大川原化工機事件の「真相」を追及したドキュメンタリーである。
この本が、優れているのは、著者が、NHKの報道記者として、ジャーナリストの立場から、大川原化工機事件の「真相」を迫っている点である。
正直にいうと、マスコミの関係者の調査は、公表された裁判の資料や、取材で話してくれる当事者からしか話が聞けないから、それほど、真相に迫ったものではないのではないかとおもってしまっていた。NHKの当時の放送された番組も見ていなかった。
しかし、読み始めると、全然違っていた。文字通り、足を使って、想像もできないほどの多くの取材を通じ、情報を集めている。事実隠す警察関係者からの情報を収集を試み、1審裁判のときにはあきらかになっていなかった情報もあつめ、しかも、報道機関として、公表することによって内部の情報を教えてもらえた人などにどのように配慮するのか、細心の注意を払い、テレビ番組の製作というかたちで不正を世に明かにしていく。その過程に感動した。取材源の秘匿が認められる報道機関だからこそ収集できた情報、と感じた。
大川原化工機事件が、警察による故意による事件の捏造であること、検察官もそれを起訴し、国賠で敗訴が確定するまで、非を認めなかったこと。そのような事件であるにもかかわらず、身体拘束をし、保釈も認めない裁判所の判断。そのなかで、胃がんの発見、治療が遅れ、亡くなった被疑者とされた方の存在。
この本を読んで、謝罪を受け入れようとしなかった遺族の気持ち、刑事告訴や、捜査に関わった当事者に、損害賠償の求償まで求めている、当事者、弁護団の活動の思いがよくわかった。
人質司法は、一般の人にも起こりうるということをあらためて実感させられる。ぜひ、多くの人に読んでいただきたい本である。
