中間利息の控除5%は多すぎ

 過労死、過労自殺の損害賠償請求の場合、あるいは、交通事故の損害賠償請求の場合に、中間利息を控除する計算をします。将来の収入を現在一括でもらうために、将来収入を得るときまでの利息相当額を差し引いて支払うという考え方です。


 この時、利率は5%で計算するというのが一般的です。また最高裁判所の裁判例です(最高裁判所第三小法廷平成17年6月14日判決)。


 以前の高金利時代は、賠償金をもらって預けたり運用すれば5%以上の利息が付くので、このような考え方は合理的だと考えられます。しかし、現在の低金利時代では、そのような運用は不可能であり、損害賠償請求をする側は、事故に遭わなければ得られた収入に見合った賠償を受けられないことになります。


 そこで、中間利息は年3%だと主張し、そのような判決が地裁、高裁でも出されたことがあります。


 しかし、平成17年の最高裁判所の判決は、次のような理由で、5パーセントだと判断しました。損害賠償額の算定には法的安定性及び統一的処理が必要とされる。事案ごと、裁判官ごとにに判断が別れることが防げる。被害者相互間の公平の確保、損害額の予測可能性による紛争の予防も図れる。


 亡くなってしまった人の将来得られる収入や、後遺障害をうけた人が、事故に遭わなかったら得られた収入を計算することは、そもそも難しく、一定の計算で行わざるを得ません。

 しかし、将来得られるものを現在に引き直すために、いつも5%だと計算するのは不合理です。


 いつも、相談者、依頼者の方に説明するときになぜ5%であるのかという説明で私自身が、戸惑ってしまいます。最高裁判所のいいかたも、結局、一旦法律で決めたから,としかいいようがありません。いまは5%で運用なんてできないけど、そうやって計算するというのが判例です。と説明をしています。最高裁の判例がある以上、法律の解釈でこれを覆すのは困難です。ならば法律を改正するほかありません。


 この点、今後、民法の改正が予定されています。法律で今より低い利率での中間利息の控除が定められ、今より損害賠償額が増額される可能性が指摘されています。