過労死110番 実施できました

 今日は、全国過労死110番を実施しました。

 愛知では、13件の相談がありました。

 

 感想です。

 

 こんなに世の中で、長時間労働が問題になっている、と思っていましたが、長時間労働は、まだまだたくさんあるのだなあ、と思いました。

 

 また、労働基準法が十分に守られていない状況にあることも実感しました。

 労働契約法も十分理解されていない状況にあることも実感しました。

 

 そして、辛いけど、訴えられない、状況にある人がいることも実感しました。

 

 今回、相談しくても、情報に接することができなかった人もいたと思います。

 

 一方で、今裁判で戦っている人についてのマスコミの報道によって、勇気づけられて、自分も立ち上がろうともがいている人がいることもわかりました。

 

 苦しんでいる人、悩んでいる人、今日の電話相談は終わりました。でも面談相談は、いつでも受け付けています。

 

 

過労死110番実施します

2017年6月17日土曜日           10:00~15:00

過労死110番

0120-184-964


弁護士が電話で相談にのります

当日は、過労死の事件の経験のある弁護士が電話で相談にのります。

過労死・過労自殺、働き過ぎの相談にものります。

過労死、過労自殺された方の遺族の補償についての相談を受け付けます。

ご自身、ご家族の過重労働の相談も受け付けます。

相談は無料です。通話料も無料です。携帯からもOK

相談料はかかりません。また、フリーダイヤルですから通話料も無料。携帯電話からもかけることができます。その場合も無料です。


専門家「基準の見直しを」

 本日朝日新聞名古屋版に「労災却下6割超す」「専門家「基準の見直しを」」という表題で精神疾患の労災認定基準についての記事が掲載されました。

 残念ながら名古屋版であり、地域限定ですが、大きな記事になりました。

 

 私のコメントも以下のように掲載されています。

「国の基準の具体例に当てはまらないと、認定されずに切り捨てられる。ストレスには色々あり、対人関係に強いが長時間労働には弱いなど様々だ。より柔軟な評価方法に見直すべきだ。」

 

 認定基準は平成23年に改定されましたが、まだまだ不合理なところがたくさんあります。しかし、平成11年の判断指針よりも分かりやすく、また幅広く改訂されたせいか、裁判所でも、この基準をそのままあてはめるような判決があります。

 

 しかし、人間の心にも個性があり、ある人のには辛いストレスが、他の人にはそれほどではないことはいくらでもあります。それを、切り捨ててしまっていいのでしょうか。

 

 最もこれを乗り越えるには、医学的な根拠や世論の力がいります。

 

 今日は、NHKあさイチでも「大丈夫?家族から見た“働き方”」と題して働き方について議論をしていました。

 過労死弁護団の川人博弁護士と全国過労死を考える家族の会から寺西笑子さんも出演しました。

 新聞やテレビでもこのままではいけないという意識が高まっています。

 救済されていない事例もたくさんあることを知ってもらい、改善にむけて動きがあるといいと期待しています。

 

 

勝利報告集会

新美南吉 安城市
安城市のオブジェ

 5月28日、安城市内で、担当している事件の報告集会がありました。

 過労死事件で、名古屋高等裁判所で1審を取消、労災と認められた事案でした。

 1審敗訴のあとの逆転勝訴でした。

 原告本人、ご家族、亡くなったご本人のご両親。

 亡くなったご本人は帰ってきませんが、無くなった原因が労働にあると裁判所に認定してもらったことは本当に良かったです。

 

 集会を通して、ご本人はどういう状況だったのか。なぜ、過労死だと思ったのか。どのような証拠があったのか。

 なぜ、1審は敗訴だったのか。どうして高裁では勝訴だったのか。振り返って話をしました。

 

 もともと水野幹男弁護士が担当していた事案で、私も裁判から応援に入りました。

 原告の依頼に応えて良い結果を出し、感謝してもらえる。弁護士をやって良かったと思える瞬間でした。

 

 多くの方が支援する会を作って支援してくれました。多くの人と喜び合えるのもうれしいものです。

 

憲法記念日

 今日は、憲法記念日。憲法施行70年です。

 今日から中日新聞の連載で憲法施行70年の特集が始まりました。

 1回目は、マンション建築現場で逮捕された方のことが取り上げられました。

 

 記事にはこうありました。

 

 「「市民の味方」と信じていた警察が必ずしもそうではないと、…」

 

 野党側は、共謀罪により「米軍基地移設や原発再稼働といった政治的な運動が監視され、萎縮させられる危険性を指摘する。」

 

 警察がどう動くかというのは、担当する警察官、或いは警察の考え方できまるようなところがあります。

 そのために権力を縛るためにあるのが憲法。

 

 その権力に濫用の力を与える「共謀罪」は危険です。

 

 これからも憲法に守られるよう、微力ながら考えていきたいです。

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長時間労働をなくさない時間外労働の上限規制に反対する

. 4月6日、金山北口で、時間外労働の上限規制に反対する街宣活動をしました。

 

 愛労連、愛知働く者のいのちと健康を守るセンター、東海労働弁護団、自由法曹団愛知支部など、当時のさまざなま労働団体と弁護士の団体が共同して行いました。

 

 安倍内閣が「働き方改革」の一環として導入をめざしている時間外労働時間の上限規制をめぐって、「月45時間」「年間360時間」を原則としつつ、繁忙期には「月100時間未満」かつ「2ヶ月ないし6か月平均80時間」とし、月45時間を超える時間外労働は6か月までとすることで、政労使の合意が成立したとの報道がなされました。

 

 労働者の心身を蝕むような長時間労働を根絶するためには、労働基準法を改正し、36協定でも超えることができない時間外労働の上限を定め、違反企業に罰則を科すことが必要です。

 

 しかしながら、報道された案が容認しようとしている「月100時間未満」「平均80時間」などという例外は、厚生労働省が定めた『脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準』(平成13年12月12日基発第1063号)「過重負荷の有無の判断」に記載されている時間外労働の時間(1か月間におおむね100時間又は2か月間ないし6か月間にわたって1か月当たりおおむね80時間)に該当するものです。

 

 このような法規制は、かえって、このようなもし死んだら過労死と認定されるような長時間労働をさせても許されるのだと理解されてしまいます。

 

(誤解がないように指摘しておきますが、36協定がなくなるわけではありません。また、過労死がおきたときに、法律を守っていたとして許されてしまうわけではありません。労災認定はされる可能性が十分にありますし、民事上の安全配慮義務違反の責任が問われることも今までどおりです。)

 

 名古屋高等裁判所平成29年2月23日判決では、虚血性心疾患で死亡した労働者について、「発症前1か月間の時間外労働時間は少なくとも85時間48分であり、この時間外労働時間数だけでも、脳・心臓疾患に対する影響が発現する程度の過重な労働負荷であるということができる。」と判示し、認定基準の1か月の時間外労働が100時間未満の場合でも脳・心臓疾患を発症させる業務の過重性があったことを認めています。

 

 「月100時間未満」「平均80時間」の時間外労働の容認は、過労死をなくす、という観点からは、無意味なばかりか、過労死を助長しかねない規制です。

 

 これが弁護団、家族が反対している理由です。

 上限ができるからいいじゃないか、とは言い切れないのです。

 

 

 ちなみに国際人権規約の社会権規約には次のような条項があります。

 

 第7条 この規約の締約国は、すべての者が公正かつ良好な労働条件を享受する権利を有することを認める。この労働条件は、特に次のものを確保する労働条件とする。

(a) すべての労働者に最小限度次のものを与える報酬

 i.公正な資金及びいかなる差別もない同一価値の労働についての同一報酬。特に、女子については、同一の労働についての同一報酬とともに男子が享受する労働条件に劣らない労働条件が保障されること。

 ii.労働者及びその家族のこの規約に適合する相応な生活

(b) 安全かつ健康的な作業条件

(c) 先任及び能力以外のいかなる事由も考慮されることなく、すべての者がその雇用関係においてより高い過当な地位に昇進する均等な機会

(d) 休息、余暇、労働時間の合理的な制限及び定期的な有給休暇並びに公の休日についての報酬 

 

 時間外労働の上限の規制が36協定しかなかったり、できても100時間未満ということは、いまだ国際人権規約にも合致していないというべきでしょう。

 

 

 また過重労働対策基本法を策定しようと宣言をした2010年。過労死弁護団全国連絡会議は次のような指摘をしています。

 

1 日本国憲法と労働基準法等の理念 

 

 日本国憲法は個人の尊厳(13条)、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利(25条)とともに、基本的人権として「勤労の権利」を保障し(27条1項)、「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準」を法律で定めるとしています(同2項)。 そして、これを受けて労基法は、「労働者が人たるに値する生活を営むための必要を満たすべき」最低基準(1条)として、週40時間・1日8時間労働の原則(32条)、休憩・休日の付与(34条1項、35条1項)などを定めています。

 

2 違法な過重労働の蔓延 

 

 ところが、現在のわが国の労働の現場は、次のように、およそ上記の憲法や労基法の理念とはかけ離れた実態にあります。

 

 違法なサービス労働・賃金不払労働の常態化

 

 会社の職階である「管理職」と、法律上の概念である「管理監督者」(労基法41条2号)は別のものなのに、「管理職」とされただけで時間外手当を支払わない、さらには「管理職」としての権限も処遇もない   

 

 「名ばかり管理職」にまで時間外手当を支払わない

 

 過労死認定基準を上回る時間外労働時間を認める「36協定」が締結され、労働基準監督署がこれを受理している

 

3 過労死・過労自殺の多発 

 

 その結果、過酷な長時間・過重労働が、業種・職種や年齢・性別を問わず、また正社員のみならず非正規労働者にまで広がり、過労死や過労疾患、過労による精神障害や過労自殺が多発しています。

 

 激増する過労死・過労自殺の労災申請・労災認定は、「氷山の一角」にすぎません。(以下略)

 

 

 

 時間外労働に適切な歯止めがない状態は、個人の尊厳、生存権、勤労者の権利を保障した憲法の理念ともかけ離れています。

 現状は憲法や国際人権規約の定めた理念とかけ離れているし、100時間未満までは刑事罰はないなどという規制では、その理念に近づけないというべきです。

 

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時間外労働の上限規制

 

環境基本法には、次のような条文がある。

 

環境基本法 

 第十六条 政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする。

 

 これに基づいて定められているのが環境基準である。

 環境については「人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準」を法律で定めなければならないとなっているのである。(ただし、罰則を設けることを要求していないし、現に環境基準違反に罰則はない。)

 

 労働基準法、過労死等防止対策推進法などには、これまで残念ながら「人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準」を定めるように求める条文はない。

 

 今回、はじめて時間外労働の上限を法律で規制することが検討されている。しかし、その内容は

「月四十五時間を超える残業時間の特例は年六カ月までとし、年間七百二十時間の枠内で「一カ月百時間未満」「二~六カ月平均八十時間」の上限を、罰則付きで法定化する方針だ。連合の要求で当初案の「一カ月最大百時間」よりは若干修正された。しかし、労災認定基準のいわゆる過労死ラインに相当する働き方を、国が容認するものであることに変わりはない。」と報道されている(中日新聞 2017年3月15日社説より)

 

 今回の時間外労働の上限は、環境基準のような「人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準」ではない。今回策定されようとしている基準は、そもそもこの時間働いて脳・心臓疾患を発症し、労災と認められ、民事裁判でも企業が過労死を発生さるような安全配慮義務違反が問われるような、明らかな長時間労働の場合には、刑事の罰則もあるといっているだけである。

 

 もちろん、刑事の罰則もあるとしていることは一歩前進である。しかし、時間外労働の上限として定められるべきなのは、人の健康を保護し、生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準、という意味では環境基準と同様のレベルのはずである。

 

 脳・心臓疾患の労災認定基準には次のような記載もある。

 

 発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いが、おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること

 

 45時間を超える時間外労働は、脳・心臓疾患の発症との関連性が徐々に強まるのである。これについては規制するべきである。

 

 経済団体が反対する理由は、経済活動がなりたたなくなる、国際競争力が低下する、などであろう。

 しかし、死ぬかもしれない時間まで働かせることができる法規制のもとで働かせることができる経済活動を放置することはできない。労働基準法には、子どもを働かせてはいけない。出産の前後は働かせてはいけないなどの規制を設けている。どんなに労働に需要があっても禁止するべき労働はあるはずである。いま、求められるのは、過労死するほど長時間労働をさせてはいけないという法規制である。

 

 なお、不十分な上限規制になったとしても、この規制に達しない時間外労働をさせた場合にも労災認定がなされ、安全配慮義務違反の責任が問われる可能性があることは今までと変わらない。上記社説は「労災認定基準のいわゆる過労死ラインに相当する働き方を、国が容認するものである」としているが、これは罰則を科さない、直接規制しないということを意味するのであれば正当である。しかし、民事上の責任を負わないことも含む法規制になってしまうという意味に取られる可能性があり、不正確というべきかかもしれない。

 ただ、今と変わらない、ということは、今と変わらず過労死が発生する、ということであるから、法規制が十分な目的を達成できないことを意味する。

 更に強力な規制を求めたい。 

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1か月85時間の時間外労働と認定された事案が過労死 平成29年2月23日判決の意義

岩井羊一 過労死 報告
報告集会で発言する弁護士岩井羊一

事案の概要

 トヨタ自動車株式会社の2次子会社である会社に勤務していた被災者(当時37歳)が、平成23年9月27日、虚血性心疾患で死亡した。その妻が、半田労基署長に対し労災保険法に基づく遺族補償給付請求等をしたが、半田労基署長は平成24年10月15日付で不支給決定をした。妻さんは原告となって、名古屋地方裁判所に、この支給決定の取消しを求め提訴したが、1審判決は平成28年3月16日、原告の請求を棄却する判決(以下「原判決」という。)をした(裁判所ホームページ)。

 

 名古屋高等裁判所(藤山雅行裁判長、前田郁勝裁判官、金久保茂裁判官)は、平成29年2月23日、原判決を取消し、半田労基署長の不支給決定を取り消す判決をした。この判決は同年3月9日の経過により確定した。

 半田労基署長は、遺族年金等の支給を決定しなければならない。

 

 この事件は労災申請段階は、水野幹男弁護士が担当し、訴訟になってからは水野幹男弁護士と当職が担当した。

 

業務の過重性

 名古屋高裁は、時間外労働について次のように指摘している。「Aは、(中略)発症前1か月間の時間外労働時間は少なくとも85時間48分であり、この時間外労働時間数だけでも、脳・心臓疾患に対する影響が発現する程度の過重な労働負荷であるということができる。これに加えて、時間外労働の時間態において休憩時間がとれなかった時間があること、終業自国語に時間外労働をしていた時間が存すること、平成23年9月22日に愛知工場の業務に従事した時間が存する可能性があることを考慮すると、更に過重性の程度が大きかったことになる。」

 

 こうして認定基準の1か月の時間外労働が100時間を超えない場合でも業務の過重性があったことを認めた。

 

うつ病の影響

  被災者はうつ病に罹患しており、当時早期覚醒の症状が加わっていた。このことについて名古屋高裁は「上記の時間外労働による負荷にうつ病による早期覚醒の症状が加わって、更に睡眠時間が減少したものと認められるから、Aは、発症前1か月間、睡眠時間が1日5時間程度の睡眠が確保できない状態、すなわち、全ての報告においても脳・心臓疾患の発症との関連につき有意性が認められる状態であったことは明らかである。」「すなわち、Aは、発症前1か月間において、うつ病にり患していない労働者が100時間を超える時間外労働をしたのに匹敵する過重な労働負荷を受けたものと認められる。」などと指摘した。

 

 そのうえで、被災者が心停止に至ったことについて、時間外労働と心停止との間に相当因果関係を認め、業務起因性を認めたのである。

 

基礎疾患を有している人の労災

 名古屋高裁は、被災者が基礎疾患を有していることについて「何らかの基礎疾患を有しながら日常生活を何ら支障なく就労している労働者は多数存するのであって、これらの労働者が頑健な労働者が発症するに至る負荷ほどではない業務上の負荷を受けて脳・心臓疾患を発症した場合に、労災補償の対象とならないとすることは、労災保険制度の基礎となる危険責任の法理に反し、労働者保護に欠けるものになるのであって、このことは専門検討会報告書においても指摘されている。」と指摘した。

 

 実際に専門検討会報告書88頁には、同様のことが記載されている。

 

認定基準の意義について

 名古屋高裁は、国が業務起因性を認めるためには、認定基準が示す基準を満たす必要があると主張したことについて次のように指摘した。

 

 「認定基準において、例えば、発症前1か月間の時間外労働として概ね100時間を超えることを基準に掲げているのも、(略)、睡眠時間が1日6時間未満であっても狭心症や心筋梗塞の有病率が高いという知見がある中で、1日5時間以下の睡眠時間の場合には、全ての報告において脳・心臓疾患の発症との関連において有意性があるとされていたことから、その睡眠時間に対応する100時間の時間外労働を採用したものである。すなわち、この基準は、就労態様による負荷要因や疲労の蓄積をもたらす長時間労働のおおまかで、かつこれを満たせば確実に労災と認定し得る目安を示すことによって、業務の過重性の評価が迅速、適正に行えるように配慮して設定されたものと評価すべきである。」

 

 「…一般的に認定基準は、その基準を満たせば業務起因性を肯定しうるという性格のものに過ぎず、その基準を満たさないことが、業務起因性を肯定する余地がないことまでを意味するものではないというべきであるし、特に上記時間外労働に関する基準の意味するところからすると、業務起因性を肯定するためには上記認定基準を満たさなければならないとする被控訴人の主張を採用することはできない。」

 

 原判決は、特に労働時間について100時間に満たない場合にも業務起因性を認める余地があり、認定基準の意義を正しく指摘した。

 

上告受理申立されず確定

 Tさんが亡くなってからすでに6年がたとうとしている。ご家族はその間、被災者の方が生きていたときの収入もないまま生活をしてきた。労災保険は、被災者の遺族を経済的に支える制度である。内容からすれば、上告、上告受理申立をする内容はないはずである。

 実際に、国が上告、上告受理申立をせず、判決が確定したことは、幸いであった。

 

 ※確定したので、以前の原稿を改訂しました。2017年3月12日

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愛知県の県立高校の先生の過労死

先生 教師
写真はイメージです。

 2017年3月1日、愛知県立岡崎商業高校の先生が校内で倒れて亡くなった事件について、名古屋地方裁判所で判決があり、公務外決定が取り消されました。公務災害と認められ、いわゆる過労死だったと判断されたのです。

 

 名古屋第一法律事務所の田原裕之弁護士、福井悦子弁護士、森田茂弁護士、水谷実弁護士が担当されました。(愛知の県立高校の教諭の過労死を認める判決 名古屋第一法律事務所のブログ

 

 岡崎商業高校は、私が高校まで住んでいた岡崎市にある高校です。中学の同級生には進学した人もいたと思います。そんな地元の高校でこのようなことが起きたのはとても残念なことです。亡くなったかたは、2009年に42歳だったというのですから、私とほぼ同年代の方。

 

 報道によると、判決は、亡くなるまでの1か月の時間外労働は少なくとも95時間と認定。その上で、仕事の質について「生徒の資格取得に直結する直結する授業や部活の顧問を受け持った上、亡くなった月には資格検定の受験指導や体験入学の準備作業で、精神的負担が大きかった」などと判示したようです。

(中日新聞2017年3月2日朝刊)

 

 地方公務員である県立高校の教諭の場合、なくなった場合にそれが公務による死亡かどうかは、地方公務員災害補償基金(地公災)が判断します。地公災が、公務災害と認めれば、ご遺族に年金又は一時金が支払われます。

 脳心臓疾患については、「心・血管疾患及び脳血管疾患の公務上災害 の認定について 」という基準が定められています。

 

 長時間労働については、

 「発症前1か月程度にわたる、過重で長時間に及ぶ時間外勤務(発症日から起算して、週当たり平均 25 時間程度以上の連続)を行っていた場合」 
   「 発症前1か月を超える、過重で長時間に及ぶ時間外勤務(発症日から起算して、週当たり平均 20 時間程度以上の連続)を行っていた場合」

 とされています。

 

 民間の場合の認定基準は、「発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できること」とされていることと比べると厳しめの基準となっています。

 

 裁判では民間の認定基準も参考にされたようです。

 

 認定基準はあくまでも公務災害、労働災害を迅速に判断するための基準であり、この基準に当てはまらない場合も労災、公務災害が否定されるわけでありません。

 

 判決は、時間外労働の他、公務の質的過重性も認めています。

 いまも多くの先生が、長時間、過密な労働をされていると思います。また、新聞報道によれば、10年以内に校内で倒れた5人が過労死と疑われると言われています。

 

    愛知県では、教員の多忙化解消プロジェクトチームが立ち上がり、平成28年11月には、「教員の多忙化解消に向けた 取組に関する提言 」が作成されています。

 その中では次のような記載があります。

 

 「県が実施している平成 27 年の「在校時間の状況調査」の結果に よると、小学校で 10.8%、中学校で 38.7%、高等学校で 14.0%の教員が、正規の 勤務時間以外で、80 時間を超えて在校している実態である。特に、中学校におい ては、20.7%の教員が 100 時間を超えて在校しており、教員は多忙を極めている状 況にある。(※在校時間:正規に割り振られた勤務時間以外に従事した時間) 」

 

 先生はいつ過労死してもおかしくない状況の中で働いています。この判決が、愛知県の、全国の先生の働き過ぎを改革する一つのきっかけになればいいと思っています。

 

 判決全文は裁判所ホームページに掲載されています。

 平成29年3月1日判決言渡

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「背景に効率化追求」中日新聞にコメントが載りました。

バイト欠勤に罰金 書類送検 弁護士岩井羊一
2017年2月23日中日新聞夕刊

2017年2月23日、中日新聞の夕刊に私のコメントが載りました。

 

同日、名古屋市北区のコンビニエンスストアの経営者が、アルバイトに対し、急な欠勤をした場合に罰金を支払うという労働契約を結んだことについて、愛知県警は、労働基準法違反の疑いで書類送検されたことが報道されました。

 

新聞記者の方に取材を受け、人件費が安いアルバイトを中心に運営しているのではないか。経営を過度に効率化させようとする姿勢がが背景にあるのではないかと指摘しました。

 

契約をしても許されないものがあること。大きく報道されることで、不合理な契約をさせられている人が、労働基準法違反だと声を上げることができるといいとおもいます。

 

こうした事件があったときに、大きく報道されることで欠勤に罰金を科してはいけないことについて、注意を促すことになればいいと思います。

 

もちろん刑事事件は疑わしきは被告人の利益にです。この経営者が有罪かどうかはわかりません。

しかし、報道にあるように、急な欠勤をした場合に罰金を支払うという労働契約をしたとしたら、労基法16条に違反します。

 

アルバイトで不合理な取扱を受けていると思ったら、ブラックバイト弁護団に相談してはどうでしょうか。

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ストレスは足し算で計算するべきでは

認定基準

 精神障害を発症したときに、労災か否かについては、厚生労働省の発出した(心理的負荷による精神障害の認定基準(基発1226第 1 号       平成23年12月26日) )によることになっています。(以下、認定基準、といいます。)

 

 この認定基準では、「 対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認 められること。 」が要件になっています。

 

 そして、強い心理的負荷がみとめられるかどうかは、認定基準の別表 1「業務による心理的負荷評価表」(以下「別表1」という。)を指標として「強」、 「中」、「弱」の三段階に区分し、そのうちの「強」にあたる心理的負荷があるかどうかを検討することになります。

 

 ここで「強」にあたるような心理的負荷があれば業務起因性が認められます。

 

 また、「中」にあたるような心理的負荷が複数あった場合には、「強」と認められる場合があります。

 しかし、「中」と「弱」の心理的負荷がある場合には、「強」とはならないとされています。

 

 

心理的負荷による精神障害の認定基準
厚生労働省のパンフレットより

ホームズらの研究 夏目の研究

   夏目誠教授の論文によるとHolmesら(Holmes,T.H.,Rahe,R,H,: THE SOCIAL READJUSTMENT RATING SCALE Journal of Psychosomatic Research. Vol. 11, pp. 213 to 218. Pergamon Press. 1967. )は体験したストレス点数の合計点が高くなれば、病気に陥る可能性が高くなると報告したとのことです(出来事のストレス評価)精神経誌(2008)110巻3号)。

 

 夏目誠教授の論文には以下のような記載があります。

「すなわち単一のストレスでなく、一年間に体験したストレスの総量が高ければ、病気の発生に結びつくという考え方だ。そこで我々は、ストレス度とストレス関連疾患との関連を検討した。すなわち平成6年から大阪府こころの健康総合内に解説されたストレスドックに受験した1,426名を対象に、ドック受験前の1年間における対象者が体験したストレッサーのストレス点数の合計点数を求め、健常者群と、ストレス関連疾患者群(略)の主として2群間の差異を分析した。

 その結果は図1に示したように、年間の体験した合計点数は健常者群の219点に対して、ストレス関連疾患者群(ノイローゼや心身症、軽症うつ病等)の受診者のそれは335点であり、健常者に比べて116点も高得点であった。特に職場との関連性が高い適応障害(職場不適応症)の受診者は391点で最も高得点であった。実に172点も高い。このことから、ストレス関連疾患の発生にストレスが関与しているのがわかる。」

 

 

ホームズらの研究 夏目らの研究からすれば、

 上記ホームズらや、夏目の研究の結果からすれば、ストレスは、そのすべての合計によって高いと判断することになるようです。

  そうであれば、今の認定基準には疑問があります。

 

  中 +  弱  がかならず中にしかならないのか。

 

  弱 +  弱  がかならず弱にしかならないのか。

 

 いずれも疑問が生じます。合計点数が高いとストレス関連疾患の発症がたかまるのであれば、弱が多くあった場合にも弱が業務上の心理的負荷であれば、弱の合計が強になるばあいもありえることになります。そうだとすると、弱しかなくてもたくさんストレス要因があれば、発症について業務起因性が認められるのことは考えていいのではないでしょうか。

 

 中と弱でも、弱が複数あったり、中が強に近い状態であれば、強とみとめることはできるのではないでしょうか。。

 

 また、上記ホームズらは、過去1年間におけるストレッサーのストレス点数の合計点を考慮しています。

 認定基準は発症前6か月に限定指定しています。この点も1年間の出来事を考慮するべきではないかといえます。

  

 さらに検討してみたいテーマです。

 

 

 

 

 

 

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電通 遺族と合意の意味するところ

 2017年1月20日、電通の社員で過労自殺として労災とみとめられた高橋まつりさんのご遺族と、電通の間で合意がなされたと報道されました。

 

 注目していたのは、一つは電通が、法的責任を認めて、ご遺族の納得するように謝罪するか。

 

 もう一つは、電通が、ご遺族が納得できるような再発防止のための対策を約束するか。

 

 でした。

 

 この事件ように過重な労働が明白であれば、会社は労災補償責任だけでなく、労働契約法の安全配慮義務に違反し、民法上の債務不履行責任や不法行為責任を負うことは明白ではないかと考えられます。

 

 そのような場合に、電通が、責任を認めて謝罪をするのか、法的責任の有無は裁判所の判断に委ねるかのような不遜な態度を取るのか、それは、今後の再発防止の可能性とも大いに関係があるところです。

 

 電通は、謝罪し、法的責任があることを前提とした慰謝料等の解決金を支払うことを約束したので、ご遺族は合意したのでしょう。

 

 再発防止ですが、電通が、企業ぐるみで長時間労働をしていたのであれば、いきなり時間を短縮するとしても仕事が回らなくなり、人を増やすか、仕事を減らすかする必要があります。その規模は相当なものになります。本当にそのことを覚悟して和解したのでしょうか。仕事を効率化することで長時間労働を減らせるなどという、小手先の対策を考えているだけではないかが心配です。

 

 この点、電通は今後、再発防止策の実施状況について年1回、遺族側に報告することを約束した,と報道されています。ご遺族は、このように、今後も再発防止について、意見を述べることができる約束をしたから、つまり、今後も監視をしていくことを前提に合意をしたのでしょう。

 

 高橋さんの言葉が胸に刺さります。

 

 「会社との合意には至りましたが、会社側がどんなに謝罪を述べたとしても、再発防止を約束したとしても、娘は二度と生きて帰ってくることはありません。」

 

 

 

 

 「娘や、これまで過労で亡くなった多くの人たちの死を無駄にしないためにも、日本に影響力のある電通が改革を実現してほしいと思います。」

 

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過労死等防止のための啓発事業

 本日、中京大学経営学部の授業の一コマで、過労死等防止についてお話しをさせていただきました。100名を超える大学生の皆さんがお話を聞いてくれました。

 

 お話しの冒頭で、ちょうど大学生のお父さんくらいの年齢のご主人を亡くされたご遺族のお話のビデオを流しました。

 それから、電通の高橋まつりさんのお母さんの手記を読み上げました。

 

 大学生の皆さんに、過労死をなくすために、あなたが総理大臣だったら、厚生労働省の役所の人だったらどんな政策を打ち出すか。

 

 あなたが社長さんだったらどんなことをするか。

 

 あなたが勤めている会社が長時間労働で、過労死しそうな会社だったらどうするか。

 

 考えて発表してもらいました。

 みなさん、真剣に考えてくれました。

 みなさんのような考えの人ばかりであれば、過労死等起きないはずなのにどうして起こるのか。

 それについて、私の考えも少しお話ししたつもりです。

 

 今日のお話しがすこしでも学生の皆さんのなかに残るように希望します。

 

 来年も、きっと予算が付きます。中学、高校、大学の先生方。

 

    弁護士がご負担なしで学校へ参ります。

 

 ブラックバイトなどの問題の含めてお話しできます。ご相談ください。

 

 

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「希望の裁判所」「法服の王国」

裁判所 市政資料館
名古屋市政資料館(旧名古屋高等裁判所)

 年末年始に、日本裁判官ネットワークの「希望の裁判所」を読みました。また、この本に寄稿している黒木亮さんの「法服の王国」を読みました。

 

 法服の王国という小説は、少し前に話題になっていたのですが、手に取ることはありませんでした。今回「希望の裁判所」を読んで、そこに黒木亮さんが寄稿されているものを読んで興味を持ち、読んでみることにしました。

 

 「希望の裁判所」は、裁判官が書いたもので興味深いものでした。

 私が弁護士になったのは1995年でした。そのときから比べるとこの20年の間に裁判所は大きく変わりました。その変化の過程が、日本裁判官ネットワークに所属する各裁判官、元裁判官の視点からまとめられています。興味深いものになっています。

 

 ただ、複数の裁判官の「論文集」となっていて、正直言って読みにくい。

 

 それはともかく、少し違和感のある意見もありました。

 

   現在の法曹養成制度の現実についてです。現在の法曹養成の制度と弁護士の人口増に問題があることは、法曹関係者としては認めざるを得ない現実です。法科大学院への志望者、司法試験の受験者が年々減少しているということは、法曹界に魅力が少なくなっているからだといわざるを得ません。

 このことについて,裁判官の仕事に魅力がある、司法の仕事に魅力があると指摘するだけでは問題の解決になりません。何が問題だったか、どうしたらいいのか、この点についての言及がほとんど無いことが残念です。

 

 「法服の王国」は、最後まで面白く読めました。構成や表現がたくみなせいか、一気に読ませ、読了後も気持ちが良い本でした。

 

 すでに、指摘されていることですが、法曹関係のことについて非常の詳しく記載されています。弁護士が読んでも、裁判のこと、弁護士のことについて違和感がありません。詳しく取材し、参考文献も読み込んで書かれています。

 

 原発訴訟の内容については、詳しく知りませんでしたが、主張、立証では完全に国を圧倒していたにもかかわらず、敗訴した歴史が、よくわかりました。裁判官が替わっただけで、違うことは弁護士としても実感していました。この小説では、裁判の中身を詳細に紹介し、尋問のシーンは、訴訟記録を引用しつつ、質問の意図や証人の様子を書き込んでいるのでとても臨場感があります。それ故に、この裁判については、単に裁判官が変わって結論変わるというレベルではなく、国や国政を問題にする裁判は、政治的に結論を決める、という司法の脆弱さが説得的に示されています。

 

 読むときには、裁判官の名前を、パソコンで検索しながら読みました。そうすると、多くの裁判官の名前が実名であることがわかります。作者は、以下のように述べています。

 「僕の書き方のスタイルなのですが、基本的には事実を基にしています。実名部分は一〇〇%事実。仮名部分は一~二割がフィクションです。それは、生の素材のまま描くと、事実でも物語として辻褄が合わない部分が出てくるためです。」

(週刊金曜日)http://blogos.com/article/75743/

 

 弁護士が、判決を言い渡す直前の裁判官の顔色を見て、結論を感じるというのは、弁護士に取材をして書いているのでしょう。「あるある」と思いながら読んでいました。

 

 刑法、憲法の重要判例も取り上げられており、司法試験を目指している法科大学院生が読めば、裁判例がもつ社会的意味なども知ることができると思います。 

                                                                                

 この小説では司法修習22期の裁判官を中心に物語が展開されていきます。その頃の裁判官の任官拒否や、宮本裁判官の再任拒否、平賀書簡問題等が、一部フィクションも付け加えられて物語として語られているところは、法科大学院性や、司法修習生、若い法曹関係者に読んで欲しいと思います。 

 

 過労死の問題も、一時期までは裁判所ではほとんど認めてもらえなかったそうです。

 十分な主張、立証ができた事案でも労災と認めてもらえなかった時期があったそうです。

 

 そこから比べれば、過労死の問題は、その裁判所の扉をこじ開け、国の認定基準を動かし、現在ではさらにその拡大を目指すことができる状況にまで来ていると評価できるかもしれません。

 

 

 


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明けましておめでとうございます

 あけましておめでとうございます。

 

 元旦は、日曜日でしたので日本基督教団熱田教会の早天祈祷会、主日礼拝に出席しました。

 

 今年の熱田教会の聖句は、「主は人の一歩一歩を定め御旨にかなう道を備えてくださる。」(詩編三七編二三節)です。「一歩一歩」、「主が」「備えてくださっている」この言葉を心の糧に歩んでいきたいと思います。

 

 本年もよろしくお願いします。

 

                             2017年1月1日 

 

                             岩 井 羊 一

 

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2016年の過労死等問題を振り返って

過労死 弁護士 岩井羊一 
過労死等防止対策推進シンポジウムで挨拶する弁護士岩井羊一

今年も本日までです。

 

 過労死等の問題について振り返ってみます。

 今年は、担当していた事件が勝利的和解で解決したり、2件の高裁での勝訴判決を受け、これが確定したり、とよい結果が続いた一年でした。

 

 もっとも、敗訴判決を受けた事件(控訴しました)、労災申請をしながら、不支給の決定を受けた事例等、訴訟が継続している事件もあります。辛い思いをしている遺族のかたのために今後も少しでも力になれたらと思っています。

 

 過労死等防止対策推進シンポジウムの岐阜、愛知にも参加しましたが、充実した内容で成功でした。岐阜の松丸弁護士の講演、愛知のクオレ・シー・キューブの岡田康子さんの講演はいずれも過労死問題を取り組んでいく上で新しい視点に気がつかせてくれました。

 

 全国的には9月30日に電通の高橋まつりさんの自死が労災認定された事件が大きく報道されました。入社1年目のクリスマスの夜に自死された事件。長時間労働が、規制されるばかりか25年前と同じような労働状況が続いているようです。書類送検され、刑事事件の結論も注目されます。

 

 母校、岡崎高校で弁護士と語る人生教室を行いましたが、そこでも高校生の皆さんとこの問題を一緒に考えてみました。

 

 高橋さん、そして全国で過労死等でなくなった方の死が、せめて、これからの過労死等の防止のために役に立つように、今後も裁判、労災認定手続きのサポートを続けていこうと思います。

 

 労働法講座や、いくつかの団体でパワハラ防止の講演をさせていただきました。みなさん、具体的な裁判事例などを紹介すると、熱心に聞いてくださいます。少しでも過労死等の防止するための意識づけになってもらえればとも思います。

 

 

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勝訴しました。

岐阜地方裁判所 平成28年12月22日判決

 2016年12月22日、岐阜地方裁判所(眞鍋美穂子裁判長、杉村鎮右裁判官、足羽麦子裁判官)は、岐阜市役所の職員の遺族が提訴した、地方公務員災害補償基金岐阜県支部長の「公務外処分」の取り消しを求めた裁判において、地方公務員災害補償基金岐阜県支部長の行った公務外処分を取り消す判決を言い渡しました。

 

 原告の勝訴です。職員が亡くなったのは平成19年ですから、亡くなってからは9年目の判決でした。

 

 西濃法律事務所の笹田弁護士、綴喜弁護士が担当していた事件で、途中から私が弁護団から参加しました。

 

 

 


 判決は、「亡Aは、業務の面からも、人間関係の面からも、精神的負荷のかかった状態にあり、肉体的にも精神的にも疲労のたまっている状態であったところ、本件遊具の設置問題があり、後閲問題が発生し、後閲問題により、自尊心を深く傷つけられ、この問題による亡Aへの精神的負荷は、それ以前の部長との関係から生じた精神的負荷や日常業務による肉体的、精神的疲労とも合まって、極めて強いものであったと認められる。」

 

 「亡Aは強度の精神的負荷を与える事象を伴う公務に従事したため、遅くとも同年11月頃までには抑うつ状態となったということができ、亡Aが従事した公務と上記精神疾患との間には相当因果関係が認められる。」

 

 「本件災害当時抑うつ状態にあった亡Aは、抑うつ状態という精神という精神状態から、本件災害当日に発生した岐阜公園内での事故の報告を受けたことを引き金に、突然発生する事故等にこれ以上耐えきれなくなり、発作的に岐阜市役所8階から飛び降りて、本件災害が発生したものと認められるから、上記精神疾患と本件災害との間の相当因果関係は肯定することができる。」と判示しています。

 

 判決は、強い精神的負荷があったことを認めていますから、地方公務員災害補償基金の定める「認定基準」によっても公務上災害と認められるものと判断しているものと理解できます。その内容は極めて明快です。これまで職員の方が亡くなってから9年の歳月が経過しています。理由のない控訴は、いたずらに確定を遅らせ、遺族に心労を与えるだけです。

 

 地方公務員災害補償基金が、岐阜地方裁判所の判決を尊重し、控訴をせず、早期に公務上の災害であると認定するよう望みます。

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注目の判決 2016年12月22日 岐阜地裁

過労死等防止対策推進シンポジウム 岐阜
昨年行われた過労死防止対策推進シンポジウム

 今年もあと僅か。

 しかしご本人も弁護団も支援するみなさんもこの判決を聞くまで今年が終わることがありません。

 2016年12月22日 岐阜地方裁判所で言い渡される判決。

 岐阜市の職員が2007年11月に自死した事件。公務災害であると主張してきました。

 公務災害と認められないために訴訟で争ってきました。9年を経ていよいよ判決です。

 多くの傍聴者と判決期日に出席します。

 判決は、法廷で裁判長が言い渡しをして初めて結論がわかります。あと数日。どきどきしながら過ごすことになります。これまで行政手続きでは3回駄目と言われました。もう辛い思いはしたくありません。

 

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勝訴判決確定

裁判所 名古屋 市政資料館 東区 白壁
旧名古屋高等裁判所 現在名古屋市市政資料館

 担当している過労死事件。

 先日、判決が確定した。1審勝訴。控訴審も控訴棄却の事案。

                                                                                                                            確定するかどうかは判決が送達された日から14日(判決の日を含めない。)後の24時を過ぎた時点。翌日裁判所に確認をして、確定を知ることになります。判決の日と同じように、確定するかどうかは、かなり神経質になります。

 

 すでに亡くなってから6年。辛い思い出ですが、仕事が原因だと認められて良かったです。

 

 

 

 

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2016年 過労死等防止対策推進シンポジウム愛知会場行われました!

過労死等防止対策推進シンポジウム行われました。

 11月23日、名古屋市のウィル愛知の大会議室で、厚生労働省主催の過労死等防止対策推進シンポジウムが開催されました。

第1部パワーハラスメントを防止するために

第1部は、岡田康子さんの講演でした。岡田康子さんは、株式会社クオレ・シーキューブの会長。あの「パワー・ハラスメント」という言葉を提唱した方です。

 とくに興味深かったのは、パワハラと指導の違い。

 パワーハラスメントは、自分の目的の達成(自分の思い通りにしたい)の為に行われる。指導は、相手を尊重する。相手の成長を促すために行われる。

 私を含め会場の聴衆が『そうだ、そうだ。』と引き込まれるようなお話しでした。パワハラの加害者と言われる人と多く面談しお話しをしてきた経験により、リアルにパワハラの実態を説明していただけたのでしょう。

第2部パワーハラスメントの相談の現状

NPO法人愛知健康センター 鈴木明男
話をする鈴木明男さん

 第2部は、連合愛知労働相談センター署長の坂平末弘さん、NPO法人愛知健康センター代表理事の鈴木明男さん。それぞれ、労働相談にのった経験をお話になりました。日常のパワーハラスメントの例をいろいろ紹介いただきました。

 自殺にいたらないまでも、日常的に多くの悩みをかかえ病気になっているかたがいることを改めて実感しました。

ウィルあいち
会場のウィルあいち

 悩んでいる人、困っている人、相談はいろんな場所があります。是非、色々探してみるといいですね。

第3部過労死遺族の報告

ウィルあいち
ウィルあいち 23日の催し

 第3部は、過労死遺族の報告。娘さんを職場のパワーハラスメントによる自死でなくされたお母様のお話でした。

 自死の直前の娘さんの様子は、本当になんといって良いのかわからない,聞いていて、悲しい、辛いお話しでした。

職場のいじめはなぜ起こる?

市政資料館 裁判所
会場の向かいの市政資料館(元裁判所)

岡村晴美弁護士からは報告の解説とパワハラ・モラハラの解説をいただきました。岡村晴美弁護士は、パワハラ、モラハラは、(特にモラハラ)やいじめは加害者が被害者より優位に立ち、心を支配しコントロールするところに特徴があるという解説がありました。

いろいろなケースに当てはまります。


閉会挨拶

 閉会の挨拶を私がさせていただきました。

 

今日のお話を聞いて、企業に研修をする立場から、労働相談をする立場から、そして遺族の立場からお話を聞くことができました。弁護士として接している部分は、一部分なのだと思います。大変参考になりました。

 

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過失相殺は不当である。

弁護士ドットコムへのコメント


先日、過労死の損害賠償請求の裁判について、弁護士ドットコムからコメントを依頼された。

 

公務員の「過労自殺」控訴審、遺族が逆転勝訴…裁判で争点となる「安全配慮義務」とは    

https://www.bengo4.com/c_5/n_5343/

 

そこで、言い尽くせなかった判決の意義と問題点についてかいてみた。

判決の内容


 糸島市の課長のAさんが平成22年、在職中に自殺したことについて、その遺族が死に対し損害賠償請求をした。福岡高等裁判所は、平成28年11月10日、請求を棄却した福岡地方裁判所の判決を取消して、遺族の請求を一部認める判決をした。

 

 本件は,公務災害認定されている事案であって、過重な労働と自殺の因果関係は相当明確であり、この判断は当然のことである。 ところが、高等裁判所は、自殺した課長の過失割合を8割と認め、2割分の損害賠償請求しかみとめなかった。過失相殺を認めたこと自体、不当な判決といわざるを得ない。

過失相殺を認めた理由を認めた理由


 上記福岡高裁は、「Aは、管理職として、可能な業務を部下に割り振るなどして自らの労働時間を適正に管理する意識が弱く、また、被控訴人において整備していたメンタルヘルスに関する相談制度を利用することもなく、業務によるストレスを蓄積したいたというべきであり、業務によるストレスをうつ病に罹患して本件自殺に至ったことについては、このようなA自身の勤務に対する姿勢やメンタルヘルスに対する認識の低さが深く寄与しているというべきであって、Aが一度でもメンタルヘルスに関する相談制度を利用していれば、本件自殺という事態は回避できた可能性が大きいと考えられる。」と判示し、8割の過失相殺をするのが相当であるとしている。

電通最高裁判決


 電通最高裁判決は、「企業等に雇用される労働者の性格が多様のものであることはいうまでもないところ、ある業務に従事する特定の労働者の性格が同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでない限り、その性格及びこれに基づく業務遂行の態様等が業務の過重負担に起因して当該労働者に生じた損害の発生又は拡大に寄与したとしても、そのような事態は使用者として予想すべきものということができる。」と判示している(最高裁判決平成12年3月24日)。

東芝最高裁判決


 東芝最高裁判決は「労働者にとって過重な業務が続く中でその体調の悪化が看取される場合には,上記のような情報については労働者本人からの積極的な申告が期待し難いことを前提とした上で,必要に応じてその業務を軽減するなど労働者の心身の健康への配慮に努める必要があるものというべきである。」と判示して、労働者本人が、体調の変化を申し出ることがなかった場合にも、「上告人が被上告人に対して上記の情報を申告しなかったことを重視するのは相当でなく,これを上告人の責めに帰すべきものということはできない。」などとして過失相殺を許さなかった(最高裁判決平成26年3月24日)。

最高裁判決を本件に当てはめてみると


 高裁判決は、Aさん自身の、可能な業務を部下に割り振るなどして自らの労働時間を適正に管理する意識が弱いと判断している。しかし、割り振るべき仕事を割り振らずに抱えこんだという事実が認められたとしても、そのような事実は仕事を責任を持ってやろうというAさんの責任感の現れであって、決して人間として非難される事情ではない。もともとこのように仕事を割り振るべき仕事を割り振らずに抱え込むような人は責任感の強い人で、そのような人がいることも職場では十分に予想できる。そんな人がいる職場に、過重な仕事をあたえた会社こそ責められるべきである。

 

 このAさんが同種、すなわち市役所の課長の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものだとは考えられない。判決自体、Aさんが

「同種労働者の性格傾向の多様さとして通常想定される範囲を逸脱するような脆弱性を有しているとはいえない。」

 と判示している。

 

 高裁判決は、メンタルヘルスに関する相談制度を利用することがなかったことを指摘し、メンタルヘルスに対する意識が低いと判断している。しかし、利用することがなかったことで直ちにAさんを非難できる事情とはいえない。過重な労働をさせておいて自分でメンタルヘルスの相談を受けなかったことを理由に過失相殺を許すことが公平とは思えない。

 

 上記の東芝最高裁判決は、「労働者本人からの積極的な申告が期待した難いことを前提とした上で、必要に応じてその業務を軽減するなど労働者の心身の健康への配慮に務めるべき必要があるものというべきである。」と判断している。このことは、メンタルヘルスに関する相談制度を利用しなかった本件の課長のAさんにも当てはまる。真面目に業務に取り組んでメンタルヘルスを害しながらも相談しない労働者が存在することも使用者は想定するべきである。

 

 Aさんの業務が客観的に過重であったのであるから過失相殺を認めることは困難であるというべきである。

8割は高すぎる


私の担当したトヨタ・デンソー事件(名古屋地裁平成20年10月30日判決)では、

 

「ところで,原告の業務は,客観的過重労働には至っておらず,第1回うつ発症には,前認定のような原告の精神的脆弱性や性格も影響していると考えられる。」

 

「このような性格等に起因して,…これらの原告の行為が,うつ病の発症及びその悪化に影響を与えたことは否定できない。そして,このような原告の性格及びこれに基づく業務遂行の態度等は,同種の業務に従事する労働者の個性の多用さとして通常想定される範囲をいささか外れるものと認められる。」

 

「したがって,民法722条の類推適用により,被告らの安全配慮義務違反による損害賠償額を算定するに当たっては,この事情も斟酌すべきである。」

 

と判示された。

 

 客観的過重労働ではない、労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲をいささか外れるなど、かなり否定的な事実を指摘されている。

 

 しかし、この場合でも名古屋地裁が減額した割合は3割に過ぎない。

 本件高裁判決は、客観的過重労働があるとみとめられている。また、通常想定される範囲を外れるような性格も認められない。そのような事案で8割もの過失相殺をするのは、公平さを欠くと言わざるを得ない。

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過労死等防止対策推進シンポジウム 岐阜 開催されました。

 11月12日、岐阜市で過労死等防止対策推進シンポジウムが行われました。

 

 冒頭に主催者を代表して、唄(ばい)繁樹岐阜労働局労働基準部長から、開会の挨拶がありました。

 

 基調講演は松丸正弁護士。過労死弁護団全国連絡会議の共同代表をされています。

 松丸弁護士は1981年、まだ「過労死」という言葉がない時代から、この問題に取り組んでこられました。10年くらいは、まったく労災と認められなかったそうです。

 

 松丸弁護士は、過労死等を防止するために、労働基準法を守らせるという取り組みだけではたりない。36協定を守らせるだけではたりない。労働時間を適正に把握しなければならないというお話しでした。そうでなければ、長時間労働はなくならないとのことでした。

 

 さらに、松丸弁護士は、責任の所在を明らかにさせなければならない。会社の責任はもちろん、会社の中で過労死を生んだ責任が誰かまで追及することまでしなければ、過労死をなくすことができないとお話になりました。

 

 また、過労死と思われる事案でも、労災申請に踏み切れない遺族もある。労災認定が認められれば、労災から年金が支給され、厚生年金と併せれば、過労死した人が生きていたのと遜色ない収入が得られる。大切な人を亡くし、生活に不安をいただく残された家族の大きな支えになる。そのことをきちんと知らせる必要があるとお話になりました。

 

 あらためて、これまで長年過労死問題に取り組んでこられた松丸弁護士のお話は、分かり易く、重みもあるお話しでした。

 

 続いて、岐阜の3件の事案についてそれぞれ担当した弁護士から報告がありました。

 

 私、弁護士の岩井羊一から、岐阜県職員の過労自死事件の事案の内容、経過について報告しました。長時間労働と、不適切な指導があった事案です。

 

 綴喜秀光弁護士からは、岐阜市民病院の過労自死事件について報告がありました。この事案も長時間労働と不適切な指導があった事案でした。

 

 江本泰敏弁護士からは、岐阜県内の大手企業の過労自死事件について報告がありました。労災認定を受けたが、パワハラの内容がわからず、ご遺族の強い希望により、訴訟を提起したこと。大きく報道されたことで請求の認諾をうけたことなどの報告がありました。

 

 続いて、岐阜市職員の過労自死事件の原告の伊藤左紀子さんから遺族の訴えがありました。

 伊藤さんの訴えは、大切な夫を亡くした悲しみ。

 公務災害手続きに不合理さなど思いの丈をお話になりました。

 

 伊藤さんの事件の判決は12月22日。苦労が報われる判決を期待します。

 

 意見交換の時間には、多くの方が感想、意見、質問がありました。

 

 過労死をなくすためにどうしたら良いか、意見交換をしました。岐阜では、初めての厚生労働省主催の過労死等防止対策シンポジウム。

 

 岐阜で過労死に取り組む弁護士、労働組合、過労死をした方の家族の協力がなければ実現しませんでした。

 多くの方が知恵を出し合うよい会になりました。お疲れ様でした。

 

 愛知会場は11月23日。

 パワーハラスメントをなくすための方策を一緒に考えます。

 

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電通の強制捜査

今週は、過労死についてあらためて考えさせられる1週間になります。

11月7日、電通の過労死事件に関連して、電通に強制捜査がされました。

NHKの取材を受けました

 7日の朝、NHKの名古屋放送局から電話があり、電通に強制捜査が入り、名古屋の支社にも同時に強制捜査がなされた。過労死に関して取材をしたいとの申し入れがありました。

 

 取材の趣旨は、現在の過労死の状況はどうか。どの様な年代の人に多いのか。東海地方の特徴があるのか、過労死をなくすためにどうすれば良いのか聞かせて欲しいというものでした。

 

 そして、記者の方とカメラマンのかたがこられカメラのまえでコメントをしました。

 名古屋放送局の取材ですから地方の状況、地方の特色について特にコメントを求められました。

STOP自殺 みんなで守ろう!大切ないのち
駅のポスター

過労死の状況

 

 一弁護士が、当地の労災の状況を全部つかんでいるわけではありませんので、感想程度のお話ししかできませんが、一つの特徴として電通の高橋まつりさんのように、入社して間もないかたが過労死した事件を担当したことがあります(スギヤマ薬品事件)。このような裁判例になったもののほかにも、いくつかの相談は、入社して一年以内の方でした。裁判例でも、就職してまもなくのかたが過労死、過労自殺する例があります。

 

 当地の特徴ですが、これについては、ありきたりではありますが当地はものづくりの産業が盛んですから、これらの製造業に関わる事案があることをお話ししました。

 

 現在、私が担当している事件も、自動車会社の2次下請けの件があります。

 自動車会社の事件では、創意くふう提案、QCサークル活動が業務をしていた時間になるかどうかが争われました。

 

 裁判所は、労災認定を判断する上では労働時間であると認めました。また、無駄をなくし効率を求める職場は、一つ間違えれば強いストレスを受けて精神疾患を発症させるリスクがあるともお話ししました。

 

 三番目に過労死をなくすためにどうしたら良いのかについては、労働時間の上限を定めるべきだと指摘しました。

 なぜなくならないかと言うことについては、すでに企業が労働者のサービス残業を組み込んで利益を見積もっているから簡単ではないとコメントしました。

 

 企業は、人件費を法律を守って計算し、あらためてかかる人件費をただしく支払って企業活動をしなければならないことを自覚するべきだ。実際には人件費はもっとかかるんだということを自覚し、収益の仕組みを考えるべきだと指摘しました。

「過労死や過重労働など愛知県内の労働を巡る相談や裁判を数多く担当している名古屋市の岩井羊一弁護士は「製造業が盛んな愛知県では業務の効率化を求める企業が多いが、社員の性格や適性を踏まえず、これを一律に強く求めていくと人によってはパワーハラスメントやストレスと感じる場合がある」と指摘しています。
 さらに、「経営側は、長時間残業や休日出勤をいとわず、無理をしてでも働こうとするかつては美徳された気構えに甘えている部分がある。しかし、これは過労死にもつながる働き方であって、大変危険な状態で改めるべきだ」と注意を呼びかけています。
 そのうえで、「労働組合と経営側の間で時間外や休日の勤務に関わる協定を結んでいても労働者は弱い立場なので実態は違うところが多い」として、「長時間労働を規制する強制力を持った法律の整備も必要ではないか。経営側には規制の範囲内でしか従業員を働かせられないという意識を根付かせるようにすべきだ」と提言しています。」

 2016年11月7日 NHKニュース

過労死・過労自殺の救済Q&A 第2版
過労死・過労自殺の救済Q&A 2版発刊

過労死等防止対策推進シンポジウム 東京

 11月9日は、東京で、過労死等防止対策推進シンポジウムが開かれました。電通の社員で亡くなった高橋まつりさんのお母さんが、娘さんのことをコメントされました。報道関係でも大きく取り上げられました。

 

 出席はしていませんが、報道でそのお母さんのコメントを見ても本当に悲しい,悔しい気持ちになりました。

 

 「11月になり、25年前の過労自殺の記事をもってきて、「こうなりそう」と言いました。私は「死んじゃだめ」何度も言いました。」

 

「私には、「上司に,移動できるか交渉してみる。できなかったら辞めるね。」と言っていましたが「仕事を減らすのでもう少し頑張れ」ということになったようです。」

 

 SOSを発信しながら、自殺してしまう。

過重労働の恐ろしさを感じます。

発症した病気は、彼女を死へと追いやったのでしょう。 

岐阜でも過労死等防止対策推進シンポジウム

 11月12日土曜日には岐阜で,過労死等防止推進シンポジウムを開催します。

 いくつかの事例の報告があります。私も岐阜県職員の過労自殺について報告させていただきます。

 たくさんの方に過労死が、大変な悲劇であることを知ってもらいたいと思います。


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過労死等防止対策推進シンポジウムを開催します。

11月23日過労死等防止対策シンポジウムを開催します。

日時: 平成28年11月23日(水)
13:30~16:30(受付 13:00~)
会場: ウィルあいち 大会議室
愛知県女性総合センター
(愛知県名古屋市東区上竪杉町1番地)
定員: 200名
アクセス: ・地下鉄「市役所」駅 2 番出口より東へ徒歩約10分
・名鉄瀬戸線「東大手」駅 南へ徒歩約8分
・基幹バス「市役所」下車 東へ徒歩約10分
・市バス幹名駅1「市政資料館南」下車 北へ徒歩約5分
主催: 厚生労働省
後援: 愛知県、名古屋市、愛知県弁護士会
協力: 過労死等防止対策推進全国センター
全国過労死を考える家族の会
過労死弁護団全国連絡会議
過労死等防止対策推進シンポジウム

愛知会場は今年も11月23日

 シンポジウムは、厚生労働省が、過労死等防止対策を推進するための啓発活動として行われます。

 参加費は無料です。

 参加の申し込みは、過労死防止対策推進シンポジウムのホームページからできます。

クオレ・シー・キューブの岡田康子さんの講演

 今回の愛知会場では、株式会社クオレ・シー・キューブの会長、岡田康子さんにおはなしいただきます。

 

 岡田さんは、「パワーハラスメント」という言葉を日本ではじめてつくって提唱し、この問題に警鐘を鳴らした方です。

 

 いまやこの「パワーハラスメント」という言葉は「パワハラ」として、一般に定着しています。このネーミングは、職場の「パワハラ」を防止するために大きな役割を果たしています。

 

 今回のシンポジウムでも大変意義深いお話が聞けると思います。


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死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言

 日弁連人権擁護大会に出席しました。ここで、今回日本弁護士連合会は「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」しました。

 

   私は、前日のシンポジウム、第3分科会 「死刑廃止と拘禁刑の改革を考える~寛容と共生の社会をめざして~」に出席しました。

 

 このシンポジウムに参加して、認識を新たにしたのは、最近死刑廃止の国が増えていること。そして、死刑存置国のアメリカの州で急速に死刑廃止をする州が増えているとのことです。

   

   現在、アムネスティ・インターナショナルによれば、2015年末時点の死刑全廃止国102か国、通常犯罪廃止国6か国、事実上の廃止国32か国、存置国58か国となっています。

 

 OECD(経済協力開発機構)加盟国34か国の中では日本と米国だけが、死刑を存置し,執行している。その米国では、近年1年に1州が死刑を廃止している傾向にあり、50州のうち18州で死刑を廃止しているとのことです。

 米国でも死刑廃止の流れが進行しているとのことです。

 日本は、死刑に関して、世界の流れから遅れているという現実を強く認識させられました。

 

 米国で死刑が廃止になっている背景もえん罪が相次いで発覚したことがきっかけだと言われているそうです。

 死刑が言い渡された者がDNA鑑定により無罪になった例が多数あった。また米国では死刑求刑事件についてはスーパーデュープロセスが保証されており、死刑に慎重な制度となっているが、それがコストがかかることから、死刑廃止の流れがおきているとのことでした。

 

 英国も戦争が終わるまでは死刑制度が存在し、国民の8割が死刑制度を支持していたとのことでした。エバンスさんが、娘を殺害したとしえ死刑判決をうけましたが、その数年後に別の者が自分がその娘を殺害したと自白し手真犯人と認められたため、誤った死刑執行が明らかになったそうです。他にもいくつかのえん罪事件があったことが影響して、1969年には死刑廃止が恒久化されたそうです。

 

 2014年12月の国連総会において、「死刑の廃止を視野に入れた死刑執行の停止」を求める決議が、過去最高数の117か国の賛成により採択されました。同決議は、死刑制度を保持する国々に対し、死刑に直面する者の権利を保障する国際的な保障措置を尊重し、死刑が科される可能性がある犯罪の数を削減し、死刑の廃止を視野に死刑執行を停止することを要請しています。

  

 さらに、日本は、国連の自由権規約委員会(1993年、1998年、2008年、2014年)、拷問禁止委員会(2007年、2013年)や人権理事会(2008年、2012年)から死刑執行を停止し、死刑廃止を前向きに検討するべきであるとの勧告を受け続けているそうです。

 

 日本は、死刑に関して、世界の流れから遅れています。

 

 日本でも死刑が言い渡された人が後に再審で無罪になった事例がいくつもあります。

 日弁連が支援している事件で、未だ、無罪判決には至っていませんが、実際には無罪であったと考えられている事例がいくつもあります。これらの弁護人をした弁護士の報告もききましたが、無実の人が死刑判決を受け、確定したときのとてつもない恐怖や無念さは大変なものです。

 

 これは、そもそも理由があったときの人を殺して良いという制度自体がかかえる矛盾なのだと思います。 

 翌日の大会では約3時間近く、この宣言案について討論しました。

 反対の立場の人から、えん罪に関しては、えん罪を無くすよう努力するべきだとの意見が出されました。

 確かに、えん罪が起こりうるから死刑を廃止するべきだという説明は、家族を犯罪で失い死刑を望む被害者の方や、その心情を共有する国民の方にはなかなか理解できない考え方かも知れません。

 

 しかし、今の日本では、えん罪が起こりうるものであるということは刑事弁護人の実践を通して多くの弁護士が感じている実感でもあります。

 

 私は、この日、死刑と判決された再審事件を担当した弁護人の話を聞き、自分の感じていたえん罪の危険の理解はまだまだ抽象的だったと思いました。

 そして、諸外国でも同じような経験を経て死刑廃止に変わっているということです。

 

 日本は、死刑廃止をしている国とは文化も国民の意識も違うのだという指摘もありました。しかし、私には、死刑は、憲法に反するという考え方のほうが、説得力を感じました。

 

 日本の最高裁判所が死刑を合憲だと判断したのは1948年。このとき、死刑を廃止した国は、わずか7か国だったそうです。しかし、いま死刑を廃止している国は102か国になりました。

 

 最高裁判所の大野正男裁判官は1993年、少数意見として死刑廃止国が当時83カ国であることなどを指摘し「…このことは、昭和23年当時と異なり、多くの国家において国家が刑罰として国民の生命を奪う死刑が次第に人間の尊厳にふさわしくない制度と評価されるようになり、社会の一般予防にとって不可欠な制度と考えられなくなっている証左であろう。」と指摘していたそうです。

 

 現在においては、死刑は憲法に違反するという学説も有力です。

 

 極刑を望むという被害者に寄り添い、そのために努力されている会員の意見を直接聞きました。それゆえに、弁護士会が宣言をあげることは、被害者に寄り添う活動に大きな障害になるのだという意見がありました。それほど被害者の感情は激しく、それに寄り添う活動の大切さ、苦労などが伝わってきた意見でした。そのことも討論では大変考えさせられました。

 

 人権擁護大会では賛成論、反対論とも十分に議論を尽くして多数決を行いました。最終的には動議により議論は打ち切りましたが、議長は、事前に発言を通告した方には時間を延長しても発言してもらうというスタンスでした。一人で長い時間意見を述べられる会員がおりましたが、その会員に協力は求めましたが強制的に打ち切ることはしませんでした。

 

 議論打ち切りの時にはおおよそ意見は出尽くしたという状況であり強権的な印象は受けませんでした。

 

 私は、宣言案に賛成しました。元々宣言案の趣旨に賛成であったことに加え、討議の内容をきいても賛成の意見に説得力があったと感じたからです。

 

 決議は、この時の出席者786名のうち賛成546名、反対94名、棄権が144名でした。賛成が69.46%、反対が11.95%、棄権が18.32%という結果でした。議論の状況を踏まえた決議結果だったと思いました。

 

 決議の後、日弁連の木村保夫副会長が、会員から貴重な意見をいただいた、犯罪被害者とこれを支援する会員の声にもこれからも耳を傾けるという趣旨の発言をしました。議論を聞いた感想を率直に述べたのだと思います。議論を聞いて同じような思いを持ちました。

 

参考 死刑廃止と拘禁刑の改革を考える ~寛容と共生の社会をめざして~

   日本弁護士連合会第59回人権擁護大会シンポジウム第3分科会実行委員会