年とほとんど変わらず2000件を超えており、高止まりである。

 さらに、認定件数が令和元年が509件であったのに対し、608件と急増している。

もっとも、自殺は81件であり、昨年の88件より減少している。

  

 精神障害の労災認定が多い業種は、医療福祉が多い。

 もともと高ストレスな業務であるが、コロナ禍でさらに強い心理的負荷を受けることになったのではないかと推測される。

 

 出来事別の支給件数では、「上司から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」が99件、「同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせをうけた」71件とハラスメントが全体の27%をしめており、これらが自殺や精神障害の大きな原因の一つとなっている。

 

  精神障害で特徴的なのは、審査請求、再審査請求、訴訟により取消となったことに伴い認定された件数である。自殺についてはこれまで7件、4件、5件、2件と一桁で推移してきたところ昨年は12件の取消、認定があった。

 認定されないため、諦めずに戦っているご遺族には、逆転例も出ていることで励みになる。

 

   精神障害が増加し、また取消が増えたのは、昨年5月に認定基準が改定され、「パワーハラスメント」が強い心理的負荷になり精神障害の原因となることが明示されたことも大きいと考えられる。これまでも「(ひどい)いじめ、嫌がらせ」という項目があった。厚生労働省は今回の改正は、新しい医学的知見に基づくものではないという説明であった。しかし、実際に適用の場面では、これまで認定されていなかったものが認定されるようになった汰可能性がある。

 

 昨年も精神障害は請求件数は減っていない。むしろ認定件数は増えている.

全体の労働環境は心の健康を害しているのではないかと心配である。

                      (2021年6月26日修正、加筆)

 

 

2021年過労死110番

 2021年の過労死110番

 

コロナ労災・過労死・ハラスメント110番 全国一斉電話相談

 2021年6月19日土曜日 午前10時から午後4時

 

 今年は全国統一ダイヤル  0120-222-751

 

 ここに電話をすれば、最寄りの地域の弁護士等の相談担当者に電話がつながります。

 この電話番号は6月19日にしかつながりません。

 

 全国の問い合わせ先は こちらをクリック 

 

 過労死110番は1988年に始まりました。

 それから毎年行われてきました。

 

 当時は、長時間労働があっても労災と認定されず、辛い思いをした遺族もいました。

 いまでも、認定されずに、苦しい中にいる方もいますが、当時よりも認定される件数ははるかにふえました。

 

 使用者に対する損害賠償についても使用者に厳しい判断が出るようになりました。

 

 発生してしまった過労死等については、しっかりした補償と、責任の所在が明らかにされなければなりません。

 

 しかし本当は、そのような自体になる前に予防されなければなりません。長時間労働やパワーハラスメントをなくすこと、良い職場作りがなされるここと、有給休暇が取りヤイ職場になること、いろいろ方策があるはずです。

 

 そして、サービス残業は厳しく規制されなければなりません。そうでないと、正直者ただしく労働基準法を守った会社が競争に負けてしまいます。

 労働組合が、厳しく監視することも大切だと思います。

 

 

 当日は電話で相談が受けられます。

 

※ 2021年の過労死110番は6月19日午後4時で終了しました。

  全国一斉で行われ、当地では取材はありませんでしたが、各地で報道されたようです。多くの、相談がよせられました。(6月19日追記)

  

2020年もありがとうございました。

宇城翔子 岩井羊一法律事務所
打合せ室の絵 作 宇城翔子

 2020年、無事一年をすごすことができ感謝です。

 昨年の今頃、新型コロナウイルス感染症のなかでこのような生活をすることなど、全く予想していませんでした。

 

 弁護士会の会議をzoomでやったり、裁判の手続きをteamsで行ったりするなどということは予想もできませんでした。

 

 そのように、いろいろなやり方は変わりましたが、大変な中で、弁護士の業務は、なんとか行えました。今後もコロナウイルスの影響が続くと不安ですが、大変な方がたくさんいるなかで、こうやって仕事が続けられることは感謝です。

 また、コロナウイルスの影響で困っている方に、弁護士としてできることを対応していきたいと思います。

 

 今年は、過労死の事件で、12月に損害賠償請求訴訟と行政訴訟で、勝訴判決をえることができたことが印象に大きく残りました。

 

 損害賠償請求訴訟の事件は、発生から13年、損害賠償請求の訴訟を起こしてからも4年が経過していました。この事件が確定しました。ご遺族はご高齢で、解決がながびくのは大変だったと思います。控訴されなかったことは、判決の内容から当然とはいえ、ほっとしました。多くの方が関心をよせ、支援していただけました。多くの方の協力があったからこそ、このような結論を得ることができたものと思います。

 

 その他にも、いくつかの事件で解決をすることができたこともそれぞれ印象深いです。

 

 一方で、敗訴の事件も複数ありました。また、労災とみとめられず、現在、行政不服手続をしている依頼者の方もいます。そういう意味では、手放しで喜んでばかりはおれません。来年も、良い解決が得られるように励みたいと思います。

 

 過労死防止の活動として、高校生に啓発授業に行きました。これから社会に出る学生の皆さんに、よりよい情報を提供していこうと思います。

 

 過労死防止の啓発シンポジウムにも参加しましした。

 元依頼者の方の訴えをあらあめて聞きました。おつれあいが亡くなってからもうずいぶん立ちますし、裁判が勝訴で終わってからもしばらくたっています。けれどもこの方の残念な気持ち、無念な気持ち、つれあいを自死に追い込んだ会社に対する怒り、労災と認めずに裁判になったこと、その裁判で徹底的に争っていた国の態度等についての怒りをお持ちになっていました。

 

 弁護士としては勝訴を得て上手くいった事件、という印象を持っていましたが、それで安心してはいけないと思います。一度起こってしまったことの大きさを、改めて感じました。亡くなった方は帰ってきません。救済の前に予防が大切です。

 これからも、多くの人に伝えていきたいです。

 

名古屋市バス事件 損害賠償請求で勝訴

名古屋市交通局 市バス 損害賠償請求 水野幹男弁護士  岩井羊一弁護士 西川研一弁護士
報告集会で判決について説明する当職(左から水野幹男弁護士 岩井 西川研一弁護士)

 2020年12月7日、名古屋市を訴えた名古屋市バス事件で損害賠償請求が認められる判決を得ました。

 

 この事件は、2007年6月14日、30台の名古屋市バスの運転士が自殺したことについて、その後両親が、名古屋市を訴えた事件です。

 

 父親は、夫婦を代表して地方公務員災害補償基金名古屋支部に公務災害を申請していました。しかし、地方公務員災害補償基金名古屋支部は、公務災害と認めず、名古屋地方裁判所に、行政制訴訟を起こしていました。2015年3月名古屋地方裁判所は、父親の訴えを退け、公務災害と認めませんでした。父親は控訴し、2016年4月、名古屋高等裁判所は、地裁の判決を取り消し、公務災害と認める判決をしました。

 この判決については ブログ をご覧下さい。

 

 また、この裁判の経過については 奥田雅治さんの書かれた「焼身自殺の闇と真相:市営バス運転手の公務災害認定の顛末」を是非お読みください。

 

 これをうけて、父親は、名古屋市交通局に、息子が自殺したことについて、非を認めて、謝罪するように求めました。

 しかし、名古屋市交通局はこれを拒否し、責任を認めませんでした。

 

 このため、両親は、2016年10月名古屋市に対し、名古屋市の責任を認めて損害を賠償することを求めて提訴しました。

 

 判決は、1カ月のあたりの労働時間数は80時間を超えないものの、長時間労働であって、一定程度、被災者の心身の疲労を蓄積させ、そのストレス対応能力を低下させるものであったと認めました。

 

 そして、2007年2月の添乗指導をうけて「葬式の司会のような」アナウンスをやめるように伝えられたことは客観的にみても相当程度の心理的負荷であったと認めました。

 

 さらに、 2007年5月に九条があったことについて、事実関係を自覚することができずに指導をうけたことについて相応の心理的負荷を受けたと認めました。さらに、その後の指導による心理的負荷は相当大きかったと認めました。

 

 加えて、2007年6月に、転倒事故を起こしたとして、認識がないにもかかわらず、指導を受け、警察署に出頭し取り調べを受けたことが、相当おおきな心理的負荷であったと認めました。

 

 判決は、これらの出来事により精神障害を発病させたと認めました。

 

 そのうえで、名古屋市は、被災者の労働時間が長いこと、不適切な指導を認識していたこと、さらには、被災者が、自分に認識がないと告げていたにもかかわらず、特段の配慮もしていなかったことから、相当大きい心理的負荷が生じたことについて、名古屋市は認識できたと認め、予見可能性があること、安全配慮義務違反があることを認めました。

 

 また、名古屋市は、被災者が本件苦情や転倒事故について曖昧な会頭をしたことや、健康状態の申告をしなかったことについて、過失相殺が認められるべきとした主張について、被災者の責任にすることができないとしてこれを認めませんでした。

 損害賠償請求について、原告の主張を全面的に認めた判決でした。

 

 名古屋市は、この判決に控訴せず、2020年12月16日には、名古屋市交通局の幹部が両親の自宅を訪問して謝罪をしました。

 

 被災者が死亡してから13年半の歳月が過ぎましたが、名古屋市の責任が認められて、謝罪をうけたことで、ご本人と御両親の無念も癒されたと思います。

 

 このようなことが起きたのは、当時の名古屋市交通局の運転士の労働環境全体についての配慮が適切でなかったことが原因だと思います。一人一人の労働者をたいせつにする姿勢があれば、このようなことは起きなかったと思います。

 

 調査にもっと協力的であれば、長年の裁判にもならなかったと思われます。

 この裁判が、再発防止のための警鐘になればと願います。

 

 弁護団は、水野幹男弁護士、西川研一弁護士、伊藤美穂弁護士、澁谷望弁護士 そして私でした。

 

 

労働者災害補償保険法の改正について~複数の会社等で働かれている方への保険給付が変わります~

 2020年9月1日、改正された労働者災害補償保険法が施行されました。

 これによって、複数職場で働いていた方が、双方の仕事の過重性をあわさって脳、心臓疾患、若しくは精神障害を発病した場合には、労災保険から必要な補償がなされることになりました。

複数職場 労災陰堤 労災保険法
厚生労働省のホームページより

 また、複数職場で働いていた方が労災認定された場合に支払われる労災保険の各種補償の基礎となる給付基礎日額について、複数職場の収入を元にして計算することになりました。

複数職場 労災認定 労働者災害補償保険法 保険給付算定
厚生労働省のホームページより

 詳しい説明は厚生労働省のホームページにあります。

 もともと労働基準法第三十八条は、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」としているのですから、業務上外の判断や、その場合の補償についても「通算する。」のが当然の帰結と思われます。

 厚生労働省は、現行制度として上記のようにこれまではそれぞれの職場単位で判断していたと説明していますが、これについては納得ができません。

 

 いずれにしても、2020年9月1日以降については上記のように評価されるので、複数職場で働く方を守る制度が強化されたとはいえます。

 

 一方で、複数職場での労働の過重性を、それぞれの使用者が把握する方法は、労働者の申告によるとされているようです。十分にはあくしないまま、過重な労働をしている場合には健康を害し、過労死という不幸な結果になるのですから、労働者は注意する必要があります。副業を許可する使用者側は、外の労働をしているか、どの程度労働をしているのか注意する必要があります。

令和元年度「過労死等の労災補償状況」

脳・心臓疾患に関する事案については次のとおり報告されています。

 

1 脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況
 

(1) 請求件数は936件で、前年度比59件の増となった。【P3 表1-1】
(2) 支給決定件数は216件で前年度比22件の減となり、うち死亡件数は前年度比4件増の86件であった。【P3 表1-1】

精神障害に関する事案については次の通り報告されています。

 

2 精神障害に関する事案の労災補償状況
 

(1) 請求件数は2,060件で前年度比240件の増となり、うち未遂を含む自殺件数は前年度比2件増の202件であった。【P15 表2-1】
(2) 支給決定件数は509件で前年度比44件の増となり、うち未遂を含む自殺の件数は前年度比12件増の88件であった。【P15 表2-1】

 精神障害については、ついに年間の請求件数が2000件を超えました。前年から240件も増えています。支給決定件数も500件を超えました。

 自殺の支給決定件数も前年より増えています。

 

 残念ながら、脳・心臓疾患、精神障害とも請求する件数がふえています。そして死亡については、前年より増えています。

 過労死等が減っている状況というのは生まれていません。

 

 働き方改革、過労死防止法に基づく啓発活動等の効果が現れるよう、これからも地道に活動をしていくほかないと考えています。

 

 そして、過労死等が起きたときには労災認定と、発生させた企業の責任の追及にも子らからも力を注いでいきます。

 

 過労死がなくなるときまで。

 

 なお認定率は、脳心臓疾患は下がっていますが、精神障害については昨年より上昇しています。

 脳・心臓疾患

        平成30年      令和元年

   全体   34.5%   →   31.6%

   死亡   37.8%   →   36.1%

 

 精神障害

        平成30年      令和元年

   全体   31,8%   →   32.1%

   死亡   38.2%   →   47.6%

 

 ちなみに、愛知県では

 脳・心臓疾患

    全体 20/37   54.05%

                 死亡 8/14     57.14%

 

 精神障害

    全体 21/85  24.7%

    自殺 7/16  43.75%

 

 脳心臓疾患の認定率は高い。一方で精神障害は全国の比率よりも低い。

 

「心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました」

 厚生労働省は、2020年5月29日、心理的負荷による精神障害の労災認定基準の改正を発表しました。(厚生労働省のホームページ)

 この改正は、2020年6月からパワーハラスメント防止対策が法制化されることなどを踏まえ、「パワーハラスメント」の出来事を「心理的負荷評価表」に追加するなどの改正です。

 厚生労働省は、「厚生労働省では、今後は、この基準に基づいて審査の迅速化を図り、業務により精神障害を発病された方に対して、一層迅速・適正な労災補償を行っていきます。」とコメントしています。

 

 改正の概要は以下の通りです。

■「具体的出来事」等に「パワーハラスメント」を追加

 ・「出来事の類型」に、「パワーハラスメント」を追加

 ・「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」を

  「具体的出来事」に追加

■評価対象のうち「パワーハラスメント」に当たらない暴行やいじめ等について文言修正

 ・「具体的出来事」の「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」の名称を

  「同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた」に修正

 ・パワーハラスメントに該当しない優越性のない同僚間の暴行やいじめ、嫌がらせなど

  を評価する項目として位置づける

 

 実際の認定基準はこちらです。

 

 この改正ではまだ不十分だと考えています。その点は、以前ブログで述べました。

 

 

2020年 パワハラ・コロナ労災・過労死110番

2020年6月20日(土)「パワハラ・コロナ労災・過労死110番」全国一斉電話相談を実施します
 2020.6.20(土) 10:00-15:00
 当日、パワハラ、コロナウイルス関連労災、過労死に関するご相談を受け付けます。

 愛知県の電話は 

   フリーダイヤル 0120-846-910
 全国26都道府県で実施予定です。各地の当日の受付番号・時間はこちら

 2020年6月20日のパワハラ・コロナ労災・過労死110番の相談、電話の相談は16件でした。当日は、名古屋テレビの取材を受けました。パワハラ、コロナに関する相談がありました。当日繋がらなかった方。申しわけありません。

 これからも、過労死、過労による病気についての相談を受けてまいります。

 2020年6月24日 追記

パワーハラスメントについての労災認定基準

 2020年5月15日、厚生労働省は、「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」の報告書を公表しました。ホームページでみることができます。

 この専門検討会は、「労働施策総合推進法」により、令和2年6月からパワーハラスメント防止対策が法制化されることなどを踏まえ、精神障害の労災認定基準の別表1「業務による心理的負荷評価表」の見直しについて検討を行い、取りまとめたものです。

 

 その要点は、厚生労働省のホームページに次のようにまとめられています。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

報告書のポイント

 

■具体的出来事等への「パワーハラスメント」の追加

 ・「出来事の類型」として「パワーハラスメント」を追加

 ・具体的出来事として「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」を追加

■具体的出来事の名称を「同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた」に修正

 ・具体的出来事「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」の名称を

  「同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた」に修正

 ・パワーハラスメントに該当しない優越性のない同僚間の暴行や嫌がらせ、いじめ等

  を評価する項目として位置づける

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 しかし、この報告書及びこの報告書の内容には問題があります。

 

1 パワーハラスメントの概念について

  パワーハラスメントについて、労働施策総合推進法 30 条の2第1項が、「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」と定めています。

  法律がパワハラの定義を定め、事業主に必要な体制の整備や雇用管理上必要な措置を命じることは一歩前進です。それでは何がパワハラかということについて、この法律の解釈の指針として「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」が定められています。しかし、これについては日本労働弁護団が、2019年12月10日の意見書で、「パワハラの定義を著しく狭く限定的に解釈し、まるで「加害者・使用者の弁解カタログ」とも言えるような「パワハラに該当しない例」を掲載するなど、パワハラ防止に資するどころか、むしろパワハラを許容し、助長しかねない危険性を有する内容である。」と批判するものです。この指針によってもパワハラと判断される場合はよいでしょうが、解釈が分かれるところでは、この指針でパワハラを否定されれば、労災認定もされなくなる危険があります。

 

2 「執拗」は厳しすぎる。

 報告書は、次のような場合を心理的負荷が「強」の例であるとしています。

 

・上司等から、治療を要する程度の暴行等の身体的攻撃を受けた場合

・上司等から、暴行等の身体的攻撃を執拗に受けた場合

・上司等による次のような精神的攻撃が執拗に行われた場合

・人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性がない又は

業務の目的を大きく逸脱した精神的攻撃

・必要以上に長時間にわたる厳しい叱責、他の労働者の面前における

大声での威圧的な叱責など、態様や手段が社会通念に照らして許容

される範囲を超える精神的攻撃

心理的負荷としては「中」程度の身体的攻撃、精神的攻撃等を受けた場合

であって、会社に相談しても適切な対応がなく、改善されなかった場合

 

確かに、1回だけの暴行、1度だけの精神的攻撃で、精神障害になる場合というのは、相当ひどい攻撃というべき出来事でないと労災とはいえないかもしれません。しかし、「執拗」とは「過度なほどしつこいこと」(広辞苑第7版)という意味です。身体的攻撃を執拗に受けた場合や精神的攻撃を執拗に受けた場合でないと心理的負荷が「強」とは判断されず、精神障害の発病が労災とはならないというのは不合理だといわざるをえません。

平成23年の専門検討会の報告書の資料となっている、「ストレス評価に関する調査研究

~健常者群における 43 項目、および新規 20 項目のストレス点数と発生頻度~ 大阪樟蔭女子大学大学院 夏目 」によれば、「ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」はストレス点数のランキングで1位、点数は7.1とされています。(2位は「退職を強要された」の 6.5、3位は「左遷された」の 6.3、4位は「1か月に 140 時間以上の時間外労働(休日労働を含む)を行った」の 6.3。)

ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けたことが、これほど上位のストレスであるのに、さらに「執拗」にされたことが必要だとすれば、労災認定のハードルをあまりにあげすぎているといわざるを得ません。

ところで、専門検討会の報告書の4ページには、「また、人格や人間性を否定するような精神的な攻撃が執拗に行われた場合や、精神的な攻撃が一定期間、反復・継続していた場合にも、強い心理的負荷を生じるものと評価されている。こうしたことを勘案すると、心理的負荷の強度が『強』となる具体例については、次のように示すことが適当である。」と書いてあります。そうであれば、認定基準の具体例は「精神的攻撃が執拗に行われた場合」とまとめるのではなく「精神的な攻撃が一定期間、反復・継続していた場合」とするべきです。

さらに専門検討会の報告書については、

第4回に出された案文の 4頁

 

「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受け

た」の具体的出来事については、上記(2)のとおり、平均的な心理的負荷

を「Ⅲ」とした上で、具体例を示すこととなるが、過去の事例をみると、治

療を要する程度の身体的な暴行等が行われた場合や、暴行等による身体的

な攻撃が繰り返し行われた場合に、強い心理的負荷として評価されている。

 

とあった部分が、

 

第5回に出された案文の 8頁では

 

「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受け

た」の具体的出来事については、上記(2)のとおり、平均的な心理的負荷

の強度を「Ⅲ」とした上で、具体例を示すこととなるが、過去の事例をみる

と、治療を要する程度の身体的な暴行等が行われた場合や、暴行等による身

体的な攻撃が執拗に行われた場合に、強い心理的負荷として評価されている。

 

となり、最終的な報告書も同じ記載になっています。

 

専門検討会の第4回に出された報告書案は暴行について、過去の事例に「繰り返し行われた場合」で認定されていたと紹介しておきながら、その後第5回の案では、「執拗に行われた」認定例があると認定例の紹介の内容を変えているのです。

セクシュアルハラスメントの場合には、現在の認定基準も、「継続して行われた場合」には心理的負荷が強とされるとなっています。パワーハラスメントの場合にも、同様に「継続して行われた場合」とするべきです。

 

 

3 「人格や人間性を否定するような」は不要である。

精神的攻撃の「強」となる例として、「・人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性がない又は業務の目的を大きく逸脱した精神的攻撃」が挙げられています。

しかし、ここで「人格や人間性を否定するような」という限定が必要でしょうか。

人格や人間性を否定するような精神的攻撃の典型例は「バカ」「あほ」「死ね」「給料泥棒」のような言葉を使うことです。

現在の認定基準における「ひどい嫌がらせ、いじめがあった」という項目で「強」の例は、「部下に対する上司の言動が、業務指導の範囲を逸脱しており、その中に人格や人間性を否定するような言動が含まれ、かつ、これが執拗に行われた」となっています。このような基準になっている関係で、労災の申請をすると、「人格や人間性を否定するような言動」があったかなかったかを確認され、これがないとして、心理的負荷が「強」ではないと判断されることがよくあります。しかし、人格や人間性を否定するような言動がなくても、精神的に辛い思いをする言動はたくさんあります。そして、そのために精神障害になる例があります。そのような場合に、その程度では平均的な人は精神障害にならないから、個人が精神的に弱い人だったんでしょう。労災とは認めません。というのは、余りにも厳しい基準と言わざるを得ません。「バカ」「あほ」「死ね」「給料泥棒」などという言葉を使わずに被害者を追い込むパワハラ、モラハラ上司による精神障害はすべて労働者の弱い性格のせいになってしまいます。

「業務上明らかに必要がない又は業務の目的を大きく逸脱した精神的攻撃」は、表面上「人格や人間性を否定するような」ものでなくても精神障害を発病させることはあります。「人格や人間性を否定するような」という表現を使う必要はありません。

新しい認定基準では、「・必要以上に長時間にわたる厳しい叱責、他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責など、態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える精神的攻撃」という項目も新設されました。この項目が「人格や人間性を否定するような」を要求してないとすれば、以前の認定基準より、「強」となる場合がひろがったものとして評価できると考えられます。

 

4 「会社への相談等の後に職場の人間関係が悪化した場合、」、「会社がパワーハラスメントがあると把握していても適切な対応がなく、改善がなされなかった場合」も「強」と評価すべき

  今回の認定基準では「心理的負荷としては『中』程度の身体的攻撃、精神的攻撃等を受けた場合であって、会社に相談しても適切な対応がなく、改善されなかった場合」を心理的負荷が「強」の例にあげられました。心理的負荷が「中」程度のパワーハラスメントであってもその後の対応によって心理的負荷が強くなることは経験するところでですから、この 指摘は評価できます。

  しかし、セクシュアルハラスメントの場合には、「会社への相談等の後に職場の人間関係が悪化した場合、」、「会社がパワーハラスメントがあると把握していても適切な対応がなく、改善がなされなかった場合」についても心理的負荷が「強」の例にあげられてします。

  パワーハラスメントの場合にも、会社に相談等をして、さらに当該上司からパワーハラスメントを相談したことを指摘されて関係が悪くなることも側聞するところです。さらに、被害者が相談できなくても、会社が把握していながら適切な対応をしない場合には、パワーハラスメントが継続され、被害者本人の孤立間も高まり、心理的負荷が強くなることはセクシュアルハラスメントと同様の構造を持っています。

 

  今回、なぜ、セクシュアルハラスメントと同様にしなかったのか理解できません。

 

 厚生労働省は2020年5月15日(金)から5月25日パブリックコメントを募集しています。

 上記批判については本来専門検討会の議事録をみないと確認できず意見もいえません。時間がありませんが「執拗」「人格や人間性を否定するような」などという制限的、限定的な認定基準では、これからも理不尽に労災と認められない被災者や、家族が今後も発生することになってしまいます。

 

 適切な認定基準となるように厚生労働省に再考を求めます。

 

 

過労死の認定基準 専門検討会始まる

 精神障害についての専門検討会が開催され、すでに2回の会議が行われています。

  まだ議事録は公開されていませんが、資料がアップされています。過労死弁護団の意見書もアップされています。

 

 適正な認定基準となるよう注目していきたいと思います。

 

2020年のはじまりにあたって

謹賀新年 ねずみ 神宮西

 明けましておめでとうございます。

 

 旧年中はお世話になりました。

 

 11月には過労死等の認定基準の見直しの方針が発表され、12月には複数職場での労働についての認定方法の見直しがきまるなどのことがありました。ここ数年で過労死等の救済がよりなされるように適切な認定基準の改正を期待します。

 

 賃金の時効期間の延長の問題、パワハラについての法規制は問題が大きいのですが、労働者の保護になるようにかえていきたいです。

 

 改正民法により法定利息が見直されるので、損害の金額は増額されるでしょう。

 損害賠償の時効期間は原則5年となりよりスピーディーな解決が求められます。

 

 これらの法律や運用の改正の動向に注目しつつ、それぞれの事件の解決へ向けて、今年も精一杯行っていきます。

 

 どうぞ今年も宜しくお願いします。

 

 2020年1月1日

                        弁護士 岩井 羊一

 

 

 

過労死の認定基準の改定

 過労死弁護団では、過労死認定基準についての意見書を作成して厚生労働省にも提出していました。

  心理的負荷による精神障害の労災認定基準の改定を求める意見書 

   脳・心臓疾患の労災認定基準の改定を求める意見書

 厚生労働省は11月1日の大臣の記者会見で次のような発表をしています。(厚生労働省ホームページ

 

(引用開始) 

記者:

 

先日議員連盟の総会で過労死の認定基準の見直しの検討をすることが明らかになったのですけれども、今後の検討の予定とポイントとなる認定基準の内容がどのあたりなのかというのを教えてください。

 

大臣:

 

今労災認定基準には脳、心臓疾患と精神障害の労災認定基準、これが二つあります。まず脳・心臓疾患の労災認定基準については、昨年度と本年度に医学的知見を収集をさせていただいております。それを踏まえて、令和2年度、来年度に有識者の検討会を設置して、労災認定基準これは全般にわたってご議論をいただきたいと、もう既に平成13年に作成をされておりますからもう15年、20年たっているということであります。それから精神障害の労災認定基準については、これは2つあります。1つはパワハラについて法制化され定義が明確化されて、指針等が今議論されているわけでありますけれども、本年中に有識者検討会議を設置して、検討を行う、これはパワハラから生ずる精神的な障害に対してであります。さらに全般については、来年に医学的知見等を収集し、それを踏まえて3年度に今度有識者検討会議を開いて検討を行うということにさせていただいているところであります。検討の期間はまだ見極められませんが、前回の検討においてはおおむね1年間ぐらいの議論をしていただいて答えを出していただいたということでございます。そんなことも踏まえながら対応していかなければいけないと思っております。(引用終わり)

 この会見の内容によれば

・パワハラによる精神障害の発病については2019年に専門検討会を設置し、検討する。

・令和2年度には脳・心臓疾患の認定基準に関して専門検討会を設置して、検討する。

・令和3年度には精神障害の認定基準に関して専門検討会を設置して、検討する。

 

とうことが明確にされました。

 

今も不十分な認定基準のために、認定されないご遺族があります。

新しい認定基準が、より一歩進んだ過労死の認定基準になるように期待します。過労死弁護団としてはすでに意見書を発表しています。これからも意見を述べて行く予定です。

 

 

愛知学院大学法務支援センター 市民講座2019

 

 今日は勤労感謝の日でした。

 私が特任教授を務める愛知学院大学法務支援センターでは毎週土曜日に市民向けの公開講座を開いています。今期の講座は10月5日から12月7日まで以下のラインナップで行われています。

 

 開 催 日            講 座 内 容      講  師
10月5日 再審に関する議論の欠落点-再審有罪判決への対応- 教授 原田 保
10月12日 国際人権法とは? 教授 初川 満
10月19日 交通事故と法律-いざというときに困らないために- 教授(弁護士) 浅賀 哲
10月26日 裁判と真実について 教授 梅田 豊
11月9日 税金の憲法問題-消費税は合憲か?- 教授 高橋 洋
11月16日 募集株式の発行 教授 服部 育生
11月23日 過労死を防止するために 教授(弁護士) 岩井 羊一
11月30日 土地の所有権は放棄できるのか 教授 田中 淳子
12月7日 改正相続法について~従前の相続法とどのように変わったか~ 教授(弁護士)國田 武二郎

 

 今日は、私が「過労死を防止するために」と題してお話しをさせていただきました。

11月は過労死防止啓発月間です。(過労死等防止対策推進法5条2項)

  

  過労自殺が社会問題になった電通事件の平成12年3月24日最高裁判決判決。そのときになくなった方のあとに生まれた高橋まつりさんが、亡くなった電通事件。いまもなくならない過労死の実態。どういった事案が過労死とされているのか。過労死がおきた場合の法律問題。労災の仕組みや法律の構造。パワーハラスメントの問題などお話しをさせていただきました。

 

 愛知学院大学法務支援センターでは、春と秋に市民向け講座を行っています。

 どの先生の講座も役に立つし、法律的な好奇心を誘うものです。

 

 私は、来年の春は、裁判員裁判について語る予定です。乞うご期待。

 

 

 

過労死等防止対策推進シンポジウム 愛知会場

 2019年11月15日 過労死等防止対策推進シンポジウム愛知会場に出席しました。

 全国で11月に行われている厚生労働省主催のシンポジウムのひとつです。愛知は名古屋国際センター別棟で行われました。

 

 冒頭、開会前には、恒例になった「ぼくの夢」という歌が流れました。

 過労氏の自死遺族のマー君が作った詩に曲をつけ、歌手のダ・カーポさんが歌っています。

 

 13:30に開会しました。

 開会挨拶が、愛知労働局労働基準部長黒部恭志さんからがありました。

 過労死等防止対策推進法が施行されてから5年がたつこと、11月が過労死等防止対策推進月間であること、2019年4月からは労働時間の上限規制などの働き方改革関連法が施行していること。過労死等を防止するためにこのシンポジウムが重要であるとの挨拶でした。

 

 そして、過労死を考える家族の会の名古屋の代表からご挨拶がありました。

 家族の会はいまから30年前に名古屋できました。そして、全国過労死を考える家族の会ができました。家族の会は、日本中、世界中に訴えました。しかし、仕事でうつ病等の精神疾患を発症する人が急増しました。法律を作って過労死等を防止する法律の制定をしようとし、活動をしました。

 このシンポジウムは、最初は自主開催でしたが、その後毎年開催しています。

 それでも過労死は一向に減っていきません。

 自分の娘も会社の上司のパワハラで21歳で自殺してしまいました。家族のえがいていた未来もなくなりました。

 人を死に追いやる指示が指導と言えるのか疑問です。

 過労死を自分と関係ないと考えている人が多いから過労死がなくならないと思います。娘を辞めさせなかったことを後悔しています。でも、パワハラをしたひとが今も会社にいることに疑問を持っています。

 過労死、過労自死はけして他人ごとではない。私たちと一緒に考えてほしいと思います。

 

 愛知労働局からの現状報告がありました。

 愛知労働局 労働基準部 監督課 課長 中村隆さんからの報告でした。

 

 過労死等防止白書から、過労死の状況の説明がありました。

 週60時間の労働者は6.9%と減少傾向。でもまだ長時間労働をしてる人がいる。

 さらに、年休取得について70%以上取得している人は51.1%とまだ道半ば。

 過労死の実情は高止まりしている。

 長時間労働削減に向けた取組をしている。違法な時間が労働をさせている事業場があり、長時間労働についての監督指導を行い是正をさせていきたい。

 啓発活動も行っている。メンタルヘルス対策に関する周知も行っている。また職場のハラスメントの予防・解決のための周知、啓発を行っている。トラック運送業、教職員、医療従事者に対する啓発も徐々にすすめている。

 

 時間外労働の上限規制についての説明がありました。

 改正前は、臨時的な特別の事情の場合には上限がなかった。しかし、改正後は、法律の中で規制が定められた。臨時的に特別な事情がある場合でも

  年720時間以内

  複数月2-6か月 平均80時間以内

  月100時間未満

という規制になっている。

 

 パワーハラスメント対策強化にかかる法改正についても説明がありました。

年年増加傾向にあるとのことパワーハラスメント防止対策の法制化の内容、ハラスメントの内容、原因の説明がありました。

 今回のパワーハラスメント等防止のための雇用管理上の措置義務の内容についても説明があり、セクハラに準じて指針が作られるであろうことの説明がありました。

 

 

 つづいて企業からの事例報告がありました。キャッチネットワークの働き方改革

 社長の松永光司さんからお話しがありました。

 

 キャッチネットワークは、第三セクターで西三河南部をエリアとした会社。

 135人と契約社員が58人 合計193人、主要事業はテレビとインターネット。いわゆる放送業界で、ブラックといわれる業界ですが、さまざまな働き方改革に取り組んできました。

 働き方改革の理念は、「男女の別なく」「成長し続ける」ことにあります。個人個人が成長し、給料が上がって、良い生活ができるようにと考えています。

 

  ワーク・ライフ・バランスより、「ワーク・ライフ・シナジー」と言ってきました。

 

 育休については、女性もとれていませんでした。どうやったら仕事を分担してもらえるか。そして、男性の育児給をとるようにと工夫をしてきました。

 有給休暇を、「おもいやり休暇」として法律の定めよりも多くとれるようにしました。また、育児休暇期間も法律よりも長くとれるようにしました。

 

 フレックスタイムはコアレスです。一日4時間働いてもらえれば何時に気も良いことになっています。

 36協定の特別条項は、法律は月80時間、年720時間が上限ですが、会社は月70時間、年間540時間を上限と定めています。

 

 職場は「フリーアドレス」としています。役員以外の席や自由です。座る場所が毎日変わることで、社員間のコミュニケーションを深めるように努力しています。

 

 ペーパレスにも取り組んでいます。資料は会社のサーバーに保存するようにしています。急に休んでも他の人が仕事を引き継げるようにしています。

 

 テレワークも勧めています。在宅勤務ができます。午前在宅勤務をして、午後から自宅近くの場所に出頭すれば、直行直帰ができます。また、出張先の隙間時間にWi-Fiのある場所で仕事ができるようになっているので有効活用が可能になっています。

 

 残業減少するようにしとときに、それによって収入が下がる場合にも、収入が大幅に下がらないように工夫をしました。

  

 有給休暇は計画を建ててもらいます。さらに毎月実績方向をしてもらいます。計画通り採れなければ計画の見直しをします。有給所得率も48.5%から66.3%になりました。もっと上を目指したいと考えています。有給は10日はとろうよ,と呼びかけています。有給休暇を取得するように、ライフ充実手当てを支給しています。3連休と土日をあわせ、5連休とったら2万円手当てを支払うようにしています。

  

 メンタルヘルスケアにも力を入れています。産業カウンセラーと人事担当で、全社員のチェックします。メンタルで求職した方について復職確認プログラムを実施しています。専門施設で5週間の確認プログラムをしています。

   

 働きやすい会社から、さらに働きがいのある会社を目指したいと考えています。

 

  

 西垣さんのお話し

 

 全国過労死を考える家族の会の会員です。27歳の息子を亡くしました。

 自分は教師をしていて、授業中に子どもが亡くなったことを知りました。

 母子家庭で母1人、子1人の家族でした。

 息子は、関東で働きたいといって、神奈川の会社に就職しました。お互い1人なので、一日一回は連絡をとろうと話していて連絡を取り合っていました。

 その日昼頃連絡が取れませんでした。そしたら、息子は高熱を出してしゃべることができない、すぐに駆けつけろと医者が言っているという連絡が授業中にありました。神戸から看病のために向こうとしていた新神戸の駅で、心肺蘇生を停止していいかというお医者さんの電話がありました。

 新幹線のなかで、当時はまだ携帯が繋がりにくい時代でした。神奈川に駆けつけたときには息子は冷たく横たわっているだけでした。遺体の顔しか見れませんでした。

 いったいに何が起こったのか。なんでこんなことになったのか。私の人生は全て終わってしまいました。

   

 息子は、関西にいるより、大きな仕事ができるといわれて、関東に行くことになりました。友人が多く、任されたことの責任感をもった子でした。息子が亡くなった1週間後会社を訪れたら数十人があつまってくれました。「西垣くんは私たちのアイドルでしたよ。」と言ってくれました。将来への希望を持つ普通の青年でした。

 

 入社2年目。 

 地デジプロジェクトに参加していました。

 業務が多忙でうつ病になりました。

 息子は、治療薬を大量に飲みすぎて死亡したのです。自死か事故死かは不明でした。

 仕事が忙しい。労働災害だと思う。上司がそう言っていると教えてもらいました。

 労災申請をしました。過労死を考える家族の会の人は、ほとんどの人が裁判をしています。

 

 労災と認められるのはとても大変なことです。2011年3月25日 労災認定裁判に勝訴することができました。

 息子の労働実態ですが、亡くなる前128時間の時間外労働をしていました。それが裁判をしていく中で、最終的には159時間の時間害労働をしていることが分かりました。

 0時以降に働いていたのが月の半分。

 

 32時30分(午前8時30分)まで仕事をしていて、次の日、9時からまた21時51分まで仕事をしている日もありました。

徹夜しても朝仕様変更を命じられることもよくありました。普通では考えらえれないほど。作っても作ってもやり直しが有りました。いつまで経っても仕事が終わらない。長時間労働にわをかけて厳しい労働でした。

 職場環境は、狭い、熱い場所でした。

  

 新人教育も受けられる時間もありませんでした。息子は即戦力として働いていました。人数は足らないけれども突っ走るしかありませんでした。

 職場の同期の76人中12人が休職者、退職者でした。実際にはほかにも通院者などがいて、全員がメンタルだと教えられました。

  

 会社の労働条件。

 36協定の特別条項は

  1日 13時間

  3か月 300時間

  1年  960時間(=1月80時間平均)

  となっていました。女性の社員がダンボールを床に敷いて仮眠していた。

 

 労災認定は、働く現場を知らない遺族が業務の実態を立証しなければならない厳しい裁判です。

 争点は3つ

 タイムカード働いた時刻は記録されていました。そこで、休憩時間も働いていたかが争点でした。

 つぎに、精神障害の発病次期はいつかということが争点でした11月か9月か。10月は出社できない状態でしたので発症時期が11月となると、その前の労働が過重ではないとなりかねません。医師のカルテが裁判の終結することに開示してもらえました。プロジェクトがはじまった7月頃、息子は医師に症状を訴えていて、カルテにはこのころ発症だと記載されていたのです。

 さらに、薬の飲み過ぎは労災か?が争点でした。仕事により精神障害になり、精神障害により死になったなったと認められました。

 息子は、ブログを記載していました。それを分析した結果が立証となりました。

 

 裁判中、過労死について国会議員に面会しました。そのときに基本法制定をする必要があると言われました。

 過労死防止法の制定の運動をしました。

 地方議会で意見書 署名、院内集会、自民党の集会に参加、法律制定に奔走した。

過労死等防止対策推進法のなかで『過労死』が法律文言に入リました。

 

 過労死等防止対策推進法にもとづいて大綱の作成にも参加しています。

 けれども、過労死は、まだ少なくなっていません。労災請求件数は増加しています。 

 

 私が、過労死をなくすためにすべきということがあります。時間外労働は月45時間を上限として例外を認めないなどさらなる法規制がもとめられます。

 

 岩井の方から閉会の挨拶をさせてもらい、閉会となりました。

 厚生労働省から、

 企業から、

 遺族から、

 それぞれ、過労死をなくすために発言がなされました。

 良いシンポジウムになったと思います。

 

 

過労死等防止対策推進シンポジウム 岐阜会場出席してきました

 

2019年11月12日に開催された過労死等防止対策推進シンポジウム岐阜会場に参加してきました。

その内容をレポートします。

 

会場では開会前に「マー君のうた」が流れました。ダカーポさんの歌で、和歌山の過労自死遺族の当時小学生のマー君が作詞した歌です。『タイムマシーンに乗ってお父さんの死んでしまう前の日に行くんや。』という歌詞をきくといつも泣けてきます。

 

 

 

開会後、まず岐阜労働局、労働基準部長の子安成人さんから挨拶がありました。昨年度も703名が労災認定され、そのうち死亡、自殺未遂したかたは158名となっているという実態が報告されました。

 

労働時間の上限規制、労働時間把握義務などの法改正がありました。労働時間の上限規制は大企業ではすでに施行されている。中小企業でも4月に施行される。労働局としてもこの施行にあわせて取り組んでいきたい。本日の内容を参考に、過労死を0にする取組をすすめていきたいとの挨拶がありました。

 

 

 

つづいて、岐阜労働局労働基準部監督課長の大谷徹さんから、過労死等防止対策の取組に関する報告がありました。主に過労死等防止対策白書にもとづいての報告でした。

 

 

 

まず労働時間の現状について、労働時間は低下傾向にある。昨年は1週間に60時間以上働いている雇用者の割合はピーク時の12%から昨年は6.9%まで減少傾向に有るとのとでした。ただ、岐阜県内の約2割の事業所では月80時間以上の時間外・休日労働を行った労働者がいます。休日労働まで入れると、長時間労働をしている人もまだまだいるそうです。

 

 

 

過労死等の状況については、最近では精神障害事案が増えており流れが変わってきているという指摘がありました。過労死の件数については、高止まりとなっているとの報告がありました。

 

事案については、男性の場合には、仕事の内容・仕事量の大きな変化による出来事による発病が多く、女性の場合には、悲惨な事故や災害の体験、目撃をしたという出来事多いとの違いが示されました。ただ、岐阜の場合には、連続勤務、長時間労働が多く、それからセクハラ、職場のいじめ、嫌がらせが主な理由になっているとのこと。私の実感からすると岐阜の方が一般的な傾向を表しているのではないかと思いました。

 

 

 

監督行政についても説明がありました。労働時間に関する法違反の事業所に対する指導、啓発活動の実施を行っているとの説明もありました。

 

厚生労働省は今後も過労死防止の取組を実施していくとのことでした。

 

 

 

つづいては、フロンティーク株式会社の代表取締役三鴨正貴氏からの報告がありました。

 

 フロンティークは、デイサービスの会社です。機能訓練をするデイサービスを行っているとのことでした。

 

 離職率は33.3%であったり、赤字経営であったりという過去がありました。

 

 いまでは60社、150人が見学に来ているそうです。赤字の際にはスタッフにはゆとりがなく、33.3%の人が会社を辞めていった。仕事量が多くて休みが取れない。仕事が多くて残業になる。そんな不満が聞かれたそうです。

 

 これを解消するために、有給休暇を取りやすい環境を作ろうとして、毎週水曜日はノー残業デーとしたそうです。しかし、残った社員に迷惑がかかるので有給休暇はとらない。仕事が終わらないので持ち帰り残業を行うなどのことが起こったそうです。

 

 そこで、問題は仕事量に目をつけました。しかし、仕事量を減らしたらさらなる赤字になってしまう。そこで、仕事の効率化を目指すことにしました。

 

ほうれんそう(報告、連絡、相談)を簡単に。インカムを導入し、離れた人に、みんなに伝わるようにしました。

 

この会社では、日々の記録を残すことが重要な業務でした。手書きで1日4時間かけてかいていました。これについて、社長自身で入力ソフトを開発しました。9割の記録業務を削減しました。

 

 そのおかげで業務が標準化し、他の職種間でも協力できるようになりました。複数ある施設間どうしでヘルプに行けるようになりました。

 

 時間短縮になり、残業は月5時間(1人)となりました。また、従業員が6人減っても、有給取得率は85%。離職率も8.8%と劇的に変化がありました。辞める人もその人の事情で、会社が嫌で辞める人がいなくなりました。

 

 決算も黒字になりました。会社の負債も解消されました。

 

 いまは、みんなで会社の将来を話すようになったそうです。社長と従業員との溝もなくなったそうです。

 

 

 今、全ての社員に歩数計をつけているそうです。それは、歩数=疲労度ではないかと考えたから。そして計ってみたら介護士より看護師の方が歩数が多かった。そんなことから、看護師の業務と介護士の業務の見直しを考えているそうです。

 

 三鴨社長は、赤字改善のために、働き方を考えた結果、従業員も会社もみんながよくなるという理想的な会社経営につながったとのことでした。

 

 

 

 つづいて朝日新聞記者の牧村昇平さんのお話がありました。

 

牧村さんからは、過労死等の遺族50人超を取材した経験からお話しがありました。

 

 

 

 亡くなる方は、本当にさまざま。年齢、仕事、家族構成、仕事ばかりしている人だけではなく、オンオフを切り替えていた方でもなくなる例がある。どんな人も亡くなる可能性があるとの指摘がありました。そんなことから、過労死は「他人事」から「自分事」にとらえたいとのお話しをされました。

 

 

 

 つづいて、自分事といっても自己責任というのはありえない。仕事がすきでやっているという人がいたとしても、それを放置して健康に配慮しなかった会社に責任が生じるのだ。自分だけでなく、職場全体で考えてほしいと訴えがありました。

 

 

 

 牧村さんは、マー君の歌のお父さんの自死の事件の取材のお話をしてくれました。死ぬくらいなら、やめればいいという自己責任論は通用しない。

 

 マー君のお父さんも、正常な考えができなくなる。それほど追い詰められた。その前に長時間労働を防止し、そうなるまえに食い止め無ければならないと思う。「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない状態なのです。

 

 

 

牧村さんの講演はここからご自身の話でした。次のような内容でした。

 

 

自分が過労死の取材をするのは「マー君」の「ぼくの夢」に接してでした。子どもが生まれて、自分がこのような働き方をしていて、妻や子どもが残されたらどうなるんだろうという思いをしました。

 

 

 入社して福島県で警察などをまわる仕事に従事しました。5年後、東京の財務省、国際経済の記事を取材して書いていました。世界中を出張して回っていました。

 

 ハードワークにたえられたので、評価されていたと思います。毎日朝5時半に起床して深夜2時に寝るという生活でした。自分自身が過労死候補生。労働時間は記録していないので分からないくらいでした。心身共にひどい状況でした。

 

 

そんな状態の中で、妻はワンオペ(1人だけで行う)育児という状態でした。妻がある日、死にたいと言い出しました。うつ病でした。そのため、自分は、経済部の内部で話しあいました。国際経済から労働問題の部署へ配置替えになりました。当時は、とても不満でした。メインストリームからの挫折だと感じていました。いまとなっては、妻に助けられた。あのまま働いてたら倒れた、命を落としていたかも知れないと思います。

 

 

 いま心がけていることはつぎのようなことでです。

 

    働く時間の管理をする。

 

    深夜は働かない。

 

    心の病のケアをする。

 

 妻も自分も心の病にならないように。脱ハラスメントを考えて、職場全体を守るということを考えています。

 

 記者の世界は平準化されていません。それでも平準化する方がいいです。特に事務の方は職場のなかで少数。こういうかたに声をかけるようにしています。一番大事なのは、心のゆとりをもつことだと思っています。自分の中ではもっと記事を書きたい、とゆらぐけれども、逃げていい,とも思っています。危ないというもっと手前で。

 

 

長時間労働による過労で、交通事故を起こしてしまう方もいます。危ないと思ったときには手遅れになっています。そのもっと手前で逃げる。逃げてもいいんだと思っておかないと駄目になってしまうのではないかと思っています。逃げてはいいんだと思っています。具体的に考えている訳ではないけれども、心の中では転職活動を、と思っています。高校生に話すときには、いつも転職活動を、と話しています。

 

 

 いまは、夜は仕事をしないというライフスタイルで生活をしています。それは、会社の理解で、成り立っています。朝日新聞という大きな会社で、多くの記者がいるので自分がそのようなスタイルで仕事をすることができます。

 

 

 いまは働いている時間は1日8時間くらい。家事、育児もしているので、結構つかれます。これ以上働いたら、地域生活、育児ができません。8時間働いて、その他の時間は、自分のために使う。自分がリフレッシュできる。休まなければならない。それを身をもって実感しています。

 

 

 

 ここから、また、事例の紹介をされました。

 

 外食チェーン店の事例の紹介です。

 

 エリアマネージャーは、暴力をふるっていました。そのため24歳で死亡した方の事案です。自分は、エリアマネジャーに取材をしました。そのエリアマネージャーはそっとしておいてほしいというだけで、記者からの取材は迷惑そうでした。自分は、心から反省している、遺族に謝罪したい、という対応を期待しました。そのような考えを遺族につなげたら、遺族の悲しみも少しは影響があるかと考えていました。でも、それは無理だということが分かりました。

 

 

 

 牧内さんは、自分がパワハラをしてしまった経験も話しをされました。入社3年目の頃、自分の私生活も大切にしたいという後輩に対し、厳しく叱責をしてしまった。いまは、後輩の置かれている立場や,考え方をよく理解せずに対応したことを後悔しているという率直な話しをされました。そして、それは自分の未熟さに責任があるが、重要な記事を書けという会社の構造が、自分をそうさせているという問題点についても指摘されました。

 

 

 

 過労死の取材を通して、自分自身の働き方を考える。そして、自分の今までのは働き方やパワハラも顧みて、講演をするというスタイルに、大変感銘を受けました。とてもいい講演だったと思いました。

 

 

 つづいて、過労死遺族の伊藤左紀子さんのおはなしでした。

 その内容は、以下のとおりでした。

 

 市役所につとめていた夫の哲さんが市役所から飛び降りてなくなりました。

 

 公園整備の仕事が多忙で、過酷であったこと。パワーハラスメントが行われたことが原因でした。公務災害申請しました。基金では自分の訴えを全面否定されました。裁判では地裁、高裁で私の言い分を認めてもらうことができました。10年かかった争いをおえることができた。市長と面談し、パワハラ防止対策などを約束させた。条例も作られました。市長や、部長も哲さんに謝罪をしました。ことし3月に岐阜過労死をなくす会を立ち上げて、過労死を防止するための活動をしています。

 2018年、岐阜市役所で2人の職員が自死している。無念でなりません。過労死がおきると、家族だけでなく回りも辛い思いをします。基金は、すみやかな認定をしてもらえません。悩みがある人はぜひ相談して欲しいとおもいます。

 

 質疑応答でも、牧内さん、三鴨社長に講演の内容についての質問があり、お二人とも熱心に回答をしてもらいました。

 

 

 

 シンポジウムの開催は、厚生労働省、会社の社長、新聞記者、過労死遺族、みんなを結びつけて過労死防止の輪を広げる機会として着実に根付いて、少しずつ効果を発揮していくと思います。過労死をなくすために、これからも続いていってほしいと思います。

 

 

過労死認定基準のみなおし

 2019年10月31日のNHKは、次のように報道しました。 

 

「長時間労働などが原因の過労死を認定する基準について、厚生労働省は、およそ20年ぶりの見直しに向けた検討を始めることになりました。

 これは、30日に開かれた過労死防止対策を議論する超党派の議連の総会で厚生労働省が明らかにしました。」 

 

 同年11月1日の毎日新聞は、次のように報道しています。

 

「脳出血や心筋梗塞(こうそく)など脳・心臓疾患による過労死の労災認定基準を、厚生労働省が約20年ぶりに見直す。2020年度に有識者会議を設けて検討を始めることを、加藤勝信厚労相が1日の閣議後記者会見で明らかにした。うつ病など精神疾患による過労死の労災認定基準も、21年度から見直しに着手する予定だ。 」

 

 厚生労働大臣が記者会見で明らかにしたのですから、かなり確実な報道と考えられます。

 

 過労死弁護団全国連絡会議は、2018年5月に、脳・心臓疾患についても、精神障害について認定基準を改正するように意見書を発表しています。意見書の内容はホームページに公開しています。

 

 厚生労働省が、かならずしも私たちの考えているような改正を目指しているとは限りません。

 しかし、これによって、今まで認定されていない人が、認定される余になる可能性があります。

 

 厚生労働省の動きを注視していく必要があります。 

2019年 過労死防止等対策推進シンポジウム 


 厚生労働省主催の過労死等防止対策推進シンポジウムが、今年(2019年)も全国の都道府県で行われます。

 愛知県でも2019年11月15日に行われます。

 今年の内容は以下のとおり。

 

 愛知労働局からの現状報告  愛知労働局 労働基準部監督課

 キャッチネットワークの働き方改革 

  株式会社キャッチネットワーク 代表取締役社長 松永 光司 氏

 基調講演

  「息子の過労死から過労死ゼロを願う」

  西垣 迪世 氏(全国過労死を考える家族の会 兵庫代表)

 

 申し込みはホームページから。