過労死等防止対策推進シンポ 岐阜 2017


 2017年11月13日、過労死等防止対策推進シンポシンポジウム 岐阜会場 が行われました。

 岐阜では、

 

  労働局 労働基準部 監督課の佐藤健二課長のご挨拶

  岐阜市で自殺をした公園整備課長の配偶者であった伊藤左紀子さんの報告

  この自殺を受けた岐阜市の取組を、岐阜市の杉原太課長の報告

  私の、地方自治体の過労死防止の取組として豊川市の例の報告

  医師櫻沢博文氏の「職場のメンタルヘルス対策」講演

  過労死遺族の吉田典子さんのお話し「私の陽介はどうして死んでしまったの?」

 

 が行われた。

 約110人の参加で盛況であった。

 平日の昼間という時間帯であったがこれほど多くの方が集まったところにこの問題の関心の高さが伺えた。

 

 岐阜市の過労死等防止に関する取組については、岐阜市がホームページで公開している。

http://www.city.gifu.lg.jp/31020.htm

 

 そこには、「平成29年7月、元市職員の自死が、強い精神的負荷に起因する公務災害と認定されたことを受け、二度とこのような事案が発生しないよう市をあげて再発防止に取り組んでいきます。」との記載があり、過労死等防止の取組が職員の自死について、公務災害と認定されたことが契機であることが明記されている。

 

 そして、「特に元職員の命日(11月26日)を含む後半の2週間を「岐阜市過労死等防止強化週間」と位置付け、様々な取組を実施」

 とわざわざ記載して取組をすることとしている。


 

 

  岐阜の報告があった後、私から、その前の豊川市の過労死等防止対策の取組について紹介した。

 

 豊川市はパワーハラスメント防止対策についてホームページで公開している。

http://www.city.toyokawa.lg.jp/shisei/jinnjishokuinsaiyo/kenshu/komugaisaigai.html

 そこでは、「平成24年2月22日に、元市職員に係る公務外災害認定処分取消請求事件について、最高裁判所は、地方公務員災害補償基金側の上告を棄却し、難度が高くトラブルが発生していた公務の状況と上司によるパワーハラスメントの心理的負荷に起因する公務災害と認めた名古屋高裁判決が確定しました。
 この判決を受けまして、豊川市としてパワーハラスメント再発防止の取組を下記のとおり実施しています。」

 と記載されている。

 

  豊川市は、この内容を当時広報誌にも掲載して市民に公開した。

 「とよかわ」2012年6月版

 

 櫻澤博文先生のお話は、メンタルヘルスの対策について幅広くお話しいただいた。

 

 櫻澤博文先生は、合同会社バラゴンの代表者である。

 メンタルにならない様に、なったときにどうすれば良いか。分かり易く説明があった。

  合同会社バラゴンのホームページ

 

 そして、吉田典子さんのお話。

 お母さんの悲しみが良く伝わってきました。

 司会の方が泣いておられました。

 

 

 参加者は約110名

 昨年より着実に増加しています。

 多くの方が過労死等のこと。過労死を考える家族の会のことを知ってもらいたいともいます。

 名古屋は11月28日午後1時半から開催します。

 

 

ハインリッヒの法則

過労死 パワハラ たくさんの指示 ストレス

 ハインリッヒの法則について次のような記載がありました。

 

「アメリカのハインリッヒ氏が労災事故の発生確率を調査したもので、「1:29:300の法則」ともいわれる。これは、1件の重症事故の背景には、29件の軽症の事故と,300件の傷害にいたらない事故(ニアミス)があるという経験則。また、その背景には、数千、数万の危険な行為が潜んでいたともいう。つまり、事故の背景には必ず多くの前触れがあるということ。(以下略)」(出典:ナビゲート)

 

 「事故の発生に関する経験則。1件の重大事故の背後に、29件の軽微な事故があり、さらに300件の事故につながりかねない、いわゆる「ヒヤリ・ハット」の事象があるとするもの。交通事故、航空事故、医療事故などの分野で,同種の経験則に基づく安全対策が行われている。1929年、米国の損害保険会社のハーバート=ハインリッヒが提唱。」(出典:デジタル大辞泉)

 

 ここでいう労災事故は、例えば機械に巻き込まれて重症を負ったなど事故のことだと考えられます。過労死、過労自殺などについては、軽症の事故、傷害に至らない事故を数えることが難しく、1:29:300なのかどうか実際に分からないと思います。また、そのような研究もなされていないと思います。

 

 しかし、一件の過労死、過労自殺の背景には、多くの長時間労働をしている労働者、パワハラ等のハラスメントを受けて、死に至らないけれども体調を崩したり,体調までは崩さないけれども、大変な思いをしている労働者がいると考えることはできそうです。そして、その背後には、長時間労働、厳しい指導があり、過労死ラインをこす危険がある職場があるということもいえるはずです。

 

 そうだとすれば、いわゆる過労死ラインに至らないような時間外労働や、パワハラとはっきり言えない指導についても、事業主は、問題が大きくならないように、解決しておく必要があるといえます。

 

 現実は、労働については、法律の規制をまもっていれば問題にならない。そこまでは、企業の効率化のためになんとか時間外労働をさせたい、厳しく指導させたいというのが実態のように思えます。

 

 ヒヤリ・ハットの防止をする対策のために長時間労働をしているのであれば、本末転倒です。

 

 長時間労働、パワーハラスメントのほか配転などの仕事の変わり目、休日労働がつづいて休みのない連続勤務等を漫然と行わせることが、過労死、過労自殺の危険に変わりうることを各企業が認めて、対策をして欲しいと思います。

 

 11月は、過労死等防止対策推進法で定められた啓発月間です。職場の状況を見直すことで過労死、過労自殺の防止を考えてほしいと思います。

平成29年版過労死等防止対策白書

 平成29年版の過労死等防止対策白書が発表されました。

 

 過労死等防止対策推進法(議員立法により平成26年成立・施行)に基づき、国会に報告を行う法定白書です。

 

 今回が2回目の閣議決定及び国会報告になります。

 

 

 

 過労死等防止対策推進法(平成26年法律第100号)

(年次報告)

 第6条 政府は、毎年、国会に、我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために 講じた施策の状況に関する報告書を提出しなければならない。

 

 過労死等防止対策白書のポイントは次のように説明されています。

 

「過労死等防止対策白書」のポイント

 

 

 

1.「労働時間を正確に把握すること」が「残業時間の減少」に繋がるとする分析や、過労死等が多く発生していると指摘のある自動車運転従事者や外食産業を重点業種とする分析など、企業における過労死等防止対策の推進に参考となる調査研究結果を報告。

 

 

2.「『過労死等ゼロ』緊急対策」(平成281226日「長時間労働削減推進本部」決定)や「働き方改革実行計画」(平成29328日「働き方改革実現会議」決定)など、昨年度の取組を中心とした施策の状況について詳細に記載。

 

3.過労死等防止対策に取り組む企業、民間団体、国、地方公共団体の活動をコラムとして紹介。 

とあります。

「過労死等防止対策白書」は、厚生労働省ホームページの下記URLからダウンロードできます。 

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000138529.html

 

 

今年も過労死防止対策推進シンポジウム

日時:

 

平成29年11月28日(火)
13:30~16:20(受付13:00~)

 

会場:

 

名古屋国際センター 別棟ホール
(名古屋市中村区那古野一丁目47番1号)

 

定員:

200名

アクセス:

 

・名古屋駅から東へ徒歩7分
・地下鉄桜通線「国際センター」駅下車すぐ
・市バス「国際センター」下車すぐ

 

 今年も厚生労働省主催の過労死等防止対策シンポジウムが行われます。

    今年のプログラムは以下の通りです。

 

[過労死等防止対策白書の説明] 厚生労働省
[講演]
「保健予防福祉学の立場から」 山崎 喜比古 氏(日本福祉大学教授)
[過労死問題をテーマにした落語]
「エンマの願い」 桂 福車

桂 福車
【プロフィール】
1961年生まれ、大阪出身。大阪府立清水谷高校卒。1983年に22歳で桂福団治に入門。古典落語はもとより社会派落語では上方落語界きっての巧者。

[過労死遺族の声]

 

 

今年の愛知会場の特徴

平日開催

 

 今回は、企業の人事関係の担当者、役職者の方に仕事として過労死防止について話を聞いてもらいたいということで平日開催にしました。

 是非、いままでこんなテーマで話を聞いたことがないという方にもお話しをしていただけたらと思います。

 

 

厚生労働省からの白書の説明

 

 厚生労働省の担当者がわざわざ来てくださいます。霞が関での現場で把握している過労死等の実情について説明が受けられます。

 

 

山崎喜比古教授の講演

 

 山崎喜比古教授は、1999年、精神障害の判断指針がつくられたときの専門検討会の委員でした。この判断指針ができてから、精神障害が労災として一般的に認められるようになったのです。保健予防福祉学の立場から貴重なお話が聞けると思います。

 

桂福車師匠の落語

 

 仕事できて平日の午後から落語?とお思いの方もいらっしゃるかも知れません。

 私も、いままで2回聞いたことがありますが、思いっきり笑えます。でも、過労死の家族のことをよく知ってもらっているので、最後は本当に泣けます。過労死で本当に何が問題なのかすっと聞けます。

 笑工房のホームページもご覧ください。

 

過労死家族の話

 

 集まった全てのかたに、家族を過労死で亡くされた家族の話を是非聞いて欲しいと思います。

 どんな思いでいるのか、そこがないと、なくそうという動きがどうしても鈍くなってしまいます。辛いことですが、是非聞いて欲しいと思います。

 

 愛知会場のシンポジウム、是非、多くの方に参加して欲しいです。

 参加は、予約制です。(当日も可能だと思いますが、是非、予め予約をして欲しいと思います。)

 プロセスユニニークさんのホームページでどうぞ。

 

 

 

 

今年も開催しました。親子でロースクール

 2017年も、日進市と愛知学院大学法務支援センターとのコラボ(提案型大学連携協働事業)で、愛知学院大学法務支援センターの模擬法廷などをつかい、「親子でロースクール」を開催しました。

 日進市のホームページ

 愛知学院大学のホームページ

 

 参加していただいた方、ありがとうございました。

 今回もNHK制作の昔話法廷の映像みてもらい、討論しました。

 

 今回の題材は、「白雪姫」。 「被告人は王妃。白雪姫に毒リンゴを食べさせ殺害しようとした罪に問われている。しかし、王妃は犯行を全面否定!王妃は白雪姫を殺そうとしたのか?それとも無実か?」(NHKのホームページの紹介記事より)

 

 よく知っている白雪姫。でも証拠はこの法廷で調べた証拠だけ。予断は許されません。

 そして、刑事裁判の鉄則は「疑わしきは被告人の利益に」。

 

 この原則で考えてみると。

 

 「親子でロースクール」なので、親グループは大人だけで討論しました。小学生の子どもたちは子ども達だけで討論しました。

 討論の司会をするのは、法科大学院の教授、そして法科大学院出身の現役の弁護士。

 なかなか豪華な企画です。

 

 私も当日、議論を見させていただいて、また、時には議論に加わってお話ししました。

 人って本当にそれまでの経験や考え方に個性があります。同じお話しをみても、こんなふうに違う見方をするんだ、というところと、やっぱりみんなそう考えるよね、ということがあって、参考になりました。

 

 もちろん、自分の意見を整理して述べて議論するということはとても大切なことです。

 

 いま、刑事事件の法廷では裁判員裁判が行われています。

 市民が、裁判に関わるのはとても大切なことだと思います。それは、私たちの社会を私たちが関わってどうするか考えることに繋がるからです。

 

 参加していただいた方が、少しでも刑事裁判を知るきっかけになればと思いました。

 

心理的負荷による精神障害の認定基準(基発1226第1号 平成23年12月26 日)「第5 精神障害の悪化の業務起因性」の改定を求める意見書

  過労死弁護団全国連絡会議は、2017年7月11日、厚生労働省あてに、認定基準の,精神障害の悪化の業務起因性の改定を求める意見書を提出しました。(過労死110番 ホームページ参照)  

 

 この意見書は、 現在の認定基準が「特別な出来事」に該当する出来事がなければ、対象疾病が悪化し た場合に業務上の疾病とは扱われないことになっていることについて、「特別な出来事」に該当する出来事がない場合には、一切業務起因性が否定されるのは不合理であるとして改定を求めるものです。

 

 この意見書は、アピコ関連事件・名古屋地裁平成27年11月18日判決、これを不服として国が控訴した同事件・名古屋高等裁判所平成28年12月1日判決をもとにしています。  

 

 いずれも当職らが原告代理人として関わった訴訟です。

 

 国は、上記高裁判決に上告受理申立をしませんでした。  

 厚生労働省は、速やかに認定基準を改定し、認定の在り方を考えなおすべきです。

 

 以下全文を掲載します。


 

意見書

 

厚生労働大臣 塩 崎 恭 久 殿

 

                   過労死弁護団全国連絡会議

 

                    代表幹事 弁護士  岡 村 親 宜

 

                       代表幹事  同   水 野 幹 男

 

                  代表幹事  同   松 丸   正 

 

                    幹事長   同   川 人   博 

 

 平成29年7月11日

 

 

 

 心理的負荷による精神障害の認定基準(基発1226第1号 平成23年12月26 日)「第5 精神障害の悪化の業務起因性」の改定を求める意見書を、下記のとおり、提出する。

 

                  記

 

第1 意見の趣旨

 

  心理的負荷による精神障害の認定基準(基発1226第1号 平成23年12月26日)(以下「認定基準」という。)「第5」につき、

 

 「精神障害の悪化の業務起因性」を認める要件として、「特別の出来事」を要するとしている内容を改め、精神障害の悪化前に業務による強い心理的負荷が認められれば、悪化につき業務起因性を認めることとするよう、改正を求める。

 

第2 意見の理由

 

1 現在の認定基準が不合理であり、憲法、法律の趣旨に反する

 

  現在の認定基準は「特別な出来事」に該当する出来事がなければ、対象疾病が悪化した場合に業務上の疾病とは扱われないことになっている。

 

  しかし、労災認定で問題になっている事案では、「特別な出来事」に該当する出来事がない場合でも、発病について業務起因性が認められるような強い心理的負荷を受け、その結果精神障害が悪化した場合もある。発病したら業務上と認定できるほどの強い心理的負荷があって、精神疾患が悪化した場合に、発病した後であったからといって業務起因性が否定されるのは不合理である。

 

  そもそも、現行の精神障害に関する労災認定基準が、一方で、精神障害を発病していない労働者に対して、「強」の業務上心理的負荷が加わって精神障害が発病した場合には、業務起因性を肯定し労災保険金を給付するとしながら、他方で、精神障害を発病している労働者に対して、同様の「強」の業務上の心理的負荷が加わって精神障害が悪化した場合には、業務起因性を否定し労災保険金を給付しないとしていることは、憲法14条1項、憲法27条、及び障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)第7条の趣旨に反している。

 

  すなわち、憲法第14条1項は、すべて国民は、法の下に平等であって、社会的身分等により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない旨規定している。上記認定基準の上記該当部分は、精神障害を有することを理由にして、労災保険給付という経済的・社会的関係において、差別を行うことを意味しており、憲法の同条項に違反する内容となっている。

 

  また、憲法27条1項は、「すべて国民は勤労の権利を有し、義務を負ふ」と定めている。豊橋労基署長(マツヤデンキ事件)・名古屋高裁平成22年4月16日判決は、「労働に従事する労働者は必ずしも平均的な労働能力を有しているわけではなく、身体に障害を抱えている労働者もいるわけであるから、仮に、被控訴人の主張が、身体障害者である労働者が遭遇する災害についての業務起因性の判断の基準においても、常に平均的労働者が基準となるというものであれば、その主張は相当とはいえない。このことは、憲法27条1項が『すべて国民は勤労の権利を有し、義務を負ふ。』と定め、国が身体障害者雇用促進法等により身体障害者の就労を積極的に援助し、企業もその協力を求められている時代にあっては一層明らかというべきである。」と判示し、身体障害者について本人を基準に業務過重性の判断をすると明示した。この判決は、労働に従事する労働者は必ずしも平均的な労働能力を有しているわけでないから、これを考慮しない労災の認定基準は憲法27条1項の趣旨に照らして相当でない旨判示しているのである。 労働者の中には「精神障害を発病している労働者」もいるのであるから、その者に平均的労働者であれば精神疾患を発病するような「強」の業務上の心理的負荷が加わった場合にも業務上と認めず、労災給付金を給付しないのであれば、このような者が労災補償を受けることができないことを前提に勤務しなければならず、憲法27条1項に照らして問題である。

 

  さらに、憲法27条2項は、「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」と規定し、労働条件について法律で基準を設定することを要請している。「精神障害を発病している労働者」にほとんど労災の給付をしないというのであれば、勤労条件の法定を定めた憲法27条2項の趣旨にも違反する。

 

  さらに、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)第7条は、「行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない」と規定している。同条の趣旨からすれば、障害者の範囲は幅広く解すべきであり、上記認定基準の上記該当部分は、この法律の趣旨にも違反している。

 

  このように現行認定基準が、精神障害の悪化の業務起因性が認められる場合を「特別な出来事」があった場合にのみ限定し、「強」の心理的負荷が認められても、精神障害の悪化の業務起因性を否定することは、憲法14条1項、憲法27条、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の趣旨に違反するものである。

 

2 現在の認定基準には合理性がない、という判決が確定していること

 

  アピコ関連事件・名古屋地裁平成27年11月18日判決は、「前記認定基準によれ ば、健常者であれば、(「特別な出来事」以外の)精神障害の発症及びそれによる死亡の危険性が認められるような心理的負荷の強度が「強」と認められる出来事があった場合には、業務起因性が認められることになるのに対し、既に精神障害を発症している者については、発症後、死亡前6か月の間に同様の心理的負荷が生じる出来事があっても、既に精神障害を発症しているという一事をもって業務起因性は否定されることになる。しかし、このような判断が精神科医等の専門家の間で広く受け入れられている医学的知見であるとは認められず(甲B38の1・5~9頁(引用者注:判決が引用している 証拠は第5回精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会議事録の後半部分である。)、既に精神障害を発症している者に、健常者でさえ精神障害を発症するような心理的負荷の強度が「強」と認められる出来事があった場合であっても、『特別な出来事』がなければ一律に業務起因性を否定するということには合理性がないというべきである。」と判示し、認定基準を批判している。

 

  これを不服として国が控訴した同事件・名古屋高等裁判所平成28年12月1日判決は、「認定基準は、上記別表(認定基準の別表1〔業務による心理的負荷表〕)に掲げられ客観化された各出来事のうち『特別な出来事』に該当する出来事がない場合でも(略)その心理的負荷の評価が『強』と判断される場合を, 労働者に生じた精神障害を業務上の疾病として扱う要件の一つとしている(証拠)。そうすると、その心理的負荷の評価が『強』と判断される業務上の『具体的出来事』(略)は、労働者の個体側要因である脆弱性の程度にかかわらず、平均的な労働者にとって、業務による強い『心理的負荷』であり、精神障害を発病させる危険性を有すると認められるのであるから, 既にうつ病を発病した労働者にとっても、当該『具体的出来事』自体の心理的負荷は『強』と判断されるはずである。」「認定基準が、健常者において精神障害を発病するような心理的負荷の強度が『強』と認められる場合であっても、『特別な出来事』がなければ一律に業務起因性を否定することを意味するのであれば、このような医学的知見が精神科医等の専門家の間で広く受け入れられていると認められないことは、補正して引用した原判決が説示するとおりであり、上記のような疑問あるいは『特別な出来事』がなければ一律に業務起因性を否定することは相当ではないとの考え方は、認定基準の策定に際しての専門検討会での議論の趣旨にも合致すると解される。」と判示し、同様に専門検討会の議論を踏まえて認定基準を批判している。

 

  ちなみに、同名古屋高裁判決理由では、2人の国側精神科医の意見(うつ病悪化事案では脆弱性が強いから健常者と同様に評価することはできない等)との意見を、明確に排斥している。

 

  この判決に対し、国は上告、上告受理申立をせず、確定している。認定基準の「特別 な出来事」がなければ業務起因性を否定するという判断の基準が不合理であることは明白である。

 

3 「特別な出来事」がなければ業務起因性を否定することは相当ではないとの考え方は、専門検討会での議論の趣旨に合致すること

 

  精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会の第5回の検討会(平成23年4月1 4日開催)において、岡崎座長は「今日のところは発病後にも心理的な負荷が非常に強い、ないしは極度の出来事があった場合には業務上であると認めるということでは、先生方のご意見は大体一致したのではないかと思います。」として、発病の際に認定に必 要な非常に強い心理的負荷、ないしは極度の出来事があった場合には業務起因性を認めてよいと議論をまとめている。

 

  名古屋地裁平成27年11月18日判決が、上記のように認定基準について「このような判断が精神科医等の専門家の間で広く受け入れられている医学的知見であるとは認められず」としたのは、第5回の専門検討会の議事録のこの部分を指摘している。名古 屋高裁平成28年12月1日判決は、「上記のような疑問あるいは『特別な出来事』がなければ一律に業務起因性を否定することは相当ではないとの考え方は、認定基準の策 定に際しての専門検討会での議論の趣旨にも合致すると解される。」として、「特別な出来事」がなければ業務起因性を否定することが相当ではないことは、専門検討会の議論と合致すると指摘しているのもこの部分の指摘を示している。

 

  専門検討会においてなされた議論を踏まえれば、「特別な出来事」がなければ業務起 因性を否定するような認定基準は不合理である。上記判決はそのことを指摘しているのであり早急に改正が求められている。

 

 

 

第3 結論

 

 国は、上記名古屋高裁判決に対し、上告、上告受理申立をしなかったのであり、この内容に即して、直ちに認定基準を改正すべきである。

 

 なお、本論点を含め、精神障害・自殺に関する認定基準全般について、当弁護団は、平成21年11月18日付意見書(「判断指針」から現行「認定基準」に変わる前の段階)に貴省に対して意見書を提出しているので、それらも参照されたい。

 

以上

 

名古屋高裁でも岐阜市の職員の自死を公務災害と認める。

裁判所
名古屋地方裁判所,高等裁判所の正面

 名古屋高等裁判所民事第1部(永野圧彦裁判長)は、2017年7月6日、岐阜市の職員が、2007年11月に自死したことについて、公務災害であったと認める判決をしました。

 

 職員の配偶者の方が、この自死について、公務災害だとして、地方公務員災害補償基金岐阜県支部に公務災害として認定するように請求していました。しかし、地方公務員災害補償基金岐阜県支部は、これを公務災害と認めませんでした。

 

 公務災害として認められない場合、遺族は、基金支部審査会に、審査請求という不服の申立ができます。しかし、支部審査会も公務災害と認めませんでした。

 

 そこで、職員の配偶者の方は、再審査請求をするとともに、行政訴訟を提起したのです。

 (現在は、このあたりの手続きの法律が少し変わっています。)

 

 1審の岐阜地方裁判所は2016年12月22日、地方公務員災害補償基金岐阜県支部の公務外認定の処分を取り消す判決をしました。→詳しくはそのときのブログを参照して下さい。

 これは、地方公務員災害補償基金の決定を取り消すもので、この判決が確定すると、地方公務員災害補償基金は、法律上、公務災害だと認定しなければならなくなります。

 

 ところが、基金は、名古屋高等裁判所に控訴しました。そこでこの日の判決となったのです。

 

 名古屋高等裁判所は、1回目の期日で結審し、2017年7月6日の判決期日を指定しました。

 原判決が12月22日ですから、約半年で判決。いわゆる過労自死の事案で、検討する事項はそれなりにあるものですから、この高裁判決はスピード判決といえます。 

 

 私は、この事件に、審査請求の時から関わらせていただきました。関わりをもったのが、2012年頃ですから、それからも5年が経過しました。

 

 この判決は、威圧的な上司の態度、その当時にいくつもあったストレスの多い仕事の内容、出来事について、原告の主張を認めて、総合的に強いストレスがあったとして、自死が公務に起因すると結論づけました。

 仕事の内容は、1審判決よりさらに詳しく認定し、公務災害の認定については、基金の認定基準にあてはめても、公務災害になることを丁寧に判断しています。

 1審判決にまして、事実関係を精査すれば、明らかに公務災害である、と内容を、1審原告の主張に沿って付け加えています。このように厳しく指摘されるのであれば、基金は控訴しない法が良かったと思わせる内容ではなかったかと思いました。

 

 一方、事実の評価は、逆に控えめに評価しています。基金の認定基準は、その基準自体とても厳しく、相当に強いストレスがないと公務災害と認めないことになっています。判決は、事実を丁寧に評価した上で、この厳しい認定基準を適用しても、公務災害と認定できるとしています。

 

 判決は、基金に対し、あなたたちの基準で判断しても公務災害なんだから、もう上告などせずに、早く公務災害と認めて遺族に支払をしなさい。そう言っているように感じました。

 

 この判決を得るまでに10年という期間がかかり、1審原告は、本当に苦労されたと思います。

 

 日本の裁判は、3審制になっていますが、最高裁へ上告するには、要件が定まっています。憲法違反とか、重大な法律解釈の誤りなど、法律の解釈が問題になる場合です。

 

 今回の判決は、事実の評価を適切にしたというものであり、法律解釈の問題ではありません。

 

 1審被告の地方公務員災害補償基金は争うことをやめて、早く公務災害認定の手続きに入って欲しいと思います。

 

    ※7月20日の経過をもって、上記高裁判決は確定しました。【2017年7月21日追記】

 

 

 

 

平成28年度過労死等の労災認定件数発表

 2017年6月30日、平成28年度の過労死等の労災補償状況が厚生労働省から発表されました。

 厚生労働省の発表を見ていきます。

 まずは脳・心臓疾患について、以下引用します。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1  脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況

 

(1) 請求件数は825件で、前年度比30件の増となった。 P 3 表1-1】

 

(2) 支給決定件数は260 件で前年度比9件の増となり、 うち死亡件数も前年度比11件増の107件であった。 P 3 表1-1】

 

(3) 業種別(大分類)では、請求件数は「運輸業,郵便業」212件、「卸売業,小売業」106件、「製造業」101件の順で多く、支給決定件数は「運輸業,郵便業」97件、「製造業」41件、「卸売業,小売業」29件の順に多い。   P 4 表1-2】

 

業種別(中分類)では、請求件数、支給決定件数ともに業種別(大分類)の「運輸業,郵便業」のうち「道路貨物運送業」145件、89件が最多。 P5 表1-2-1、P6 表1-2-2】

 

(4) 職種別(大分類)では、請求件数は「輸送・機械運転従事者」187件、「販売従事者」97件、「サービス職業従事者」93件の順で多く、支給決定件数は「輸送・機械運転従事者」90件、「専門的・技術的職業従事者」30件、「生産工程従事者」27件の順に多い。  P 7 表1-3】

 

職種別(中分類)では、請求件数、支給決定件数ともに職種別(大分類)の「輸送・機械運転従事者」のうち「自動車運転従事者」178件、89件が最多。 【P8 表1-3-1、P9 表1-3-2】

 

 

 

(5) 年齢別では、請求件数は「5059歳」266件、「4049歳」239件、「60歳以上」220件の順で多く、支給決定件数は「5059歳」99件、「4049歳」90件、「3039歳」34件の順に多い。 【P10 表1-4】

 

(6) 時間外労働時間別(1か月又は2~6か月における1か月平均)支給決定件数は、「80時間以上~100時間未満」106件で最も多く、「100時間以上」の合計件数は128件であった。 【P13 表1-6】

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 支給決定数とは、要するに、労基署が過労死等と認めた件数です。

 支給数、死亡支給数とも減っていません。

 運送業、特に運転手が大変だということがわかります。

 それから、長時間労働で病気になっている人がたくさんいることが分かります。

 

 次に精神障害についてみていきます。

 

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2  精神障害に関する事案の労災補償状況

 

(1) 請求件数は1,586件で前年度比71件の増となり、うち未遂を含む自殺件数は前年度比1件減の198件であった。【P15 表2-1】

 

(2) 支給決定件数は498 件で前年度比26件の増となり、うち未遂を含む自殺の件数は前年度比9件減の84件であった。【 P15  表2-1            

 

(3) 業種別( 大分類)では、請求件数は 「医療,福祉」302件、「製造業」279件、「卸売業,小売業」220件の順に多く、支給決定件数は「製造業」91件、「医療,福祉」80件、「卸売業,小売業」57件の順に多い。【 P16  表2-2

 

業種別(中分類)では、 請求件数、支給決定件数ともに業種別(大分類)の 「医療,福祉」のうち 「社会保険・社会福祉・介護事業」167件、46件が最多。 P17 表2-2-1、P18 表2-2-2】

 

(4) 職種別(大分類)では、請求件数は 「専門的・技術的職業従事者」361 「事務従事者」307件、 「販売従事者」220件の順に多く、支給決定件数は「専門的・技術的職業従事者」115件、「事務従事者」81件、「サービス職業従事者」64件の順に多い。 【P19 表2-3】

 

職種別(中分類)では 、請求件数、支給決定件数ともに職種別(大分類)の「事務従事者」のうち「一般事務従事者」198件、47件が最多。 P20 表2-3-1、P21 表2-3-2】

 

(5) 年齢別では、請求件数は「4049歳」542件、「3039歳」408件、「5059歳」295件、支給決定件数は「4049歳」144件、「3039歳」136件、「2029歳」107件の順に多い。【P22 表2-4】

 

(6) 時間外労働時間別(1か月平均)支給決定件数は、「20時間未満」が84件で最も多く、「160時間以上」が52件であった。 【P24 表2-6】

 

(7) 出来事(※)別の支給決定件数は、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」74件、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」63件の順に多い。

 

 

 

※「出来事」とは精神障害の発病に関与したと考えられる事象の心理的負荷の強度を評価するために、認定基準において、一定の事象を類型化したもの P26 表2-8】

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  請求件数がさらに増えています。

  自殺の件数は減りましたが全体の認定件数は増えています。

 

  専門的・技術的職業従事者が多いのが特徴です。

  

  時間外労働ですが「20時間未満」が最も多いのが印象的です。

  出来事別の支給決定件数は、ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた が多くなっています。

  つまり長時間労働よりもパワハラで精神障害になっている場合が多いようです。

  

  一方で160時間以上も52件あり、2番目に多いのも驚きです。

 

 

  裁量労働の件数も発表されました。問題アリと言うことがわかります。

  一方で、これだけ?という印象を持ちました。

  時間管理がなされていれば、もっと多くの認定がなされるのではないでしょか。

 

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3 裁量労働制対象者に係る支給決定件数

(1) 過去6年間で裁量労働制対象者に係る脳・心臓疾患の支給決定件数は22件で、うち専門業務型裁量労働制対象者に係る支給決定が21件、企画業務型裁量労働制対象者に係る支給決定が1件であった。 【P27 表3】

 

(2) 過去6年間で裁量労働制対象者に係る精神障害の支給決定件数は39件で、うち専門業務型裁量労働制対象者に係る支給決定が37件、企画業務型裁量労働制対象者に係る支給決定が2件であった。 【P27 表3】

 

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 過労死等防止対策推進法が施行されて4年目です。まだこれからということでしょう。

 まずは労災補償されるべきものを労災補償していくなかで、一つづつ対策をしていくことだと思います。

  今まで、発覚していなかったものが発覚しただけで、世の中は確実に進んでいると信じたいものです。

過労死110番 実施できました

 今日は、全国過労死110番を実施しました。

 愛知では、13件の相談がありました。

 

 感想です。

 

 こんなに世の中で、長時間労働が問題になっている、と思っていましたが、長時間労働は、まだまだたくさんあるのだなあ、と思いました。

 

 また、労働基準法が十分に守られていない状況にあることも実感しました。

 労働契約法も十分理解されていない状況にあることも実感しました。

 

 そして、辛いけど、訴えられない、状況にある人がいることも実感しました。

 

 今回、相談しくても、情報に接することができなかった人もいたと思います。

 

 一方で、今裁判で戦っている人についてのマスコミの報道によって、勇気づけられて、自分も立ち上がろうともがいている人がいることもわかりました。

 

 苦しんでいる人、悩んでいる人、今日の電話相談は終わりました。でも面談相談は、いつでも受け付けています。

 

 

過労死110番実施します

2017年6月17日土曜日           10:00~15:00

過労死110番

0120-184-964


弁護士が電話で相談にのります

当日は、過労死の事件の経験のある弁護士が電話で相談にのります。

過労死・過労自殺、働き過ぎの相談にものります。

過労死、過労自殺された方の遺族の補償についての相談を受け付けます。

ご自身、ご家族の過重労働の相談も受け付けます。

相談は無料です。通話料も無料です。携帯からもOK

相談料はかかりません。また、フリーダイヤルですから通話料も無料。携帯電話からもかけることができます。その場合も無料です。


専門家「基準の見直しを」

 本日朝日新聞名古屋版に「労災却下6割超す」「専門家「基準の見直しを」」という表題で精神疾患の労災認定基準についての記事が掲載されました。

 残念ながら名古屋版であり、地域限定ですが、大きな記事になりました。

 

 私のコメントも以下のように掲載されています。

「国の基準の具体例に当てはまらないと、認定されずに切り捨てられる。ストレスには色々あり、対人関係に強いが長時間労働には弱いなど様々だ。より柔軟な評価方法に見直すべきだ。」

 

 認定基準は平成23年に改定されましたが、まだまだ不合理なところがたくさんあります。しかし、平成11年の判断指針よりも分かりやすく、また幅広く改訂されたせいか、裁判所でも、この基準をそのままあてはめるような判決があります。

 

 しかし、人間の心にも個性があり、ある人のには辛いストレスが、他の人にはそれほどではないことはいくらでもあります。それを、切り捨ててしまっていいのでしょうか。

 

 最もこれを乗り越えるには、医学的な根拠や世論の力がいります。

 

 今日は、NHKあさイチでも「大丈夫?家族から見た“働き方”」と題して働き方について議論をしていました。

 過労死弁護団の川人博弁護士と全国過労死を考える家族の会から寺西笑子さんも出演しました。

 新聞やテレビでもこのままではいけないという意識が高まっています。

 救済されていない事例もたくさんあることを知ってもらい、改善にむけて動きがあるといいと期待しています。

 

 

勝利報告集会

新美南吉 安城市
安城市のオブジェ

 5月28日、安城市内で、担当している事件の報告集会がありました。

 過労死事件で、名古屋高等裁判所で1審を取消、労災と認められた事案でした。

 1審敗訴のあとの逆転勝訴でした。

 原告本人、ご家族、亡くなったご本人のご両親。

 亡くなったご本人は帰ってきませんが、無くなった原因が労働にあると裁判所に認定してもらったことは本当に良かったです。

 

 集会を通して、ご本人はどういう状況だったのか。なぜ、過労死だと思ったのか。どのような証拠があったのか。

 なぜ、1審は敗訴だったのか。どうして高裁では勝訴だったのか。振り返って話をしました。

 

 もともと水野幹男弁護士が担当していた事案で、私も裁判から応援に入りました。

 原告の依頼に応えて良い結果を出し、感謝してもらえる。弁護士をやって良かったと思える瞬間でした。

 

 多くの方が支援する会を作って支援してくれました。多くの人と喜び合えるのもうれしいものです。

 

憲法記念日

 今日は、憲法記念日。憲法施行70年です。

 今日から中日新聞の連載で憲法施行70年の特集が始まりました。

 1回目は、マンション建築現場で逮捕された方のことが取り上げられました。

 

 記事にはこうありました。

 

 「「市民の味方」と信じていた警察が必ずしもそうではないと、…」

 

 野党側は、共謀罪により「米軍基地移設や原発再稼働といった政治的な運動が監視され、萎縮させられる危険性を指摘する。」

 

 警察がどう動くかというのは、担当する警察官、或いは警察の考え方できまるようなところがあります。

 そのために権力を縛るためにあるのが憲法。

 

 その権力に濫用の力を与える「共謀罪」は危険です。

 

 これからも憲法に守られるよう、微力ながら考えていきたいです。

長時間労働をなくさない時間外労働の上限規制に反対する

. 4月6日、金山北口で、時間外労働の上限規制に反対する街宣活動をしました。

 

 愛労連、愛知働く者のいのちと健康を守るセンター、東海労働弁護団、自由法曹団愛知支部など、当時のさまざなま労働団体と弁護士の団体が共同して行いました。

 

 安倍内閣が「働き方改革」の一環として導入をめざしている時間外労働時間の上限規制をめぐって、「月45時間」「年間360時間」を原則としつつ、繁忙期には「月100時間未満」かつ「2ヶ月ないし6か月平均80時間」とし、月45時間を超える時間外労働は6か月までとすることで、政労使の合意が成立したとの報道がなされました。

 

 労働者の心身を蝕むような長時間労働を根絶するためには、労働基準法を改正し、36協定でも超えることができない時間外労働の上限を定め、違反企業に罰則を科すことが必要です。

 

 しかしながら、報道された案が容認しようとしている「月100時間未満」「平均80時間」などという例外は、厚生労働省が定めた『脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準』(平成13年12月12日基発第1063号)「過重負荷の有無の判断」に記載されている時間外労働の時間(1か月間におおむね100時間又は2か月間ないし6か月間にわたって1か月当たりおおむね80時間)に該当するものです。

 

 このような法規制は、かえって、このようなもし死んだら過労死と認定されるような長時間労働をさせても許されるのだと理解されてしまいます。

 

(誤解がないように指摘しておきますが、36協定がなくなるわけではありません。また、過労死がおきたときに、法律を守っていたとして許されてしまうわけではありません。労災認定はされる可能性が十分にありますし、民事上の安全配慮義務違反の責任が問われることも今までどおりです。)

 

 名古屋高等裁判所平成29年2月23日判決では、虚血性心疾患で死亡した労働者について、「発症前1か月間の時間外労働時間は少なくとも85時間48分であり、この時間外労働時間数だけでも、脳・心臓疾患に対する影響が発現する程度の過重な労働負荷であるということができる。」と判示し、認定基準の1か月の時間外労働が100時間未満の場合でも脳・心臓疾患を発症させる業務の過重性があったことを認めています。

 

 「月100時間未満」「平均80時間」の時間外労働の容認は、過労死をなくす、という観点からは、無意味なばかりか、過労死を助長しかねない規制です。

 

 これが弁護団、家族が反対している理由です。

 上限ができるからいいじゃないか、とは言い切れないのです。

 

 

 ちなみに国際人権規約の社会権規約には次のような条項があります。

 

 第7条 この規約の締約国は、すべての者が公正かつ良好な労働条件を享受する権利を有することを認める。この労働条件は、特に次のものを確保する労働条件とする。

(a) すべての労働者に最小限度次のものを与える報酬

 i.公正な資金及びいかなる差別もない同一価値の労働についての同一報酬。特に、女子については、同一の労働についての同一報酬とともに男子が享受する労働条件に劣らない労働条件が保障されること。

 ii.労働者及びその家族のこの規約に適合する相応な生活

(b) 安全かつ健康的な作業条件

(c) 先任及び能力以外のいかなる事由も考慮されることなく、すべての者がその雇用関係においてより高い過当な地位に昇進する均等な機会

(d) 休息、余暇、労働時間の合理的な制限及び定期的な有給休暇並びに公の休日についての報酬 

 

 時間外労働の上限の規制が36協定しかなかったり、できても100時間未満ということは、いまだ国際人権規約にも合致していないというべきでしょう。

 

 

 また過重労働対策基本法を策定しようと宣言をした2010年。過労死弁護団全国連絡会議は次のような指摘をしています。

 

1 日本国憲法と労働基準法等の理念 

 

 日本国憲法は個人の尊厳(13条)、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利(25条)とともに、基本的人権として「勤労の権利」を保障し(27条1項)、「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準」を法律で定めるとしています(同2項)。 そして、これを受けて労基法は、「労働者が人たるに値する生活を営むための必要を満たすべき」最低基準(1条)として、週40時間・1日8時間労働の原則(32条)、休憩・休日の付与(34条1項、35条1項)などを定めています。

 

2 違法な過重労働の蔓延 

 

 ところが、現在のわが国の労働の現場は、次のように、およそ上記の憲法や労基法の理念とはかけ離れた実態にあります。

 

 違法なサービス労働・賃金不払労働の常態化

 

 会社の職階である「管理職」と、法律上の概念である「管理監督者」(労基法41条2号)は別のものなのに、「管理職」とされただけで時間外手当を支払わない、さらには「管理職」としての権限も処遇もない   

 

 「名ばかり管理職」にまで時間外手当を支払わない

 

 過労死認定基準を上回る時間外労働時間を認める「36協定」が締結され、労働基準監督署がこれを受理している

 

3 過労死・過労自殺の多発 

 

 その結果、過酷な長時間・過重労働が、業種・職種や年齢・性別を問わず、また正社員のみならず非正規労働者にまで広がり、過労死や過労疾患、過労による精神障害や過労自殺が多発しています。

 

 激増する過労死・過労自殺の労災申請・労災認定は、「氷山の一角」にすぎません。(以下略)

 

 

 

 時間外労働に適切な歯止めがない状態は、個人の尊厳、生存権、勤労者の権利を保障した憲法の理念ともかけ離れています。

 現状は憲法や国際人権規約の定めた理念とかけ離れているし、100時間未満までは刑事罰はないなどという規制では、その理念に近づけないというべきです。

 

時間外労働の上限規制

 

環境基本法には、次のような条文がある。

 

環境基本法 

 第十六条 政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする。

 

 これに基づいて定められているのが環境基準である。

 環境については「人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準」を法律で定めなければならないとなっているのである。(ただし、罰則を設けることを要求していないし、現に環境基準違反に罰則はない。)

 

 労働基準法、過労死等防止対策推進法などには、これまで残念ながら「人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準」を定めるように求める条文はない。

 

 今回、はじめて時間外労働の上限を法律で規制することが検討されている。しかし、その内容は

「月四十五時間を超える残業時間の特例は年六カ月までとし、年間七百二十時間の枠内で「一カ月百時間未満」「二~六カ月平均八十時間」の上限を、罰則付きで法定化する方針だ。連合の要求で当初案の「一カ月最大百時間」よりは若干修正された。しかし、労災認定基準のいわゆる過労死ラインに相当する働き方を、国が容認するものであることに変わりはない。」と報道されている(中日新聞 2017年3月15日社説より)

 

 今回の時間外労働の上限は、環境基準のような「人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準」ではない。今回策定されようとしている基準は、そもそもこの時間働いて脳・心臓疾患を発症し、労災と認められ、民事裁判でも企業が過労死を発生さるような安全配慮義務違反が問われるような、明らかな長時間労働の場合には、刑事の罰則もあるといっているだけである。

 

 もちろん、刑事の罰則もあるとしていることは一歩前進である。しかし、時間外労働の上限として定められるべきなのは、人の健康を保護し、生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準、という意味では環境基準と同様のレベルのはずである。

 

 脳・心臓疾患の労災認定基準には次のような記載もある。

 

 発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いが、おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること

 

 45時間を超える時間外労働は、脳・心臓疾患の発症との関連性が徐々に強まるのである。これについては規制するべきである。

 

 経済団体が反対する理由は、経済活動がなりたたなくなる、国際競争力が低下する、などであろう。

 しかし、死ぬかもしれない時間まで働かせることができる法規制のもとで働かせることができる経済活動を放置することはできない。労働基準法には、子どもを働かせてはいけない。出産の前後は働かせてはいけないなどの規制を設けている。どんなに労働に需要があっても禁止するべき労働はあるはずである。いま、求められるのは、過労死するほど長時間労働をさせてはいけないという法規制である。

 

 なお、不十分な上限規制になったとしても、この規制に達しない時間外労働をさせた場合にも労災認定がなされ、安全配慮義務違反の責任が問われる可能性があることは今までと変わらない。上記社説は「労災認定基準のいわゆる過労死ラインに相当する働き方を、国が容認するものである」としているが、これは罰則を科さない、直接規制しないということを意味するのであれば正当である。しかし、民事上の責任を負わないことも含む法規制になってしまうという意味に取られる可能性があり、不正確というべきかかもしれない。

 ただ、今と変わらない、ということは、今と変わらず過労死が発生する、ということであるから、法規制が十分な目的を達成できないことを意味する。

 更に強力な規制を求めたい。 

1か月85時間の時間外労働と認定された事案が過労死 平成29年2月23日判決の意義

岩井羊一 過労死 報告
報告集会で発言する弁護士岩井羊一

事案の概要

 トヨタ自動車株式会社の2次子会社である会社に勤務していた被災者(当時37歳)が、平成23年9月27日、虚血性心疾患で死亡した。その妻が、半田労基署長に対し労災保険法に基づく遺族補償給付請求等をしたが、半田労基署長は平成24年10月15日付で不支給決定をした。妻さんは原告となって、名古屋地方裁判所に、この支給決定の取消しを求め提訴したが、1審判決は平成28年3月16日、原告の請求を棄却する判決(以下「原判決」という。)をした(裁判所ホームページ)。

 

 名古屋高等裁判所(藤山雅行裁判長、前田郁勝裁判官、金久保茂裁判官)は、平成29年2月23日、原判決を取消し、半田労基署長の不支給決定を取り消す判決をした。この判決は同年3月9日の経過により確定した。

 半田労基署長は、遺族年金等の支給を決定しなければならない。

 

 この事件は労災申請段階は、水野幹男弁護士が担当し、訴訟になってからは水野幹男弁護士と当職が担当した。

 

業務の過重性

 名古屋高裁は、時間外労働について次のように指摘している。「Aは、(中略)発症前1か月間の時間外労働時間は少なくとも85時間48分であり、この時間外労働時間数だけでも、脳・心臓疾患に対する影響が発現する程度の過重な労働負荷であるということができる。これに加えて、時間外労働の時間態において休憩時間がとれなかった時間があること、終業自国語に時間外労働をしていた時間が存すること、平成23年9月22日に愛知工場の業務に従事した時間が存する可能性があることを考慮すると、更に過重性の程度が大きかったことになる。」

 

 こうして認定基準の1か月の時間外労働が100時間を超えない場合でも業務の過重性があったことを認めた。

 

うつ病の影響

  被災者はうつ病に罹患しており、当時早期覚醒の症状が加わっていた。このことについて名古屋高裁は「上記の時間外労働による負荷にうつ病による早期覚醒の症状が加わって、更に睡眠時間が減少したものと認められるから、Aは、発症前1か月間、睡眠時間が1日5時間程度の睡眠が確保できない状態、すなわち、全ての報告においても脳・心臓疾患の発症との関連につき有意性が認められる状態であったことは明らかである。」「すなわち、Aは、発症前1か月間において、うつ病にり患していない労働者が100時間を超える時間外労働をしたのに匹敵する過重な労働負荷を受けたものと認められる。」などと指摘した。

 

 そのうえで、被災者が心停止に至ったことについて、時間外労働と心停止との間に相当因果関係を認め、業務起因性を認めたのである。

 

基礎疾患を有している人の労災

 名古屋高裁は、被災者が基礎疾患を有していることについて「何らかの基礎疾患を有しながら日常生活を何ら支障なく就労している労働者は多数存するのであって、これらの労働者が頑健な労働者が発症するに至る負荷ほどではない業務上の負荷を受けて脳・心臓疾患を発症した場合に、労災補償の対象とならないとすることは、労災保険制度の基礎となる危険責任の法理に反し、労働者保護に欠けるものになるのであって、このことは専門検討会報告書においても指摘されている。」と指摘した。

 

 実際に専門検討会報告書88頁には、同様のことが記載されている。

 

認定基準の意義について

 名古屋高裁は、国が業務起因性を認めるためには、認定基準が示す基準を満たす必要があると主張したことについて次のように指摘した。

 

 「認定基準において、例えば、発症前1か月間の時間外労働として概ね100時間を超えることを基準に掲げているのも、(略)、睡眠時間が1日6時間未満であっても狭心症や心筋梗塞の有病率が高いという知見がある中で、1日5時間以下の睡眠時間の場合には、全ての報告において脳・心臓疾患の発症との関連において有意性があるとされていたことから、その睡眠時間に対応する100時間の時間外労働を採用したものである。すなわち、この基準は、就労態様による負荷要因や疲労の蓄積をもたらす長時間労働のおおまかで、かつこれを満たせば確実に労災と認定し得る目安を示すことによって、業務の過重性の評価が迅速、適正に行えるように配慮して設定されたものと評価すべきである。」

 

 「…一般的に認定基準は、その基準を満たせば業務起因性を肯定しうるという性格のものに過ぎず、その基準を満たさないことが、業務起因性を肯定する余地がないことまでを意味するものではないというべきであるし、特に上記時間外労働に関する基準の意味するところからすると、業務起因性を肯定するためには上記認定基準を満たさなければならないとする被控訴人の主張を採用することはできない。」

 

 原判決は、特に労働時間について100時間に満たない場合にも業務起因性を認める余地があり、認定基準の意義を正しく指摘した。

 

上告受理申立されず確定

 Tさんが亡くなってからすでに6年がたとうとしている。ご家族はその間、被災者の方が生きていたときの収入もないまま生活をしてきた。労災保険は、被災者の遺族を経済的に支える制度である。内容からすれば、上告、上告受理申立をする内容はないはずである。

 実際に、国が上告、上告受理申立をせず、判決が確定したことは、幸いであった。

 

 ※確定したので、以前の原稿を改訂しました。2017年3月12日

 ※高裁判決も、裁判所のホームページに掲載されているのでリンクを張りました。2017年7月8日

愛知県の県立高校の先生の過労死

先生 教師
写真はイメージです。

 2017年3月1日、愛知県立岡崎商業高校の先生が校内で倒れて亡くなった事件について、名古屋地方裁判所で判決があり、公務外決定が取り消されました。公務災害と認められ、いわゆる過労死だったと判断されたのです。

 

 名古屋第一法律事務所の田原裕之弁護士、福井悦子弁護士、森田茂弁護士、水谷実弁護士が担当されました。(愛知の県立高校の教諭の過労死を認める判決 名古屋第一法律事務所のブログ

 

 岡崎商業高校は、私が高校まで住んでいた岡崎市にある高校です。中学の同級生には進学した人もいたと思います。そんな地元の高校でこのようなことが起きたのはとても残念なことです。亡くなったかたは、2009年に42歳だったというのですから、私とほぼ同年代の方。

 

 報道によると、判決は、亡くなるまでの1か月の時間外労働は少なくとも95時間と認定。その上で、仕事の質について「生徒の資格取得に直結する直結する授業や部活の顧問を受け持った上、亡くなった月には資格検定の受験指導や体験入学の準備作業で、精神的負担が大きかった」などと判示したようです。

(中日新聞2017年3月2日朝刊)

 

 地方公務員である県立高校の教諭の場合、なくなった場合にそれが公務による死亡かどうかは、地方公務員災害補償基金(地公災)が判断します。地公災が、公務災害と認めれば、ご遺族に年金又は一時金が支払われます。

 脳心臓疾患については、「心・血管疾患及び脳血管疾患の公務上災害 の認定について 」という基準が定められています。

 

 長時間労働については、

 「発症前1か月程度にわたる、過重で長時間に及ぶ時間外勤務(発症日から起算して、週当たり平均 25 時間程度以上の連続)を行っていた場合」 
   「 発症前1か月を超える、過重で長時間に及ぶ時間外勤務(発症日から起算して、週当たり平均 20 時間程度以上の連続)を行っていた場合」

 とされています。

 

 民間の場合の認定基準は、「発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できること」とされていることと比べると厳しめの基準となっています。

 

 裁判では民間の認定基準も参考にされたようです。

 

 認定基準はあくまでも公務災害、労働災害を迅速に判断するための基準であり、この基準に当てはまらない場合も労災、公務災害が否定されるわけでありません。

 

 判決は、時間外労働の他、公務の質的過重性も認めています。

 いまも多くの先生が、長時間、過密な労働をされていると思います。また、新聞報道によれば、10年以内に校内で倒れた5人が過労死と疑われると言われています。

 

    愛知県では、教員の多忙化解消プロジェクトチームが立ち上がり、平成28年11月には、「教員の多忙化解消に向けた 取組に関する提言 」が作成されています。

 その中では次のような記載があります。

 

 「県が実施している平成 27 年の「在校時間の状況調査」の結果に よると、小学校で 10.8%、中学校で 38.7%、高等学校で 14.0%の教員が、正規の 勤務時間以外で、80 時間を超えて在校している実態である。特に、中学校におい ては、20.7%の教員が 100 時間を超えて在校しており、教員は多忙を極めている状 況にある。(※在校時間:正規に割り振られた勤務時間以外に従事した時間) 」

 

 先生はいつ過労死してもおかしくない状況の中で働いています。この判決が、愛知県の、全国の先生の働き過ぎを改革する一つのきっかけになればいいと思っています。

 

 判決全文は裁判所ホームページに掲載されています。

 平成29年3月1日判決言渡

「背景に効率化追求」中日新聞にコメントが載りました。

バイト欠勤に罰金 書類送検 弁護士岩井羊一
2017年2月23日中日新聞夕刊

2017年2月23日、中日新聞の夕刊に私のコメントが載りました。

 

同日、名古屋市北区のコンビニエンスストアの経営者が、アルバイトに対し、急な欠勤をした場合に罰金を支払うという労働契約を結んだことについて、愛知県警は、労働基準法違反の疑いで書類送検されたことが報道されました。

 

新聞記者の方に取材を受け、人件費が安いアルバイトを中心に運営しているのではないか。経営を過度に効率化させようとする姿勢がが背景にあるのではないかと指摘しました。

 

契約をしても許されないものがあること。大きく報道されることで、不合理な契約をさせられている人が、労働基準法違反だと声を上げることができるといいとおもいます。

 

こうした事件があったときに、大きく報道されることで欠勤に罰金を科してはいけないことについて、注意を促すことになればいいと思います。

 

もちろん刑事事件は疑わしきは被告人の利益にです。この経営者が有罪かどうかはわかりません。

しかし、報道にあるように、急な欠勤をした場合に罰金を支払うという労働契約をしたとしたら、労基法16条に違反します。

 

アルバイトで不合理な取扱を受けていると思ったら、ブラックバイト弁護団に相談してはどうでしょうか。

ストレスは足し算で計算するべきでは

認定基準

 精神障害を発症したときに、労災か否かについては、厚生労働省の発出した(心理的負荷による精神障害の認定基準(基発1226第 1 号       平成23年12月26日) )によることになっています。(以下、認定基準、といいます。)

 

 この認定基準では、「 対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認 められること。 」が要件になっています。

 

 そして、強い心理的負荷がみとめられるかどうかは、認定基準の別表 1「業務による心理的負荷評価表」(以下「別表1」という。)を指標として「強」、 「中」、「弱」の三段階に区分し、そのうちの「強」にあたる心理的負荷があるかどうかを検討することになります。

 

 ここで「強」にあたるような心理的負荷があれば業務起因性が認められます。

 

 また、「中」にあたるような心理的負荷が複数あった場合には、「強」と認められる場合があります。

 しかし、「中」と「弱」の心理的負荷がある場合には、「強」とはならないとされています。

 

 

心理的負荷による精神障害の認定基準
厚生労働省のパンフレットより

ホームズらの研究 夏目の研究

   夏目誠教授の論文によるとHolmesら(Holmes,T.H.,Rahe,R,H,: THE SOCIAL READJUSTMENT RATING SCALE Journal of Psychosomatic Research. Vol. 11, pp. 213 to 218. Pergamon Press. 1967. )は体験したストレス点数の合計点が高くなれば、病気に陥る可能性が高くなると報告したとのことです(出来事のストレス評価)精神経誌(2008)110巻3号)。

 

 夏目誠教授の論文には以下のような記載があります。

「すなわち単一のストレスでなく、一年間に体験したストレスの総量が高ければ、病気の発生に結びつくという考え方だ。そこで我々は、ストレス度とストレス関連疾患との関連を検討した。すなわち平成6年から大阪府こころの健康総合内に解説されたストレスドックに受験した1,426名を対象に、ドック受験前の1年間における対象者が体験したストレッサーのストレス点数の合計点数を求め、健常者群と、ストレス関連疾患者群(略)の主として2群間の差異を分析した。

 その結果は図1に示したように、年間の体験した合計点数は健常者群の219点に対して、ストレス関連疾患者群(ノイローゼや心身症、軽症うつ病等)の受診者のそれは335点であり、健常者に比べて116点も高得点であった。特に職場との関連性が高い適応障害(職場不適応症)の受診者は391点で最も高得点であった。実に172点も高い。このことから、ストレス関連疾患の発生にストレスが関与しているのがわかる。」

 

 

ホームズらの研究 夏目らの研究からすれば、

 上記ホームズらや、夏目の研究の結果からすれば、ストレスは、そのすべての合計によって高いと判断することになるようです。

  そうであれば、今の認定基準には疑問があります。

 

  中 +  弱  がかならず中にしかならないのか。

 

  弱 +  弱  がかならず弱にしかならないのか。

 

 いずれも疑問が生じます。合計点数が高いとストレス関連疾患の発症がたかまるのであれば、弱が多くあった場合にも弱が業務上の心理的負荷であれば、弱の合計が強になるばあいもありえることになります。そうだとすると、弱しかなくてもたくさんストレス要因があれば、発症について業務起因性が認められるのことは考えていいのではないでしょうか。

 

 中と弱でも、弱が複数あったり、中が強に近い状態であれば、強とみとめることはできるのではないでしょうか。。

 

 また、上記ホームズらは、過去1年間におけるストレッサーのストレス点数の合計点を考慮しています。

 認定基準は発症前6か月に限定指定しています。この点も1年間の出来事を考慮するべきではないかといえます。

  

 さらに検討してみたいテーマです。

 

 

 

 

 

 

電通 遺族と合意の意味するところ

 2017年1月20日、電通の社員で過労自殺として労災とみとめられた高橋まつりさんのご遺族と、電通の間で合意がなされたと報道されました。

 

 注目していたのは、一つは電通が、法的責任を認めて、ご遺族の納得するように謝罪するか。

 

 もう一つは、電通が、ご遺族が納得できるような再発防止のための対策を約束するか。

 

 でした。

 

 この事件ように過重な労働が明白であれば、会社は労災補償責任だけでなく、労働契約法の安全配慮義務に違反し、民法上の債務不履行責任や不法行為責任を負うことは明白ではないかと考えられます。

 

 そのような場合に、電通が、責任を認めて謝罪をするのか、法的責任の有無は裁判所の判断に委ねるかのような不遜な態度を取るのか、それは、今後の再発防止の可能性とも大いに関係があるところです。

 

 電通は、謝罪し、法的責任があることを前提とした慰謝料等の解決金を支払うことを約束したので、ご遺族は合意したのでしょう。

 

 再発防止ですが、電通が、企業ぐるみで長時間労働をしていたのであれば、いきなり時間を短縮するとしても仕事が回らなくなり、人を増やすか、仕事を減らすかする必要があります。その規模は相当なものになります。本当にそのことを覚悟して和解したのでしょうか。仕事を効率化することで長時間労働を減らせるなどという、小手先の対策を考えているだけではないかが心配です。

 

 この点、電通は今後、再発防止策の実施状況について年1回、遺族側に報告することを約束した,と報道されています。ご遺族は、このように、今後も再発防止について、意見を述べることができる約束をしたから、つまり、今後も監視をしていくことを前提に合意をしたのでしょう。

 

 高橋さんの言葉が胸に刺さります。

 

 「会社との合意には至りましたが、会社側がどんなに謝罪を述べたとしても、再発防止を約束したとしても、娘は二度と生きて帰ってくることはありません。」

 

 

 

 

 「娘や、これまで過労で亡くなった多くの人たちの死を無駄にしないためにも、日本に影響力のある電通が改革を実現してほしいと思います。」

 

過労死等防止のための啓発事業

 本日、中京大学経営学部の授業の一コマで、過労死等防止についてお話しをさせていただきました。100名を超える大学生の皆さんがお話を聞いてくれました。

 

 お話しの冒頭で、ちょうど大学生のお父さんくらいの年齢のご主人を亡くされたご遺族のお話のビデオを流しました。

 それから、電通の高橋まつりさんのお母さんの手記を読み上げました。

 

 大学生の皆さんに、過労死をなくすために、あなたが総理大臣だったら、厚生労働省の役所の人だったらどんな政策を打ち出すか。

 

 あなたが社長さんだったらどんなことをするか。

 

 あなたが勤めている会社が長時間労働で、過労死しそうな会社だったらどうするか。

 

 考えて発表してもらいました。

 みなさん、真剣に考えてくれました。

 みなさんのような考えの人ばかりであれば、過労死等起きないはずなのにどうして起こるのか。

 それについて、私の考えも少しお話ししたつもりです。

 

 今日のお話しがすこしでも学生の皆さんのなかに残るように希望します。

 

 来年も、きっと予算が付きます。中学、高校、大学の先生方。

 

    弁護士がご負担なしで学校へ参ります。

 

 ブラックバイトなどの問題の含めてお話しできます。ご相談ください。

 

 

「希望の裁判所」「法服の王国」

裁判所 市政資料館
名古屋市政資料館(旧名古屋高等裁判所)

 年末年始に、日本裁判官ネットワークの「希望の裁判所」を読みました。また、この本に寄稿している黒木亮さんの「法服の王国」を読みました。

 

 法服の王国という小説は、少し前に話題になっていたのですが、手に取ることはありませんでした。今回「希望の裁判所」を読んで、そこに黒木亮さんが寄稿されているものを読んで興味を持ち、読んでみることにしました。

 

 「希望の裁判所」は、裁判官が書いたもので興味深いものでした。

 私が弁護士になったのは1995年でした。そのときから比べるとこの20年の間に裁判所は大きく変わりました。その変化の過程が、日本裁判官ネットワークに所属する各裁判官、元裁判官の視点からまとめられています。興味深いものになっています。

 

 ただ、複数の裁判官の「論文集」となっていて、正直言って読みにくい。

 

 それはともかく、少し違和感のある意見もありました。

 

   現在の法曹養成制度の現実についてです。現在の法曹養成の制度と弁護士の人口増に問題があることは、法曹関係者としては認めざるを得ない現実です。法科大学院への志望者、司法試験の受験者が年々減少しているということは、法曹界に魅力が少なくなっているからだといわざるを得ません。

 このことについて,裁判官の仕事に魅力がある、司法の仕事に魅力があると指摘するだけでは問題の解決になりません。何が問題だったか、どうしたらいいのか、この点についての言及がほとんど無いことが残念です。

 

 「法服の王国」は、最後まで面白く読めました。構成や表現がたくみなせいか、一気に読ませ、読了後も気持ちが良い本でした。

 

 すでに、指摘されていることですが、法曹関係のことについて非常の詳しく記載されています。弁護士が読んでも、裁判のこと、弁護士のことについて違和感がありません。詳しく取材し、参考文献も読み込んで書かれています。

 

 原発訴訟の内容については、詳しく知りませんでしたが、主張、立証では完全に国を圧倒していたにもかかわらず、敗訴した歴史が、よくわかりました。裁判官が替わっただけで、違うことは弁護士としても実感していました。この小説では、裁判の中身を詳細に紹介し、尋問のシーンは、訴訟記録を引用しつつ、質問の意図や証人の様子を書き込んでいるのでとても臨場感があります。それ故に、この裁判については、単に裁判官が変わって結論変わるというレベルではなく、国や国政を問題にする裁判は、政治的に結論を決める、という司法の脆弱さが説得的に示されています。

 

 読むときには、裁判官の名前を、パソコンで検索しながら読みました。そうすると、多くの裁判官の名前が実名であることがわかります。作者は、以下のように述べています。

 「僕の書き方のスタイルなのですが、基本的には事実を基にしています。実名部分は一〇〇%事実。仮名部分は一~二割がフィクションです。それは、生の素材のまま描くと、事実でも物語として辻褄が合わない部分が出てくるためです。」

(週刊金曜日)http://blogos.com/article/75743/

 

 弁護士が、判決を言い渡す直前の裁判官の顔色を見て、結論を感じるというのは、弁護士に取材をして書いているのでしょう。「あるある」と思いながら読んでいました。

 

 刑法、憲法の重要判例も取り上げられており、司法試験を目指している法科大学院生が読めば、裁判例がもつ社会的意味なども知ることができると思います。 

                                                                                

 この小説では司法修習22期の裁判官を中心に物語が展開されていきます。その頃の裁判官の任官拒否や、宮本裁判官の再任拒否、平賀書簡問題等が、一部フィクションも付け加えられて物語として語られているところは、法科大学院性や、司法修習生、若い法曹関係者に読んで欲しいと思います。 

 

 過労死の問題も、一時期までは裁判所ではほとんど認めてもらえなかったそうです。

 十分な主張、立証ができた事案でも労災と認めてもらえなかった時期があったそうです。

 

 そこから比べれば、過労死の問題は、その裁判所の扉をこじ開け、国の認定基準を動かし、現在ではさらにその拡大を目指すことができる状況にまで来ていると評価できるかもしれません。

 

 

 


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明けましておめでとうございます

 あけましておめでとうございます。

 

 元旦は、日曜日でしたので日本基督教団熱田教会の早天祈祷会、主日礼拝に出席しました。

 

 今年の熱田教会の聖句は、「主は人の一歩一歩を定め御旨にかなう道を備えてくださる。」(詩編三七編二三節)です。「一歩一歩」、「主が」「備えてくださっている」この言葉を心の糧に歩んでいきたいと思います。

 

 本年もよろしくお願いします。

 

                             2017年1月1日 

 

                             岩 井 羊 一

 

2016年の過労死等問題を振り返って

過労死 弁護士 岩井羊一 
過労死等防止対策推進シンポジウムで挨拶する弁護士岩井羊一

今年も本日までです。

 

 過労死等の問題について振り返ってみます。

 今年は、担当していた事件が勝利的和解で解決したり、2件の高裁での勝訴判決を受け、これが確定したり、とよい結果が続いた一年でした。

 

 もっとも、敗訴判決を受けた事件(控訴しました)、労災申請をしながら、不支給の決定を受けた事例等、訴訟が継続している事件もあります。辛い思いをしている遺族のかたのために今後も少しでも力になれたらと思っています。

 

 過労死等防止対策推進シンポジウムの岐阜、愛知にも参加しましたが、充実した内容で成功でした。岐阜の松丸弁護士の講演、愛知のクオレ・シー・キューブの岡田康子さんの講演はいずれも過労死問題を取り組んでいく上で新しい視点に気がつかせてくれました。

 

 全国的には9月30日に電通の高橋まつりさんの自死が労災認定された事件が大きく報道されました。入社1年目のクリスマスの夜に自死された事件。長時間労働が、規制されるばかりか25年前と同じような労働状況が続いているようです。書類送検され、刑事事件の結論も注目されます。

 

 母校、岡崎高校で弁護士と語る人生教室を行いましたが、そこでも高校生の皆さんとこの問題を一緒に考えてみました。

 

 高橋さん、そして全国で過労死等でなくなった方の死が、せめて、これからの過労死等の防止のために役に立つように、今後も裁判、労災認定手続きのサポートを続けていこうと思います。

 

 労働法講座や、いくつかの団体でパワハラ防止の講演をさせていただきました。みなさん、具体的な裁判事例などを紹介すると、熱心に聞いてくださいます。少しでも過労死等の防止するための意識づけになってもらえればとも思います。

 

 

勝訴しました。

岐阜地方裁判所 平成28年12月22日判決

 2016年12月22日、岐阜地方裁判所(眞鍋美穂子裁判長、杉村鎮右裁判官、足羽麦子裁判官)は、岐阜市役所の職員の遺族が提訴した、地方公務員災害補償基金岐阜県支部長の「公務外処分」の取り消しを求めた裁判において、地方公務員災害補償基金岐阜県支部長の行った公務外処分を取り消す判決を言い渡しました。

 

 原告の勝訴です。職員が亡くなったのは平成19年ですから、亡くなってからは9年目の判決でした。

 

 西濃法律事務所の笹田弁護士、綴喜弁護士が担当していた事件で、途中から私が弁護団から参加しました。

 

 

 


 判決は、「亡Aは、業務の面からも、人間関係の面からも、精神的負荷のかかった状態にあり、肉体的にも精神的にも疲労のたまっている状態であったところ、本件遊具の設置問題があり、後閲問題が発生し、後閲問題により、自尊心を深く傷つけられ、この問題による亡Aへの精神的負荷は、それ以前の部長との関係から生じた精神的負荷や日常業務による肉体的、精神的疲労とも合まって、極めて強いものであったと認められる。」

 

 「亡Aは強度の精神的負荷を与える事象を伴う公務に従事したため、遅くとも同年11月頃までには抑うつ状態となったということができ、亡Aが従事した公務と上記精神疾患との間には相当因果関係が認められる。」

 

 「本件災害当時抑うつ状態にあった亡Aは、抑うつ状態という精神という精神状態から、本件災害当日に発生した岐阜公園内での事故の報告を受けたことを引き金に、突然発生する事故等にこれ以上耐えきれなくなり、発作的に岐阜市役所8階から飛び降りて、本件災害が発生したものと認められるから、上記精神疾患と本件災害との間の相当因果関係は肯定することができる。」と判示しています。

 

 判決は、強い精神的負荷があったことを認めていますから、地方公務員災害補償基金の定める「認定基準」によっても公務上災害と認められるものと判断しているものと理解できます。その内容は極めて明快です。これまで職員の方が亡くなってから9年の歳月が経過しています。理由のない控訴は、いたずらに確定を遅らせ、遺族に心労を与えるだけです。

 

 地方公務員災害補償基金が、岐阜地方裁判所の判決を尊重し、控訴をせず、早期に公務上の災害であると認定するよう望みます。