人権保障の行方~もし、今、憲法が改正されたら?~

 10月17日、金沢市内において、第62回中部弁護士会連合会定期弁護士大会(中弁連大会)が行われました。

 中部6県の弁護士が、年に一度集まる会合です。午前中にシンポジウム、午後から定期大会というのが慣例となっています。日本弁護士連合会の会長、副会長は全員来賓として参加します。

 今年のシンポジウムは、人権保障の行方、もし、今憲法が改正されたら,と題して、表現の自由、生存権について、自民党の憲法改正草案を問題点を取り上げました。

 日本の最高裁判所は、現在でも表現の自由について冷淡な態度を取っており、現実にデモ行進などは広い規制が行われているという指摘がありました。ただ、脱原発集会、デモにみられるように、なにかあればデモをして、意思を表すという文化が再び芽生えているという指摘もあり、興味深く話を聞きました。


 シンポのパネリストは、金沢大学の山崎友也准教授、元最高裁裁判官の宮川光治弁護士、朝日新聞の樋口大二記者、上柳敏郎弁護士でした。樋口記者はデモを取材するなかで、デモが各地で行われていることを肯定的に評価していました。上柳弁護士は、脱原発の集会,デモを日比谷公園でおこなうことについて、東京都が許可しなかったことの取消を求める裁判の代理人として最近の裁判所が表現の自由の価値を十分に配慮せず、消極判断をしているとの説明がありました。

 宮川光治弁護士は、元最高裁裁判官として、最高裁判所にいたときの考え方や、最高裁判所の態度について、かなり踏み込んで発言していました。

 山崎友也准教授は、自民党の憲法改正について、むしろ、それほど変化がないのではないかという問題提起をしました。現在の憲法の下でも公の秩序という考え方も成り立っているという観点の分析でした。自分の中では、少し違和感を感じました。ただ、多くの裁判例や海外の法制度などの例を紹介した議論の進め方は、学者ならではの広がりのある議論だと感じました。いずれの発言も大変興味深く聞きました。

 憲法は、たしかに実務的に論ずる機会は少ないのですが、生活保護の相談や、デモ行進の際のトラブルの相談は、弁護士としても直面する場面があります。参考になりました。

 以上、雑ぱくな感想です。

 午後には、このシンポを踏まえて宣言をしました。その内容は中弁連のホームページに掲載されるはずです。

 弁護士が、このように社会に情報を発信している、ということの紹介ができればと考えて書きました。



 

 改めて、憲法の人権保障の原理を自覚しました。また、自民党の憲法改正草案が、個人の尊厳を後退させているものであること、そのことが及ぼす影響を具体的に考えることができました。