季刊労働者の権利に掲載

 日本労働弁護団が発行している季刊労働者の権利。この最新号に、原稿が掲載されました。取り上げられたのは名古屋高裁平成28年12月1日判決。判例は裁判所ホームページで閲覧できます。左の裁判の日付で判決のページに行けます。

 

 事案の概要は裁判所が下記にまとめたとおり。

 

 夫が自殺したのは過重な業務に起因するものであるとしてした労働者災害補償保険法による遺族補償給付及び葬祭料の支給請求に対し労働基準監督署長がした不支給処分の取消請求につき,前記夫がうつ病を発症したことに業務起因性は認められないが,その後の同人の業務による心理的負荷と,同人のうつ病の増悪により自殺を図り死亡したこととの間に相当因果関係を認めるのが相当であるとして,前記取消請求を認容した事例(なお,参考として原審判決を別紙1として添付した。)。

 

 精神疾患に関する老妻の認定基準では、発症したうつ病が増悪したとしても「特別な出来事」がなければ業務起因性を認めてないことになっています。

 

 

「発病後の悪化」の取り扱いについて 発病後 悪化」 取り扱 いについて
 業務以外の心理的負荷により発病して治療が必要な状態にある精神障害が悪化した場合 は、悪化する前に業務による心理的負荷があっても、直ちにそれが悪化の原因であるとは 判断できません。 ただし、別表1の「特別な出来事」に該当する出来事があり、その後おおむね6か月以 内に精神障害が自然経過を超えて著しく悪化したと医学的に認められる場合に限り、その 「特別な出来事」による心理的負荷が悪化の原因と推認し 原則として 悪化した部分に 「特別な出来事」による心理的負荷が悪化の原因と推認し、原則として、悪化した部分に ついては労災補償の対象となります。
(厚生労働省のパンフレットより)

 

 この「特別な出来事」とは以下の内容になっています。

心理的負荷が極度のもの

・生死にかかわる、極度の苦痛を伴う、又は永久労働不能となる後遺障害を残す業務上の病気やケガをした  (業務上の傷病により6か月を超えて療養中に症状が急変し極度の苦痛を伴った場合を含む)

・業務に関連し、他人を死亡させ、又は生死にかかわる重大なケガを負わせた(故意によるものを除く)

・強姦や、本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為などのセクシュアルハラスメントを受けた

・その他、上記に準ずる程度の心理的負荷が極度と認められるもの

極度の長時間労働

・発病直前の1か月におおむね160時間を超えるような、又はこれに満たない期間にこれと同程度の(例えば3週間に おおむね120時間以上の)時間外労働を行った(休憩時間は少ないが手待時間が多い場合等、労働密度が特に低い 場合を除く)

 

 判決は一定の場合には、「特別な出来事」がなくても業務起因性を認める事ができるとした画期的な判決です。

 

 控訴審の審理の経過、提出した証拠内容なども詳しく書きました。参考してもらえたらと考えています。