民法改正と賃金債権の時効

賃金 給料 残業代

 厚生労働省は、労働基準法第115条における賃金等請求権の消滅時効の在り方について検討を行うため、学識経験者及び実務経験者の参集を求め、「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」を設置しています。

 

 この検討会の趣旨について、開催要項には、次のように記載があります。

 

 「一般債権の消滅時効については、民法(明治 29 年法律第 89 号)において、 10 年間の消滅時効期間及び使用人の給料に係る債権等の短期消滅時効期間が定められているところであるが、この規定については、今般、民法の一部を改正する法律(平成 29 年法律第 44 号。第 193 回国会において成立)によって、消滅時効の期間の統一化や短期消滅時効の廃止等が行われた。

 現行の労働基準法(昭和 22 年法律第 49 号)においては、労働者の保護と取引の安全の観点から、この民法に定められている消滅時効の特則として賃金等請求権の消滅時効期間の特例が定められており、今般の民法改正を踏まえてその在り方を検討する必要がある。」

 

 これまでは、民法で、使用人の給料についての消滅時効は1年と定められていました。(改正前民法173条) 労働基準法で、労働者の保護と取引安全の観点から、この1年を2年にしていたのです。(労働基準法115条)

 

 また、労働基準法は、災害補償の請求権も2年、退職金については5年と定められています。

 

 しかし、民法の改正で、短期消滅時効の特例が廃止されることになりました。短期消滅時効の趣旨は、比較的少額な債権は、時効期間を短期間にしてその権利関係を早期に決着させることにより、将来の紛争を防止するところにあると言われてきました。しかし、制定後、社会状況の変化によって多様な職業が出現し、取引内容も多様化するなどしたため、特例の対象とされた債権に類似するものも現れました。そうした債権には特例が適用されず、特例の対象債権との間で時効期間に大きな差が生じることから、特例自体の合理性に疑義が生じていました。このため、改正民法では、旧法170条から174条までに定められた職業別の短期消滅時効の特例及び商事消滅時効の特例を廃止したのです。(一問一答 民法(債権関係)改正・筒井健夫・村松秀樹編著 Q27・53頁)そして消滅時効は、「権利を行使することができることを知った時から5年」「権利を行使することができる時から10年」と定められました。

 

 このような民法改正の趣旨からすれば賃金について2年間の時効、労災補償についての2年の時効というのも廃止し、改正民法と同様にするべきではないかというのが問題の所在です。

 

 民法より長い時効期間を定めていたところ、その期間が民法よりも短くなってしまったのですから、民法改正の趣旨によれば、この期間も5年にするのが自然です。

 

 この点、検討会で、労働者側からは、5年にするべきであるという意見が出ています。

 第2回検討会で、日本労働弁護団の古川弁護士からは「改正後の民法を適用すべきで
ある。」という意見書が提出されています。また、第2回の検討会で労働契約に該当しない請負契約に基づく報酬請求権の時効消滅期間と均衡を取るべきであると考えます。」等を理由に改正民法を適用するように法改正するべきという意見を述べています。一方、経営法総会議の伊藤弁護士は、労働基準法115条の改正は必要ないという立場から意見を述べています。

 

 第5回検討会では、経団連、商工会議所などの使用者団体が同様に労働基準法115条の改正が必要ないという意見を述べています。労働団体である連合は、労基法115条を廃止し、民法の適用をするべきであるという意見を述べています。

 

 短期消滅時効は廃止するという民法改正の趣旨は、賃金にもあてはまります。また、労基法は、そもそも労働者保護にその趣旨があったというのであれば、民法改正あわせ、労働者の権利を拡張するのは当然のことです。

 労働弁護団の請負との比較で不均衡になるという指摘は、まさに改正民法の短期消滅時効を廃止するときの議論が当てはまります。

 

 これまで長時間労働でサービス残業してきた労働者が、最後の2年分の未払残業代しかもらえませんでした。改正民法によりそのほかの短期消滅時効は廃止されたのですから、改正民法と異なる2年という消滅時効制度を残すことは制度として大きな矛盾をはらむことになります。

 

 検討会は、当初平成30年夏を目途にとりまとめを行うと想定されていましたが、現在も検討会が続いています。

 

 この問題について、日本労働弁護団は、2018年7月に意見書を発表しています。また、2018年末、検討会に対し、早期に労基法115条の廃止、改正民法に従って消滅時効は判断されるべき等を内容とする申入書を検討会に提出しています。

 

いつの債権から適用されるか?

 ところで、改正されたとして、新法が定要されるまでの経過措置はどうなるでしょうか。この点、検討会の第2回で次のように説明があります。

 

 施行日以後に債権が生じた場合であって、その原因である法律行為が施行日前にされたときを含むとされています。これを考えますと、施行日前に発生した賃金ではなくて、施行日前に締結した労働契約に基づいて発生した賃金については、施行日後についても旧民法の消滅時効が適用されるというように解釈するのが妥当ではないかなと思います。」 

 

 改正民法の附則からすれば、この指摘は改正民法と同じ考えかたになり、正当なように解されます。 

 

 ただ、これについては日本労働弁護団が、批判しています。

 「施行日直前に新たに労働契約を締結した労働者の賃金等請求権の消滅時効期間は、2年間に据え置かれ、この状態は労働契約が終了するまで長ければ40年間以上にわたり継続されることになる。」

 

  もう少し日本労働弁護団の申入書を引用してみます。

「そもそも、改正民法附則10条の趣旨は、「施行日前に債権が生じた場合について改正後の民法の規定を適用すると、当事者(債権者及び債務者)の予測可能性を害し、多数の債権を有する債権者にとって債権管理上の支障を生ずるおそれもある」(法制審議会民法(債権関係)部会資料85)というものである。

 

 このような趣旨からすれば、「原因である法律行為が施行日前にされたとき」とは、当該法律行為をした時点において請求権の内容、金額等が具体的に決定されており、施行日前に債権が生じた場合と同視できるような場合に限られるというべきである。

 

 賃金等請求権についてこれを見ると、労使間においては労働契約締結時に基本給等の金額について一定の合意はするものの、労働契約締結以降において就業規則または合意に基づいて降給・昇給がなされるのが通常であるし、賞与請求権については毎年の業績によって変動するのであって、労働契約締結時点において請求権の内容、金額等が具体化されているものとは言えない。さらに、雇用契約においては労務の提供が終わらなければ賃金請求権の額は確定せず、このため、民法は「労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。」(624条)と賃金後払い原則を定めており、この条項は民法改正後も維持される。

 

 とりわけ残業代請求権については、労働契約締結以後の個々の残業命令とそれに基づく業務遂行によって初めて請求権の内容、金額等が具体的に決定され明確になり、初めて具体的な賃金請求権が発生するものであって、労働契約締結そのものを「原因である法律行為」とするのはあまりに不自然・不合理な解釈というべきである。」

 

 たしかに、弁護士としても、相談に来た方に何年に会社と雇用契約締結したのですか、と確認しないと、請求できる残業代がどのくらい遡れるか分からないことになります。2020年よりまえに働いていたベテランは、仮に不当な賃金であって未払があったとしても今後も永久に2年しか遡れないのは不合理です。

 これでは、いろいろな期間の事項があると混乱するという短期消滅時効をなくした趣旨が当面実現されないことになります。労働契約のように継続的な契約で、かつ債権の発生時期は「給料日」としてはっきりしているものについて、契約時期によって改正法適用の有無を判断するのは適切ではないと考えられます。債権発生時期によって区別する方が合理的であると考えられます。生命・身体に関する時効期間は、施行の日に時効が完成していない場合には延長されます。これは債権者保護のためですが、賃金等の債権もこれと同じように解することもできるはずです。

 

 今後の議論が注目されます。

 

 議事録、関係資料は、下記で公開されています。

 平成31年4月25日の検討会の資料には、諸外国の賃金の時効制度、監督指導による賃金不払残業の是正結果の推移、賃金等に関する紛争はどのくらい起きているかなどの資料も掲載されており興味深いところです。

  

 厚生労働省 賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会

  

パワーハラスメントについて

パワーハラスメントの由来

 パワーハラスメントということばは、2001年、クオレ・シー・キューブ株式会社、の社長(当時)岡田康子さんが提唱した言葉でした。日本で作られた和製英語です。

 

裁判例に現れたパワーハラスメント

 「パワーハラスメント」という言葉が判決の中での指摘されるようになりました。

 たとえば、当職が担当した中部電力事件名古屋高等裁判所平成19年10月31日判決では次のような指摘がありました。

 

 前記認定のとおり,Fは,Aに対して「主任失格」 「おまえなんか,いてもいなくても同じだ 」などの文言を用いて感情的に叱責し かつ結婚指輪を身に着けることが仕事に対する集中力低下の原因となるという独自の見解に基づいて,Aに対してのみ,8,9月ころと死亡の前週の複数回にわたって,結婚指輪を外すよう命じていたと認められる。これらは,何ら合理的理由のない,単なる厳しい指導の範疇を超えた,いわゆるパワー・ハラスメントとも評価されるものであり,一般的に相当程度心理的負荷の強い出来事と評価すべきである(判断基準も,心理的負荷の強い出来事として 「上司とのトラブルがあった」を上げている。 )。なお,控訴人は,指輪に関するの発言を聞いたAの反応に照らし,同人に心理的負荷を与えるような発言であったとは認められないと主張するが,出来事に対する対応の仕方は人により様々であり,明白に不快感を表明しなかったからといって,心理的負荷が軽いとは判断することができないことは言うまでもないし,前記認定のように,Aが「星の指輪」という歌を好み,カラオケで練習していたこと,Fの命令にもかかわらず,死亡の前日まで会社でも家庭でも指輪を外さず,自殺当日これを外して妻のドレッサーの小物入れに入れていったこと等からすると指輪に対する強いこだわりが見て取れるところである。 

 また一方,Fも,前記認定のとおり,死体確認の際 「いつも指輪をしていたよね 」と発言し,N に対して 「私の指導や指輪のことがAの死亡の原因だとすれば,私も身の振り方を考えなければいけないね 」 と話したことを認めていること等からすると,指輪のことが気に掛かっていたか,あるいは,指輪がAにとって大きな問題であることを察していたものと認められるのである。これらの事実からして,上記の控訴人の主張は採用することができない。(名古屋高等裁判所平成19年10月31日判決)

 

厚生労働省の示したパワーハラスメントの定義

 パワーハラスメントについて、厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」は、次のように定義づけを行いました(2012年)。

 

 「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。」(職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング報告・5頁)

 

 ここで、「職場内での優位性」には、「職務上の地位」に限らず、人間関係や専門知識、経験などの様々な優位性が含まれる。上司から部下へのいじめ・いやがらせだけでなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して行われるものも含むとされています。

 

 一方、業務上の必要な指示や注意・指導を不満に感じたりする場合でも、業務上の適正な範囲で行われている場合には、パワーハラスメントにはあたらないとされています。

 

 パワーハラスメントは、以下の6類型が例示されていますが、これに限りません。

 (厚生労働省ホームページ明るい職場応援団)。  

 

  ア 身体的な攻撃 

    叩く、殴る、蹴るなどの暴行を受ける。  

 

  イ 精神的な攻撃

    同僚の目の前で叱責される。他の職員を宛先に含めてメールで罵倒する。

    必要以上に長時間にわたり、繰り返し執拗に叱る。  

 

  ウ 人間関係からの切り離し

    1人だけ別室に席を移される。

    強制的に自宅待機を命じられる。送別会に出席させない。  

 

  エ 過大な要求

    新人で仕事のやり方もわからないのに、他人の仕事まで押しつけられて、みな先

   に帰ってしまった。

    業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害。

 

   オ 過少な要求

    運転手なのに営業所の草むしりだけを命じられる。

    事務職なのに倉庫業務だけを命じられる。

 

  カ 個の侵害

    交際相手について執拗に問われる。妻に対する悪口を言われる。

 

 

岡田康子氏の指摘

 円卓会議ワーキング・グループ、及び円卓会議のメンバーで、パワーハラスメントということばを提唱した株式会社クオレ・シー・キューブの代表取締役の岡田康子氏は著書の中で、パワーハラスメントの特徴として次の点を指摘しています。  

  ア NOと言えない力関係がある  

  イ 侮辱された感覚を伴う  

  ウ 誰もが被害者にも加害者にもなる

  エ エスカレートする  

  オ 言語と非言語で行われる  

  (「パワーハラスメント」 日経文庫 )   

 

精神障害の認定基準

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5月1日 メーデー 参加

メーデー 愛知
メーデーの様子

 5月1日はメーデー。

 私は、労働弁護士として、毎回可能な限り、メーデーの集会に参加しています。

 ことしは、ささしま。

 

 メーデーは、5月1日に行われる国際的労働者祭。1886年アメリカ労働者の8時間労働制要求の示威運動が起源。1889年第2インターナショナル創立大会で決定。90年から世界各地で挙行。

 我が国では、1920年第1回を東京の上野公園で行い、1936年以後禁止。1946年復活。【参考 広辞苑】

 

 今年は、第1回から数えるとちょうど100年、しかし第90回。

 戦争前、戦争中の10年、メーデーの集会を行うことを禁止されていたからです。

 集会を行うことは、現在では憲法21条で保障されていますが、それも国家によって禁止することができるとは、怖い時代です。

 

 現在の労働者の権利をまもるために戦った先人が世界にいることを心に留めたいです。

  

民法改正 過労死事案の使用者に対する損害賠償請求の時効

過労死の場合の安全配慮義務違反の時効

 過労死事案の救済方法には、労災請求と使用者への損害賠償請求という方法があります。

 死亡事案の場合、労災請求の時効は5年。使用者への損害賠償請求については10年です(民法167条2項)。死亡した日の翌日から計算します。

 交通事故の場合には、事故の日の翌日から3年で時効になります(民法724条)。

 

 過労死事案の場合、まず、労災請求をし、労災が認定された後、使用者に対し損害賠償請求をすることがあります。

 労働基準監督署長が、労災と認めてくれれば、3年以内に損害賠償請求をすることもまにあいます。

 しかし、労災請求をするまでに時間がかかる場合もあります。労災請求をして認められず、審査請求、再審査請求をする場合もあります。 

 それでも認められず、行政訴訟を提起する場合もあります。高等裁判所、または最高裁判所でようやく結論が出る場合があります。10年近くかかる場合もあります。

 

 損害賠償請求は、労災が認定されてから行うこともよくあります。労災の手続きの結果が損害賠償請求権のありなしの参考にされるからです。

 

 名古屋市バス事件は、行政事件で名古屋高等裁判所で勝訴し、その裁判が確定した後に、損害賠償請求を提起しています。提訴したのは、息子さんが自死したときから9年をすぎていました。

民法改正と安全配慮違反の時効

 2020年4月、改正民法が施行されます。

 改正民法では、民法の債権の時効は「権利を行使することができることを知ったとき」から5年で時効になると定められました。(改正民法166条)

 

 過労死事案の死亡事案の場合、死亡した日が、「権利を行使することができることを知ったとき」になるでしょう。

 

 日弁連編集の「実務解説 改正債権法」(2018年・弘文堂)では「ただし、とりわけ労働契約上の安全配慮義務違反や医療過誤に基づく生命・身体の侵害など債務不履行による損害賠償請求については、そのような侵害が発生して確定したことが明らかな場合は、改正前民法に比べ、そのことを知った時から5年間で時効消滅する(民法166条1項1号)点で短期化しているので注意が必要である。」とされています。安全配慮義務違反のように権利行使をできることをが明らかな場合には、時効期間がこれまでの10年から5年に変わるのです。

 

 なお、人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効の特例に関する規程が定められ、不法行為に基づく損害賠償請求をする場合も時効期間は5年とされました。

 人の生命・身体の侵害による損害賠償請求については、債務不履行を根拠にする場合も、不法行為を根拠にする場合にも「知ったとき」から5年で時効になるとされたのです。

 

 冒頭の述べたとおり、労災申請をしている間に5年の時効期間はすぐに来てしまいます。

 損害賠償請求と労災認定訴訟を同時に提訴をしなければならないケースが多くなるかも知れません。

 

経過措置

 それでは、現在発生している過労死事件については、いつの法律が適用されるのでしょうか。

 これは、次のように定められています。

 

 「施行日前に債権が生じた場合」又は「施行日前に債権発生の原因である法律行為がされた場合」には、その債権の消滅時効期間については、原則として, 改正前の民法が適用されます。

 

 雇用契約の使用者が安全配慮義務を怠ったことによって労働災害が発生した場合における労働者の使用者に対する損害賠償請求権(債務不履行)については、労働契約が「原因である法律行為」にあたるので、契約締結時が基準となると解されるようです(一問一答民法(債権関係)改正)

 したがって、過労死事件が発生した使用者との雇用契約が2020年4月1日より前であれば、死亡や労災による事故、病気が発症したのが2020年4月1日以降であっても、時効は旧民法が適用され10年となります。

 ただし、中間利息の控除、利率については、改正民法施行日以降に死亡や労災による事故、病気が発症した場合には新法が適用されることになります(附則第17条第2項)

 

 一方で、人の生命・身体の侵害による不法行為に基づく損害賠償請求の短期の権利消滅期間を5年とする特則を設ける改正については、新法の施行日(2020年4月1日)において消滅時効がすでに完成した場合でなければ、新法が適用されます(附則第35条2項)。

  

となるように考えられます。

 

 いつ、会社に入社したか、いつ事件が起きたのかの両方で、時効期間、法定利息、中間利息控除に違いが生じることになります。下に志望事案についてその関係をまとめてみました。

(この記載について責任を持つものではありませんし、正確性を期すためには、さらに説明が必要なので、各自法改正についてはご自身で確認してください。)

 

労働契約締結時期 死亡 中間利息控除 法定利率※ 時効
2020年4月1日より前 2020年4月1日より前 旧民法 旧民法 旧民法(不法行為3年 債務不履行10年)
2020年4月より前 2020年4月1日以降 改正民法 改正民法 債務不履行 旧民法(10年) 不法行為 新民法(但し時効完成していない場合)(5年)
2020年4月1日以降 2020年4月1日以降 改正民法 改正民法 改正民法(不法行為5年 債務不履行5年)

 ※旧民法 5%  改正民法3%

民法改正 法定利率の改正と損害額

 2020年、改正民法が施行されます。

 現在の法定利率が5%から3%になります。(その後、市中金利によって変動することが予定されています)

 

 それでは、交通事故、過労死等、被害者が亡くなったり、後遺障害を負ったりした場合にについて、使用者に損害賠償請求をすることにどのような影響があるのでしょうか。

 

 結論からいえば、損害賠償請求額は増額になります。

 

 その理由は、中間利息控除が減るからです。

 「中間利息控除」とは、不法行為等による損害賠償において死亡被害者の逸失利益を算定するに当たり、将来得たであろう収入から運用益を控除することです。この控除の割合は法定利率(年5%)によるというのが最高裁判決です(最判平成17年6月14日)。

 

 改正民法では、 中間利息控除も法定利率によると定められました。(改正民法 722条1項)

 

 そうすると、控除される金額が少なくなります。

 法務省のホームページにある例を紹介します。

 

 22歳のサラリーマンが死亡した事案

 ※損害額算定の基礎となる数値等について、稼働可能年数は67歳と認定、生活費控除率は0.5と認定、基礎収入は賃金センサス(平成24年)の大卒男子の全年齢平均を採用、弁護士費用は1割と認定、支払時まで事故時から2年と想定 。

 現在の民法を前提に計算すると損害額は約1億円程度になりますが、改正法を前提に計算すると合計約1億2000万円程度になります。

 改正法を前提に計算すると逸失利益が約2100万円程度増えます。そのため、弁護士費用も100万円程度増えます。2年間の利息が200万円程度減ることになります。それでも2000万円程度、損害額が増額になります。

 

 もともと、法定利率は、民法制定当時の市中の金利を前提としたもの でした。現在の低金利時代になり、金利が低くなっているので、裁判で利息が認められると一件通常よりも高額な利息が付き、請求している側は、得をしているように感じます。

 しかし、実際には中間利息控除も、市中金利よりも高い金利で差し引かれていたのです。つまり、交通事故や過労死で死亡した遺族側が請求する損害額は、少なめに抑えられていたのです。

 

 法定利息が変更になると、請求する側はこれまでよりも多い計算で請求できることになります。

 

改正前、改正後はどうやって区別するか

 それでは、2019年4月現在、すでに損害賠償請求ができる場合、つまりご家族が死亡したり、自分が後遺障害を負っていて逸失利益を請求できる状態にあるひとが、2020年4月1日の民法改正が施行されるのをまって、それから請求すれば、より高額な請求が出来るのでしょうか?

 

 施行日前に債務者が遅滞の責任を負った場合の遅延損害金の額は、改正前の民法における法定利率によって定められることとなります。 施行日前に損害賠償請求権が発生した場合には,中間利息の控除に用いる法定利率については,改正前の民法が適用されます。

 

 その結果、死亡した日、負傷や病気を発症した日が、2020年3月31日の場合には、改正前の民法の適用になります。2010年4月になるを待ってから請求しても、変わらないことになります。

 時間が経てば、記録が散逸したり、当事者の記憶も曖昧になり、責任を追及しにくくなる可能性があります。待っていないで、早く請求をして払ってもらう方がよいということになります。

 

参考 法務省ホームページ

民法の一部を改正する法律(債権法改正)について

 

働き方改革法施行

  2019年4月、働き改革法案が一部施行されました。今後順次施行されていきます。

 

  1. 働き方改革第一の柱 

 働き方改革法の第一の柱は、労働時間の見直しです。 内容として以下の点があります。

  ⑴ 残業時間の上限を規制する

  ⑵ 「勤務間インターバル」制度の導入を促す

  ⑶ 年期有給休暇の取得を企業に義務づけ

  ⑷ 月60時間を越える残業は、割増賃金を引き上げる 

  ⑸ 労働時間の状況を客観的に把握するように、企業に義務づける

  ⑹ 「フレックスタイム制」により働きやすくするため、制度を拡充  

  ⑺ 「高度プロフェッショナル制度」を新設 

  以下、⑴,⑶,⑷について解説します。

 

 2.残業時間の上限規制

 

 残業時間の上限を規制するというのは、不十分ですが、労働基準法の大改革だとされています。

 そもそも、「大改革」がなされた理由は以下のようなものです。労働基準法では労働時間の原則は1日8時間、1週間40時間とされています。法は、それ以上は働いてはいけないとされています。その趣旨は、長時間労働で健康を害さないようにするためです。

 しかし、この原則だけだと不都合な点もあります。労働者の中にも、それ以外の時間も働いてもっと収入を得たいという人がいるかもしれません。使用者は、仕事に慣れた人にもう少し働いてもらう方が、人を増やすより都合がよい場合があるかも知れません。  

 そこで、労働基準法36条は、労働者と使用者が労基法36条の条件に合った協定を結んだ場合には例外的に残業をすることができる、違法とはならないとしているのです。ただしその場合には割増賃金を支払わなければなりません。

 時間外の割増率は以下のとおりです。

 時間外 1.25   休日 1.35  深夜1.25      

 割増賃金を支払う趣旨は、過度な時間外労働や休日労働を抑制するところにありました。

 しかし、このような例外を設けたら実際に不都合なことがおきました。36協定例外の規制が緩く、長時間労働による過労、健康被害、離職、過労死、過労自殺 が社会問題になったのです。

 電通の髙橋まつりさんの事件等はまだ記憶に新しいところです。

 

 見直しの概要は、法律で残業時間の上限を定め、これを超える残業はできなくなるというものです。

 原則は、月45時間 、年360時間。臨時的な事情があって労使が合意する場合も年720時間、複数月平均80時間以内(休日労働含む)、月100時間未満(休日労働を含む)となっています。

 45時間を超えることができるのは年間6か月までです。

 守らないときには罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)の可能性があります。

 大企業は、2019年4月から、中小企業も2020年からこの改正法が適用されます 。

 医師、建設業、自動車運転は2024年からです。この点、施行されるまでのあいだに健康を害する人が生まれるのではないかと心配です。

 

 

 3. 年5日の年次有給休暇の取得を、企業に義務づける

 

 現在、有給休暇の法廷付与日数は、以下のとおりです。

   

 

勤続年数

6か月

16か月

26か月

36か月

46か月

56か月

66か月

年次有給休暇付与日数

10

11

12

14

16

18

20

 

 

 有給休暇は、労働者の健康で文化的生活に資するために、労働者に対し、休日のほかに毎年一定日数の休暇を有給で保障する制度です。しかし、年間の有給休暇の取得率が低いこと。その原因は、労働者が有給休暇の申し出をしにくいことにありました。そこで、使用者側から、労働者の希望を聞いて年間5日は有給休暇を取ってもらうことになりました。

 

 

 

 4 月60時間をこえる残業は、割増賃金を引き上げる【資料10

 

 

  割増賃金は、以下の2つの趣旨で支払うことになっています。

 

   ① 使用者に割増賃金を支払わせることによって時間外労働等を抑制しする

 

   ② 通常の労働時間又は労働日に付加された特別な労働なのでそれに対しては一定の補償をさせる。

    しかし、それでも長時間労働はなくなりません。そこで、月60時間をこえる場合には割増賃金を1.5倍支払うことになっています。これは、特に長い長時間労働を抑制するためです。現段階では、中小企業には適用しないことになっています。しかし、2023年からこの制限はなくなります。

  どんな使用者も月60時間を超えた場合には1.5倍の割増賃金を支払わなければなりません。

 

5 働き方改革

    働き方改革のもっとも大きな目的は長時間労働の抑制です。このなかに「高度プロフェッショナル制度」が含まれています。このため、過労死を考える家族の会は。強く反対していました。

    時間外労働の抑制は十分とはいえません。

    それでも、法律で時間外労働の上限が定められ、これまでより規制が厳しくなったことは。確かです。各使用者がこれをふまえて、長時間労働をなくすための工夫をしていくことを期待したいと思います。

 

 

過労死 その仕事、命より大切ですか

過労死 その仕事、命より大切ですか 牧内昇平

 朝日新聞記者の牧内昇平さんの著書。過労死、その仕事、命より大切ですか を読みました。

 すこしだけ、協力をさせていただいたので著者の牧内さんから献本していただきました。感謝です。

 

 お礼をかねて、本の紹介をします。

 

 この本では11の事例が紹介されています。

 

 それぞれの事例は、新聞記者である牧内さんの視点から紹介されています。

 

 弁護士の視点では気がつかない、遺族の言葉。気持ち。過労死,過労自殺を生み出す社会の問題点を具体的に指摘しています。

 

 コラムや、事例の紹介の間に、過労死、過労自殺の労災の仕組みなどにも触れ、全体として過労死の問題を網羅的に知ることもできます。過労死の問題にとどまらず、固定残業代など労働一般に関する問題にも触れられています。

 

 新聞記者の書いた文書ですので分かりやすい。

 しかも、NHK記者の過労死の記事などは、自分の労働にも引きつけて感想ものべられていて親しみやすい内容にもなっています。

 パワハラの加害者や、過労死を興した企業に対する取材もしており、その内容も紹介するなど踏み込んだ内容にもなっています。

 

 とりあげられた事例の中には、労災と認められなかった事案も含まれていました。

 行政訴訟の1審で勝訴しながら、高裁で逆転敗訴し、最高裁でも認められず、損害賠償請求訴訟でも敗訴だったという事例。本当に、苦労されたし、無念だったと思います。

 労災と認定される事例は紹介されますが、労災と認められない残念な事例は、なかなか紹介されません。しかし、認められない事例こそ、過労死問題の問題点を示しているといえます。このような、事件報道では取り上げられることが少ない事例を取り上げて紹介していることも意義を感じます。

 

 また、和解した事例もとりあげられています。和解の事案は、判決文が作成されないので、判例集などにも載らず、事案の経過が知られない場合もあります。そういう意味で和解の内容やそこに至る経過を取材し、本になるのは、記録としても貴重なものといえます。

 

 個人的には、岐阜県庁の事件では、いつもご遺族を励まし、支え、証拠を集めて戦ってくださった岐阜県職員組合の内記淳司さんが紹介されていることが嬉しかったです。私も大変お世話になりました。

 

 この本を作成するためには膨大な取材が必要だったでしょう。家族は様々な事情で、皆が取材に応じられるわけではありません。大変な苦労があったと思います。

 

 ぜひ、これを読んで過労死、過労自殺の問題を知ってもらいたいと思います。

 

 ご自身が、過労で病気したり、ご家族が過労で死亡したりした場合にも、参考になることがたくさん載っています。そういう方の元にも届くといいと思います。

 

 多くの人に手に取ってもらいたい本です。

 

 

岐阜 過労死をなくす会

 2019年3月16日土曜日、岐阜市内で、過労死をなくす会の設立総会・記念行事が行われました。

 この会は、岐阜市役所で2007年11月に自死をした伊藤哲さんの配偶者、伊藤左紀子さんが公務災害訴訟において、公務災害認定をする勝訴判決を得た後、伊藤左紀子さんを中心に検討してきた会です。

 

 会は、①過労死等防止のための各種啓発活動②過労死遺族の支援・精神的ケア③自治体を中心とした労働時間・ハラスメント等の実態調査などを考えています。

 

 会は、弁護士、医師、労働組合役員、経営者などにも参加を呼び掛けるだけでなく、市会議員、県会議員など地方議員にも参加を呼び掛け、幅広い人と一緒に過労死をなくす運動を目指しています。

 

 

 

 当日は、私も基調報告として、伊藤さんの裁判の経過、支援する会が、遺族を励まし、世論を作るとともに、運動の中で情報を集め、議論することで説得的な裁判の主張をすることにも大きく影響したことを報告しました。

 

 過労死をなくす会は、過労死をなくすこと、遺族の支援もするとしています。岐阜にこのような会ができたことは本当によいことです。

 会の準備段階で、自治体にアンケートした結果によれば、2017年1年間で、岐阜県の市町村で、脳・心臓疾患で死亡した人は4人、自死が4人いたそうです。

 

 これらの中には公務災害の可能性があるものもあるかも知れません。しかし、公務災害の請求をした方はおられないようです。

 

 もし、公務災害であるのに、請求を躊躇しているという事情があるのであれば、相談して欲しいと思います。そのために、過労死をなくす会 の存在が、きっかけになってもらうといいと考えています。

 

 死亡したかたの公務災害、労災の認定を求めたり、企業や行政の責任追及をしているだけでは過労死はなくなりません。過労死を予防するためにもこの会が大きな役割を果たすことを期待したいと思います。

 

 過労死をなくす会が、過労死の問題でこまっている人の役に立つことを祈念しています。

水戸 偕楽園に行ってきました

 先週、弁護士会の会議があり、水戸の偕楽園に立ち寄りました。

 有名な梅をみました。

 梅は枝振りがいいですね。桜とはちがった美しさがあります。

 

 会議も有意義でした。水戸は愛知からは遠いように思っていましたが、名古屋駅からは約3時間。意外に近いことが分かりました。

2019年明けましておめでとうございます

2019年1月1日 イノシシ 謹賀新年 神宮西駅

 2019年明けましておめでとうございます。

 昨年、過労死弁護団全国連絡会議は満30年でした。

 過労死、過労自殺の認定基準について、意見書を作成して厚生労働省に提出しました。

 

 いまも過労死、過労自殺の事件が多く報道されています。

 過労死等防止対策推進法にもとづく過労死防止シンポや、過労死啓発授業で、過労死のことをお話しさせていただく機会を持つことができました。過労死の事件がまだまだなくならず、また、厳しい労働実態にある職場があることをききます。

 まだまだ足りませんが、地道に積み重ねていきたいと思います。

 

 昨年は問題がありながら働き方改革関連法案が通過しました。

 労働時間の上限が定められました。実際にこの法律が守られるように期待します。

 

 今年判決が予定されている事件があります。また、今年がいよいよ山場の裁判事件があります。

 一つ一つが良い結果に結びつくように、そして、それが過労死防止に結びつくように、尽力していきたいと考えております。

 

 本年もどうぞよろしくお願いします。

 

2018年 1年間ありがとうございました

大阪地方裁判所 大阪高等裁判所

 2018年の業務も終了しました。

 今年最後に裁判所に出廷したのは、12月25日の大阪高裁でした。

 

 1年間、多くのかたに支えられて終えることができました。

 充実した一年をス超すことができました。

 

 ありがとうございました。

 

 2019年、2018年に積み重ねたことがさらに発展するように進んでいきたいと思います。

 

中部大学 法律カフェ

法律カフェ 中部大学 愛知学院大学 田中淳子 岩井羊一 弁護士 ブラックバイト

 愛知学院大学法務支援センター教授として、中部大学の法律カフェの講師をしてきました。

 題して「これってブラックバイト?」

 

 中部大学の学生さんと一緒に、ブラックバイトの問題をとうして法律を学ぶ、という企画です。

 中部大学のコモンズセンターの法律カフェ。わたしも2回目の登場です。

 

 愛知学院大学の田中淳子先生が、事例を作ってくださり、それを学生さんと一緒に考えました。

 また、事前にいただいた質問にわたしが、実務家、弁護士として回答しました。

 

 学生さんからいただいた質問はこちらの壁。

 法律問題からそうでないものまで。

 今の学生さんのかかえているアルバイトの悩みがわかって、こちらも勉強になりました。

 相談窓口として 

 ブラックバイト弁護団のTwitter  

    というのもあります。

  困ったら相談しましょう。

 

2018 過労死等防止対策推進シンポジウム 愛知会場

 今日は、過労死等防止対策推進シンポジウム愛知会場が開催されました。

 

 厚生労働省主催。

 

 内容は、労働局の挨拶、猿田正機中京大学名誉教授の講演、能村盛隆大和ハウス工業株式会社 刑恵管理本部 執行役員人事部長 のお話し。

 

 そして、田巻紘子弁護士、猿田教授、能村さんのパネルディスカッション。

 

 おわりに、過労死遺族の吉田さんのお話。

 

 閉会の挨拶は私がさせていただきました。

 

 企画から参加しましたが、良い内容になったと思います。

  会場の質問を質問用紙で集めたのですが、たくさんの質問がありました。長時間労働をみなおさなければならない。その総論は賛成でも、現場はみな簡単にいかないと悩んでいます。今回は、スウェーデンでは、そして、大和ハウスでは、どう考えて取り組んでいるか。それをパネルディスカンションで取り上げてもらい話してもらいました。日本では難しいのではないか、大企業の取組は中小企業では難しいのではないか、具体的な質問がありました。

 質問を募集したために、参加した皆さんも、聞きたいことが聞けたシンポになったのではないかと思っています。

 

 そして、色々質問がありましたが、労働時間短縮。難しいことですが、スウェーデンでも、日本でも、発想を転換すれば、そして、本気で取り組めば実現できる!というメッセージになったと思います。

 

 さらに、最後に遺族のお話をお聞きし、難しくても、命を守るためにはやらなければならないことだと確認できたと思います。

 

 わたしは、岐阜と愛知のシンポに出席しました。

 このようなシンポが全国の都道府県で行われています。

 

 当日はNHKのニュースで報道されました。一分半程度のニュースですが、多くのこの地域の人が見てくれたと思います。過労死は防止しなければならない。そのようなシンポが、この啓発月間の11月に日本のあちことでいわれていること。チラシ、報道でみんなが認識すること。これらの啓発活動が過労死等防止の一歩になればと思います。

 

 

 公害

 薬害

 交通事故

 自殺

 生活習慣病

 ガン

 

 そのほか、いろんな病気で若くして命を失うような悲しい問題があります。

 

 日本中でその一つ一つの問題について、啓発し、責任を追及し、取り組んで少なくすることができています。

 

 過労死等もきっと無くすことができると信じたいです。

 このような一つ一つの集会が、過労死等をなくすために力になっていくと信じたいです。

法律相談のための面接技法入門

 11月17日、私が所属する愛知学院大学法務支援センター(旧法科大学院)と、早稲田大学大学院法務研究科の連携事業として、早稲田大学大学院法務研究科の菅原郁夫教授をお迎えして、「法律相談のための面接技法」というセミナーを行いました。

 

 今日は、若手の弁護士に、摸擬法律相談を行ってもらい、その実施した内容について摸擬相談者の感想を聞きながら、相談の技法を学ぶというものでした。

 

 医師の世界でも、診療の面冊技法を学ぶカリキュラムがあり、今日の摸擬相談もそれを応用したものだとのこと。

 

 2016年民事訴訟利用者調査によれば、弁護真の満足度を判断するのに重要だった要素は

 1 言い分を十分に聞いてくれたと思う

 2 信頼できる人物だと思った

 3 熱心に弁護士してくれたと思う

 だそうです。

 

 私たち弁護士は、依頼者の希望する法的サービスを提供することが、満足につながると思ってきましたが、そのまえに話をよく聞く、信頼をしてもらうことが大切だと、あらためて知らされました。

 

 法律相談で、専門的な知識や判断を提供することはもちろんですが、私たち弁護士が相談者に満足できる相談を提供したいとおもいます。

 

 

 (写真は、本日のセミナーのひとコマ)

 2013年の調査、全国928人の調査のうち法律問題で弁護士に接触した70人の回答。弁護士へのアクセス経路の実際は、テレビコマーシャルやインターネットは少なく、また弁護士会の法律相談センターや電話帳などもあまり多くない。親戚、知人の紹介が37.1パーセント。これにもとから知っていた、会社の顧問弁護士、職場での紹介など何らかの紹介でアクセスした合計が72.9パーセント。

 弁護士へのアクセスは口コミがまだまだ大きな割合を占めているようです。

 

 

 

 

 

過労死等防止対策推進シンポジウム 岐阜会場 開催

過労死等防止対策推進シンポジウム岐阜会場2018

 2018年11月14日 過労死等防止対策推進シンポジウム 岐阜会場が開催されました。

 

 内容はプログラムにあるとおりです。

 私も労働局のお話しのあと、安全配慮義務違反についてお話をしました。

弁護士岩井羊一 過労死弁護団全国連絡会議

   このあと三承工業株式会社さんの「社員が輝く仕組みづくり」と題した報告がありました。

 社員が輝く仕組みを作ったら働きやすくなり、会社の業績もアップ。とても参考になる発表でした。

 

 そして、天理大学の近藤雄二先生の「過労(自)死を産み出さない仕組みと働き方を求めて」という講演。

 労働局、弁護士、企業、医師それぞれの立場で、過労氏を防止するための話を聞くことができました。

 そして、過労死遺族のお話。

 

 2011年に夫を亡くされた女性。そのとき小学生だった子どもが中学生に。そのとき小さかった子どもは小学校5年生に。

 当たり前の家族が、ある日突然夫、お父さんを失う悲しみ。

 裁判で労災は認められたけれども、亡くなった人は帰ってこない。

 そのことを改めて心に留めました。

 

 参加した方が、過労死があってはいけない。そう思って会社に、自宅に帰っていただけたら幸いです。

 

 当日、中日新聞の、新聞切り抜き作品コンクールで「働き方改革」をテーマにし賞をとられた中学生、高校生の2作品が展示されました。

 中日新聞 切り抜き作品コンクール受賞作品一覧

 それぞれ新聞記事を上手く整理し、自分の考えをしっかり述べているのが印象的でした。

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労働判例の遊筆に掲載されました 

 労働判例を掲載している月2回発行の「労働判例」という雑誌。

 私も定期購読しています。

 このたび労働判例の2018年11月1日号 1185号の巻頭の「遊筆」の欄に、私のコメントが掲載されました。「過労死等の認定基準の改定を」と題し、まさに過労死等の認定基準の改定をもとめる内容のコメントです。

 11月は、過労死等防止対策推進法に基づく過労死防止月間。その月間を踏まえてのコメント、ということと、今年過労死弁護団全国連絡会議発足から30周年。そのような節目のときに「労働判例」に過労死弁護団の立場からコメントさせていただきした。

日弁連人権大会に行ってきました

日本弁護士連合会 日弁連 人権擁護大会 青森 JFBA

■人権大会とは

 

 日弁連は、弁護士の使命に基づき、人権問題の調査・研究、人権思想の高揚に資するため、毎年1回、東京都以外の地で人権擁護大会を開催しています。大会では、日弁連の人権擁護活動の報告、人権問題に関する宣言・決議が採択されています。

 また、大会にあわせて、毎回多数の弁護士、市民の参加を得て、重要な人権問題をテーマにシンポジウムが開催されています。〔日弁連ホームページより

 

 略して「人権大会」といわれています。

 今年は10月4日、5日と青森県青森市で第61回の大会が行われました。

 

 

■今年のテーマ

 

 第1分科会

 「外国人労働者100万人時代」の日本の未来

  ~人権保障に適った外国人受入れ制度と多文化共生社会の確立を目指して~

 

 第2分科会

  組織犯罪からの被害回復

  ~特殊詐欺事犯の違法収益を被害者の手に~

 

 第3分科会

  日本の社会保障の崩壊と再生-若者に未来を-

 

  の三つのテーマでシンポが行われ、行われました。

 

■第3分科会に出席

 

  私は、第3分科会に出席しました。

 

  内容は、極簡単に要約すると、現在の社会保障の中で若者は行きづらさを感じている。

  大学進学すると経済的に苦しく、奨学金を借りたり、アルバイトをしなければならない学生が多数い 

 る。ブラックバイトであったりすることもある。

 

  そうすると、大学の選択、就職先の選択も、失敗することは許されないと感じる。

  就職してもブラック企業といわれる企業も存在する。いつも「自己責任」が問われる。

  過労死、過労自殺もこのような社会の仕組みの中で減っていかない。

  

  諸外国に目を向けると、若者が、希望を持って社会に向かう気持ちで生活できる国がある。

 

  学費を無償化する。医療、介護の無償化。生活保護の充実。同一労働同一賃金の実現。

  出産、育児、失業に対する給付の充実。最低賃金の総額。住宅環境の整備。

  これらを社会保障として充実させることで、若者とこれを支える親の世代の上記に対する負担を減ら

 し一方でこれにふさわしい財源の確保をすることができるのではないか。そうすることにより、希望を   

 持って大人になり、生き生きと働き、そしてさらに若者のために社会を支えていく。こんな社会の仕組み 

 を作ることができれば、若者の生きづらさが解消できるのではないか。

 

  こんな提案をするシンポジウムとそして決議でした。

  決議

 

  2018年人権大会の決議

 

感想

 

 今の若者を全体としてみると昔とずいぶん変わっていると改めて考えさせられました。また、どんな制度も そうですが、社会の仕組み、デザインはとても大事で、それによって大きく人の行動は変わっていくことを考えさせられました。良くない社会の仕組みは、そんなかでうまく頑張れる人がいても、多くの人が苦しむ結果になってしまいます。それはよくありません。どの様な精度がいいのかはこれからも色々議論していく必要があります。

 

弁護士の使命

 弁護士法第1条には次のような定めがあります。 

第一条

1 弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。

2 弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。

 

 人権擁護大会は、この弁護士の使命に基づき、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力するために行われています。昨年は欠席してしまいましたが、人権大会に出席することは、弁護士法1条の精神を自覚することができる大切な行事であると実感しました。

  

5周年

過労死等防止対策シンポジウム 愛知会場
2018年の過労死等防止対策推進シンポジウム

 岩井羊一法律事務所は、2013年(平成25年)10月1日に開設しました。

 今年満5周年を迎えました。

 

 この間、過労死事件、すなわち過労死等(過労死、過労自殺、脳・心臓疾患、精神疾患)で亡くなったり、仕事ができなくなったりした方の救済することを中心に弁護士活動をしてきました。

  

 事務所を設立してからの5年間、過労死を巡り大きな動きがありました。

 2014年6月には、過労死等防止対策推進法が成立し11月に施行されました。

 11月の啓発シンポ。そして、学校への啓発事業等、過労死弁護団が対外的にも役割を持つようになりました。今年の11月は4回目です。

 「過労死」が法律で定義され、国がその言葉を使うようになりました。

 

 2016年には、電通の女性の新入社員の自殺事件が大きな社会問題として注目を浴びました。これを契機に働き方改革が叫ばれるようになりました。労災認定、会社の謝罪にとどまらず、刑事事件にも発展しました。

 2018年、大変不十分な働き方改革関連の法が成立しました。

 

 2018年、過労死弁護団全国連絡会議は丸30周年。

 過労死等の認定基準について改定の意見書を作成し、厚生労働省に提出しました。

  

 ここからは個人的なことを少し紹介します。この間、いくつか勝訴判決を得ました。すでにホームページで紹介していますが、以下がこの間に得た判決です。

 2014年1月25日、名古屋地方裁判所で過労自殺事件の損害賠償請求事件で勝訴。

 2016年4月21日、名古屋高裁でバスの運転士の自殺事件で逆転勝訴。

 2015年11月18日、名古屋地裁で、うつ病の悪化に業務起因性を認める自殺事件での勝訴判決。   

 2016年12月1日に高裁もそれを維持。

 2017年2月23日、名古屋高裁でトヨタ系列会社の過労死事件で逆転勝訴。

 2016年12月22日、岐阜地裁で、岐阜市職員の自殺事件の公務災害を認める勝訴判決。2017年7月6日これを維持する判決。

 

 もちろん、これらの判決はいずれも弁護団事件で、他の弁護団の活動によるところも多いのです。いずれも家族をなくした不幸な事件でしたが、仕事が原因であることが認められました。

 

 この間、公益法人愛知県労働協会の労働法講座で講師をしたり、講演会を担当させていただく機会もいただきました。

 

 精神障害の労災認定件数は、毎年増加傾向にあります。脳・心臓疾患の労災認定件数も横ばいで減少傾向にあるとはいえません。

 

 途中で請求を断念した事件もありました。認められなかった事件もありました。

そう言った事件を含めて、多くの遺族が勇気を出して立ち上がったことが、企業に対し、責任を認めさせることにつながり、過労死等の防止につながっています。

 

 それでも過労死等が増加傾向にあるのは残念です。

 つい先日も三菱電機では、「過去5年間に長時間労働などが原因で精神障害や脳疾患を起こし、2014~2017年に労災認定された男性社員5人のうち、3人に『裁量労働制』が適用され、1人は過労自殺していたことがわかった。」との報道がありました。

 

 これからも、過労死等の問題を中心に、過労死等の被害者の救済と過労死等の予防をするために活動していきます。

 

 

2018過労死等防止対策推進シンポジウム

毎年11月は過労死等防止月間です。

厚生労働省主催で過労死等防止対策推進シンポジウムが全国で行われます。

愛知会場は2018年11月20日火曜日午後です。

 

場所は名古屋国際センター別棟ホール

名古屋駅から地下道を歩いて行くことできます。

地下鉄桜通線で国際センター駅からならば直結しています。雨でも濡れずに会場まで行けるということ。

 

過労死等防止対策推進シンポジウム
2018年過労死等防止対策推進シンポジウムチラシ

 今年は長時間労働の防止を真剣に議論します。

 特に、会社の人事担当、労務管理するかた、社長さん、管理職の方に聞いてもらいたい内容です。

 申し込みや下記のwebから。

脳・心臓疾患及び精神障害のうち裁量労働制対象者に係る決定及び支給決定件数 (平成26年度~平成29年度)

 厚生労働省から、平成26年度から平成29年度の脳・心臓疾患及び精神障害のうち裁量労働制対象者に係る決定及び支給決定件数(平成26年度~平成29年度)が発表されている。

 

 平成26年から平成29年の認定件数の変化を見ると

 

 脳心臓疾患では7件、3件、1件、4件となっている。

 うち死亡は  1件、3件、0件、2件となっている。

 

 精神疾患では、7件、8件、1件、10件となっている。

 うち自殺、自殺未遂は1件、2件、0件、5件となっている。

 

 平成29年度は、裁量労働制として働いていたが法定件数を満たしていない事業も含めて集計したとのことである。

 

 認定件数は多くても全国10件程度であり、傾向はこれだけではわからない。

 

 ただ、平成29年度の認定件数が増加し、自殺者数も増えていることは気になる。 

 これが、今後同じ傾向で進むとしたら、裁量労働制が濫用の危険があるということの証拠になる可能性もある。

 

 今後もこの推移を見ていく必要がある。

 

 ※裁量労働制とは→厚生労働省のホームページ 裁量労働制の概要