2020年のはじまりにあたって

謹賀新年 ねずみ 神宮西

 明けましておめでとうございます。

 

 旧年中はお世話になりました。

 

 11月には過労死等の認定基準の見直しの方針が発表され、12月には複数職場での労働についての認定方法の見直しがきまるなどのことがありました。ここ数年で過労死等の救済がよりなされるように適切な認定基準の改正を期待します。

 

 賃金の時効期間の延長の問題、パワハラについての法規制は問題が大きいのですが、労働者の保護になるようにかえていきたいです。

 

 改正民法により法定利息が見直されるので、損害の金額は増額されるでしょう。

 損害賠償の時効期間は原則5年となりよりスピーディーな解決が求められます。

 

 これらの法律や運用の改正の動向に注目しつつ、それぞれの事件の解決へ向けて、今年も精一杯行っていきます。

 

 どうぞ今年も宜しくお願いします。

 

 2020年1月1日

                        弁護士 岩井 羊一

 

 

 

過労死の認定基準の改定

 過労死弁護団では、過労死認定基準についての意見書を作成して厚生労働省にも提出していました。

  心理的負荷による精神障害の労災認定基準の改定を求める意見書 

   脳・心臓疾患の労災認定基準の改定を求める意見書

 厚生労働省は11月1日の大臣の記者会見で次のような発表をしています。(厚生労働省ホームページ

 

(引用開始) 

記者:

 

先日議員連盟の総会で過労死の認定基準の見直しの検討をすることが明らかになったのですけれども、今後の検討の予定とポイントとなる認定基準の内容がどのあたりなのかというのを教えてください。

 

大臣:

 

今労災認定基準には脳、心臓疾患と精神障害の労災認定基準、これが二つあります。まず脳・心臓疾患の労災認定基準については、昨年度と本年度に医学的知見を収集をさせていただいております。それを踏まえて、令和2年度、来年度に有識者の検討会を設置して、労災認定基準これは全般にわたってご議論をいただきたいと、もう既に平成13年に作成をされておりますからもう15年、20年たっているということであります。それから精神障害の労災認定基準については、これは2つあります。1つはパワハラについて法制化され定義が明確化されて、指針等が今議論されているわけでありますけれども、本年中に有識者検討会議を設置して、検討を行う、これはパワハラから生ずる精神的な障害に対してであります。さらに全般については、来年に医学的知見等を収集し、それを踏まえて3年度に今度有識者検討会議を開いて検討を行うということにさせていただいているところであります。検討の期間はまだ見極められませんが、前回の検討においてはおおむね1年間ぐらいの議論をしていただいて答えを出していただいたということでございます。そんなことも踏まえながら対応していかなければいけないと思っております。(引用終わり)

 この会見の内容によれば

・パワハラによる精神障害の発病については2019年に専門検討会を設置し、検討する。

・令和2年度には脳・心臓疾患の認定基準に関して専門検討会を設置して、検討する。

・令和3年度には精神障害の認定基準に関して専門検討会を設置して、検討する。

 

とうことが明確にされました。

 

今も不十分な認定基準のために、認定されないご遺族があります。

新しい認定基準が、より一歩進んだ過労死の認定基準になるように期待します。過労死弁護団としてはすでに意見書を発表しています。これからも意見を述べて行く予定です。

 

 

愛知学院大学法務支援センター 市民講座2019

 

 今日は勤労感謝の日でした。

 私が特任教授を務める愛知学院大学法務支援センターでは毎週土曜日に市民向けの公開講座を開いています。今期の講座は10月5日から12月7日まで以下のラインナップで行われています。

 

 開 催 日            講 座 内 容      講  師
10月5日 再審に関する議論の欠落点-再審有罪判決への対応- 教授 原田 保
10月12日 国際人権法とは? 教授 初川 満
10月19日 交通事故と法律-いざというときに困らないために- 教授(弁護士) 浅賀 哲
10月26日 裁判と真実について 教授 梅田 豊
11月9日 税金の憲法問題-消費税は合憲か?- 教授 高橋 洋
11月16日 募集株式の発行 教授 服部 育生
11月23日 過労死を防止するために 教授(弁護士) 岩井 羊一
11月30日 土地の所有権は放棄できるのか 教授 田中 淳子
12月7日 改正相続法について~従前の相続法とどのように変わったか~ 教授(弁護士)國田 武二郎

 

 今日は、私が「過労死を防止するために」と題してお話しをさせていただきました。

11月は過労死防止啓発月間です。(過労死等防止対策推進法5条2項)

  

  過労自殺が社会問題になった電通事件の平成12年3月24日最高裁判決判決。そのときになくなった方のあとに生まれた高橋まつりさんが、亡くなった電通事件。いまもなくならない過労死の実態。どういった事案が過労死とされているのか。過労死がおきた場合の法律問題。労災の仕組みや法律の構造。パワーハラスメントの問題などお話しをさせていただきました。

 

 愛知学院大学法務支援センターでは、春と秋に市民向け講座を行っています。

 どの先生の講座も役に立つし、法律的な好奇心を誘うものです。

 

 私は、来年の春は、裁判員裁判について語る予定です。乞うご期待。

 

 

 

過労死等防止対策推進シンポジウム 愛知会場

 2019年11月15日 過労死等防止対策推進シンポジウム愛知会場に出席しました。

 全国で11月に行われている厚生労働省主催のシンポジウムのひとつです。愛知は名古屋国際センター別棟で行われました。

 

 冒頭、開会前には、恒例になった「ぼくの夢」という歌が流れました。

 過労氏の自死遺族のマー君が作った詩に曲をつけ、歌手のダ・カーポさんが歌っています。

 

 13:30に開会しました。

 開会挨拶が、愛知労働局労働基準部長黒部恭志さんからがありました。

 過労死等防止対策推進法が施行されてから5年がたつこと、11月が過労死等防止対策推進月間であること、2019年4月からは労働時間の上限規制などの働き方改革関連法が施行していること。過労死等を防止するためにこのシンポジウムが重要であるとの挨拶でした。

 

 そして、過労死を考える家族の会の名古屋の代表からご挨拶がありました。

 家族の会はいまから30年前に名古屋できました。そして、全国過労死を考える家族の会ができました。家族の会は、日本中、世界中に訴えました。しかし、仕事でうつ病等の精神疾患を発症する人が急増しました。法律を作って過労死等を防止する法律の制定をしようとし、活動をしました。

 このシンポジウムは、最初は自主開催でしたが、その後毎年開催しています。

 それでも過労死は一向に減っていきません。

 自分の娘も会社の上司のパワハラで21歳で自殺してしまいました。家族のえがいていた未来もなくなりました。

 人を死に追いやる指示が指導と言えるのか疑問です。

 過労死を自分と関係ないと考えている人が多いから過労死がなくならないと思います。娘を辞めさせなかったことを後悔しています。でも、パワハラをしたひとが今も会社にいることに疑問を持っています。

 過労死、過労自死はけして他人ごとではない。私たちと一緒に考えてほしいと思います。

 

 愛知労働局からの現状報告がありました。

 愛知労働局 労働基準部 監督課 課長 中村隆さんからの報告でした。

 

 過労死等防止白書から、過労死の状況の説明がありました。

 週60時間の労働者は6.9%と減少傾向。でもまだ長時間労働をしてる人がいる。

 さらに、年休取得について70%以上取得している人は51.1%とまだ道半ば。

 過労死の実情は高止まりしている。

 長時間労働削減に向けた取組をしている。違法な時間が労働をさせている事業場があり、長時間労働についての監督指導を行い是正をさせていきたい。

 啓発活動も行っている。メンタルヘルス対策に関する周知も行っている。また職場のハラスメントの予防・解決のための周知、啓発を行っている。トラック運送業、教職員、医療従事者に対する啓発も徐々にすすめている。

 

 時間外労働の上限規制についての説明がありました。

 改正前は、臨時的な特別の事情の場合には上限がなかった。しかし、改正後は、法律の中で規制が定められた。臨時的に特別な事情がある場合でも

  年720時間以内

  複数月2-6か月 平均80時間以内

  月100時間未満

という規制になっている。

 

 パワーハラスメント対策強化にかかる法改正についても説明がありました。

年年増加傾向にあるとのことパワーハラスメント防止対策の法制化の内容、ハラスメントの内容、原因の説明がありました。

 今回のパワーハラスメント等防止のための雇用管理上の措置義務の内容についても説明があり、セクハラに準じて指針が作られるであろうことの説明がありました。

 

 

 つづいて企業からの事例報告がありました。キャッチネットワークの働き方改革

 社長の松永光司さんからお話しがありました。

 

 キャッチネットワークは、第三セクターで西三河南部をエリアとした会社。

 135人と契約社員が58人 合計193人、主要事業はテレビとインターネット。いわゆる放送業界で、ブラックといわれる業界ですが、さまざまな働き方改革に取り組んできました。

 働き方改革の理念は、「男女の別なく」「成長し続ける」ことにあります。個人個人が成長し、給料が上がって、良い生活ができるようにと考えています。

 

  ワーク・ライフ・バランスより、「ワーク・ライフ・シナジー」と言ってきました。

 

 育休については、女性もとれていませんでした。どうやったら仕事を分担してもらえるか。そして、男性の育児給をとるようにと工夫をしてきました。

 有給休暇を、「おもいやり休暇」として法律の定めよりも多くとれるようにしました。また、育児休暇期間も法律よりも長くとれるようにしました。

 

 フレックスタイムはコアレスです。一日4時間働いてもらえれば何時に気も良いことになっています。

 36協定の特別条項は、法律は月80時間、年720時間が上限ですが、会社は月70時間、年間540時間を上限と定めています。

 

 職場は「フリーアドレス」としています。役員以外の席や自由です。座る場所が毎日変わることで、社員間のコミュニケーションを深めるように努力しています。

 

 ペーパレスにも取り組んでいます。資料は会社のサーバーに保存するようにしています。急に休んでも他の人が仕事を引き継げるようにしています。

 

 テレワークも勧めています。在宅勤務ができます。午前在宅勤務をして、午後から自宅近くの場所に出頭すれば、直行直帰ができます。また、出張先の隙間時間にWi-Fiのある場所で仕事ができるようになっているので有効活用が可能になっています。

 

 残業減少するようにしとときに、それによって収入が下がる場合にも、収入が大幅に下がらないように工夫をしました。

  

 有給休暇は計画を建ててもらいます。さらに毎月実績方向をしてもらいます。計画通り採れなければ計画の見直しをします。有給所得率も48.5%から66.3%になりました。もっと上を目指したいと考えています。有給は10日はとろうよ,と呼びかけています。有給休暇を取得するように、ライフ充実手当てを支給しています。3連休と土日をあわせ、5連休とったら2万円手当てを支払うようにしています。

  

 メンタルヘルスケアにも力を入れています。産業カウンセラーと人事担当で、全社員のチェックします。メンタルで求職した方について復職確認プログラムを実施しています。専門施設で5週間の確認プログラムをしています。

   

 働きやすい会社から、さらに働きがいのある会社を目指したいと考えています。

 

  

 西垣さんのお話し

 

 全国過労死を考える家族の会の会員です。27歳の息子を亡くしました。

 自分は教師をしていて、授業中に子どもが亡くなったことを知りました。

 母子家庭で母1人、子1人の家族でした。

 息子は、関東で働きたいといって、神奈川の会社に就職しました。お互い1人なので、一日一回は連絡をとろうと話していて連絡を取り合っていました。

 その日昼頃連絡が取れませんでした。そしたら、息子は高熱を出してしゃべることができない、すぐに駆けつけろと医者が言っているという連絡が授業中にありました。神戸から看病のために向こうとしていた新神戸の駅で、心肺蘇生を停止していいかというお医者さんの電話がありました。

 新幹線のなかで、当時はまだ携帯が繋がりにくい時代でした。神奈川に駆けつけたときには息子は冷たく横たわっているだけでした。遺体の顔しか見れませんでした。

 いったいに何が起こったのか。なんでこんなことになったのか。私の人生は全て終わってしまいました。

   

 息子は、関西にいるより、大きな仕事ができるといわれて、関東に行くことになりました。友人が多く、任されたことの責任感をもった子でした。息子が亡くなった1週間後会社を訪れたら数十人があつまってくれました。「西垣くんは私たちのアイドルでしたよ。」と言ってくれました。将来への希望を持つ普通の青年でした。

 

 入社2年目。 

 地デジプロジェクトに参加していました。

 業務が多忙でうつ病になりました。

 息子は、治療薬を大量に飲みすぎて死亡したのです。自死か事故死かは不明でした。

 仕事が忙しい。労働災害だと思う。上司がそう言っていると教えてもらいました。

 労災申請をしました。過労死を考える家族の会の人は、ほとんどの人が裁判をしています。

 

 労災と認められるのはとても大変なことです。2011年3月25日 労災認定裁判に勝訴することができました。

 息子の労働実態ですが、亡くなる前128時間の時間外労働をしていました。それが裁判をしていく中で、最終的には159時間の時間害労働をしていることが分かりました。

 0時以降に働いていたのが月の半分。

 

 32時30分(午前8時30分)まで仕事をしていて、次の日、9時からまた21時51分まで仕事をしている日もありました。

徹夜しても朝仕様変更を命じられることもよくありました。普通では考えらえれないほど。作っても作ってもやり直しが有りました。いつまで経っても仕事が終わらない。長時間労働にわをかけて厳しい労働でした。

 職場環境は、狭い、熱い場所でした。

  

 新人教育も受けられる時間もありませんでした。息子は即戦力として働いていました。人数は足らないけれども突っ走るしかありませんでした。

 職場の同期の76人中12人が休職者、退職者でした。実際にはほかにも通院者などがいて、全員がメンタルだと教えられました。

  

 会社の労働条件。

 36協定の特別条項は

  1日 13時間

  3か月 300時間

  1年  960時間(=1月80時間平均)

  となっていました。女性の社員がダンボールを床に敷いて仮眠していた。

 

 労災認定は、働く現場を知らない遺族が業務の実態を立証しなければならない厳しい裁判です。

 争点は3つ

 タイムカード働いた時刻は記録されていました。そこで、休憩時間も働いていたかが争点でした。

 つぎに、精神障害の発病次期はいつかということが争点でした11月か9月か。10月は出社できない状態でしたので発症時期が11月となると、その前の労働が過重ではないとなりかねません。医師のカルテが裁判の終結することに開示してもらえました。プロジェクトがはじまった7月頃、息子は医師に症状を訴えていて、カルテにはこのころ発症だと記載されていたのです。

 さらに、薬の飲み過ぎは労災か?が争点でした。仕事により精神障害になり、精神障害により死になったなったと認められました。

 息子は、ブログを記載していました。それを分析した結果が立証となりました。

 

 裁判中、過労死について国会議員に面会しました。そのときに基本法制定をする必要があると言われました。

 過労死防止法の制定の運動をしました。

 地方議会で意見書 署名、院内集会、自民党の集会に参加、法律制定に奔走した。

過労死等防止対策推進法のなかで『過労死』が法律文言に入リました。

 

 過労死等防止対策推進法にもとづいて大綱の作成にも参加しています。

 けれども、過労死は、まだ少なくなっていません。労災請求件数は増加しています。 

 

 私が、過労死をなくすためにすべきということがあります。時間外労働は月45時間を上限として例外を認めないなどさらなる法規制がもとめられます。

 

 岩井の方から閉会の挨拶をさせてもらい、閉会となりました。

 厚生労働省から、

 企業から、

 遺族から、

 それぞれ、過労死をなくすために発言がなされました。

 良いシンポジウムになったと思います。

 

 

過労死等防止対策推進シンポジウム 岐阜会場出席してきました

 

2019年11月12日に開催された過労死等防止対策推進シンポジウム岐阜会場に参加してきました。

その内容をレポートします。

 

会場では開会前に「マー君のうた」が流れました。ダカーポさんの歌で、和歌山の過労自死遺族の当時小学生のマー君が作詞した歌です。『タイムマシーンに乗ってお父さんの死んでしまう前の日に行くんや。』という歌詞をきくといつも泣けてきます。

 

 

 

開会後、まず岐阜労働局、労働基準部長の子安成人さんから挨拶がありました。昨年度も703名が労災認定され、そのうち死亡、自殺未遂したかたは158名となっているという実態が報告されました。

 

労働時間の上限規制、労働時間把握義務などの法改正がありました。労働時間の上限規制は大企業ではすでに施行されている。中小企業でも4月に施行される。労働局としてもこの施行にあわせて取り組んでいきたい。本日の内容を参考に、過労死を0にする取組をすすめていきたいとの挨拶がありました。

 

 

 

つづいて、岐阜労働局労働基準部監督課長の大谷徹さんから、過労死等防止対策の取組に関する報告がありました。主に過労死等防止対策白書にもとづいての報告でした。

 

 

 

まず労働時間の現状について、労働時間は低下傾向にある。昨年は1週間に60時間以上働いている雇用者の割合はピーク時の12%から昨年は6.9%まで減少傾向に有るとのとでした。ただ、岐阜県内の約2割の事業所では月80時間以上の時間外・休日労働を行った労働者がいます。休日労働まで入れると、長時間労働をしている人もまだまだいるそうです。

 

 

 

過労死等の状況については、最近では精神障害事案が増えており流れが変わってきているという指摘がありました。過労死の件数については、高止まりとなっているとの報告がありました。

 

事案については、男性の場合には、仕事の内容・仕事量の大きな変化による出来事による発病が多く、女性の場合には、悲惨な事故や災害の体験、目撃をしたという出来事多いとの違いが示されました。ただ、岐阜の場合には、連続勤務、長時間労働が多く、それからセクハラ、職場のいじめ、嫌がらせが主な理由になっているとのこと。私の実感からすると岐阜の方が一般的な傾向を表しているのではないかと思いました。

 

 

 

監督行政についても説明がありました。労働時間に関する法違反の事業所に対する指導、啓発活動の実施を行っているとの説明もありました。

 

厚生労働省は今後も過労死防止の取組を実施していくとのことでした。

 

 

 

つづいては、フロンティーク株式会社の代表取締役三鴨正貴氏からの報告がありました。

 

 フロンティークは、デイサービスの会社です。機能訓練をするデイサービスを行っているとのことでした。

 

 離職率は33.3%であったり、赤字経営であったりという過去がありました。

 

 いまでは60社、150人が見学に来ているそうです。赤字の際にはスタッフにはゆとりがなく、33.3%の人が会社を辞めていった。仕事量が多くて休みが取れない。仕事が多くて残業になる。そんな不満が聞かれたそうです。

 

 これを解消するために、有給休暇を取りやすい環境を作ろうとして、毎週水曜日はノー残業デーとしたそうです。しかし、残った社員に迷惑がかかるので有給休暇はとらない。仕事が終わらないので持ち帰り残業を行うなどのことが起こったそうです。

 

 そこで、問題は仕事量に目をつけました。しかし、仕事量を減らしたらさらなる赤字になってしまう。そこで、仕事の効率化を目指すことにしました。

 

ほうれんそう(報告、連絡、相談)を簡単に。インカムを導入し、離れた人に、みんなに伝わるようにしました。

 

この会社では、日々の記録を残すことが重要な業務でした。手書きで1日4時間かけてかいていました。これについて、社長自身で入力ソフトを開発しました。9割の記録業務を削減しました。

 

 そのおかげで業務が標準化し、他の職種間でも協力できるようになりました。複数ある施設間どうしでヘルプに行けるようになりました。

 

 時間短縮になり、残業は月5時間(1人)となりました。また、従業員が6人減っても、有給取得率は85%。離職率も8.8%と劇的に変化がありました。辞める人もその人の事情で、会社が嫌で辞める人がいなくなりました。

 

 決算も黒字になりました。会社の負債も解消されました。

 

 いまは、みんなで会社の将来を話すようになったそうです。社長と従業員との溝もなくなったそうです。

 

 

 今、全ての社員に歩数計をつけているそうです。それは、歩数=疲労度ではないかと考えたから。そして計ってみたら介護士より看護師の方が歩数が多かった。そんなことから、看護師の業務と介護士の業務の見直しを考えているそうです。

 

 三鴨社長は、赤字改善のために、働き方を考えた結果、従業員も会社もみんながよくなるという理想的な会社経営につながったとのことでした。

 

 

 

 つづいて朝日新聞記者の牧村昇平さんのお話がありました。

 

牧村さんからは、過労死等の遺族50人超を取材した経験からお話しがありました。

 

 

 

 亡くなる方は、本当にさまざま。年齢、仕事、家族構成、仕事ばかりしている人だけではなく、オンオフを切り替えていた方でもなくなる例がある。どんな人も亡くなる可能性があるとの指摘がありました。そんなことから、過労死は「他人事」から「自分事」にとらえたいとのお話しをされました。

 

 

 

 つづいて、自分事といっても自己責任というのはありえない。仕事がすきでやっているという人がいたとしても、それを放置して健康に配慮しなかった会社に責任が生じるのだ。自分だけでなく、職場全体で考えてほしいと訴えがありました。

 

 

 

 牧村さんは、マー君の歌のお父さんの自死の事件の取材のお話をしてくれました。死ぬくらいなら、やめればいいという自己責任論は通用しない。

 

 マー君のお父さんも、正常な考えができなくなる。それほど追い詰められた。その前に長時間労働を防止し、そうなるまえに食い止め無ければならないと思う。「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない状態なのです。

 

 

 

牧村さんの講演はここからご自身の話でした。次のような内容でした。

 

 

自分が過労死の取材をするのは「マー君」の「ぼくの夢」に接してでした。子どもが生まれて、自分がこのような働き方をしていて、妻や子どもが残されたらどうなるんだろうという思いをしました。

 

 

 入社して福島県で警察などをまわる仕事に従事しました。5年後、東京の財務省、国際経済の記事を取材して書いていました。世界中を出張して回っていました。

 

 ハードワークにたえられたので、評価されていたと思います。毎日朝5時半に起床して深夜2時に寝るという生活でした。自分自身が過労死候補生。労働時間は記録していないので分からないくらいでした。心身共にひどい状況でした。

 

 

そんな状態の中で、妻はワンオペ(1人だけで行う)育児という状態でした。妻がある日、死にたいと言い出しました。うつ病でした。そのため、自分は、経済部の内部で話しあいました。国際経済から労働問題の部署へ配置替えになりました。当時は、とても不満でした。メインストリームからの挫折だと感じていました。いまとなっては、妻に助けられた。あのまま働いてたら倒れた、命を落としていたかも知れないと思います。

 

 

 いま心がけていることはつぎのようなことでです。

 

    働く時間の管理をする。

 

    深夜は働かない。

 

    心の病のケアをする。

 

 妻も自分も心の病にならないように。脱ハラスメントを考えて、職場全体を守るということを考えています。

 

 記者の世界は平準化されていません。それでも平準化する方がいいです。特に事務の方は職場のなかで少数。こういうかたに声をかけるようにしています。一番大事なのは、心のゆとりをもつことだと思っています。自分の中ではもっと記事を書きたい、とゆらぐけれども、逃げていい,とも思っています。危ないというもっと手前で。

 

 

長時間労働による過労で、交通事故を起こしてしまう方もいます。危ないと思ったときには手遅れになっています。そのもっと手前で逃げる。逃げてもいいんだと思っておかないと駄目になってしまうのではないかと思っています。逃げてはいいんだと思っています。具体的に考えている訳ではないけれども、心の中では転職活動を、と思っています。高校生に話すときには、いつも転職活動を、と話しています。

 

 

 いまは、夜は仕事をしないというライフスタイルで生活をしています。それは、会社の理解で、成り立っています。朝日新聞という大きな会社で、多くの記者がいるので自分がそのようなスタイルで仕事をすることができます。

 

 

 いまは働いている時間は1日8時間くらい。家事、育児もしているので、結構つかれます。これ以上働いたら、地域生活、育児ができません。8時間働いて、その他の時間は、自分のために使う。自分がリフレッシュできる。休まなければならない。それを身をもって実感しています。

 

 

 

 ここから、また、事例の紹介をされました。

 

 外食チェーン店の事例の紹介です。

 

 エリアマネージャーは、暴力をふるっていました。そのため24歳で死亡した方の事案です。自分は、エリアマネジャーに取材をしました。そのエリアマネージャーはそっとしておいてほしいというだけで、記者からの取材は迷惑そうでした。自分は、心から反省している、遺族に謝罪したい、という対応を期待しました。そのような考えを遺族につなげたら、遺族の悲しみも少しは影響があるかと考えていました。でも、それは無理だということが分かりました。

 

 

 

 牧内さんは、自分がパワハラをしてしまった経験も話しをされました。入社3年目の頃、自分の私生活も大切にしたいという後輩に対し、厳しく叱責をしてしまった。いまは、後輩の置かれている立場や,考え方をよく理解せずに対応したことを後悔しているという率直な話しをされました。そして、それは自分の未熟さに責任があるが、重要な記事を書けという会社の構造が、自分をそうさせているという問題点についても指摘されました。

 

 

 

 過労死の取材を通して、自分自身の働き方を考える。そして、自分の今までのは働き方やパワハラも顧みて、講演をするというスタイルに、大変感銘を受けました。とてもいい講演だったと思いました。

 

 

 つづいて、過労死遺族の伊藤左紀子さんのおはなしでした。

 その内容は、以下のとおりでした。

 

 市役所につとめていた夫の哲さんが市役所から飛び降りてなくなりました。

 

 公園整備の仕事が多忙で、過酷であったこと。パワーハラスメントが行われたことが原因でした。公務災害申請しました。基金では自分の訴えを全面否定されました。裁判では地裁、高裁で私の言い分を認めてもらうことができました。10年かかった争いをおえることができた。市長と面談し、パワハラ防止対策などを約束させた。条例も作られました。市長や、部長も哲さんに謝罪をしました。ことし3月に岐阜過労死をなくす会を立ち上げて、過労死を防止するための活動をしています。

 2018年、岐阜市役所で2人の職員が自死している。無念でなりません。過労死がおきると、家族だけでなく回りも辛い思いをします。基金は、すみやかな認定をしてもらえません。悩みがある人はぜひ相談して欲しいとおもいます。

 

 質疑応答でも、牧内さん、三鴨社長に講演の内容についての質問があり、お二人とも熱心に回答をしてもらいました。

 

 

 

 シンポジウムの開催は、厚生労働省、会社の社長、新聞記者、過労死遺族、みんなを結びつけて過労死防止の輪を広げる機会として着実に根付いて、少しずつ効果を発揮していくと思います。過労死をなくすために、これからも続いていってほしいと思います。

 

 

過労死認定基準のみなおし

 2019年10月31日のNHKは、次のように報道しました。 

 

「長時間労働などが原因の過労死を認定する基準について、厚生労働省は、およそ20年ぶりの見直しに向けた検討を始めることになりました。

 これは、30日に開かれた過労死防止対策を議論する超党派の議連の総会で厚生労働省が明らかにしました。」 

 

 同年11月1日の毎日新聞は、次のように報道しています。

 

「脳出血や心筋梗塞(こうそく)など脳・心臓疾患による過労死の労災認定基準を、厚生労働省が約20年ぶりに見直す。2020年度に有識者会議を設けて検討を始めることを、加藤勝信厚労相が1日の閣議後記者会見で明らかにした。うつ病など精神疾患による過労死の労災認定基準も、21年度から見直しに着手する予定だ。 」

 

 厚生労働大臣が記者会見で明らかにしたのですから、かなり確実な報道と考えられます。

 

 過労死弁護団全国連絡会議は、2018年5月に、脳・心臓疾患についても、精神障害について認定基準を改正するように意見書を発表しています。意見書の内容はホームページに公開しています。

 

 厚生労働省が、かならずしも私たちの考えているような改正を目指しているとは限りません。

 しかし、これによって、今まで認定されていない人が、認定される余になる可能性があります。

 

 厚生労働省の動きを注視していく必要があります。 

2019年 過労死防止等対策推進シンポジウム 


 厚生労働省主催の過労死等防止対策推進シンポジウムが、今年(2019年)も全国の都道府県で行われます。

 愛知県でも2019年11月15日に行われます。

 今年の内容は以下のとおり。

 

 愛知労働局からの現状報告  愛知労働局 労働基準部監督課

 キャッチネットワークの働き方改革 

  株式会社キャッチネットワーク 代表取締役社長 松永 光司 氏

 基調講演

  「息子の過労死から過労死ゼロを願う」

  西垣 迪世 氏(全国過労死を考える家族の会 兵庫代表)

 

 申し込みはホームページから。

 

複数就業者への労災保険給付の在り方

 複数就業者への労災保険給付について、現在議論がなされています。

 第78回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会資料として、現在の労災認定制度の不合理性について分かる資料があります。

 

複数就業者に係る労災認定の運用状況(①脳・心臓疾患、精神障害事案)
第78回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会資料 より

 同じように週70時間の長時間労働をしても、一つの職場で長時間労働があった場合には、労災認定がなされるのに対し、一つの職場では週40時間、一つの職場では週30時間の労働をした場合には労災認定がされない可能性があることを指摘しています。

 
「成長戦略実行計画・成長戦略フォローアップ・令和元年度革新的事業活動に関する実行計画」 (令和元年6月 21 日閣議決定)においては、 「副業・兼業の 場合の労災補償の在り方について、現在、労働政策審議会での検討が進められ ているが、引き続き論点整理等を進め、可能な限り速やかに結論を得る。」とされました。

 

実際の論点は二つあります。
 
〇 複数就業者の業務上の負荷について
 現行制度では、一方の就業先での業務上の負荷だけでは労災認定さ れないが、複数の就業先での業務上の負荷を合算したのと同様の業務 上の負荷が1か所の就業先であったものと仮定すれば労災の認定基準 を満たす場合についても、労災認定されていない。

 

〇 複数就業者の労災給付額の在り方について
 災害発生事業 場の使用者から被災労働者に支払われていた賃金を基本に算定する 「給付基礎日額」等により給付額を決定しており、複数就業先の全て の賃金額を合わせたものを基礎として給付額を算定していない。このため、現行制度では、必ずしも労災保険制度の目的である被災 労働者の稼得能力や遺族の被扶養利益の喪失の填補を十分果たしてい ない可能性がある。

 

 これらについて第77回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会資料で、労働者側、使用者側の意見をまとめた資料があります。

 

 使用者側の意見をみると、
 給付の在り方について
「生活が苦しいといった事情により、やむを得ず兼業・副業をしている労働者も多く、そうした労働者が労働災害で被災した場合に、労働災害が発生した就業先の賃金のみを基礎として労災保険給付が行われ ている現状は、労働者保護という観点から見直すべきであるというこ とについては理解する。 」
 などの意見もあり、一部理解されているものの、まだ、様々な論点をしてきしており、抵抗の大きさを感じます。

 業務上の負荷については、
 「負荷の合算については、企業の安全配慮義務にも関係し、労働時間の通算をする、しないという点が煮詰まっていない中で、業務上の負荷の合算という議論だけが先走りするのは危険ではないか。むしろ、 業務上の負荷が合算されるということで、長時間労働を引き起こす危 険性があるのではないか。 」
 など、使用者側の反対意見が主張されています。
 
 日本労働弁護団は、2019年6月12日「本業の充実化や副業・兼業労働者に対する適切な保護を実施しないまま副業・兼業を推進することに反対する緊急声明」を発表しています。
 そのなかで、日本労働弁護団は、「現状の労災実務では、副業・兼業をしていたとしても、本業先と副業先との労働時間の通算が認められていない上、労災の支給額の算定は、労災に遭った勤務先から得ている賃金のみを基に行われている。そのため、本業と副業とを合わせて過労死ラインを超える長時間労働をしていたとしても、労災としては認められない上、仮に労災認定がされたとしても、労災に遭う前の賃金保障はされないため、被災者は生活の困窮に直面することになる。これでは、安心して副業・兼業に従事することなどできない。国家的な方針として副業・兼業を推進していくのであれば、これまでの実務運用を改め、万が一労災に遭ってしまった場合の補償をきちんと行うための法整備を進めていく必要がある。」と指摘しています。

 

 過労死弁護団全国連絡会議の共同代表松丸正弁護士は、中日新聞2019年8月12日の記事で取材に答えて「副業、兼業する大部分の人は収入が少なく、暮らしに困っている。長時間労働の末に過労死するケースもある。川口労働基準監督署(埼玉)が七月、副業をして死亡したトラック運転手を過労死認定したケースでは、本業と副業の労働時間を合算した結果、一日の法定労働時間(八時間)を超えていた。
 また、副業先で法定労働時間を超えて働いた場合、副業先が割増賃金を払う必要があるが、私は時間外手当が払われているケースを聞いたことがない。労働者も解雇を恐れ、「払ってくれ」とは言えない。」などと指摘し、副業についての条件が整わないまま推奨されると、過労死の危険が増加すると指摘しています。

 

 今後労働法制審議会労働条件分科会労災保険部会では次のような日程で議論がすすめられる予定です。早期にこの問題点を適切に改正することが望まれます。議論の推移を見守りたいと思います。

 

第78回 ○複数就業者への労災保険給付の在り方について(労災認定等現行制度の説明)
第79回 ○中間とりまとめで提示された論点の検討①

    《負荷の合算について》

     ・負荷の範囲・認定方法に係る論点整理案

    《特別加入制度の在り方について①》
第80回 ○中間とりまとめで提示された論点の検討②

    《負荷の合算について》

     ・負荷の範囲

     ・認定方法に係る論点整理案

     ・責任と負担に係る論点整理案

    《特別加入制度の在り方について②》
第81回 ○中間とりまとめで提示された論点の検討③

    《額の合算について》

     ・保険料負担の軽減策、賃金額の把握等に係る論点整理案

    《負荷の合算について》

     ・負荷の範囲

     ・認定方法に係る論点整理案

     ・責任と負担に係る論点整理案

    《特別加入制度の在り方について③》
第82回 ・その他の論点

 

平成30年の過労死等の労災補償状況

 厚生労働省が、2019年6月28日、平成30年度の過労死等の労災補償状況を発表しました。

 以下、抜粋して引用します。

 

1 脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況

(1)請求件数は877件で、前年度比37件の増となった。

(2)支給決定件数は238件で前年度比15件の減となり、うち死亡件数は前年度比10件減の82件であった。 

 

2 精神障害に関する事案の労災補償状況

(1)請求件数は1,820件で前年度比88件の増となり、うち未遂を含む自殺件数は前年度比21件減の200件であった。

(2)支給決定件数は465件で前年度比41件の減となり、うち未遂を含む自殺の件数は前年度比22件減の76件であった。

 

いずれも、請求件数が増えています。もっとも認定件数は減少しています。

特に自殺の認定率は、平成29年の47.1%から38.2%と大幅に減少しています。

認定を厳しくしているのではないか、疑いたくなります。

 

この傾向がつづくのか、一過性のものなのか、来年統計を注目していく必要があります。

 

未和 NHK記者はなぜ過労死したのか

未和 NHK記者はなぜ過労死したのか

 未和 NHK記者はなぜ過労死したのか 尾崎孝史著 岩波書店

 

 読みました。

 

 未和さん亡くなる前の1か月の労働時間は、労基署の認定でも159時間。弁護士の計算では、209時間を超えていたようです。

 明らかな長時間労働。31歳の若さでなくなった本人。痛ましい話しです。

 

 この本は、NHKでドキュメンタリー番組の映像制作に携わった映像制作者。写真家。

 多くの人への取材で、未和さんの亡くなる直前の労働実態を明らかにしていく前半は、NHK記者の仕事の内容が具体的に分かり、興味深いものでした。

 あの志布志事件 12人無罪の報道のときにNHK鹿児島放送局で、レポートをしたのも未和さんだったことがわかりました。

 

 明らかな労災であり、労基署が認定し、その後調停和解をしたこと、その際には公表しなかったこと、その後お母様が病気でしばらく動けない状態であったことなどの経過は、過労死事件の担当してきた当職にも経験があります。

 

 そして、そのNHKが、内部でも未和さんのことが知られておらず、決して働き方が変わったとは思えない状態であったことを知ったときの遺族の気持ち。残念だったでしょう。

 

 ご家族が公表した理由、そしてこの著者がこの本で伝えたかったことは、未和さんの死を無駄にしてほしくない。ということだと思います。

 それにもかかわらず、そのための対応が何もなされてないNHKへの怒りの気持ちを伝えたいということでしょう。氏名を公表してよく立ち上がられたと思います。

 そのことで、この本ができ、過労死の悲惨さがより世の中に伝わることになったのだと思います。

 

 未和さんが亡くなった長時間労働の原因は選挙の取材があったことでした。少しでも早く、他の放送局より早く当選確実をだすために、命まで犠牲にして取材をしなければならないのか。

 選挙のありかた、選挙報道のありかたについても、考えさせられました。

 

 未和さんには、「裁量労働制」がとられていましたた。つまり、労働時間によって賃金が変わらないのです。賃金が絡まなければ、労働時間の管理はどうしても甘くなります。それが長時間労働の温床です。時間をかけないと成果が上げにくい記者の仕事では、なおさらです。裁量労働制に問題があることも改めて感じました。

 

 とりとめもなく感想を書きました。この事件をとおして、いろいろな問題を知ることができました。

 おすすめしたい本です。

 

 

 

過労死110番 今年も行いました

 今年も6月15日に、過労死110番を行いました。

 全国34か所。

 愛知県では、水野幹男法律事務所でおこないました。

 事前の新聞報道でみたかたたなどから8件の電話相談がありました。

 

 ご家族が、毎日長時間労働をしているなど深刻な相談もよせられました。

 

 これからも過労死予防、過労死被害救済のために尽力する予定です。

パワーハラスメントについて

パワーハラスメントの由来

 パワーハラスメントということばは、2001年、クオレ・シー・キューブ株式会社、の社長(当時)岡田康子さんが提唱した言葉でした。日本で作られた和製英語です。

 

裁判例に現れたパワーハラスメント

 「パワーハラスメント」という言葉が判決の中での指摘されるようになりました。

 たとえば、当職が担当した中部電力事件名古屋高等裁判所平成19年10月31日判決では次のような指摘がありました。

 

 前記認定のとおり,Fは,Aに対して「主任失格」 「おまえなんか,いてもいなくても同じだ 」などの文言を用いて感情的に叱責し かつ結婚指輪を身に着けることが仕事に対する集中力低下の原因となるという独自の見解に基づいて,Aに対してのみ,8,9月ころと死亡の前週の複数回にわたって,結婚指輪を外すよう命じていたと認められる。これらは,何ら合理的理由のない,単なる厳しい指導の範疇を超えた,いわゆるパワー・ハラスメントとも評価されるものであり,一般的に相当程度心理的負荷の強い出来事と評価すべきである(判断基準も,心理的負荷の強い出来事として 「上司とのトラブルがあった」を上げている。 )。なお,控訴人は,指輪に関するの発言を聞いたAの反応に照らし,同人に心理的負荷を与えるような発言であったとは認められないと主張するが,出来事に対する対応の仕方は人により様々であり,明白に不快感を表明しなかったからといって,心理的負荷が軽いとは判断することができないことは言うまでもないし,前記認定のように,Aが「星の指輪」という歌を好み,カラオケで練習していたこと,Fの命令にもかかわらず,死亡の前日まで会社でも家庭でも指輪を外さず,自殺当日これを外して妻のドレッサーの小物入れに入れていったこと等からすると指輪に対する強いこだわりが見て取れるところである。 

 また一方,Fも,前記認定のとおり,死体確認の際 「いつも指輪をしていたよね 」と発言し,N に対して 「私の指導や指輪のことがAの死亡の原因だとすれば,私も身の振り方を考えなければいけないね 」 と話したことを認めていること等からすると,指輪のことが気に掛かっていたか,あるいは,指輪がAにとって大きな問題であることを察していたものと認められるのである。これらの事実からして,上記の控訴人の主張は採用することができない。(名古屋高等裁判所平成19年10月31日判決)

 

厚生労働省の示したパワーハラスメントの定義

 パワーハラスメントについて、厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」は、次のように定義づけを行いました(2012年)。

 

 「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。」(職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング報告・5頁)

 

 ここで、「職場内での優位性」には、「職務上の地位」に限らず、人間関係や専門知識、経験などの様々な優位性が含まれる。上司から部下へのいじめ・いやがらせだけでなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して行われるものも含むとされています。

 

 一方、業務上の必要な指示や注意・指導を不満に感じたりする場合でも、業務上の適正な範囲で行われている場合には、パワーハラスメントにはあたらないとされています。

 

 パワーハラスメントは、以下の6類型が例示されていますが、これに限りません。

 (厚生労働省ホームページ明るい職場応援団)。  

 

  ア 身体的な攻撃 

    叩く、殴る、蹴るなどの暴行を受ける。  

 

  イ 精神的な攻撃

    同僚の目の前で叱責される。他の職員を宛先に含めてメールで罵倒する。

    必要以上に長時間にわたり、繰り返し執拗に叱る。  

 

  ウ 人間関係からの切り離し

    1人だけ別室に席を移される。

    強制的に自宅待機を命じられる。送別会に出席させない。  

 

  エ 過大な要求

    新人で仕事のやり方もわからないのに、他人の仕事まで押しつけられて、みな先

   に帰ってしまった。

    業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害。

 

   オ 過少な要求

    運転手なのに営業所の草むしりだけを命じられる。

    事務職なのに倉庫業務だけを命じられる。

 

  カ 個の侵害

    交際相手について執拗に問われる。妻に対する悪口を言われる。

 

 

岡田康子氏の指摘

 円卓会議ワーキング・グループ、及び円卓会議のメンバーで、パワーハラスメントということばを提唱した株式会社クオレ・シー・キューブの代表取締役の岡田康子氏は著書の中で、パワーハラスメントの特徴として次の点を指摘しています。  

  ア NOと言えない力関係がある  

  イ 侮辱された感覚を伴う  

  ウ 誰もが被害者にも加害者にもなる

  エ エスカレートする  

  オ 言語と非言語で行われる  

  (「パワーハラスメント」 日経文庫 )   

 

精神障害の認定基準

 厚生労働省が策定した「心理的負荷による精神障害の認定基準」(2011年12月)は、上記円卓会議がおこなわれるまえであったので、「パワーハラスメント」という言葉は使われていません。

 

 ここでは、「(ひどい) 嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」場合の平均的心理的負荷を「Ⅲ」としています。

 そして、以下のような場合を心理的負荷の強度を「強」である例としています。

・ 部下に対する上司の言動が、業務指導の 範囲を逸脱しており、その中に人格や人間性を否定するような言動が含まれ、かつ、これが 執拗に行われた

・ 同僚等による多人数が結託しての人格や 人間性を否定するような言動が執拗に行われ た

・ 治療を要する程度の暴行を受けた

 

 また、以下のような場合を新提起負荷の強度を「中」である例としています。

・ 上司の叱責の過程で業務指導 の範囲を逸脱した発言があった が、これが継続していない

・ 同僚等が結託して嫌がらせを 行ったが、これが継続していない

 

 事実関係が具体例に合致しない場合には、「心理的負荷の総合評価の視点」の欄に示す事項を考慮し、個々の事案ごとに評価します。

 「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」場合については、「・嫌がらせ、いじめ、暴行の内 容、程度等 ・その継続する状況 」を考慮して評価することになります。

 

 中に当たる場合にも、他に、心理的負荷をあたえる出来事がある場合には、複数の出来事がある場合として、全体として評価することになります。

 

 過労死弁護団全国連絡会議では、この認定基準について不十分であるとして、2018年に意見書を発表しています。

職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会

 2018年(平成30年)3月30日、「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」報告書が公表されました。 

 

 この検討会は、「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)において、「職場のパワーハラスメント防止を強化するため、政府は労使関係者を交えた場で対策の検討を行う」とされたことを踏まえ、実効性のある職場のパワーハラスメント防止対策について検討するため、2017年(平成29年)5月から10回にわたり開催されました。

 

 この報告書では、パワーハラスメントの概念については次のように説明されています。

【職場のパワーハラスメントの要素】

① 優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること

② 業務の適正な範囲を超えて行われること

③ 身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること

 

 また、この報告書では、パワーハラスメントの態様について詳細な分類を加えています。

 

 実際に問題になっている事例については、その線引きが困難な場合もあり、同報告書も最終的には総合的な判断であると指摘しています。

 

民法改正 過労死事案の使用者に対する損害賠償請求の時効

過労死の場合の安全配慮義務違反の時効

 過労死事案の救済方法には、労災請求と使用者への損害賠償請求という方法があります。

 死亡事案の場合、労災請求の時効は5年。使用者への損害賠償請求については10年です(民法167条2項)。死亡した日の翌日から計算します。

 交通事故の場合には、事故の日の翌日から3年で時効になります(民法724条)。

 

 過労死事案の場合、まず、労災請求をし、労災が認定された後、使用者に対し損害賠償請求をすることがあります。

 労働基準監督署長が、労災と認めてくれれば、3年以内に損害賠償請求をすることもまにあいます。

 しかし、労災請求をするまでに時間がかかる場合もあります。労災請求をして認められず、審査請求、再審査請求をする場合もあります。 

 それでも認められず、行政訴訟を提起する場合もあります。高等裁判所、または最高裁判所でようやく結論が出る場合があります。10年近くかかる場合もあります。

 

 損害賠償請求は、労災が認定されてから行うこともよくあります。労災の手続きの結果が損害賠償請求権のありなしの参考にされるからです。

 

 名古屋市バス事件は、行政事件で名古屋高等裁判所で勝訴し、その裁判が確定した後に、損害賠償請求を提起しています。提訴したのは、息子さんが自死したときから9年をすぎていました。

民法改正と安全配慮違反の時効

 2020年4月、改正民法が施行されます。

 改正民法では、民法の債権の時効は「権利を行使することができることを知ったとき」から5年で時効になると定められました。(改正民法166条)

 

 過労死事案の死亡事案の場合、死亡した日が、「権利を行使することができることを知ったとき」になるでしょう。

 

 日弁連編集の「実務解説 改正債権法」(2018年・弘文堂)では「ただし、とりわけ労働契約上の安全配慮義務違反や医療過誤に基づく生命・身体の侵害など債務不履行による損害賠償請求については、そのような侵害が発生して確定したことが明らかな場合は、改正前民法に比べ、そのことを知った時から5年間で時効消滅する(民法166条1項1号)点で短期化しているので注意が必要である。」とされています。安全配慮義務違反のように権利行使をできることをが明らかな場合には、時効期間がこれまでの10年から5年に変わるのです。

 

 なお、人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効の特例に関する規程が定められ、不法行為に基づく損害賠償請求をする場合も時効期間は5年とされました。

 人の生命・身体の侵害による損害賠償請求については、債務不履行を根拠にする場合も、不法行為を根拠にする場合にも「知ったとき」から5年で時効になるとされたのです。

 

 冒頭の述べたとおり、労災申請をしている間に5年の時効期間はすぐに来てしまいます。

 損害賠償請求と労災認定訴訟を同時に提訴をしなければならないケースが多くなるかも知れません。

 

経過措置

 それでは、現在発生している過労死事件については、いつの法律が適用されるのでしょうか。

 これは、次のように定められています。

 

 「施行日前に債権が生じた場合」又は「施行日前に債権発生の原因である法律行為がされた場合」には、その債権の消滅時効期間については、原則として, 改正前の民法が適用されます。

 

 雇用契約の使用者が安全配慮義務を怠ったことによって労働災害が発生した場合における労働者の使用者に対する損害賠償請求権(債務不履行)については、労働契約が「原因である法律行為」にあたるので、契約締結時が基準となると解されるようです(一問一答民法(債権関係)改正)

 したがって、過労死事件が発生した使用者との雇用契約が2020年4月1日より前であれば、死亡や労災による事故、病気が発症したのが2020年4月1日以降であっても、時効は旧民法が適用され10年となります。

 ただし、中間利息の控除、利率については、改正民法施行日以降に死亡や労災による事故、病気が発症した場合には新法が適用されることになります(附則第17条第2項)

 

 一方で、人の生命・身体の侵害による不法行為に基づく損害賠償請求の短期の権利消滅期間を5年とする特則を設ける改正については、新法の施行日(2020年4月1日)において消滅時効がすでに完成した場合でなければ、新法が適用されます(附則第35条2項)。

  

となるように考えられます。

 

 いつ、会社に入社したか、いつ事件が起きたのかの両方で、時効期間、法定利息、中間利息控除に違いが生じることになります。下に志望事案についてその関係をまとめてみました。

(この記載について責任を持つものではありませんし、正確性を期すためには、さらに説明が必要なので、各自法改正についてはご自身で確認してください。)

 

労働契約締結時期 死亡 中間利息控除 法定利率※ 時効
2020年4月1日より前 2020年4月1日より前 旧民法 旧民法 旧民法(不法行為3年 債務不履行10年)
2020年4月より前 2020年4月1日以降 改正民法 改正民法 債務不履行 旧民法(10年) 不法行為 新民法(但し時効完成していない場合)(5年)
2020年4月1日以降 2020年4月1日以降 改正民法 改正民法 改正民法(不法行為5年 債務不履行5年)

 ※旧民法 5%  改正民法3%

働き方改革法施行

  2019年4月、働き改革法案が一部施行されました。今後順次施行されていきます。

 

  1. 働き方改革第一の柱 

 働き方改革法の第一の柱は、労働時間の見直しです。 内容として以下の点があります。

  ⑴ 残業時間の上限を規制する

  ⑵ 「勤務間インターバル」制度の導入を促す

  ⑶ 年期有給休暇の取得を企業に義務づけ

  ⑷ 月60時間を越える残業は、割増賃金を引き上げる 

  ⑸ 労働時間の状況を客観的に把握するように、企業に義務づける

  ⑹ 「フレックスタイム制」により働きやすくするため、制度を拡充  

  ⑺ 「高度プロフェッショナル制度」を新設 

  以下、⑴,⑶,⑷について解説します。

 

 2.残業時間の上限規制

 

 残業時間の上限を規制するというのは、不十分ですが、労働基準法の大改革だとされています。

 そもそも、「大改革」がなされた理由は以下のようなものです。労働基準法では労働時間の原則は1日8時間、1週間40時間とされています。法は、それ以上は働いてはいけないとされています。その趣旨は、長時間労働で健康を害さないようにするためです。

 しかし、この原則だけだと不都合な点もあります。労働者の中にも、それ以外の時間も働いてもっと収入を得たいという人がいるかもしれません。使用者は、仕事に慣れた人にもう少し働いてもらう方が、人を増やすより都合がよい場合があるかも知れません。  

 そこで、労働基準法36条は、労働者と使用者が労基法36条の条件に合った協定を結んだ場合には例外的に残業をすることができる、違法とはならないとしているのです。ただしその場合には割増賃金を支払わなければなりません。

 時間外の割増率は以下のとおりです。

 時間外 1.25   休日 1.35  深夜1.25      

 割増賃金を支払う趣旨は、過度な時間外労働や休日労働を抑制するところにありました。

 しかし、このような例外を設けたら実際に不都合なことがおきました。36協定例外の規制が緩く、長時間労働による過労、健康被害、離職、過労死、過労自殺 が社会問題になったのです。

 電通の髙橋まつりさんの事件等はまだ記憶に新しいところです。

 

 見直しの概要は、法律で残業時間の上限を定め、これを超える残業はできなくなるというものです。

 原則は、月45時間 、年360時間。臨時的な事情があって労使が合意する場合も年720時間、複数月平均80時間以内(休日労働含む)、月100時間未満(休日労働を含む)となっています。

 45時間を超えることができるのは年間6か月までです。

 守らないときには罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)の可能性があります。

 大企業は、2019年4月から、中小企業も2020年からこの改正法が適用されます 。

 医師、建設業、自動車運転は2024年からです。この点、施行されるまでのあいだに健康を害する人が生まれるのではないかと心配です。

 

 

 3. 年5日の年次有給休暇の取得を、企業に義務づける

 

 現在、有給休暇の法廷付与日数は、以下のとおりです。

   

 

勤続年数

6か月

16か月

26か月

36か月

46か月

56か月

66か月

年次有給休暇付与日数

10

11

12

14

16

18

20

 

 

 有給休暇は、労働者の健康で文化的生活に資するために、労働者に対し、休日のほかに毎年一定日数の休暇を有給で保障する制度です。しかし、年間の有給休暇の取得率が低いこと。その原因は、労働者が有給休暇の申し出をしにくいことにありました。そこで、使用者側から、労働者の希望を聞いて年間5日は有給休暇を取ってもらうことになりました。

 

 

 

 4 月60時間をこえる残業は、割増賃金を引き上げる【資料10

 

 

  割増賃金は、以下の2つの趣旨で支払うことになっています。

 

   ① 使用者に割増賃金を支払わせることによって時間外労働等を抑制しする

 

   ② 通常の労働時間又は労働日に付加された特別な労働なのでそれに対しては一定の補償をさせる。

    しかし、それでも長時間労働はなくなりません。そこで、月60時間をこえる場合には割増賃金を1.5倍支払うことになっています。これは、特に長い長時間労働を抑制するためです。現段階では、中小企業には適用しないことになっています。しかし、2023年からこの制限はなくなります。

  どんな使用者も月60時間を超えた場合には1.5倍の割増賃金を支払わなければなりません。

 

5 働き方改革

    働き方改革のもっとも大きな目的は長時間労働の抑制です。このなかに「高度プロフェッショナル制度」が含まれています。このため、過労死を考える家族の会は。強く反対していました。

    時間外労働の抑制は十分とはいえません。

    それでも、法律で時間外労働の上限が定められ、これまでより規制が厳しくなったことは。確かです。各使用者がこれをふまえて、長時間労働をなくすための工夫をしていくことを期待したいと思います。

 

 

過労死 その仕事、命より大切ですか

過労死 その仕事、命より大切ですか 牧内昇平

 朝日新聞記者の牧内昇平さんの著書。過労死、その仕事、命より大切ですか を読みました。

 すこしだけ、協力をさせていただいたので著者の牧内さんから献本していただきました。感謝です。

 

 お礼をかねて、本の紹介をします。

 

 この本では11の事例が紹介されています。

 

 それぞれの事例は、新聞記者である牧内さんの視点から紹介されています。

 

 弁護士の視点では気がつかない、遺族の言葉。気持ち。過労死,過労自殺を生み出す社会の問題点を具体的に指摘しています。

 

 コラムや、事例の紹介の間に、過労死、過労自殺の労災の仕組みなどにも触れ、全体として過労死の問題を網羅的に知ることもできます。過労死の問題にとどまらず、固定残業代など労働一般に関する問題にも触れられています。

 

 新聞記者の書いた文書ですので分かりやすい。

 しかも、NHK記者の過労死の記事などは、自分の労働にも引きつけて感想ものべられていて親しみやすい内容にもなっています。

 パワハラの加害者や、過労死を興した企業に対する取材もしており、その内容も紹介するなど踏み込んだ内容にもなっています。

 

 とりあげられた事例の中には、労災と認められなかった事案も含まれていました。

 行政訴訟の1審で勝訴しながら、高裁で逆転敗訴し、最高裁でも認められず、損害賠償請求訴訟でも敗訴だったという事例。本当に、苦労されたし、無念だったと思います。

 労災と認定される事例は紹介されますが、労災と認められない残念な事例は、なかなか紹介されません。しかし、認められない事例こそ、過労死問題の問題点を示しているといえます。このような、事件報道では取り上げられることが少ない事例を取り上げて紹介していることも意義を感じます。

 

 また、和解した事例もとりあげられています。和解の事案は、判決文が作成されないので、判例集などにも載らず、事案の経過が知られない場合もあります。そういう意味で和解の内容やそこに至る経過を取材し、本になるのは、記録としても貴重なものといえます。

 

 個人的には、岐阜県庁の事件では、いつもご遺族を励まし、支え、証拠を集めて戦ってくださった岐阜県職員組合の内記淳司さんが紹介されていることが嬉しかったです。私も大変お世話になりました。

 

 この本を作成するためには膨大な取材が必要だったでしょう。家族は様々な事情で、皆が取材に応じられるわけではありません。大変な苦労があったと思います。

 

 ぜひ、これを読んで過労死、過労自殺の問題を知ってもらいたいと思います。

 

 ご自身が、過労で病気したり、ご家族が過労で死亡したりした場合にも、参考になることがたくさん載っています。そういう方の元にも届くといいと思います。

 

 多くの人に手に取ってもらいたい本です。

 

 

岐阜 過労死をなくす会

 2019年3月16日土曜日、岐阜市内で、過労死をなくす会の設立総会・記念行事が行われました。

 この会は、岐阜市役所で2007年11月に自死をした伊藤哲さんの配偶者、伊藤左紀子さんが公務災害訴訟において、公務災害認定をする勝訴判決を得た後、伊藤左紀子さんを中心に検討してきた会です。

 

 会は、①過労死等防止のための各種啓発活動②過労死遺族の支援・精神的ケア③自治体を中心とした労働時間・ハラスメント等の実態調査などを考えています。

 

 会は、弁護士、医師、労働組合役員、経営者などにも参加を呼び掛けるだけでなく、市会議員、県会議員など地方議員にも参加を呼び掛け、幅広い人と一緒に過労死をなくす運動を目指しています。

 

 

 

 当日は、私も基調報告として、伊藤さんの裁判の経過、支援する会が、遺族を励まし、世論を作るとともに、運動の中で情報を集め、議論することで説得的な裁判の主張をすることにも大きく影響したことを報告しました。

 

 過労死をなくす会は、過労死をなくすこと、遺族の支援もするとしています。岐阜にこのような会ができたことは本当によいことです。

 会の準備段階で、自治体にアンケートした結果によれば、2017年1年間で、岐阜県の市町村で、脳・心臓疾患で死亡した人は4人、自死が4人いたそうです。

 

 これらの中には公務災害の可能性があるものもあるかも知れません。しかし、公務災害の請求をした方はおられないようです。

 

 もし、公務災害であるのに、請求を躊躇しているという事情があるのであれば、相談して欲しいと思います。そのために、過労死をなくす会 の存在が、きっかけになってもらうといいと考えています。

 

 死亡したかたの公務災害、労災の認定を求めたり、企業や行政の責任追及をしているだけでは過労死はなくなりません。過労死を予防するためにもこの会が大きな役割を果たすことを期待したいと思います。

 

 過労死をなくす会が、過労死の問題でこまっている人の役に立つことを祈念しています。

2019年明けましておめでとうございます

2019年1月1日 イノシシ 謹賀新年 神宮西駅

 2019年明けましておめでとうございます。

 昨年、過労死弁護団全国連絡会議は満30年でした。

 過労死、過労自殺の認定基準について、意見書を作成して厚生労働省に提出しました。

 

 いまも過労死、過労自殺の事件が多く報道されています。

 過労死等防止対策推進法にもとづく過労死防止シンポや、過労死啓発授業で、過労死のことをお話しさせていただく機会を持つことができました。過労死の事件がまだまだなくならず、また、厳しい労働実態にある職場があることをききます。

 まだまだ足りませんが、地道に積み重ねていきたいと思います。

 

 昨年は問題がありながら働き方改革関連法案が通過しました。

 労働時間の上限が定められました。実際にこの法律が守られるように期待します。

 

 今年判決が予定されている事件があります。また、今年がいよいよ山場の裁判事件があります。

 一つ一つが良い結果に結びつくように、そして、それが過労死防止に結びつくように、尽力していきたいと考えております。

 

 本年もどうぞよろしくお願いします。

 

2018 過労死等防止対策推進シンポジウム 愛知会場

 今日は、過労死等防止対策推進シンポジウム愛知会場が開催されました。

 

 厚生労働省主催。

 

 内容は、労働局の挨拶、猿田正機中京大学名誉教授の講演、能村盛隆大和ハウス工業株式会社 経営管理本部 執行役員人事部長 のお話し。

 

 そして、田巻紘子弁護士、猿田教授、能村さんのパネルディスカッション。

 

 おわりに、過労死遺族の吉田さんのお話。

 

 閉会の挨拶は私がさせていただきました。

 

 企画から参加しましたが、良い内容になったと思います。

  会場の質問を質問用紙で集めたのですが、たくさんの質問がありました。長時間労働を見直さなければならない。その総論は賛成でも、現場は簡単にいかないと悩んでいます。今回は、スウェーデンでは、そして、大和ハウスでは、どう考えて取り組んでいるか。それをパネルディスカンションで取り上げてもらい話してもらいました。日本では難しいのではないか、大企業の取組は中小企業では難しいのではないか、具体的な質問がありました。

 質問を募集したために、参加した皆さんも、聞きたいことが聞けたシンポになったのではないかと思っています。

 

 そして、労働時間短縮。難しいことですが、スウェーデンでも、日本でも、発想を転換すれば、そして、本気で取り組めば実現できる!というメッセージになったと思います。

 

 さらに、最後に遺族のお話をお聞きし、難しくても、命を守るためにはやらなければならないことだと確認できたと思います。

 

 わたしは、岐阜と愛知のシンポに出席しました。

 このようなシンポが全国の都道府県で行われています。

 

 当日はNHKのニュースで報道されました。一分半程度のニュースですが、多くのこの地域の人が見てくれたと思います。過労死は防止しなければならない。そのようなシンポが、この啓発月間の11月に日本のあちことでいわれていること。チラシ、報道でみんなが認識すること。これらの啓発活動が過労死等防止の一歩になればと思います。

 

 

 公害

 薬害

 交通事故

 自殺

 生活習慣病

 ガン

 

 そのほか、いろんな病気で若くして命を失うような悲しい問題があります。

 

 日本中でその一つ一つの問題について、啓発し、責任を追及し、取り組んで少なくすることができています。

 

 過労死等もきっと無くすことができると信じたいです。

 このような一つ一つの集会が、過労死等をなくすために力になっていくと信じたいです。

過労死等防止対策推進シンポジウム 岐阜会場 開催

過労死等防止対策推進シンポジウム岐阜会場2018

 2018年11月14日 過労死等防止対策推進シンポジウム 岐阜会場が開催されました。

 

 内容はプログラムにあるとおりです。

 私も労働局のお話しのあと、安全配慮義務違反についてお話をしました。

弁護士岩井羊一 過労死弁護団全国連絡会議

   このあと三承工業株式会社さんの「社員が輝く仕組みづくり」と題した報告がありました。

 社員が輝く仕組みを作ったら働きやすくなり、会社の業績もアップ。とても参考になる発表でした。

 

 そして、天理大学の近藤雄二先生の「過労(自)死を産み出さない仕組みと働き方を求めて」という講演。

 労働局、弁護士、企業、医師それぞれの立場で、過労氏を防止するための話を聞くことができました。

 そして、過労死遺族のお話。

 

 2011年に夫を亡くされた女性。そのとき小学生だった子どもが中学生に。そのとき小さかった子どもは小学校5年生に。

 当たり前の家族が、ある日突然夫、お父さんを失う悲しみ。

 裁判で労災は認められたけれども、亡くなった人は帰ってこない。

 そのことを改めて心に留めました。

 

 参加した方が、過労死があってはいけない。そう思って会社に、自宅に帰っていただけたら幸いです。

 

 当日、中日新聞の、新聞切り抜き作品コンクールで「働き方改革」をテーマにし賞をとられた中学生、高校生の2作品が展示されました。

 中日新聞 切り抜き作品コンクール受賞作品一覧

 それぞれ新聞記事を上手く整理し、自分の考えをしっかり述べているのが印象的でした。

翌日の中日新聞岐阜県版にも記事が掲載されました。

労働判例の遊筆に掲載されました 

 労働判例を掲載している月2回発行の「労働判例」という雑誌。

 私も定期購読しています。

 このたび労働判例の2018年11月1日号 1185号の巻頭の「遊筆」の欄に、私のコメントが掲載されました。「過労死等の認定基準の改定を」と題し、まさに過労死等の認定基準の改定をもとめる内容のコメントです。

 11月は、過労死等防止対策推進法に基づく過労死防止月間。その月間を踏まえてのコメント、ということと、今年過労死弁護団全国連絡会議発足から30周年。そのような節目のときに「労働判例」に過労死弁護団の立場からコメントさせていただきした。