厚生労働省から令和7年度の過労死等の労災補償状況が発表されました。
例年6月中には発表されるのですが、今年はその時期が遅れ、7月15日にようやく発表されました。
それだけ、数が増加しているからだと思われます。
請求件数は、昨年より1402件増加し、6212件となっています。
決定件数は、4692件で前年度被377件。
これは、請求してから決定まで時間が係っているからだと考えられます。来年は決定件数も増加するのではないかと考えられます。
支給決定件数は、1310件。昨年から5件の増加です。
請求件数が増加しており、決定件数も増加しているのに支給決定件数が、わずかしか増加していないということは、労災と認定された件数の割合が減っているということになるます。
実際に、認定率は下がっています。
脳・心臓疾患と精神障害では、すこし傾向が異なっています。
まず、脳心臓疾患です。
請求件数は1254件で、前年度比224件の増加。
うち死亡件数は前年度比48件増の303件。
支給決定件数は217件で前年度比24件の減少。
うち死亡件数は67件で前年度と同数。
支給された件数が、若干減少しています。
認定率は、令和6年は30.7%ですが、令和7年は28.8%に低下しています。
死亡についての認定率は令和6年は28.9%、令和7年は28.4%とかわりません。
この5年で見ると、令和4年の認定率は38.1%、死亡についても38.8%であったものが、それぞれ10%も減少しています。
この傾向は、どう考えるべきでしょうか。労働基準監督署が適正に認定されていることを前提にすると、脳・心臓疾患が労災であると考えて請求する人数が増えている、過労死等がより浸透している、ということになりそうです。
しかし、請求件数が増加する一方で、過労死等に認定実務の運用が厳しくなっているとすれば、問題です。
なお、昨年、取消決定等による支給決定は年間で1件しかなかったそうです。
審査請求、再審査請求、取消訴訟にいたるものについては、請求から数年かかっていると思われます。認定率が高かった令和4年頃にものについては、取り消される数は少ないと理解すれば、説明がつきます。
実際には認定されない事案では、途中で断念されている方もおられると思いますので、これについても分析は難しいのですが、来年以降の取消決定等による支給決定状況にも注目する必要があります。
次に、精神障害についてみてみましょう。
なんといっても驚くべきは、請求件数の増加の推移です。
ここ5年でも、令和3年度 2346件 令和4年度 2683件 令和5年度3575年 令和6年度3780件、そして令和7年度4958件と増加しています。下記の表の緑色のグラフです。最後の右上がりの上がり方が突出しています。
支給決定件数は、令和5年、令和6年の請求件数に大きく変わりがないためか、1082件と昨年を少し上回っただけでした
自殺に関しては76件で、令和6年の88件を下回っています。
認定率は、令和6年は30.2%ですが、令和7年は28.2%に低下しています。
死亡についての認定率は令和6年は40.9%、令和7年は35.8%とかわりません。
自殺についての認定率が高いことは安心できます。。
ただ、この5年で見ると、令和4年の認定率は35.8%となっています。
死亡については令和3年は47.3%、令和4年は43.2%、令和5年は46.5%ですから、やはり認定率は低下しています。
取消決定による支給決定状況は28件、うち自殺は10件となっており、これまでの傾向と変わりがありません。令和6年、令和7年は、自殺についてそれぞれ11件、10件と比較的多い件数が不支給決定が取り消され、支給決定されている状況にあります。
脳・心臓疾患よりも決定件数が多いですから、これでも狭き門です。ただ、死亡件数で比較すると、特徴があるように思います。支給決定は若干精神障害の方が多い程度なのですが、精神障害については取消件数は、それなりの件数があるということです。
これは、精神障害の方が、労災認定について考慮する要素が多数あるので、判断がその分ぶれることもあると言うことではないかと思います。
支給件数が増加していく中で、救済される件数がどのように推移していくかを見守る必要があります。
それにしても、過労死をなくすために弁護団が立ち上がり、法律もできて啓発活動も広がっているにもかかわらず、請求件数のほうがおおくなっているというのは、なんとも残念な傾向です。
