名古屋高裁でも岐阜市の職員の自死を公務災害と認める。

裁判所
名古屋地方裁判所,高等裁判所の正面

 名古屋高等裁判所民事第1部(永野圧彦裁判長)は、2017年7月6日、岐阜市の職員が、2007年11月に自死したことについて、公務災害であったと認める判決をしました。

 

 職員の配偶者の方が、この自死について、公務災害だとして、地方公務員災害補償基金岐阜県支部に公務災害として認定するように請求していました。しかし、地方公務員災害補償基金岐阜県支部は、これを公務災害と認めませんでした。

 

 公務災害として認められない場合、遺族は、基金支部審査会に、審査請求という不服の申立ができます。しかし、支部審査会も公務災害と認めませんでした。

 

 そこで、職員の配偶者の方は、再審査請求をするとともに、行政訴訟を提起したのです。

 (現在は、このあたりの手続きの法律が少し変わっています。)

 

 1審の岐阜地方裁判所は2016年12月22日、地方公務員災害補償基金岐阜県支部の公務外認定の処分を取り消す判決をしました。→詳しくはそのときのブログを参照して下さい。

 これは、地方公務員災害補償基金の決定を取り消すもので、この判決が確定すると、地方公務員災害補償基金は、法律上、公務災害だと認定しなければならなくなります。

 

 ところが、基金は、名古屋高等裁判所に控訴しました。そこでこの日の判決となったのです。

 

 名古屋高等裁判所は、1回目の期日で結審し、2017年7月6日の判決期日を指定しました。

 原判決が12月22日ですから、約半年で判決。いわゆる過労自死の事案で、検討する事項はそれなりにあるものですから、この高裁判決はスピード判決といえます。 

 

 私は、この事件に、審査請求の時から関わらせていただきました。関わりをもったのが、2012年頃ですから、それからも5年が経過しました。

 

 この判決は、威圧的な上司の態度、その当時にいくつもあったストレスの多い仕事の内容、出来事について、原告の主張を認めて、総合的に強いストレスがあったとして、自死が公務に起因すると結論づけました。

 仕事の内容は、1審判決よりさらに詳しく認定し、公務災害の認定については、基金の認定基準にあてはめても、公務災害になることを丁寧に判断しています。

 1審判決にまして、事実関係を精査すれば、明らかに公務災害である、と内容を、1審原告の主張に沿って付け加えています。このように厳しく指摘されるのであれば、基金は控訴しない法が良かったと思わせる内容ではなかったかと思いました。

 

 一方、事実の評価は、逆に控えめに評価しています。基金の認定基準は、その基準自体とても厳しく、相当に強いストレスがないと公務災害と認めないことになっています。判決は、事実を丁寧に評価した上で、この厳しい認定基準を適用しても、公務災害と認定できるとしています。

 

 判決は、基金に対し、あなたたちの基準で判断しても公務災害なんだから、もう上告などせずに、早く公務災害と認めて遺族に支払をしなさい。そう言っているように感じました。

 

 この判決を得るまでに10年という期間がかかり、1審原告は、本当に苦労されたと思います。

 

 日本の裁判は、3審制になっていますが、最高裁へ上告するには、要件が定まっています。憲法違反とか、重大な法律解釈の誤りなど、法律の解釈が問題になる場合です。

 

 今回の判決は、事実の評価を適切にしたというものであり、法律解釈の問題ではありません。

 

 1審被告の地方公務員災害補償基金は争うことをやめて、早く公務災害認定の手続きに入って欲しいと思います。

 

    ※7月20日の経過をもって、上記高裁判決は確定しました。【2017年7月21日追記】