未和 NHK記者はなぜ過労死したのか

未和 NHK記者はなぜ過労死したのか

 未和 NHK記者はなぜ過労死したのか 尾崎孝史著 岩波書店

 

 読みました。

 

 未和さん亡くなる前の1か月の労働時間は、労基署の認定でも159時間。弁護士の計算では、209時間を超えていたようです。

 明らかな長時間労働。31歳の若さでなくなった本人。痛ましい話しです。

 

 この本は、NHKでドキュメンタリー番組の映像制作に携わった映像制作者。写真家。

 多くの人への取材で、未和さんの亡くなる直前の労働実態を明らかにしていく前半は、NHK記者の仕事の内容が具体的に分かり、興味深いものでした。

 あの志布志事件 12人無罪の報道のときにNHK鹿児島放送局で、レポートをしたのも未和さんだったことがわかりました。

 

 明らかな労災であり、労基署が認定し、その後調停和解をしたこと、その際には公表しなかったこと、その後お母様が病気でしばらく動けない状態であったことなどの経過は、過労死事件の担当してきた当職にも経験があります。

 

 そして、そのNHKが、内部でも未和さんのことが知られておらず、決して働き方が変わったとは思えない状態であったことを知ったときの遺族の気持ち。残念だったでしょう。

 

 ご家族が公表した理由、そしてこの著者がこの本で伝えたかったことは、未和さんの死を無駄にしてほしくない。ということだと思います。

 それにもかかわらず、そのための対応が何もなされてないNHKへの怒りの気持ちを伝えたいということでしょう。氏名を公表してよく立ち上がられたと思います。

 そのことで、この本ができ、過労死の悲惨さがより世の中に伝わることになったのだと思います。

 

 未和さんが亡くなった長時間労働の原因は選挙の取材があったことでした。少しでも早く、他の放送局より早く当選確実をだすために、命まで犠牲にして取材をしなければならないのか。

 選挙のありかた、選挙報道のありかたについても、考えさせられました。

 

 未和さんには、「裁量労働制」がとられていましたた。つまり、労働時間によって賃金が変わらないのです。賃金が絡まなければ、労働時間の管理はどうしても甘くなります。それが長時間労働の温床です。時間をかけないと成果が上げにくい記者の仕事では、なおさらです。裁量労働制に問題があることも改めて感じました。

 

 とりとめもなく感想を書きました。この事件をとおして、いろいろな問題を知ることができました。

 おすすめしたい本です。