過労死110番 実施できました

 今日は、全国過労死110番を実施しました。

 愛知では、13件の相談がありました。

 

 感想です。

 

 こんなに世の中で、長時間労働が問題になっている、と思っていましたが、長時間労働は、まだまだたくさんあるのだなあ、と思いました。

 

 また、労働基準法が十分に守られていない状況にあることも実感しました。

 労働契約法も十分理解されていない状況にあることも実感しました。

 

 そして、辛いけど、訴えられない、状況にある人がいることも実感しました。

 

 今回、相談しくても、情報に接することができなかった人もいたと思います。

 

 一方で、今裁判で戦っている人についてのマスコミの報道によって、勇気づけられて、自分も立ち上がろうともがいている人がいることもわかりました。

 

 苦しんでいる人、悩んでいる人、今日の電話相談は終わりました。でも面談相談は、いつでも受け付けています。

 

 

過労死110番実施します

2017年6月17日土曜日           10:00~15:00

過労死110番

0120-184-964


弁護士が電話で相談にのります

当日は、過労死の事件の経験のある弁護士が電話で相談にのります。

過労死・過労自殺、働き過ぎの相談にものります。

過労死、過労自殺された方の遺族の補償についての相談を受け付けます。

ご自身、ご家族の過重労働の相談も受け付けます。

相談は無料です。通話料も無料です。携帯からもOK

相談料はかかりません。また、フリーダイヤルですから通話料も無料。携帯電話からもかけることができます。その場合も無料です。


専門家「基準の見直しを」

 本日朝日新聞名古屋版に「労災却下6割超す」「専門家「基準の見直しを」」という表題で精神疾患の労災認定基準についての記事が掲載されました。

 残念ながら名古屋版であり、地域限定ですが、大きな記事になりました。

 

 私のコメントも以下のように掲載されています。

「国の基準の具体例に当てはまらないと、認定されずに切り捨てられる。ストレスには色々あり、対人関係に強いが長時間労働には弱いなど様々だ。より柔軟な評価方法に見直すべきだ。」

 

 認定基準は平成23年に改定されましたが、まだまだ不合理なところがたくさんあります。しかし、平成11年の判断指針よりも分かりやすく、また幅広く改訂されたせいか、裁判所でも、この基準をそのままあてはめるような判決があります。

 

 しかし、人間の心にも個性があり、ある人のには辛いストレスが、他の人にはそれほどではないことはいくらでもあります。それを、切り捨ててしまっていいのでしょうか。

 

 最もこれを乗り越えるには、医学的な根拠や世論の力がいります。

 

 今日は、NHKあさイチでも「大丈夫?家族から見た“働き方”」と題して働き方について議論をしていました。

 過労死弁護団の川人博弁護士と全国過労死を考える家族の会から寺西笑子さんも出演しました。

 新聞やテレビでもこのままではいけないという意識が高まっています。

 救済されていない事例もたくさんあることを知ってもらい、改善にむけて動きがあるといいと期待しています。

 

 

勝利報告集会

新美南吉 安城市
安城市のオブジェ

 5月28日、安城市内で、担当している事件の報告集会がありました。

 過労死事件で、名古屋高等裁判所で1審を取消、労災と認められた事案でした。

 1審敗訴のあとの逆転勝訴でした。

 原告本人、ご家族、亡くなったご本人のご両親。

 亡くなったご本人は帰ってきませんが、無くなった原因が労働にあると裁判所に認定してもらったことは本当に良かったです。

 

 集会を通して、ご本人はどういう状況だったのか。なぜ、過労死だと思ったのか。どのような証拠があったのか。

 なぜ、1審は敗訴だったのか。どうして高裁では勝訴だったのか。振り返って話をしました。

 

 もともと水野幹男弁護士が担当していた事案で、私も裁判から応援に入りました。

 原告の依頼に応えて良い結果を出し、感謝してもらえる。弁護士をやって良かったと思える瞬間でした。

 

 多くの方が支援する会を作って支援してくれました。多くの人と喜び合えるのもうれしいものです。

 

季刊労働者の権利に掲載

 日本労働弁護団が発行している季刊労働者の権利。この最新号に、原稿が掲載されました。取り上げられたのは名古屋高裁平成28年12月1日判決。判例は裁判所ホームページで閲覧できます。左の裁判の日付で判決のページに行けます。

 

 事案の概要は裁判所が下記にまとめたとおり。

 

 夫が自殺したのは過重な業務に起因するものであるとしてした労働者災害補償保険法による遺族補償給付及び葬祭料の支給請求に対し労働基準監督署長がした不支給処分の取消請求につき,前記夫がうつ病を発症したことに業務起因性は認められないが,その後の同人の業務による心理的負荷と,同人のうつ病の増悪により自殺を図り死亡したこととの間に相当因果関係を認めるのが相当であるとして,前記取消請求を認容した事例(なお,参考として原審判決を別紙1として添付した。)。

 

 精神疾患に関する老妻の認定基準では、発症したうつ病が増悪したとしても「特別な出来事」がなければ業務起因性を認めてないことになっています。

 

 

「発病後の悪化」の取り扱いについて 発病後 悪化」 取り扱 いについて
 業務以外の心理的負荷により発病して治療が必要な状態にある精神障害が悪化した場合 は、悪化する前に業務による心理的負荷があっても、直ちにそれが悪化の原因であるとは 判断できません。 ただし、別表1の「特別な出来事」に該当する出来事があり、その後おおむね6か月以 内に精神障害が自然経過を超えて著しく悪化したと医学的に認められる場合に限り、その 「特別な出来事」による心理的負荷が悪化の原因と推認し 原則として 悪化した部分に 「特別な出来事」による心理的負荷が悪化の原因と推認し、原則として、悪化した部分に ついては労災補償の対象となります。
(厚生労働省のパンフレットより)

 

 この「特別な出来事」とは以下の内容になっています。

心理的負荷が極度のもの

・生死にかかわる、極度の苦痛を伴う、又は永久労働不能となる後遺障害を残す業務上の病気やケガをした  (業務上の傷病により6か月を超えて療養中に症状が急変し極度の苦痛を伴った場合を含む)

・業務に関連し、他人を死亡させ、又は生死にかかわる重大なケガを負わせた(故意によるものを除く)

・強姦や、本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為などのセクシュアルハラスメントを受けた

・その他、上記に準ずる程度の心理的負荷が極度と認められるもの

極度の長時間労働

・発病直前の1か月におおむね160時間を超えるような、又はこれに満たない期間にこれと同程度の(例えば3週間に おおむね120時間以上の)時間外労働を行った(休憩時間は少ないが手待時間が多い場合等、労働密度が特に低い 場合を除く)

 

 判決は一定の場合には、「特別な出来事」がなくても業務起因性を認める事ができるとした画期的な判決です。

 

 控訴審の審理の経過、提出した証拠内容なども詳しく書きました。参考してもらえたらと考えています。

 

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<理念はいま 憲法施行70年>(5)過労死 にコメントが掲載されました。

 5月7日の中日新聞朝刊の<理念はいま 憲法施行70年>に、当職のコメントが掲載されました。

 掲載されたコメントは、以下の通りです。

 

 「労働問題に詳しい岩井羊一弁護士は規制自体は評価しながらも、過労死ラインと同じ上限設定を「死ぬかもしれない時間まで働かせることができる」と批判する。」

 

 記事の内容は、2011年9月に亡くなったトヨタ自動車のグループ会社で、救急車の防振ベッドの組み立てる部門のリーダーだった方のお父さんの思いを綴った内容です。

 事件は、水野幹男弁護士と当職が担当しました。詳細はブログで述べたとおりです。

 

 記事は、「憲法25条で『健康で文化的な最低限度の生活を営む権利』(生存権)を保障する。過労死ラインまで残業を許しても生存権は守られるのか。」と問いかけています。

 

 上記コメントは、若干舌足らずであり、規制がなされないとしても死ぬかもしれない時間まで働かせて、実際に人が亡くなれば、企業は民事責任は問われます。現在でも違法です。ただ、限られた紙面のなかで、上手く趣旨を行かしてもらうためにはこのような表現になるかと思います。

 

 少しでも多くの方がこの記事を読んで、過労死の悲劇を考えて欲しいと思います。

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労災の請求件数・認定件数

 過労死、過労自殺、過労による脳・心臓疾患、過労による精神疾患、これらを労災として請求されている件数、労災として認定されている件数について、毎年厚生労働省が公表しています。毎年6月に公表されているので、現在わかる最も新しい統計はのは2015年、平成27年の分です。

 

 全国で脳・心臓疾患の請求件数は795 件で、前年度比32 件の増。そのうち死亡についての請求件数は283件。支給決定件数は251件で前年度比26件の減となり、うち死亡件数も 前年度比25 件減の96件。

 また、全国で精神疾患の請求件数は 1,515 件で、前年度比59 件の増となり、うち未遂を含む自殺件数は前年度比14件減の199件。支給決定件数は 472 件で前年度比25 件の減となり、うち未遂を含む自殺の件数も前年度比6件減の93件。

 

 認定件数が少し減っています。これがいい傾向なのかどうかはわかりません。過労死等の労災の認定基準は厳しく、いろいろな事情で労災請求が遅かったり、を断念している人もいます。請求から認定までに時間がかかります。すこし長い目で見ていかないと増えた、減ったと判断することはできないと思います。

 

 厚生労働省は、都道府県毎の労災請求数、認定数を公表しています。

 私の住んでいる愛知県はどうでしょうか。

  

 脳・心臓疾患    請求件数    42件  うち死亡17件

           認定件数    20件  うち死亡10件

 

 精神疾患      請求件数    67件  うち自殺10件

           認定件数    10件  うち自殺2件

 

 脳・心臓疾患死の認定件数は全国とくらべると多く、自殺の認定件数が少ないのが特徴です。

 

 ちなみに、全国の平成27年の自殺者数は  24025人

 愛知県の自殺者数は            1301人 

  (出典:内閣府自殺対策推進室 警察庁生活安全局生活安全企画課 )

 

 また、日本の人口は、平成29年4月1日現在(概算値)】<総人口> 1億2679万人

 愛知県の平成29年3月1日現在の愛知県の人口(推計)は、7,509,709人

 

 

 人口から考えると、愛知県は、日本全体の5%、1/20 です。

  もっとも、これだけ認定の母数が少ないと、多い少ないと論評することはできないのかもしれません。

 自殺者が年間3万人をきって、減ってきているのはよいことですが、それでも愛知県下でも1301人もの人が自殺でなくなっています。

 

 警察の調べでは愛知県の自殺者のうち167名は、勤務問題だそうです。

 そのうちの10人しか労災請求せず、認められたのは2名しかないというのは少なすぎるのではないでしょうか。

 

(自殺した年、労災認定請求した年、認定、不支給認定された日はずれていますから、上記表現は正確ではないことをお許しください。)

 

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長時間労働をなくさない時間外労働の上限規制に反対する

. 4月6日、金山北口で、時間外労働の上限規制に反対する街宣活動をしました。

 

 愛労連、愛知働く者のいのちと健康を守るセンター、東海労働弁護団、自由法曹団愛知支部など、当時のさまざなま労働団体と弁護士の団体が共同して行いました。

 

 安倍内閣が「働き方改革」の一環として導入をめざしている時間外労働時間の上限規制をめぐって、「月45時間」「年間360時間」を原則としつつ、繁忙期には「月100時間未満」かつ「2ヶ月ないし6か月平均80時間」とし、月45時間を超える時間外労働は6か月までとすることで、政労使の合意が成立したとの報道がなされました。

 

 労働者の心身を蝕むような長時間労働を根絶するためには、労働基準法を改正し、36協定でも超えることができない時間外労働の上限を定め、違反企業に罰則を科すことが必要です。

 

 しかしながら、報道された案が容認しようとしている「月100時間未満」「平均80時間」などという例外は、厚生労働省が定めた『脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準』(平成13年12月12日基発第1063号)「過重負荷の有無の判断」に記載されている時間外労働の時間(1か月間におおむね100時間又は2か月間ないし6か月間にわたって1か月当たりおおむね80時間)に該当するものです。

 

 このような法規制は、かえって、このようなもし死んだら過労死と認定されるような長時間労働をさせても許されるのだと理解されてしまいます。

 

(誤解がないように指摘しておきますが、36協定がなくなるわけではありません。また、過労死がおきたときに、法律を守っていたとして許されてしまうわけではありません。労災認定はされる可能性が十分にありますし、民事上の安全配慮義務違反の責任が問われることも今までどおりです。)

 

 名古屋高等裁判所平成29年2月23日判決では、虚血性心疾患で死亡した労働者について、「発症前1か月間の時間外労働時間は少なくとも85時間48分であり、この時間外労働時間数だけでも、脳・心臓疾患に対する影響が発現する程度の過重な労働負荷であるということができる。」と判示し、認定基準の1か月の時間外労働が100時間未満の場合でも脳・心臓疾患を発症させる業務の過重性があったことを認めています。

 

 「月100時間未満」「平均80時間」の時間外労働の容認は、過労死をなくす、という観点からは、無意味なばかりか、過労死を助長しかねない規制です。

 

 これが弁護団、家族が反対している理由です。

 上限ができるからいいじゃないか、とは言い切れないのです。

 

 

 ちなみに国際人権規約の社会権規約には次のような条項があります。

 

 第7条 この規約の締約国は、すべての者が公正かつ良好な労働条件を享受する権利を有することを認める。この労働条件は、特に次のものを確保する労働条件とする。

(a) すべての労働者に最小限度次のものを与える報酬

 i.公正な資金及びいかなる差別もない同一価値の労働についての同一報酬。特に、女子については、同一の労働についての同一報酬とともに男子が享受する労働条件に劣らない労働条件が保障されること。

 ii.労働者及びその家族のこの規約に適合する相応な生活

(b) 安全かつ健康的な作業条件

(c) 先任及び能力以外のいかなる事由も考慮されることなく、すべての者がその雇用関係においてより高い過当な地位に昇進する均等な機会

(d) 休息、余暇、労働時間の合理的な制限及び定期的な有給休暇並びに公の休日についての報酬 

 

 時間外労働の上限の規制が36協定しかなかったり、できても100時間未満ということは、いまだ国際人権規約にも合致していないというべきでしょう。

 

 

 また過重労働対策基本法を策定しようと宣言をした2010年。過労死弁護団全国連絡会議は次のような指摘をしています。

 

1 日本国憲法と労働基準法等の理念 

 

 日本国憲法は個人の尊厳(13条)、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利(25条)とともに、基本的人権として「勤労の権利」を保障し(27条1項)、「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準」を法律で定めるとしています(同2項)。 そして、これを受けて労基法は、「労働者が人たるに値する生活を営むための必要を満たすべき」最低基準(1条)として、週40時間・1日8時間労働の原則(32条)、休憩・休日の付与(34条1項、35条1項)などを定めています。

 

2 違法な過重労働の蔓延 

 

 ところが、現在のわが国の労働の現場は、次のように、およそ上記の憲法や労基法の理念とはかけ離れた実態にあります。

 

 違法なサービス労働・賃金不払労働の常態化

 

 会社の職階である「管理職」と、法律上の概念である「管理監督者」(労基法41条2号)は別のものなのに、「管理職」とされただけで時間外手当を支払わない、さらには「管理職」としての権限も処遇もない   

 

 「名ばかり管理職」にまで時間外手当を支払わない

 

 過労死認定基準を上回る時間外労働時間を認める「36協定」が締結され、労働基準監督署がこれを受理している

 

3 過労死・過労自殺の多発 

 

 その結果、過酷な長時間・過重労働が、業種・職種や年齢・性別を問わず、また正社員のみならず非正規労働者にまで広がり、過労死や過労疾患、過労による精神障害や過労自殺が多発しています。

 

 激増する過労死・過労自殺の労災申請・労災認定は、「氷山の一角」にすぎません。(以下略)

 

 

 

 時間外労働に適切な歯止めがない状態は、個人の尊厳、生存権、勤労者の権利を保障した憲法の理念ともかけ離れています。

 現状は憲法や国際人権規約の定めた理念とかけ離れているし、100時間未満までは刑事罰はないなどという規制では、その理念に近づけないというべきです。

 

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時間外労働の上限規制

 

環境基本法には、次のような条文がある。

 

環境基本法 

 第十六条 政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする。

 

 これに基づいて定められているのが環境基準である。

 環境については「人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準」を法律で定めなければならないとなっているのである。(ただし、罰則を設けることを要求していないし、現に環境基準違反に罰則はない。)

 

 労働基準法、過労死等防止対策推進法などには、これまで残念ながら「人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準」を定めるように求める条文はない。

 

 今回、はじめて時間外労働の上限を法律で規制することが検討されている。しかし、その内容は

「月四十五時間を超える残業時間の特例は年六カ月までとし、年間七百二十時間の枠内で「一カ月百時間未満」「二~六カ月平均八十時間」の上限を、罰則付きで法定化する方針だ。連合の要求で当初案の「一カ月最大百時間」よりは若干修正された。しかし、労災認定基準のいわゆる過労死ラインに相当する働き方を、国が容認するものであることに変わりはない。」と報道されている(中日新聞 2017年3月15日社説より)

 

 今回の時間外労働の上限は、環境基準のような「人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準」ではない。今回策定されようとしている基準は、そもそもこの時間働いて脳・心臓疾患を発症し、労災と認められ、民事裁判でも企業が過労死を発生さるような安全配慮義務違反が問われるような、明らかな長時間労働の場合には、刑事の罰則もあるといっているだけである。

 

 もちろん、刑事の罰則もあるとしていることは一歩前進である。しかし、時間外労働の上限として定められるべきなのは、人の健康を保護し、生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準、という意味では環境基準と同様のレベルのはずである。

 

 脳・心臓疾患の労災認定基準には次のような記載もある。

 

 発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いが、おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること

 

 45時間を超える時間外労働は、脳・心臓疾患の発症との関連性が徐々に強まるのである。これについては規制するべきである。

 

 経済団体が反対する理由は、経済活動がなりたたなくなる、国際競争力が低下する、などであろう。

 しかし、死ぬかもしれない時間まで働かせることができる法規制のもとで働かせることができる経済活動を放置することはできない。労働基準法には、子どもを働かせてはいけない。出産の前後は働かせてはいけないなどの規制を設けている。どんなに労働に需要があっても禁止するべき労働はあるはずである。いま、求められるのは、過労死するほど長時間労働をさせてはいけないという法規制である。

 

 なお、不十分な上限規制になったとしても、この規制に達しない時間外労働をさせた場合にも労災認定がなされ、安全配慮義務違反の責任が問われる可能性があることは今までと変わらない。上記社説は「労災認定基準のいわゆる過労死ラインに相当する働き方を、国が容認するものである」としているが、これは罰則を科さない、直接規制しないということを意味するのであれば正当である。しかし、民事上の責任を負わないことも含む法規制になってしまうという意味に取られる可能性があり、不正確というべきかかもしれない。

 ただ、今と変わらない、ということは、今と変わらず過労死が発生する、ということであるから、法規制が十分な目的を達成できないことを意味する。

 更に強力な規制を求めたい。 

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1か月85時間の時間外労働と認定された事案が過労死 平成29年2月23日判決の意義

岩井羊一 過労死 報告
報告集会で発言する弁護士岩井羊一

事案の概要

 トヨタ自動車株式会社の2次子会社である会社に勤務していた被災者(当時37歳)が、平成23年9月27日、虚血性心疾患で死亡した。その妻が、半田労基署長に対し労災保険法に基づく遺族補償給付請求等をしたが、半田労基署長は平成24年10月15日付で不支給決定をした。妻さんは原告となって、名古屋地方裁判所に、この支給決定の取消しを求め提訴したが、1審判決は平成28年3月16日、原告の請求を棄却する判決(以下「原判決」という。)をした(裁判所ホームページ)。

 

 名古屋高等裁判所(藤山雅行裁判長、前田郁勝裁判官、金久保茂裁判官)は、平成29年2月23日、原判決を取消し、半田労基署長の不支給決定を取り消す判決をした。この判決は同年3月9日の経過により確定した。

 半田労基署長は、遺族年金等の支給を決定しなければならない。

 

 この事件は労災申請段階は、水野幹男弁護士が担当し、訴訟になってからは水野幹男弁護士と当職が担当した。

 

業務の過重性

 名古屋高裁は、時間外労働について次のように指摘している。「Aは、(中略)発症前1か月間の時間外労働時間は少なくとも85時間48分であり、この時間外労働時間数だけでも、脳・心臓疾患に対する影響が発現する程度の過重な労働負荷であるということができる。これに加えて、時間外労働の時間態において休憩時間がとれなかった時間があること、終業自国語に時間外労働をしていた時間が存すること、平成23年9月22日に愛知工場の業務に従事した時間が存する可能性があることを考慮すると、更に過重性の程度が大きかったことになる。」

 

 こうして認定基準の1か月の時間外労働が100時間を超えない場合でも業務の過重性があったことを認めた。

 

うつ病の影響

  被災者はうつ病に罹患しており、当時早期覚醒の症状が加わっていた。このことについて名古屋高裁は「上記の時間外労働による負荷にうつ病による早期覚醒の症状が加わって、更に睡眠時間が減少したものと認められるから、Aは、発症前1か月間、睡眠時間が1日5時間程度の睡眠が確保できない状態、すなわち、全ての報告においても脳・心臓疾患の発症との関連につき有意性が認められる状態であったことは明らかである。」「すなわち、Aは、発症前1か月間において、うつ病にり患していない労働者が100時間を超える時間外労働をしたのに匹敵する過重な労働負荷を受けたものと認められる。」などと指摘した。

 

 そのうえで、被災者が心停止に至ったことについて、時間外労働と心停止との間に相当因果関係を認め、業務起因性を認めたのである。

 

基礎疾患を有している人の労災

 名古屋高裁は、被災者が基礎疾患を有していることについて「何らかの基礎疾患を有しながら日常生活を何ら支障なく就労している労働者は多数存するのであって、これらの労働者が頑健な労働者が発症するに至る負荷ほどではない業務上の負荷を受けて脳・心臓疾患を発症した場合に、労災補償の対象とならないとすることは、労災保険制度の基礎となる危険責任の法理に反し、労働者保護に欠けるものになるのであって、このことは専門検討会報告書においても指摘されている。」と指摘した。

 

 実際に専門検討会報告書88頁には、同様のことが記載されている。

 

認定基準の意義について

 名古屋高裁は、国が業務起因性を認めるためには、認定基準が示す基準を満たす必要があると主張したことについて次のように指摘した。

 

 「認定基準において、例えば、発症前1か月間の時間外労働として概ね100時間を超えることを基準に掲げているのも、(略)、睡眠時間が1日6時間未満であっても狭心症や心筋梗塞の有病率が高いという知見がある中で、1日5時間以下の睡眠時間の場合には、全ての報告において脳・心臓疾患の発症との関連において有意性があるとされていたことから、その睡眠時間に対応する100時間の時間外労働を採用したものである。すなわち、この基準は、就労態様による負荷要因や疲労の蓄積をもたらす長時間労働のおおまかで、かつこれを満たせば確実に労災と認定し得る目安を示すことによって、業務の過重性の評価が迅速、適正に行えるように配慮して設定されたものと評価すべきである。」

 

 「…一般的に認定基準は、その基準を満たせば業務起因性を肯定しうるという性格のものに過ぎず、その基準を満たさないことが、業務起因性を肯定する余地がないことまでを意味するものではないというべきであるし、特に上記時間外労働に関する基準の意味するところからすると、業務起因性を肯定するためには上記認定基準を満たさなければならないとする被控訴人の主張を採用することはできない。」

 

 原判決は、特に労働時間について100時間に満たない場合にも業務起因性を認める余地があり、認定基準の意義を正しく指摘した。

 

上告受理申立されず確定

 Tさんが亡くなってからすでに6年がたとうとしている。ご家族はその間、被災者の方が生きていたときの収入もないまま生活をしてきた。労災保険は、被災者の遺族を経済的に支える制度である。内容からすれば、上告、上告受理申立をする内容はないはずである。

 実際に、国が上告、上告受理申立をせず、判決が確定したことは、幸いであった。

 

 ※確定したので、以前の原稿を改訂しました。2017年3月12日

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労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

 平成29年1月20日、厚生労働省は、労働時間の適正な把握のための使用者向けの新たなガイ ドラインを策定しました。

 これまでも使用者は、労働者の時間を把握する法的義務があることを前提に、使用者が労働時間を適正に把握するために高じる平成13年4月6日付「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」が出されていました。

 今回のガイドラインはこれに変わるものです。

 

 私が最も重視したいのは、同基準のなかでも以下の部分です。

 

「自己申告した労働時間を超えて事業場内にいる時間について、その理由等を労働者に報告させる場 合には、当該報告が適正に行われているかについて確認すること。その際、休憩や自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間ではないと報告されていても、 実際には、使用者の指示により業務に従事しているなど使用者の指揮命令下に置かれていたと認めら れる時間については、労働時間として扱わなければならないこと。 」

 

 始業時間、終業時間をさだめて、タイムカードなどで管理しても、実際には、本人の自己申告時間を労働時間として管理している会社は多くあります。

 そして、朝早く来るのは、ラッシュを避けるためだった。仕事がおわっても残っていたのは、雑談をしていたからであるなどという主張が使用者側から出されることがあります。

 また、休憩時間も取れなかったのに、就業規則どおり休憩していたと主張されるときもあります。

 

 過労をなくすためには、時間外労働を制限し、時間外労働の管理を徹底し、始業時刻前、終業時刻の労働をさせないことを徹底する必要があります。そのあとは、タイムカードを打刻してから始業時刻までのあいだの時間の管理、休憩時間の管理、終業時刻からタイムカードを打刻するまでの時間など、サービス残業をなくすために徹底した時間管理をする必要があると考えています。

 

 2017年3月4日の朝日新聞の報道によると「ヤマト運輸、未払い残業代を今夏までに支給へ 7万6000人対象」と報道されています。

 この報道によると、「SDの勤務時間は出退勤の時間を記録するタイムカードと、配送の時に使う携帯端末のオン・オフの二つで管理している。原則として、給与は携帯端末で記録された勤務時間から、自己申告の休憩時間を除いた時間をもとに計算しているが、携帯端末がオフになっているときに作業する▽忙しくて休憩時間が取れないのに取ったと申告する――といったサービス残業が増えているという。」とのことです。

 この会社では、タイムカードと携帯端末で時間管理をしていたのですが、せっかくの管理も、この端末をオフになっている時に仕事をしていたり、休憩時間にも仕事をしていたようです。タイムカードや携帯端末のような客観的な時間の把握をする装置を備えていても時間外労働が発生していたようです。

 

 時間外労働時間を規制した上で、これを守らせる仕組みをより強化しないと過労死はまだまだなくならないと思います。

 

 

 

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愛知県の県立高校の先生の過労死

先生 教師
写真はイメージです。

 2017年3月1日、愛知県立岡崎商業高校の先生が校内で倒れて亡くなった事件について、名古屋地方裁判所で判決があり、公務外決定が取り消されました。公務災害と認められ、いわゆる過労死だったと判断されたのです。

 

 名古屋第一法律事務所の田原裕之弁護士、福井悦子弁護士、森田茂弁護士、水谷実弁護士が担当されました。(愛知の県立高校の教諭の過労死を認める判決 名古屋第一法律事務所のブログ

 

 岡崎商業高校は、私が高校まで住んでいた岡崎市にある高校です。中学の同級生には進学した人もいたと思います。そんな地元の高校でこのようなことが起きたのはとても残念なことです。亡くなったかたは、2009年に42歳だったというのですから、私とほぼ同年代の方。

 

 報道によると、判決は、亡くなるまでの1か月の時間外労働は少なくとも95時間と認定。その上で、仕事の質について「生徒の資格取得に直結する直結する授業や部活の顧問を受け持った上、亡くなった月には資格検定の受験指導や体験入学の準備作業で、精神的負担が大きかった」などと判示したようです。

(中日新聞2017年3月2日朝刊)

 

 地方公務員である県立高校の教諭の場合、なくなった場合にそれが公務による死亡かどうかは、地方公務員災害補償基金(地公災)が判断します。地公災が、公務災害と認めれば、ご遺族に年金又は一時金が支払われます。

 脳心臓疾患については、「心・血管疾患及び脳血管疾患の公務上災害 の認定について 」という基準が定められています。

 

 長時間労働については、

 「発症前1か月程度にわたる、過重で長時間に及ぶ時間外勤務(発症日から起算して、週当たり平均 25 時間程度以上の連続)を行っていた場合」 
   「 発症前1か月を超える、過重で長時間に及ぶ時間外勤務(発症日から起算して、週当たり平均 20 時間程度以上の連続)を行っていた場合」

 とされています。

 

 民間の場合の認定基準は、「発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できること」とされていることと比べると厳しめの基準となっています。

 

 裁判では民間の認定基準も参考にされたようです。

 

 認定基準はあくまでも公務災害、労働災害を迅速に判断するための基準であり、この基準に当てはまらない場合も労災、公務災害が否定されるわけでありません。

 

 判決は、時間外労働の他、公務の質的過重性も認めています。

 いまも多くの先生が、長時間、過密な労働をされていると思います。また、新聞報道によれば、10年以内に校内で倒れた5人が過労死と疑われると言われています。

 

    愛知県では、教員の多忙化解消プロジェクトチームが立ち上がり、平成28年11月には、「教員の多忙化解消に向けた 取組に関する提言 」が作成されています。

 その中では次のような記載があります。

 

 「県が実施している平成 27 年の「在校時間の状況調査」の結果に よると、小学校で 10.8%、中学校で 38.7%、高等学校で 14.0%の教員が、正規の 勤務時間以外で、80 時間を超えて在校している実態である。特に、中学校におい ては、20.7%の教員が 100 時間を超えて在校しており、教員は多忙を極めている状 況にある。(※在校時間:正規に割り振られた勤務時間以外に従事した時間) 」

 

 先生はいつ過労死してもおかしくない状況の中で働いています。この判決が、愛知県の、全国の先生の働き過ぎを改革する一つのきっかけになればいいと思っています。

 

 判決全文は裁判所ホームページに掲載されています。

 平成29年3月1日判決言渡

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ストレスは足し算で計算するべきでは

認定基準

 精神障害を発症したときに、労災か否かについては、厚生労働省の発出した(心理的負荷による精神障害の認定基準(基発1226第 1 号       平成23年12月26日) )によることになっています。(以下、認定基準、といいます。)

 

 この認定基準では、「 対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認 められること。 」が要件になっています。

 

 そして、強い心理的負荷がみとめられるかどうかは、認定基準の別表 1「業務による心理的負荷評価表」(以下「別表1」という。)を指標として「強」、 「中」、「弱」の三段階に区分し、そのうちの「強」にあたる心理的負荷があるかどうかを検討することになります。

 

 ここで「強」にあたるような心理的負荷があれば業務起因性が認められます。

 

 また、「中」にあたるような心理的負荷が複数あった場合には、「強」と認められる場合があります。

 しかし、「中」と「弱」の心理的負荷がある場合には、「強」とはならないとされています。

 

 

心理的負荷による精神障害の認定基準
厚生労働省のパンフレットより

ホームズらの研究 夏目の研究

   夏目誠教授の論文によるとHolmesら(Holmes,T.H.,Rahe,R,H,: THE SOCIAL READJUSTMENT RATING SCALE Journal of Psychosomatic Research. Vol. 11, pp. 213 to 218. Pergamon Press. 1967. )は体験したストレス点数の合計点が高くなれば、病気に陥る可能性が高くなると報告したとのことです(出来事のストレス評価)精神経誌(2008)110巻3号)。

 

 夏目誠教授の論文には以下のような記載があります。

「すなわち単一のストレスでなく、一年間に体験したストレスの総量が高ければ、病気の発生に結びつくという考え方だ。そこで我々は、ストレス度とストレス関連疾患との関連を検討した。すなわち平成6年から大阪府こころの健康総合内に解説されたストレスドックに受験した1,426名を対象に、ドック受験前の1年間における対象者が体験したストレッサーのストレス点数の合計点数を求め、健常者群と、ストレス関連疾患者群(略)の主として2群間の差異を分析した。

 その結果は図1に示したように、年間の体験した合計点数は健常者群の219点に対して、ストレス関連疾患者群(ノイローゼや心身症、軽症うつ病等)の受診者のそれは335点であり、健常者に比べて116点も高得点であった。特に職場との関連性が高い適応障害(職場不適応症)の受診者は391点で最も高得点であった。実に172点も高い。このことから、ストレス関連疾患の発生にストレスが関与しているのがわかる。」

 

 

ホームズらの研究 夏目らの研究からすれば、

 上記ホームズらや、夏目の研究の結果からすれば、ストレスは、そのすべての合計によって高いと判断することになるようです。

  そうであれば、今の認定基準には疑問があります。

 

  中 +  弱  がかならず中にしかならないのか。

 

  弱 +  弱  がかならず弱にしかならないのか。

 

 いずれも疑問が生じます。合計点数が高いとストレス関連疾患の発症がたかまるのであれば、弱が多くあった場合にも弱が業務上の心理的負荷であれば、弱の合計が強になるばあいもありえることになります。そうだとすると、弱しかなくてもたくさんストレス要因があれば、発症について業務起因性が認められるのことは考えていいのではないでしょうか。

 

 中と弱でも、弱が複数あったり、中が強に近い状態であれば、強とみとめることはできるのではないでしょうか。。

 

 また、上記ホームズらは、過去1年間におけるストレッサーのストレス点数の合計点を考慮しています。

 認定基準は発症前6か月に限定指定しています。この点も1年間の出来事を考慮するべきではないかといえます。

  

 さらに検討してみたいテーマです。

 

 

 

 

 

 

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電通 遺族と合意の意味するところ

 2017年1月20日、電通の社員で過労自殺として労災とみとめられた高橋まつりさんのご遺族と、電通の間で合意がなされたと報道されました。

 

 注目していたのは、一つは電通が、法的責任を認めて、ご遺族の納得するように謝罪するか。

 

 もう一つは、電通が、ご遺族が納得できるような再発防止のための対策を約束するか。

 

 でした。

 

 この事件ように過重な労働が明白であれば、会社は労災補償責任だけでなく、労働契約法の安全配慮義務に違反し、民法上の債務不履行責任や不法行為責任を負うことは明白ではないかと考えられます。

 

 そのような場合に、電通が、責任を認めて謝罪をするのか、法的責任の有無は裁判所の判断に委ねるかのような不遜な態度を取るのか、それは、今後の再発防止の可能性とも大いに関係があるところです。

 

 電通は、謝罪し、法的責任があることを前提とした慰謝料等の解決金を支払うことを約束したので、ご遺族は合意したのでしょう。

 

 再発防止ですが、電通が、企業ぐるみで長時間労働をしていたのであれば、いきなり時間を短縮するとしても仕事が回らなくなり、人を増やすか、仕事を減らすかする必要があります。その規模は相当なものになります。本当にそのことを覚悟して和解したのでしょうか。仕事を効率化することで長時間労働を減らせるなどという、小手先の対策を考えているだけではないかが心配です。

 

 この点、電通は今後、再発防止策の実施状況について年1回、遺族側に報告することを約束した,と報道されています。ご遺族は、このように、今後も再発防止について、意見を述べることができる約束をしたから、つまり、今後も監視をしていくことを前提に合意をしたのでしょう。

 

 高橋さんの言葉が胸に刺さります。

 

 「会社との合意には至りましたが、会社側がどんなに謝罪を述べたとしても、再発防止を約束したとしても、娘は二度と生きて帰ってくることはありません。」

 

 

 

 

 「娘や、これまで過労で亡くなった多くの人たちの死を無駄にしないためにも、日本に影響力のある電通が改革を実現してほしいと思います。」

 

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過労死等防止のための啓発事業

 本日、中京大学経営学部の授業の一コマで、過労死等防止についてお話しをさせていただきました。100名を超える大学生の皆さんがお話を聞いてくれました。

 

 お話しの冒頭で、ちょうど大学生のお父さんくらいの年齢のご主人を亡くされたご遺族のお話のビデオを流しました。

 それから、電通の高橋まつりさんのお母さんの手記を読み上げました。

 

 大学生の皆さんに、過労死をなくすために、あなたが総理大臣だったら、厚生労働省の役所の人だったらどんな政策を打ち出すか。

 

 あなたが社長さんだったらどんなことをするか。

 

 あなたが勤めている会社が長時間労働で、過労死しそうな会社だったらどうするか。

 

 考えて発表してもらいました。

 みなさん、真剣に考えてくれました。

 みなさんのような考えの人ばかりであれば、過労死等起きないはずなのにどうして起こるのか。

 それについて、私の考えも少しお話ししたつもりです。

 

 今日のお話しがすこしでも学生の皆さんのなかに残るように希望します。

 

 来年も、きっと予算が付きます。中学、高校、大学の先生方。

 

    弁護士がご負担なしで学校へ参ります。

 

 ブラックバイトなどの問題の含めてお話しできます。ご相談ください。

 

 

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2016年の過労死等問題を振り返って

過労死 弁護士 岩井羊一 
過労死等防止対策推進シンポジウムで挨拶する弁護士岩井羊一

今年も本日までです。

 

 過労死等の問題について振り返ってみます。

 今年は、担当していた事件が勝利的和解で解決したり、2件の高裁での勝訴判決を受け、これが確定したり、とよい結果が続いた一年でした。

 

 もっとも、敗訴判決を受けた事件(控訴しました)、労災申請をしながら、不支給の決定を受けた事例等、訴訟が継続している事件もあります。辛い思いをしている遺族のかたのために今後も少しでも力になれたらと思っています。

 

 過労死等防止対策推進シンポジウムの岐阜、愛知にも参加しましたが、充実した内容で成功でした。岐阜の松丸弁護士の講演、愛知のクオレ・シー・キューブの岡田康子さんの講演はいずれも過労死問題を取り組んでいく上で新しい視点に気がつかせてくれました。

 

 全国的には9月30日に電通の高橋まつりさんの自死が労災認定された事件が大きく報道されました。入社1年目のクリスマスの夜に自死された事件。長時間労働が、規制されるばかりか25年前と同じような労働状況が続いているようです。書類送検され、刑事事件の結論も注目されます。

 

 母校、岡崎高校で弁護士と語る人生教室を行いましたが、そこでも高校生の皆さんとこの問題を一緒に考えてみました。

 

 高橋さん、そして全国で過労死等でなくなった方の死が、せめて、これからの過労死等の防止のために役に立つように、今後も裁判、労災認定手続きのサポートを続けていこうと思います。

 

 労働法講座や、いくつかの団体でパワハラ防止の講演をさせていただきました。みなさん、具体的な裁判事例などを紹介すると、熱心に聞いてくださいます。少しでも過労死等の防止するための意識づけになってもらえればとも思います。

 

 

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電通だけではない

 年末も電通の問題が連日報道されている。28日の報道によれば、「厚生労働省は28日、高橋さんに労使協定(三六協定)で定めた上限を超える違法な残業をさせたとして、労働基準法違反の疑いで、法人としての電通と当時の上司に当たる幹部1人を書類送検した。」(中日新聞)とある。「家宅捜索から1カ月半と異例のスピードになる。」とも報道されている。

 

 29日の報道によれば,電通の「石井直社長(65)は28日、東京都内で記者会見し来月辞任すると表明した。高橋さんの自殺に端を発した労働基準法違反事件の責任を取る。」と報道されている。

 

 さらに「電通は二十八日夜の会見で、高橋さんの過労自殺に関する外部専門家による調査結果を公表。「長時間労働に加え、仕事の責任感や職場での人間関係の強いストレスが自殺の原因となった可能性は否定できない」とした。上司による高橋さんへのパワハラも認め、「十分なサポートが足りなかったと深く反省している」との認識を示した。」とも報道されている(中日新聞)。

 

 ただ、マイニュースジャパンの記事によると「事件のことは発生直後から知り、経緯を把握してきましたが、労災認定が決まった今年9月の前まで、会社は、個人の問題で片づけようと動いていたように見受けられます。独身寮で起きた事件なので、自殺のあと、会社側が同寮社員への聞き取り等を通じて、別れ話の件を把握したようです。だからこそ会社は、甘くみていました」(Aさん)との指摘もある。

 

 いずれも報道によるものである。ただ、報道する以上、誤りがあれば電通から名誉毀損などの損害賠償請求もある。取材に基づいて責任をもって掲載しているのだと考えられるから、それなりの根拠があるのだと考えられる。

 

 実際に、労災を担当した事件で、労働基準監督署長が,過労死、過労自殺について業務上だと認定しても、企業側が労災であることを争い、訴訟になることがある。

 

 たしかに、実際に労災と認定されながら、損害賠償請求が認められなかった例もある。

 

 しかし、会社には安全配慮義務違反があるのに、それを認めようとせずに争われ、最終的には損害賠償請求が認められることもある。その中には、会社が、内部の事情を全て明らかにしないで、責任逃れをしようとしているのではないかという態度を感じることもある。

 

 そもそも、遺族の中には、周囲の親族に反対されたり、地域での生活、子どもさんなどへの影響を考えて、労災申請をためらゥ人もいる。労災認定がなされて、損害賠償請求をしても、そのことを公表することに躊躇する方も多い。

 

 今回の電通の対応も、高橋さんが、勇気を持ってご自身となくなった高橋まつりさんのことを公表したことが、マスコミを動かし、大きく取り上げられ、国を動かし、そして電通自体を動かしたのではないかと考えられる。

 

 もし、このような取り上げ方がなされなかったら、電通は、遺族に対する責任を真摯に調査していたのだろうか、疑ってしまう。

 

 11月に岐阜で行われた厚生労働省主催の過労死等防止対策推進シンポジウムで、過労死弁護団全国連絡会議の代表幹事の松丸正弁護士は、企業のトップの一人一人の責任が追及されなければ、なぜ過労死が起こったかが検証されず、過労死がなくならない,と話した。

 

 電通だけではなく、全ての企業が、従業員が労災と認定されたときには、真摯にその原因を調査し、責任があることがわかったときには真摯に遺族に責任を認めてしかるべき対応を取って欲しい。それだけでなく、それにいたった企業のトップは自身の責任を問われることを自覚して欲しい。

 

 企業が、電通のことをきっかけにして、過労死を出したときには、ご遺族に対する民事責任だけでなく、労基法違反の刑事責任も問われる可能性があることがあること、そのことは、社会的にも大きな非難を受ける可能性があることが明らかになった。

 

 企業は、真剣に長時間労働の削減、パワハラなどのハラスメントの防止に取り組む必要性を感じて欲しい。

 電通報道を見てあらためて感じた次第である。

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クリスマスおめでとうございます。

 今日は、クリスマスでした。

 クリスチャンである私は、24日の夜は教会で燭火礼拝を守りました。そして、25日は、クリスマスの主日礼拝を守りました。本日は、教会学校のこどもたちの燭火礼拝と祝会をしました。サンタクロースもあらわれ、子どもたちにプレゼントを配りました。

 

 そんなクリスマスの日曜の朝、私は新聞でみました。

 高橋まつりさんのお母さんが手記を寄せたというのです。

 

 各紙が手記前文を掲載しました。ネットでも見られるように配信しています。

 私は、以下の部分が最も心に残りました。

 

 

 まつりの死によって、世の中が大きく動いています。まつりの死が、日本の働き方を変えることに影響を与えているとしたら、まつりの24年間の生涯が日本を揺るがしたとしたら、それは、まつり自身の力かもしれないと思います。でも、まつりは、生きて社会に貢献できることを目指していたのです。そう思うと悲しくて悔しくてなりません。

 

 

 そうです。亡くなってから動いても遅いのです。まつりさんの力は、生きて使われるべきでした。

 クリスマスになくなったということは、クリスマスが来るたびにご遺族はこのことを思い出し、悲しみを新たにしなければならないことです。本当に心が痛みます。

 

 神様は、私たちの罪を許すために、イエス・キリストをこの世にお遣わしになりました。

 高橋さんをはじめてとする過労死、過労自殺の遺族の皆さんにすこしでも心の慰めが与えられることを祈っています。

 

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勝訴しました。

岐阜地方裁判所 平成28年12月22日判決

 2016年12月22日、岐阜地方裁判所(眞鍋美穂子裁判長、杉村鎮右裁判官、足羽麦子裁判官)は、岐阜市役所の職員の遺族が提訴した、地方公務員災害補償基金岐阜県支部長の「公務外処分」の取り消しを求めた裁判において、地方公務員災害補償基金岐阜県支部長の行った公務外処分を取り消す判決を言い渡しました。

 

 原告の勝訴です。職員が亡くなったのは平成19年ですから、亡くなってからは9年目の判決でした。

 

 西濃法律事務所の笹田弁護士、綴喜弁護士が担当していた事件で、途中から私が弁護団から参加しました。

 

 

 


 判決は、「亡Aは、業務の面からも、人間関係の面からも、精神的負荷のかかった状態にあり、肉体的にも精神的にも疲労のたまっている状態であったところ、本件遊具の設置問題があり、後閲問題が発生し、後閲問題により、自尊心を深く傷つけられ、この問題による亡Aへの精神的負荷は、それ以前の部長との関係から生じた精神的負荷や日常業務による肉体的、精神的疲労とも合まって、極めて強いものであったと認められる。」

 

 「亡Aは強度の精神的負荷を与える事象を伴う公務に従事したため、遅くとも同年11月頃までには抑うつ状態となったということができ、亡Aが従事した公務と上記精神疾患との間には相当因果関係が認められる。」

 

 「本件災害当時抑うつ状態にあった亡Aは、抑うつ状態という精神という精神状態から、本件災害当日に発生した岐阜公園内での事故の報告を受けたことを引き金に、突然発生する事故等にこれ以上耐えきれなくなり、発作的に岐阜市役所8階から飛び降りて、本件災害が発生したものと認められるから、上記精神疾患と本件災害との間の相当因果関係は肯定することができる。」と判示しています。

 

 判決は、強い精神的負荷があったことを認めていますから、地方公務員災害補償基金の定める「認定基準」によっても公務上災害と認められるものと判断しているものと理解できます。その内容は極めて明快です。これまで職員の方が亡くなってから9年の歳月が経過しています。理由のない控訴は、いたずらに確定を遅らせ、遺族に心労を与えるだけです。

 

 地方公務員災害補償基金が、岐阜地方裁判所の判決を尊重し、控訴をせず、早期に公務上の災害であると認定するよう望みます。

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注目の判決 2016年12月22日 岐阜地裁

過労死等防止対策推進シンポジウム 岐阜
昨年行われた過労死防止対策推進シンポジウム

 今年もあと僅か。

 しかしご本人も弁護団も支援するみなさんもこの判決を聞くまで今年が終わることがありません。

 2016年12月22日 岐阜地方裁判所で言い渡される判決。

 岐阜市の職員が2007年11月に自死した事件。公務災害であると主張してきました。

 公務災害と認められないために訴訟で争ってきました。9年を経ていよいよ判決です。

 多くの傍聴者と判決期日に出席します。

 判決は、法廷で裁判長が言い渡しをして初めて結論がわかります。あと数日。どきどきしながら過ごすことになります。これまで行政手続きでは3回駄目と言われました。もう辛い思いはしたくありません。

 

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