2023年 あけましておめでとうございます

 2023年 あけましておめでとうございます。

 

 2022年の末に記者会見した脳・心臓疾患の認定事例(労働保険審査会での取り消しの上での逆転認定)は、脳・心臓疾患の認定基準の改定により、適切に過労死と認定された事案でした。

 

 現在、精神障害の認定基準の改訂に関する検討が行われています。ここでも、2011年の認定基準が作られて以降の知見や裁判例を検討し、議論が進んでいます。2023年には認定基準がかいていされる見通しです。精神障害の労災請求件数、労災認定件数は、右肩上がりに増えています。新しい認定基準により、しばらくは、さらに認定件数が増えるはずです。実態に合わせればそのような改訂がなされるべきです。しかし、より広い人が救済されることで、過労死等の理解が進み、防止対策も進み、最終的には、認定件数が過労死等の防止につながるはずです

 

 ところで、厚生労働省は、2022年12月13日厚生労働省は本日、「労働保険徴収法第12条第3項の適用事業主の不服の取扱いに関する検討会」(座長:東京大学大学院法学政治学研究科教授)の報告書を公表しました。

 厚生労働省は、次のようにホームページで紹介しています。

 

 この検討会は、労災保険給付を生活の基盤とする被災労働者等の法的地位の安定性についての十分な配慮を前提として、メリット制の適用を受ける事業主が労働保険料認定決定に不服を持つ場合の対応を検討するためのものです。

 今回の報告書では、以下のように取扱うことが適当であることが取りまとめられました。

(1)労災保険給付支給決定に関して、事業主には不服申立適格等を認めるべきではない。

(2)事業主が労働保険料認定決定に不服を持つ場合の対応として、当該決定の不服申立等に関して、以下の措置を講じることが適当。

  ア) 労災保険給付の支給要件非該当性に関する主張を認める。

  イ) 労災保険給付の支給要件非該当性が認められた場合には、その労災保険給付が労働保険料に影響しないよう、労働保険料を再決定するなど必要な対応を行う。

  ウ) 労災保険給付の支給要件非該当性が認められたとしても、そのことを理由に労災保険給付を取り消すことはしない。

「労働保険徴収法第12条第3項の適用事業主の不服の取扱いに関する検討会」報告書を公表します |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

 

 労災が認定されると、事業主の支払う労災保険の保険料が高くなります。この理由についても厚生労働省の説明を引用すると以下の通りです。

 

「労災保険率は、災害のリスクに応じて、事業の種類ごとに定められています。しかし、 事業の種類が同じでも、作業工程、機械設備、作業環境、事業主の皆様の災害防止努力 の違いにより、個々の事業場の災害率には差が生じます。 そこで、労災保険制度では、事業主の皆様の保険料負担の公平性の確保と、労働災害 防止努力の一層の促進を目的として、その事業場の労働災害の多寡※1に応じて、一定の 範囲内(基本:±40%、例外:±35%、±30%)で労災保険率または労災保険料額を増減 させる制度(メリット制)を設けています。」(労災保険のメリット制について)より

 

 これについて、事業主に、不服の申し立ての制度がないのは適切でないというのが問題の所在です。

 しかし、事業主が、労災認定に不満であっても、すでになされた労災支給決定まで取り消されるのは、あまりにも不合理です。

 報告書が上記のようにまとまったことは、労災支給に影響が及ぼさないとしたことは当然としても、運用によって、労働者、遺族に酷な結果 にならないか、注視する必要があります。