落雷事故の最高裁判所判決 平成18年3月13日

 

87日の「サンスポ」のネットの報道によると

 

「落雷で高校野球部員が死亡 雷注意報を学校は把握せず」という表題で共同通信配信の報道がなされています。

 

「6日午後1時15分ごろ、愛知県扶桑町にある私立A高から「野球をしていた生徒が落雷に遭った」と110番があった。犬山署によると、2年生の野球部員Bさん(17)=同県C町=が死亡した。

 

 同署によると、別の高校との練習試合中、投手としてマウンドに立っていた際に落雷を受けた。一時心肺停止となった。病院で脈が戻ったが、亡くなった。

 

 A高によると、練習試合は、雨が降ってきたため午後1時ごろいったん中断していたが、再開直後に落雷した。事故当時、ほかの生徒や野球部の保護者など、約100人がグラウンドにいた。

 

 試合再開時は遠くで雷鳴が聞こえた約10秒後、ドーンという音とともに稲妻が走り、Bさんが倒れたという。

 

 同校のD校長は「小さな雷を遠くに感じただけでも、このようなことが起きると肝に銘じたい」と話し、雷の対応マニュアルを作成するとした。

 

 名古屋地方気象台によると、未明から愛知県全域に雷注意報を発令していたが、同校は把握していなかった。(共同)

 

 ところで、最高裁判所平成18313日判決 があります。

 

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/789/032789_hanrei.pdf

 

 この判決は、サッカーの試合中に落雷にあい、重大な後遺症となった高校生の事件です。最高裁判所は、以下のような事実を指摘しています。

 

 A高校の第1試合が開始された平成8年8月13日午後1時50分ころには,本件運動広場の上空には雷雲が現れ,小雨が降り始め,時々遠雷が聞こえるような状態であった。

 

上記試合が終了した同日午後2時55分ころからは,上空に暗雲が立ち込めて暗くなり,ラインの確認が困難なほどの豪雨が降り続いた。

 同日午後3時15分ころには,大阪管区気象台から雷注意報が発令されたが,本件大会の関係者らは,このことを知らなかった。

 

 同日午後4時30分の直前ころには,雨がやみ,上空の大部分は明るくなりつつあったが,本件運動広場の南西方向の上空には黒く固まった暗雲が立ち込め,雷鳴が聞こえ,雲の間で放電が起きるのが目撃された。

 

 雷鳴は大きな音ではなく,遠くの空で発生したものと考えられる程度ではあった。

 

   (中略)

 

  A高校の第2試合は,同日午後4時30分ころ,上記気象状況の下で,本件運動広場のBコートで開始され,同校サッカー部員がこれに参加していたところ,同日午後4時35分ころ,上告人X1に落雷があり,同上告人はその場に倒れた(以下,この落雷事故を「本件落雷事故」という。)。

 

 どうでしょうか。以下の共通点があります。

 

① 雨が降って試合が中断している。

 

② 雨が止んですぐに試合を再開している。

 

③ 遠くで雷鳴が聞こえた。

 

④ 再開直後に落雷があった。

 

⑤ 落雷注意報が発令されていた。

 

⑥ 関係者は落雷注意報が発令されていたことを知らなかった。

 

 

 最高裁判所は、「同校サッカー部の引率者兼監督であったB教諭としては,上記時点ころまでには落雷事故発生の危険が迫っていることを具体的に予見することが可能であったというべきであり,また,予見すべき注意義務を怠ったものというべきである。」とし、B教諭等の責任を否定した1審、2審を破棄し、審理を高裁に差し戻しました。

 その後、高松高裁が差し戻し控訴審判決で約3億円の賠償を命令しました。


 なお、落雷事故については、上記裁判の原告側代理人としてかかわった望月浩一郎弁護士のホームページに詳しい報告と資料が掲載されています。

 弁護士望月浩一郎WebSite