平成30年の過労死等の労災補償状況

 厚生労働省が、2019年6月28日、平成30年度の過労死等の労災補償状況を発表しました。

 以下、抜粋して引用します。

 

1 脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況

(1)請求件数は877件で、前年度比37件の増となった。

(2)支給決定件数は238件で前年度比15件の減となり、うち死亡件数は前年度比10件減の82件であった。 

 

2 精神障害に関する事案の労災補償状況

(1)請求件数は1,820件で前年度比88件の増となり、うち未遂を含む自殺件数は前年度比21件減の200件であった。

(2)支給決定件数は465件で前年度比41件の減となり、うち未遂を含む自殺の件数は前年度比22件減の76件であった。

 

いずれも、請求件数が増えています。もっとも認定件数は減少しています。

特に自殺の認定率は、平成29年の47.1%から38.2%と大幅に減少しています。

認定を厳しくしているのではないか、疑いたくなります。

 

この傾向がつづくのか、一過性のものなのか、来年統計を注目していく必要があります。

 

未和 NHK記者はなぜ過労死したのか

未和 NHK記者はなぜ過労死したのか

 未和 NHK記者はなぜ過労死したのか 尾崎孝史著 岩波書店

 

 読みました。

 

 未和さん亡くなる前の1か月の労働時間は、労基署の認定でも159時間。弁護士の計算では、209時間を超えていたようです。

 明らかな長時間労働。31歳の若さでなくなった本人。痛ましい話しです。

 

 この本は、NHKでドキュメンタリー番組の映像制作に携わった映像制作者。写真家。

 多くの人への取材で、未和さんの亡くなる直前の労働実態を明らかにしていく前半は、NHK記者の仕事の内容が具体的に分かり、興味深いものでした。

 あの志布志事件 12人無罪の報道のときにNHK鹿児島放送局で、レポートをしたのも未和さんだったことがわかりました。

 

 明らかな労災であり、労基署が認定し、その後調停和解をしたこと、その際には公表しなかったこと、その後お母様が病気でしばらく動けない状態であったことなどの経過は、過労死事件の担当してきた当職にも経験があります。

 

 そして、そのNHKが、内部でも未和さんのことが知られておらず、決して働き方が変わったとは思えない状態であったことを知ったときの遺族の気持ち。残念だったでしょう。

 

 ご家族が公表した理由、そしてこの著者がこの本で伝えたかったことは、未和さんの死を無駄にしてほしくない。ということだと思います。

 それにもかかわらず、そのための対応が何もなされてないNHKへの怒りの気持ちを伝えたいということでしょう。氏名を公表してよく立ち上がられたと思います。

 そのことで、この本ができ、過労死の悲惨さがより世の中に伝わることになったのだと思います。

 

 未和さんが亡くなった長時間労働の原因は選挙の取材があったことでした。少しでも早く、他の放送局より早く当選確実をだすために、命まで犠牲にして取材をしなければならないのか。

 選挙のありかた、選挙報道のありかたについても、考えさせられました。

 

 未和さんには、「裁量労働制」がとられていましたた。つまり、労働時間によって賃金が変わらないのです。賃金が絡まなければ、労働時間の管理はどうしても甘くなります。それが長時間労働の温床です。時間をかけないと成果が上げにくい記者の仕事では、なおさらです。裁量労働制に問題があることも改めて感じました。

 

 とりとめもなく感想を書きました。この事件をとおして、いろいろな問題を知ることができました。

 おすすめしたい本です。

 

 

 

過労死110番 今年も行いました

 今年も6月15日に、過労死110番を行いました。

 全国34か所。

 愛知県では、水野幹男法律事務所でおこないました。

 事前の新聞報道でみたかたたなどから8件の電話相談がありました。

 

 ご家族が、毎日長時間労働をしているなど深刻な相談もよせられました。

 

 これからも過労死予防、過労死被害救済のために尽力する予定です。

パワーハラスメントについて

パワーハラスメントの由来

 パワーハラスメントということばは、2001年、クオレ・シー・キューブ株式会社、の社長(当時)岡田康子さんが提唱した言葉でした。日本で作られた和製英語です。

 

裁判例に現れたパワーハラスメント

 「パワーハラスメント」という言葉が判決の中での指摘されるようになりました。

 たとえば、当職が担当した中部電力事件名古屋高等裁判所平成19年10月31日判決では次のような指摘がありました。

 

 前記認定のとおり,Fは,Aに対して「主任失格」 「おまえなんか,いてもいなくても同じだ 」などの文言を用いて感情的に叱責し かつ結婚指輪を身に着けることが仕事に対する集中力低下の原因となるという独自の見解に基づいて,Aに対してのみ,8,9月ころと死亡の前週の複数回にわたって,結婚指輪を外すよう命じていたと認められる。これらは,何ら合理的理由のない,単なる厳しい指導の範疇を超えた,いわゆるパワー・ハラスメントとも評価されるものであり,一般的に相当程度心理的負荷の強い出来事と評価すべきである(判断基準も,心理的負荷の強い出来事として 「上司とのトラブルがあった」を上げている。 )。なお,控訴人は,指輪に関するの発言を聞いたAの反応に照らし,同人に心理的負荷を与えるような発言であったとは認められないと主張するが,出来事に対する対応の仕方は人により様々であり,明白に不快感を表明しなかったからといって,心理的負荷が軽いとは判断することができないことは言うまでもないし,前記認定のように,Aが「星の指輪」という歌を好み,カラオケで練習していたこと,Fの命令にもかかわらず,死亡の前日まで会社でも家庭でも指輪を外さず,自殺当日これを外して妻のドレッサーの小物入れに入れていったこと等からすると指輪に対する強いこだわりが見て取れるところである。 

 また一方,Fも,前記認定のとおり,死体確認の際 「いつも指輪をしていたよね 」と発言し,N に対して 「私の指導や指輪のことがAの死亡の原因だとすれば,私も身の振り方を考えなければいけないね 」 と話したことを認めていること等からすると,指輪のことが気に掛かっていたか,あるいは,指輪がAにとって大きな問題であることを察していたものと認められるのである。これらの事実からして,上記の控訴人の主張は採用することができない。(名古屋高等裁判所平成19年10月31日判決)

 

厚生労働省の示したパワーハラスメントの定義

 パワーハラスメントについて、厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」は、次のように定義づけを行いました(2012年)。

 

 「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。」(職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング報告・5頁)

 

 ここで、「職場内での優位性」には、「職務上の地位」に限らず、人間関係や専門知識、経験などの様々な優位性が含まれる。上司から部下へのいじめ・いやがらせだけでなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して行われるものも含むとされています。

 

 一方、業務上の必要な指示や注意・指導を不満に感じたりする場合でも、業務上の適正な範囲で行われている場合には、パワーハラスメントにはあたらないとされています。

 

 パワーハラスメントは、以下の6類型が例示されていますが、これに限りません。

 (厚生労働省ホームページ明るい職場応援団)。  

 

  ア 身体的な攻撃 

    叩く、殴る、蹴るなどの暴行を受ける。  

 

  イ 精神的な攻撃

    同僚の目の前で叱責される。他の職員を宛先に含めてメールで罵倒する。

    必要以上に長時間にわたり、繰り返し執拗に叱る。  

 

  ウ 人間関係からの切り離し

    1人だけ別室に席を移される。

    強制的に自宅待機を命じられる。送別会に出席させない。  

 

  エ 過大な要求

    新人で仕事のやり方もわからないのに、他人の仕事まで押しつけられて、みな先

   に帰ってしまった。

    業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害。

 

   オ 過少な要求

    運転手なのに営業所の草むしりだけを命じられる。

    事務職なのに倉庫業務だけを命じられる。

 

  カ 個の侵害

    交際相手について執拗に問われる。妻に対する悪口を言われる。

 

 

岡田康子氏の指摘

 円卓会議ワーキング・グループ、及び円卓会議のメンバーで、パワーハラスメントということばを提唱した株式会社クオレ・シー・キューブの代表取締役の岡田康子氏は著書の中で、パワーハラスメントの特徴として次の点を指摘しています。  

  ア NOと言えない力関係がある  

  イ 侮辱された感覚を伴う  

  ウ 誰もが被害者にも加害者にもなる

  エ エスカレートする  

  オ 言語と非言語で行われる  

  (「パワーハラスメント」 日経文庫 )   

 

精神障害の認定基準

 厚生労働省が策定した「心理的負荷による精神障害の認定基準」(2011年12月)は、上記円卓会議がおこなわれるまえであったので、「パワーハラスメント」という言葉は使われていません。

 

 ここでは、「(ひどい) 嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」場合の平均的心理的負荷を「Ⅲ」としています。

 そして、以下のような場合を心理的負荷の強度を「強」である例としています。

・ 部下に対する上司の言動が、業務指導の 範囲を逸脱しており、その中に人格や人間性を否定するような言動が含まれ、かつ、これが 執拗に行われた

・ 同僚等による多人数が結託しての人格や 人間性を否定するような言動が執拗に行われ た

・ 治療を要する程度の暴行を受けた

 

 また、以下のような場合を新提起負荷の強度を「中」である例としています。

・ 上司の叱責の過程で業務指導 の範囲を逸脱した発言があった が、これが継続していない

・ 同僚等が結託して嫌がらせを 行ったが、これが継続していない

 

 事実関係が具体例に合致しない場合には、「心理的負荷の総合評価の視点」の欄に示す事項を考慮し、個々の事案ごとに評価します。

 「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」場合については、「・嫌がらせ、いじめ、暴行の内 容、程度等 ・その継続する状況 」を考慮して評価することになります。

 

 中に当たる場合にも、他に、心理的負荷をあたえる出来事がある場合には、複数の出来事がある場合として、全体として評価することになります。

 

 過労死弁護団全国連絡会議では、この認定基準について不十分であるとして、2018年に意見書を発表しています。

職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会

 2018年(平成30年)3月30日、「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」報告書が公表されました。 

 

 この検討会は、「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)において、「職場のパワーハラスメント防止を強化するため、政府は労使関係者を交えた場で対策の検討を行う」とされたことを踏まえ、実効性のある職場のパワーハラスメント防止対策について検討するため、2017年(平成29年)5月から10回にわたり開催されました。

 

 この報告書では、パワーハラスメントの概念については次のように説明されています。

【職場のパワーハラスメントの要素】

① 優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること

② 業務の適正な範囲を超えて行われること

③ 身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること

 

 また、この報告書では、パワーハラスメントの態様について詳細な分類を加えています。

 

 実際に問題になっている事例については、その線引きが困難な場合もあり、同報告書も最終的には総合的な判断であると指摘しています。

 

民法改正 過労死事案の使用者に対する損害賠償請求の時効

過労死の場合の安全配慮義務違反の時効

 過労死事案の救済方法には、労災請求と使用者への損害賠償請求という方法があります。

 死亡事案の場合、労災請求の時効は5年。使用者への損害賠償請求については10年です(民法167条2項)。死亡した日の翌日から計算します。

 交通事故の場合には、事故の日の翌日から3年で時効になります(民法724条)。

 

 過労死事案の場合、まず、労災請求をし、労災が認定された後、使用者に対し損害賠償請求をすることがあります。

 労働基準監督署長が、労災と認めてくれれば、3年以内に損害賠償請求をすることもまにあいます。

 しかし、労災請求をするまでに時間がかかる場合もあります。労災請求をして認められず、審査請求、再審査請求をする場合もあります。 

 それでも認められず、行政訴訟を提起する場合もあります。高等裁判所、または最高裁判所でようやく結論が出る場合があります。10年近くかかる場合もあります。

 

 損害賠償請求は、労災が認定されてから行うこともよくあります。労災の手続きの結果が損害賠償請求権のありなしの参考にされるからです。

 

 名古屋市バス事件は、行政事件で名古屋高等裁判所で勝訴し、その裁判が確定した後に、損害賠償請求を提起しています。提訴したのは、息子さんが自死したときから9年をすぎていました。

民法改正と安全配慮違反の時効

 2020年4月、改正民法が施行されます。

 改正民法では、民法の債権の時効は「権利を行使することができることを知ったとき」から5年で時効になると定められました。(改正民法166条)

 

 過労死事案の死亡事案の場合、死亡した日が、「権利を行使することができることを知ったとき」になるでしょう。

 

 日弁連編集の「実務解説 改正債権法」(2018年・弘文堂)では「ただし、とりわけ労働契約上の安全配慮義務違反や医療過誤に基づく生命・身体の侵害など債務不履行による損害賠償請求については、そのような侵害が発生して確定したことが明らかな場合は、改正前民法に比べ、そのことを知った時から5年間で時効消滅する(民法166条1項1号)点で短期化しているので注意が必要である。」とされています。安全配慮義務違反のように権利行使をできることをが明らかな場合には、時効期間がこれまでの10年から5年に変わるのです。

 

 なお、人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効の特例に関する規程が定められ、不法行為に基づく損害賠償請求をする場合も時効期間は5年とされました。

 人の生命・身体の侵害による損害賠償請求については、債務不履行を根拠にする場合も、不法行為を根拠にする場合にも「知ったとき」から5年で時効になるとされたのです。

 

 冒頭の述べたとおり、労災申請をしている間に5年の時効期間はすぐに来てしまいます。

 損害賠償請求と労災認定訴訟を同時に提訴をしなければならないケースが多くなるかも知れません。

 

経過措置

 それでは、現在発生している過労死事件については、いつの法律が適用されるのでしょうか。

 これは、次のように定められています。

 

 「施行日前に債権が生じた場合」又は「施行日前に債権発生の原因である法律行為がされた場合」には、その債権の消滅時効期間については、原則として, 改正前の民法が適用されます。

 

 雇用契約の使用者が安全配慮義務を怠ったことによって労働災害が発生した場合における労働者の使用者に対する損害賠償請求権(債務不履行)については、労働契約が「原因である法律行為」にあたるので、契約締結時が基準となると解されるようです(一問一答民法(債権関係)改正)

 したがって、過労死事件が発生した使用者との雇用契約が2020年4月1日より前であれば、死亡や労災による事故、病気が発症したのが2020年4月1日以降であっても、時効は旧民法が適用され10年となります。

 ただし、中間利息の控除、利率については、改正民法施行日以降に死亡や労災による事故、病気が発症した場合には新法が適用されることになります(附則第17条第2項)

 

 一方で、人の生命・身体の侵害による不法行為に基づく損害賠償請求の短期の権利消滅期間を5年とする特則を設ける改正については、新法の施行日(2020年4月1日)において消滅時効がすでに完成した場合でなければ、新法が適用されます(附則第35条2項)。

  

となるように考えられます。

 

 いつ、会社に入社したか、いつ事件が起きたのかの両方で、時効期間、法定利息、中間利息控除に違いが生じることになります。下に志望事案についてその関係をまとめてみました。

(この記載について責任を持つものではありませんし、正確性を期すためには、さらに説明が必要なので、各自法改正についてはご自身で確認してください。)

 

労働契約締結時期 死亡 中間利息控除 法定利率※ 時効
2020年4月1日より前 2020年4月1日より前 旧民法 旧民法 旧民法(不法行為3年 債務不履行10年)
2020年4月より前 2020年4月1日以降 改正民法 改正民法 債務不履行 旧民法(10年) 不法行為 新民法(但し時効完成していない場合)(5年)
2020年4月1日以降 2020年4月1日以降 改正民法 改正民法 改正民法(不法行為5年 債務不履行5年)

 ※旧民法 5%  改正民法3%

働き方改革法施行

  2019年4月、働き改革法案が一部施行されました。今後順次施行されていきます。

 

  1. 働き方改革第一の柱 

 働き方改革法の第一の柱は、労働時間の見直しです。 内容として以下の点があります。

  ⑴ 残業時間の上限を規制する

  ⑵ 「勤務間インターバル」制度の導入を促す

  ⑶ 年期有給休暇の取得を企業に義務づけ

  ⑷ 月60時間を越える残業は、割増賃金を引き上げる 

  ⑸ 労働時間の状況を客観的に把握するように、企業に義務づける

  ⑹ 「フレックスタイム制」により働きやすくするため、制度を拡充  

  ⑺ 「高度プロフェッショナル制度」を新設 

  以下、⑴,⑶,⑷について解説します。

 

 2.残業時間の上限規制

 

 残業時間の上限を規制するというのは、不十分ですが、労働基準法の大改革だとされています。

 そもそも、「大改革」がなされた理由は以下のようなものです。労働基準法では労働時間の原則は1日8時間、1週間40時間とされています。法は、それ以上は働いてはいけないとされています。その趣旨は、長時間労働で健康を害さないようにするためです。

 しかし、この原則だけだと不都合な点もあります。労働者の中にも、それ以外の時間も働いてもっと収入を得たいという人がいるかもしれません。使用者は、仕事に慣れた人にもう少し働いてもらう方が、人を増やすより都合がよい場合があるかも知れません。  

 そこで、労働基準法36条は、労働者と使用者が労基法36条の条件に合った協定を結んだ場合には例外的に残業をすることができる、違法とはならないとしているのです。ただしその場合には割増賃金を支払わなければなりません。

 時間外の割増率は以下のとおりです。

 時間外 1.25   休日 1.35  深夜1.25      

 割増賃金を支払う趣旨は、過度な時間外労働や休日労働を抑制するところにありました。

 しかし、このような例外を設けたら実際に不都合なことがおきました。36協定例外の規制が緩く、長時間労働による過労、健康被害、離職、過労死、過労自殺 が社会問題になったのです。

 電通の髙橋まつりさんの事件等はまだ記憶に新しいところです。

 

 見直しの概要は、法律で残業時間の上限を定め、これを超える残業はできなくなるというものです。

 原則は、月45時間 、年360時間。臨時的な事情があって労使が合意する場合も年720時間、複数月平均80時間以内(休日労働含む)、月100時間未満(休日労働を含む)となっています。

 45時間を超えることができるのは年間6か月までです。

 守らないときには罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)の可能性があります。

 大企業は、2019年4月から、中小企業も2020年からこの改正法が適用されます 。

 医師、建設業、自動車運転は2024年からです。この点、施行されるまでのあいだに健康を害する人が生まれるのではないかと心配です。

 

 

 3. 年5日の年次有給休暇の取得を、企業に義務づける

 

 現在、有給休暇の法廷付与日数は、以下のとおりです。

   

 

勤続年数

6か月

16か月

26か月

36か月

46か月

56か月

66か月

年次有給休暇付与日数

10

11

12

14

16

18

20

 

 

 有給休暇は、労働者の健康で文化的生活に資するために、労働者に対し、休日のほかに毎年一定日数の休暇を有給で保障する制度です。しかし、年間の有給休暇の取得率が低いこと。その原因は、労働者が有給休暇の申し出をしにくいことにありました。そこで、使用者側から、労働者の希望を聞いて年間5日は有給休暇を取ってもらうことになりました。

 

 

 

 4 月60時間をこえる残業は、割増賃金を引き上げる【資料10

 

 

  割増賃金は、以下の2つの趣旨で支払うことになっています。

 

   ① 使用者に割増賃金を支払わせることによって時間外労働等を抑制しする

 

   ② 通常の労働時間又は労働日に付加された特別な労働なのでそれに対しては一定の補償をさせる。

    しかし、それでも長時間労働はなくなりません。そこで、月60時間をこえる場合には割増賃金を1.5倍支払うことになっています。これは、特に長い長時間労働を抑制するためです。現段階では、中小企業には適用しないことになっています。しかし、2023年からこの制限はなくなります。

  どんな使用者も月60時間を超えた場合には1.5倍の割増賃金を支払わなければなりません。

 

5 働き方改革

    働き方改革のもっとも大きな目的は長時間労働の抑制です。このなかに「高度プロフェッショナル制度」が含まれています。このため、過労死を考える家族の会は。強く反対していました。

    時間外労働の抑制は十分とはいえません。

    それでも、法律で時間外労働の上限が定められ、これまでより規制が厳しくなったことは。確かです。各使用者がこれをふまえて、長時間労働をなくすための工夫をしていくことを期待したいと思います。

 

 

過労死 その仕事、命より大切ですか

過労死 その仕事、命より大切ですか 牧内昇平

 朝日新聞記者の牧内昇平さんの著書。過労死、その仕事、命より大切ですか を読みました。

 すこしだけ、協力をさせていただいたので著者の牧内さんから献本していただきました。感謝です。

 

 お礼をかねて、本の紹介をします。

 

 この本では11の事例が紹介されています。

 

 それぞれの事例は、新聞記者である牧内さんの視点から紹介されています。

 

 弁護士の視点では気がつかない、遺族の言葉。気持ち。過労死,過労自殺を生み出す社会の問題点を具体的に指摘しています。

 

 コラムや、事例の紹介の間に、過労死、過労自殺の労災の仕組みなどにも触れ、全体として過労死の問題を網羅的に知ることもできます。過労死の問題にとどまらず、固定残業代など労働一般に関する問題にも触れられています。

 

 新聞記者の書いた文書ですので分かりやすい。

 しかも、NHK記者の過労死の記事などは、自分の労働にも引きつけて感想ものべられていて親しみやすい内容にもなっています。

 パワハラの加害者や、過労死を興した企業に対する取材もしており、その内容も紹介するなど踏み込んだ内容にもなっています。

 

 とりあげられた事例の中には、労災と認められなかった事案も含まれていました。

 行政訴訟の1審で勝訴しながら、高裁で逆転敗訴し、最高裁でも認められず、損害賠償請求訴訟でも敗訴だったという事例。本当に、苦労されたし、無念だったと思います。

 労災と認定される事例は紹介されますが、労災と認められない残念な事例は、なかなか紹介されません。しかし、認められない事例こそ、過労死問題の問題点を示しているといえます。このような、事件報道では取り上げられることが少ない事例を取り上げて紹介していることも意義を感じます。

 

 また、和解した事例もとりあげられています。和解の事案は、判決文が作成されないので、判例集などにも載らず、事案の経過が知られない場合もあります。そういう意味で和解の内容やそこに至る経過を取材し、本になるのは、記録としても貴重なものといえます。

 

 個人的には、岐阜県庁の事件では、いつもご遺族を励まし、支え、証拠を集めて戦ってくださった岐阜県職員組合の内記淳司さんが紹介されていることが嬉しかったです。私も大変お世話になりました。

 

 この本を作成するためには膨大な取材が必要だったでしょう。家族は様々な事情で、皆が取材に応じられるわけではありません。大変な苦労があったと思います。

 

 ぜひ、これを読んで過労死、過労自殺の問題を知ってもらいたいと思います。

 

 ご自身が、過労で病気したり、ご家族が過労で死亡したりした場合にも、参考になることがたくさん載っています。そういう方の元にも届くといいと思います。

 

 多くの人に手に取ってもらいたい本です。

 

 

岐阜 過労死をなくす会

 2019年3月16日土曜日、岐阜市内で、過労死をなくす会の設立総会・記念行事が行われました。

 この会は、岐阜市役所で2007年11月に自死をした伊藤哲さんの配偶者、伊藤左紀子さんが公務災害訴訟において、公務災害認定をする勝訴判決を得た後、伊藤左紀子さんを中心に検討してきた会です。

 

 会は、①過労死等防止のための各種啓発活動②過労死遺族の支援・精神的ケア③自治体を中心とした労働時間・ハラスメント等の実態調査などを考えています。

 

 会は、弁護士、医師、労働組合役員、経営者などにも参加を呼び掛けるだけでなく、市会議員、県会議員など地方議員にも参加を呼び掛け、幅広い人と一緒に過労死をなくす運動を目指しています。

 

 

 

 当日は、私も基調報告として、伊藤さんの裁判の経過、支援する会が、遺族を励まし、世論を作るとともに、運動の中で情報を集め、議論することで説得的な裁判の主張をすることにも大きく影響したことを報告しました。

 

 過労死をなくす会は、過労死をなくすこと、遺族の支援もするとしています。岐阜にこのような会ができたことは本当によいことです。

 会の準備段階で、自治体にアンケートした結果によれば、2017年1年間で、岐阜県の市町村で、脳・心臓疾患で死亡した人は4人、自死が4人いたそうです。

 

 これらの中には公務災害の可能性があるものもあるかも知れません。しかし、公務災害の請求をした方はおられないようです。

 

 もし、公務災害であるのに、請求を躊躇しているという事情があるのであれば、相談して欲しいと思います。そのために、過労死をなくす会 の存在が、きっかけになってもらうといいと考えています。

 

 死亡したかたの公務災害、労災の認定を求めたり、企業や行政の責任追及をしているだけでは過労死はなくなりません。過労死を予防するためにもこの会が大きな役割を果たすことを期待したいと思います。

 

 過労死をなくす会が、過労死の問題でこまっている人の役に立つことを祈念しています。

2019年明けましておめでとうございます

2019年1月1日 イノシシ 謹賀新年 神宮西駅

 2019年明けましておめでとうございます。

 昨年、過労死弁護団全国連絡会議は満30年でした。

 過労死、過労自殺の認定基準について、意見書を作成して厚生労働省に提出しました。

 

 いまも過労死、過労自殺の事件が多く報道されています。

 過労死等防止対策推進法にもとづく過労死防止シンポや、過労死啓発授業で、過労死のことをお話しさせていただく機会を持つことができました。過労死の事件がまだまだなくならず、また、厳しい労働実態にある職場があることをききます。

 まだまだ足りませんが、地道に積み重ねていきたいと思います。

 

 昨年は問題がありながら働き方改革関連法案が通過しました。

 労働時間の上限が定められました。実際にこの法律が守られるように期待します。

 

 今年判決が予定されている事件があります。また、今年がいよいよ山場の裁判事件があります。

 一つ一つが良い結果に結びつくように、そして、それが過労死防止に結びつくように、尽力していきたいと考えております。

 

 本年もどうぞよろしくお願いします。

 

2018 過労死等防止対策推進シンポジウム 愛知会場

 今日は、過労死等防止対策推進シンポジウム愛知会場が開催されました。

 

 厚生労働省主催。

 

 内容は、労働局の挨拶、猿田正機中京大学名誉教授の講演、能村盛隆大和ハウス工業株式会社 経営管理本部 執行役員人事部長 のお話し。

 

 そして、田巻紘子弁護士、猿田教授、能村さんのパネルディスカッション。

 

 おわりに、過労死遺族の吉田さんのお話。

 

 閉会の挨拶は私がさせていただきました。

 

 企画から参加しましたが、良い内容になったと思います。

  会場の質問を質問用紙で集めたのですが、たくさんの質問がありました。長時間労働を見直さなければならない。その総論は賛成でも、現場は簡単にいかないと悩んでいます。今回は、スウェーデンでは、そして、大和ハウスでは、どう考えて取り組んでいるか。それをパネルディスカンションで取り上げてもらい話してもらいました。日本では難しいのではないか、大企業の取組は中小企業では難しいのではないか、具体的な質問がありました。

 質問を募集したために、参加した皆さんも、聞きたいことが聞けたシンポになったのではないかと思っています。

 

 そして、労働時間短縮。難しいことですが、スウェーデンでも、日本でも、発想を転換すれば、そして、本気で取り組めば実現できる!というメッセージになったと思います。

 

 さらに、最後に遺族のお話をお聞きし、難しくても、命を守るためにはやらなければならないことだと確認できたと思います。

 

 わたしは、岐阜と愛知のシンポに出席しました。

 このようなシンポが全国の都道府県で行われています。

 

 当日はNHKのニュースで報道されました。一分半程度のニュースですが、多くのこの地域の人が見てくれたと思います。過労死は防止しなければならない。そのようなシンポが、この啓発月間の11月に日本のあちことでいわれていること。チラシ、報道でみんなが認識すること。これらの啓発活動が過労死等防止の一歩になればと思います。

 

 

 公害

 薬害

 交通事故

 自殺

 生活習慣病

 ガン

 

 そのほか、いろんな病気で若くして命を失うような悲しい問題があります。

 

 日本中でその一つ一つの問題について、啓発し、責任を追及し、取り組んで少なくすることができています。

 

 過労死等もきっと無くすことができると信じたいです。

 このような一つ一つの集会が、過労死等をなくすために力になっていくと信じたいです。

過労死等防止対策推進シンポジウム 岐阜会場 開催

過労死等防止対策推進シンポジウム岐阜会場2018

 2018年11月14日 過労死等防止対策推進シンポジウム 岐阜会場が開催されました。

 

 内容はプログラムにあるとおりです。

 私も労働局のお話しのあと、安全配慮義務違反についてお話をしました。

弁護士岩井羊一 過労死弁護団全国連絡会議

   このあと三承工業株式会社さんの「社員が輝く仕組みづくり」と題した報告がありました。

 社員が輝く仕組みを作ったら働きやすくなり、会社の業績もアップ。とても参考になる発表でした。

 

 そして、天理大学の近藤雄二先生の「過労(自)死を産み出さない仕組みと働き方を求めて」という講演。

 労働局、弁護士、企業、医師それぞれの立場で、過労氏を防止するための話を聞くことができました。

 そして、過労死遺族のお話。

 

 2011年に夫を亡くされた女性。そのとき小学生だった子どもが中学生に。そのとき小さかった子どもは小学校5年生に。

 当たり前の家族が、ある日突然夫、お父さんを失う悲しみ。

 裁判で労災は認められたけれども、亡くなった人は帰ってこない。

 そのことを改めて心に留めました。

 

 参加した方が、過労死があってはいけない。そう思って会社に、自宅に帰っていただけたら幸いです。

 

 当日、中日新聞の、新聞切り抜き作品コンクールで「働き方改革」をテーマにし賞をとられた中学生、高校生の2作品が展示されました。

 中日新聞 切り抜き作品コンクール受賞作品一覧

 それぞれ新聞記事を上手く整理し、自分の考えをしっかり述べているのが印象的でした。

翌日の中日新聞岐阜県版にも記事が掲載されました。

労働判例の遊筆に掲載されました 

 労働判例を掲載している月2回発行の「労働判例」という雑誌。

 私も定期購読しています。

 このたび労働判例の2018年11月1日号 1185号の巻頭の「遊筆」の欄に、私のコメントが掲載されました。「過労死等の認定基準の改定を」と題し、まさに過労死等の認定基準の改定をもとめる内容のコメントです。

 11月は、過労死等防止対策推進法に基づく過労死防止月間。その月間を踏まえてのコメント、ということと、今年過労死弁護団全国連絡会議発足から30周年。そのような節目のときに「労働判例」に過労死弁護団の立場からコメントさせていただきした。

5周年

過労死等防止対策シンポジウム 愛知会場
2018年の過労死等防止対策推進シンポジウム

 岩井羊一法律事務所は、2013年(平成25年)10月1日に開設しました。

 今年満5周年を迎えました。

 

 この間、過労死事件、すなわち過労死等(過労死、過労自殺、脳・心臓疾患、精神疾患)で亡くなったり、仕事ができなくなったりした方の救済することを中心に弁護士活動をしてきました。

  

 事務所を設立してからの5年間、過労死を巡り大きな動きがありました。

 2014年6月には、過労死等防止対策推進法が成立し11月に施行されました。

 11月の啓発シンポ。そして、学校への啓発事業等、過労死弁護団が対外的にも役割を持つようになりました。今年の11月は4回目です。

 「過労死」が法律で定義され、国がその言葉を使うようになりました。

 

 2016年には、電通の女性の新入社員の自殺事件が大きな社会問題として注目を浴びました。これを契機に働き方改革が叫ばれるようになりました。労災認定、会社の謝罪にとどまらず、刑事事件にも発展しました。

 2018年、大変不十分な働き方改革関連の法が成立しました。

 

 2018年、過労死弁護団全国連絡会議は丸30周年。

 過労死等の認定基準について改定の意見書を作成し、厚生労働省に提出しました。

  

 ここからは個人的なことを少し紹介します。この間、いくつか勝訴判決を得ました。すでにホームページで紹介していますが、以下がこの間に得た判決です。

 2014年1月25日、名古屋地方裁判所で過労自殺事件の損害賠償請求事件で勝訴。

 2016年4月21日、名古屋高裁でバスの運転士の自殺事件で逆転勝訴。

 2015年11月18日、名古屋地裁で、うつ病の悪化に業務起因性を認める自殺事件での勝訴判決。   

 2016年12月1日に高裁もそれを維持。

 2017年2月23日、名古屋高裁でトヨタ系列会社の過労死事件で逆転勝訴。

 2016年12月22日、岐阜地裁で、岐阜市職員の自殺事件の公務災害を認める勝訴判決。2017年7月6日これを維持する判決。

 

 もちろん、これらの判決はいずれも弁護団事件で、他の弁護団の活動によるところも多いのです。いずれも家族をなくした不幸な事件でしたが、仕事が原因であることが認められました。

 

 この間、公益法人愛知県労働協会の労働法講座で講師をしたり、講演会を担当させていただく機会もいただきました。

 

 精神障害の労災認定件数は、毎年増加傾向にあります。脳・心臓疾患の労災認定件数も横ばいで減少傾向にあるとはいえません。

 

 途中で請求を断念した事件もありました。認められなかった事件もありました。

そう言った事件を含めて、多くの遺族が勇気を出して立ち上がったことが、企業に対し、責任を認めさせることにつながり、過労死等の防止につながっています。

 

 それでも過労死等が増加傾向にあるのは残念です。

 つい先日も三菱電機では、「過去5年間に長時間労働などが原因で精神障害や脳疾患を起こし、2014~2017年に労災認定された男性社員5人のうち、3人に『裁量労働制』が適用され、1人は過労自殺していたことがわかった。」との報道がありました。

 

 これからも、過労死等の問題を中心に、過労死等の被害者の救済と過労死等の予防をするために活動していきます。

 

 

過労死弁護団全国連絡会議第31回総会

 2018年9月28日から29日、過労死弁護団全国連絡会議第31回総会が、愛知県犬山市の名鉄犬山ホテルで開催された。

 今年は、過労死弁護団全国連絡会議が結成され30年。

 記念の年に、ここ愛知県で総会を開くことができたことに感謝したい。

 今年はホスト役として裏方もおこなった。当地の若手弁護士にも手伝っていただいた。

 

 総会では、各地の過労死等に関する裁判の経験交流。過労死防止の啓発活動の交流。情報交換。

 全国での様々な工夫を知って勉強になった。

 

 活発な議論をし、夜は交流会。

 過労死をなくすための活動に力を尽くすこと。決意を新たにした。

 

 中日新聞県内版に報道された。

 

2018年9月29日 中日新聞 愛知県県内版 過労死弁護団連絡会議の総会
2018年9月29日朝刊中日新聞愛知県県内版

2018過労死等防止対策推進シンポジウム

毎年11月は過労死等防止月間です。

厚生労働省主催で過労死等防止対策推進シンポジウムが全国で行われます。

愛知会場は2018年11月20日火曜日午後です。

 

場所は名古屋国際センター別棟ホール

名古屋駅から地下道を歩いて行くことできます。

地下鉄桜通線で国際センター駅からならば直結しています。雨でも濡れずに会場まで行けるということ。

 

過労死等防止対策推進シンポジウム
2018年過労死等防止対策推進シンポジウムチラシ

 今年は長時間労働の防止を真剣に議論します。

 特に、会社の人事担当、労務管理するかた、社長さん、管理職の方に聞いてもらいたい内容です。

 申し込みや下記のwebから。

脳・心臓疾患及び精神障害のうち裁量労働制対象者に係る決定及び支給決定件数 (平成26年度~平成29年度)

 厚生労働省から、平成26年度から平成29年度の脳・心臓疾患及び精神障害のうち裁量労働制対象者に係る決定及び支給決定件数(平成26年度~平成29年度)が発表されている。

 

 平成26年から平成29年の認定件数の変化を見ると

 

 脳心臓疾患では7件、3件、1件、4件となっている。

 うち死亡は  1件、3件、0件、2件となっている。

 

 精神疾患では、7件、8件、1件、10件となっている。

 うち自殺、自殺未遂は1件、2件、0件、5件となっている。

 

 平成29年度は、裁量労働制として働いていたが法定件数を満たしていない事業も含めて集計したとのことである。

 

 認定件数は多くても全国10件程度であり、傾向はこれだけではわからない。

 

 ただ、平成29年度の認定件数が増加し、自殺者数も増えていることは気になる。 

 これが、今後同じ傾向で進むとしたら、裁量労働制が濫用の危険があるということの証拠になる可能性もある。

 

 今後もこの推移を見ていく必要がある。

 

 ※裁量労働制とは→厚生労働省のホームページ 裁量労働制の概要

2017年度の過労死等の状況

 厚生労働省が、2017年度の過労死等の労災認定の件数を発表しました。

 

 「過労死等」とは、過労死等防止対策推進法第2条において、「業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害をいう。」と定義されているものをさしています。  

 

厚生労働省は次のように発表しています。

 

 脳・心臓疾患について

(1)請求件数は840件で、前年度比15件の増となった。

(2)支給決定件数は253件で前年度比7件の減となり、うち死亡件数は前年度比15件減の92件であった。    

 

 

 ちなみに請求件数が多かったのは2006年の938件  

 認定件数が多かったのは2007年の392件  

 死亡の認定件数が多かったのは2002年の160件

 

 です。

 

 これと比較すると今年は、若干減っているように思えます。    

 ただ、ここ3年請求件数は増え続け、認定件数も若干減っている程度です。

 昨年は死亡件数が100人を下回りましたが、それでも92件が過労死と認定されています。

 

厚生労働省は   

 

 精神障害について

(1)請求件数は1,732件で前年度比146件の増となり、うち未遂を含む自殺件数は前年度比23件増の221件であった。

(2)支給決定件数は506件で前年度比8件の増となり、うち未遂を含む自殺の件数は前年度比14件増の98件であった。 

 

と発表しています。

 

 請求件数 過去最高

 認定件数 過去最高

 自殺の件数 2014年の99件についで2番目

 

 こちらは深刻な状況です。

 過労死等防止法ができ

 電通の事件等で問題が指摘され、

 このような中で、労災認定件数が増えている。請求件数も増えている。自殺者も多い。

 異常な事態です。

 

 発表には職種別、年齢別など興味深い分析もあります。

 

 より一層過労死等防止のための活動に取り組まなければと考えさせられました。

 

過労死等 請求件数 認定件数 死亡 自殺
過労死等の労災請求件数、認定件数、死亡県すんの推移

 

 上記は、厚生労働省のホームページで発表されている過労死等の請求件数、認定件数、そのうちの死亡件数を私の方で打ち込んでまとめたものです。

 

 精神障害についての労災の認定請求の数数、認定件数が急速に増えている様子が分かります。

 

 死亡件数は、精神障害が徐々に増えています。脳・心臓疾患は少し減っていて、今は脳・心臓疾患と精神障害がおなじくらいになっています。

 

 精神障害の「勢い」を止めないと大変です。

 

2018年 過労死110番おこないます

森 自然

  2018年も過労死弁護団全国連絡会議などで構成する過労死110番全国ネットが過労110番をおこないます。この過労死110番は、1988年に始まったそうですから、今年はちょうど30年。31回目の過労死110番です。  

  

  開催は2018年6月16日土曜日  

 

  愛知県の電話番号は 0120-590-560 です。  

 

  通話は無料携帯電話からでも繋がります。  

 

  当日の10時から15時までです。電話で相談できます。相談料も無料です。 

 

  電話で相談にのるのは、過労死事件の経験のある弁護士です。 

  過労死110番ネットワークのホームページもリニューアルしました。

 

 

  家族が亡くなった。過労死ではないか? どうしたらいい教えてほしい。

 

  自分が過労気味だ。会社にどう言ったらいい?  

 

  家族が毎回夜遅く帰ってくる。心配だ。どうしたらいい。

 

  相談にのります。

 

  愛知県以外の人は過労死110番全国ネットワークのホームページで近くの相談できる電話を見てください。

 

  

過労死弁護団、認定基準の改定意見書提出

 今日、過労死弁護団全国連絡会議は、厚生労働省に脳・心臓疾患の認定基準心理的負荷による精神障害の認定基準を改定すべきとの改定意見書を提出しました。

 

 脳・心臓疾患の認定基準では発症前1か月100時間、発症前2~6か月で1か月平均80時間をこえる時間外労働がなければ、業務上と認定されません。

 過労死弁護団は、1か月65時間の時間外労働で業務起因性が認められるべきだとの意見を述べました。

 

 精神障害の場合にも同様に1か月65時間の時間外労働があった場合には業務起因性が認められるべきだと意見を述べました。

 

 また、パワーハラスメントの内容を明確にし、これまでより認定しやすくするべきだと主張しています。

 

 脳・心臓疾患の認定基準は2001年にできてから改正されていません。

 精神障害の認定基準も2011年にできてから改正されていません。

 裁判例や文献もあります。

 厚生労働省にはしっかり検討をしてもらいたいと思います。

 

 私は、精神障害の認定基準についてとりまとめを行い、厚生労働省で説明をし、記者会見でも説明させていただきました。

 

 日経弁護士ドットコムで報道されています。

 

改めて高プロに反対

時計 サラリーマン

 5月17日、2件の過労死のニュースが報道された。

 

 テレビ朝日のプロデューサーが2015年2月に心不全で死亡していたというもの。三田労基署が同年に労災認定していたという。新聞報道によれば、2013年7月に狭心症を発症。発症前の時間外労働は70時間から130時間だったとのこと。「管理監督者」に当たるとして、残業代は支払われていなかったようである。

  

 もう一件は、IT企業に勤務する28歳の男性。2017年8月、くも膜下出血で死亡し、2018年4月、池袋労基署が労災認定した。裁量労働制であったとのことである。6月には、午前1時20分にSNSに「うおー!やっとしごとおわったー!!社会人になってから36時間ぶっ通しで働いたのはじめてやがな。」と投稿していたとのこと。

 28歳の若さでくも膜下出血など通常は考えにくい。相当厳しい業務であったことが伺える。

 

 2人とも、(合法であったかはともかく)時間外労働について労働時間に応じて賃金が支払われる制度になっていない。そのような制度の下で長時間労働による過労死がおこった。

 

 私も、固定残業、管理監督者などを理由に、実際に残業代が払われていない労働者が過労死、過労自殺した事案を担当した。

 時間外労働の割増賃金は、時間に応じて割増で時間外労働に対する賃金を支払うことで、使用者に残業を抑制させ、従業員の健康を守るところに制度の理由がある。この制度を緩めれば、長時間労働が行われる可能性が高まる。

 

 現在でも、固定残業代を払っているとして、実際には固定残業代を上回る時間外労働をしていても時間外労働の割増賃金を支払っていない事業場もある。

 労働基準法にいう管理監督者にあたらないのに、管理監督者であることをりゆうに時間外労働の割増賃金を支払っていない事業場もある。

 

 悪用されないような制度設計をすることも必要だ。

 

 現在、国会で審議されている「高度プロフェッショナル制度」は、「管理監督者」(そう言われている人のなかには実際は違法な運用の場合もある)、裁量労働制よりも、さらに時間外労働の規制が緩い。といううより、時間外労働の規制が及ばない。

 

 大切な命を危険にさらす高プロには反対だ。