未払賃金請求期間、まず3年はあり得ない

「未払い賃金請求期間、まず3年に延長へ 厚労省」

 2019年10月20日23:00の日付で、日経新聞は、上記の表題で「厚労省はまず3年への延長で制度改正に道筋を付けたい考え。賃金台帳などの保管期限が3年で、企業側も対応しやすいとみている。」などと報道しました。

 

 しかし、まず3年という考え方はあり得ません。

 

 民法の改正で2020年から、短期消滅時効がなくなり、債権の時効は5年になります。労働基準法が賃金債権の時効を2年としたのは、民法が短すぎる(1年)ので、労働者保護のために2年としたという経緯があるのです。民法が短期消滅時効をなくし、5年とすることになったのです。労働基準法で労働者保護をする必要はなくなりました。当然に賃金債権も5年になるのが「すじ」です。

 

 厚生労働省の労政審議会(労働条件分科会)は、まだ2019年9月25日、10月18日の議事録を公表しておらず、ここでどの様な議論がなされたのか正確なところはわかりません。

 また、消滅時効をどうするのかは、有識者で構成する労政審議会(労働条件分科会)

の意見をきいてきめることになっているのであり、厚生労働省がきめたとするのは、正確ではありません。(いや、審議会はおかざりなので、厚生労働省がきめればその方向へ進むということで正確、なのかも知れません。)

 

 記事によると「労務管理のシステム改修などに1社あたり数千万円かかることや、残業時間の上限規制が20年4月から中小企業にも適用されるため、経営側が負担増に反発した。」などとあります。

 しかし、民法でも2020年4月よりまえに時効が完成している債権については適用がない。実際に大きな影響が生じてくるのはまだ先です。1年目は3年に改正するのと変わらないはずです。

 

 それに加えて何よりもきちんと賃金を支払っている企業には何の影響もないはずです。

 

 民法改正がなされたのは2017年5月26日です。あわせて時効が延長される可能性は十分に予想できたと思います。

 

 民法が改正施行されるのにあわせて、5年とするのがすじです。3年案はすぐに撤回するべきです。