過労死・過労自殺の基礎知識

過労死・過労自殺とは

過労死
過労死等防止対策推進シンポジウム2016

  「過労死とは、仕事による過労・ストレスが原因の一つとなって、脳・心臓疾患、呼吸器疾患、精神疾患等を発病し、死亡または重度の障害を残すに至ることを意味します。また過労自殺は、過労により大きなストレスを受け、疲労がたまり、場合によっては「うつ病」を発症し、自殺してしまう事を意味します。」
  (過労死110番 ホームページより)

 

 2014年6月20日成立した過労死防止対策推進法(過労死防止法)では、

 

「過労死等」とは、業務における過重な身体的若しくは精神的な負荷による疾患を原因とする死亡(自殺による死亡を含む。)又は当該負荷による重篤な疾患をいう。

とされました(同法2条)。

 

過労死等の実情

過労死防止シンポジウム
過労死防止シンポジウム2015年

 厚生労働省では、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、仕事による強いストレスなどが原因で発病した精神障害の状況について、平成14年から、労災請求件数や、「業務上疾病」と認定し労災保険給付を決定した支給決定件数などを年1回、取りまとめています。

 

   平成27年の脳・心臓疾患に関する事案の労災の請求件数は795 件で、前年度比32 件の増でした。支給決定件数は251件で前年度比26件の減となり、うち死亡件数も 前年度比25件減の96件でした。

 精神障害に関する事案の労災の請求件数は 1515 件で、前年度比59 件の増となり、うち未遂を含む自殺件数は前年度比14件減の199件でした。支給決定件数は472 件で前年度比25 件の減となり、うち未遂を含む自殺の件数も前年度比6件減の93件でした。

 

過労死のときに取るべき手段

2014年11月の過労死防止を考えるつどいのチラシ
2014年11月の過労死防止を考えるつどいのチラシ

 ご家族が過労死、過労自殺ではないかと思われた場合に取る手続としては、
 
  1 労災請求をする。
  2 過労死をさせた職場に補償を求める。
  
 が考えられます。


  いわゆる労災請求は、「労働者災害補償保険法」に基づいて、亡くなった方と家計を同じと見なされる方が、一時金や年金、葬儀費用などを請求する手続です。亡くなったことが仕事と関係があるとされること、すなわち、「業務上」と認定されることが必要です。遺族年金、葬儀費用については厚生労働省のホームページにパンフレットか掲載されています。
   
   職場に補償を求めるというのは、勤めていた会社に、亡くなったことにより生じた損害(逸失利益)や、慰謝料などの損害の賠償を請求するということです。
  過労死、過労自殺をしたことについて、会社に過失がある場合には、会社は、労災補償とは別に、慰謝料などの損害の賠償をしなければなりません。
  労災認定された場合に、賠償を求めて会社と交渉しますが、会社が責任を認めなかったり、損損害の金額に争いがある場合には裁判になることもあります。

 

 地方公務員、国家公務員の方にもこれに準じた手続きがあります。

 

労災請求の方法

 労災請求の方法は、専用の様式の用紙に必要事項を記載し、提出するべき書類をそえて働いていた人の管轄の労働基準監督署長に提出します。労災請求の用紙は厚生労働省のホームページにもあります。労働基準監督署にも備えられています。併せて提出すべき必要書類もこの用紙に記載されています。具体的には、戸籍謄本、亡くなった方の死亡診断書、死体検案書などです。管轄の労働基準監督署もホームページで調べることができます。そのほか、同一生計維持証明書、葬祭料を請求するためには葬祭執行証明書を提出する必要があります。最寄りの労働基準監督署にたずねると定型の書式をもらえます。


 提出の前に、会社に証明してもらわなければならない項目があります。会社が、資料の提供や協力はするが、過労で死亡したことは、労基署の判断によるものだから、印鑑は押さないというときもあります。このように会社が協力しない場合には、そのことを労働基準監督署に報告する書面などを添付すれば、労基署で受け付けてもらえます。

 なお、労災保険法施行規則第23条は次のように規定されています。

(事業主の助力等)
第二十三条  保険給付を受けるべき者が、事故のため、みずから保険給付の請求その他の手続を行うことが困難である場合には、事業主は、その手続を行うことができるように助力しなければならない。
 事業主は、保険給付を受けるべき者から保険給付を受けるために必要な証明を求められたときは、すみやかに証明をしなければならない。

 

 このような規程を示して事業主には理解を求める必要があります。

 

 過労死、過労自殺の場合に遺族に支給されるものは「遺族年金」「葬祭料」等になります。亡くなるまでの病院で治療を受けた場合には、「療養給付」の請求もできる可能性があります。学校に通っているお子さんがいる場合には就学援助金が支給されます。
   

 しかし、過労死、過労自殺の労災認定は、厚生労働省の通達である認定基準に当てはまらないと困難です。
 そこで、亡くなった方の手帳など、労働時間のわかるもの、日記、メモ、ノートなど仕事の内容がわかるものがあれば、それを併せて提出することが望ましいです。


  会社は、従業員の労働時間を正確に把握する義務があります。また、最近は、タイムカード以外にも、パソコンのオン、オフのデータ。メールの送受信の記録などが残っている可能性があります。出勤、退勤について、警備会社にセキュリティカードによる記録が残っている場合もあります。

 

 ただ、会社には、必ずしも記録がないかもしれません。あるいは全ての資料が残っていないかもしれません。そのようなときに、自分自身のつけていた手帳、日記、メモ、携帯の通話記録、メールの送信記録なども場合によっては業務の過重性を立証する有力な手がかりになります。

 

  配偶者の方が、仕事が過重であることを心配し,毎日帰宅時間をカレンダーにメモをしていたところ、本当に亡くなってしまい、カレンダーにメモした時間が,時間外労働を認定するのに有力な証拠となったことがありました。 

 

 また、長時間労働がなくてもハラスメントや業務の質的過重性を考慮し、過重と評価できるときもあります。

過労死の認定基準

脳・心臓疾患について

 過労死の認定基準。厚生労働省が業務上の疾病として労災認定をしてよい基準を通達として発表しています。

   特に長期間の過労による脳心臓疾患について配下のような判断基準になっています。

 

 長期間の過重業務について

(ア) 疲労の蓄積の考え方
 恒常的な長時間労働等の負荷が長期間にわたって作用した場合には、「疲労の蓄積」が生じ、これが血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させ、その結果、脳・心臓疾患を発症させることがある。
 このことから、発症との関連性において、業務の過重性を評価するに当たっては、発症時における疲労の蓄積がどの程度であったかという観点から判断することとする。

(イ) 評価期間
 発症前おおむね6か月間

(ウ) 過重負荷の有無の判断
 著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したと認められるか否かについては、業務量、業務内容、作業環境等を考慮し、同僚等にとっても、特に過重な身体的、精神的負荷と認められるか否かという観点から、客観的かつ総合的に判断すること。
 具体的には、労働時間のほか以下に示した負荷要因について十分検討すること。

  不規則な勤務
  拘束時間の長い勤務
  出張の多い業務
  交替制勤務・深夜勤務
  作業環境(温度環境・騒音・時差)
  精神的緊張を伴う業務


 その際、疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられる労働時間に着目すると、その時間が長いほど、業務の過重性が増すところであり、具体的には、発症日を起点とした1か月単位の連続した期間をみて、

(1) 発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いが、おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること

 

(2) 発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できること を踏まえて判断すること。

   詳しくは、下記のホームページにパンフレットがあります。

http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040325-11.pdf

 (このパンフレットは脳心臓疾患についてのものです。)

 

精神疾患について

 精神疾患についても認定基準があります。

 

 精神疾患の認定要件

1 対象疾病を発病していること。 

2 対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認 められること。 

3 業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認め られないこと。

 

 1の「対象疾病」とはなにか。2の「強い心理的負荷が認められる」のはどんなときか、これは認定基準に定められています。

 下記のホームページにパンフレットがあります。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken04/dl/120427.pdf

 

 精神障害の治療歴のない事案

 精神障害の治療歴のない事案について、認定基準は以下のように指摘しています。

「精神障害の治療歴のない事案については、主治医意見や診療録等が得られず発 病の有無の判断も困難となるが、この場合にはうつ病エピソードのように症状に 周囲が気づきにくい精神障害もあることに留意しつつ関係者からの聴取内容等 を医学的に慎重に検討し、診断ガイドラインに示されている診断基準を満たす事 実が認められる場合又は種々の状況から診断基準を満たすと医学的に推定され る場合には、当該疾患名の精神障害が発病したものとして取り扱う。 」

 

 労働基準監督署に相談に行くと、この認定基準に当てはまらないから、認定されないだろうと指摘されることがあります。

 その指摘が正しいときもあります。残念ながら認定基準に当てはまらないということは、現状では仕事が原因ではないと考えざるを得ない場合もあるからです。

 

 しかし、事情を詳しく調べてもらえれば、実際には認定基準に当てはまる場合もあります。また認定基準に当てはまらなくても、裁判所が、社会通念に照らして仕事が原因であると判断し、労災認定される場合もあります。

 

 窓口の担当者の方のいうことは、その時点の資料や説明を元にした概ねの見通しです。その指摘だけで諦めるのは残念です。

労災の結論がでるまでの期間

 申請してから労災が認定されるまでは、一定の時間がかかります。ケースによって様々ですが、概ね半年から1年の間です。厚生労働省は半年間で結論を出すようにと指示をしています。

労災によって受けられる給付

 遺族数などに応じて、遺族補償年金、遺族特別支給金、遺族特別年金が支給されます。

 

遺族数

遺族(補償)年金 遺族特別支給金(一時金) 遺族特別年金

 1人

給付基礎日額の153日分 300万円 算定基礎日額の153日分 

2人

給付基礎日額の201日分

算定基礎日額の201日分

3人

給付基礎日額の223日分

算定基礎日額の223日分

4人以上

給付基礎日額の245日分

算定基礎日額の245日分

「給付基礎日額」とは、原則として、労働基準法の平均賃金に相当する額をいいます。

 平均賃金とは、原則として、業務上又は通勤による負傷や死亡の原因となった事故が発生した日または医師の診断によって疾病の発症が確定した日の直前3か月間にその労働者に対して支払われた賃金の総額(ボーナスや臨時に支払われる賃金を除く)を、その期間の暦日数で割った1日当たりの賃金額です。(厚生労働省遺族(補償)給付 葬祭料(葬祭給付)の請求手続 より)

不服申立手続

※不服申立の手続きは、2016年4月1日から改正されました。

 

 労災申請をしても認められない場合には、審査請求ができます。
 審査請求は、労災申請をした労働基準監督署がある都道府県の労働局にいる労働者災害補償保険審査官に対して行います。

 

   具体的には、審査請求書を労働者災害補償保険審査官に対して提出します。

 

 審査請求をすると審査官に対し、労働基準監督署長から提出された文書その他の物件の閲覧又は当該文書の写しの交付を求めることができます。  

 

 審査請求が棄却された場合に、裁判所に取消訴訟を提起することができます。

 

 また、審査請求をした日から三か月たっても審査請求についての決定がないときは、労働者災害補償保険審査官が審査請求を棄却したとみなすことができる、されています。つまり、審査請求をして3か月たったら取消訴訟が提起できることになります。

 

(これまでは、取消訴訟を起こすためには、審査請求をして3か月たってから再審査請求をし、それから3か月立たないと取消訴訟ができませんでした。また、再審査請求をして口頭審理の期日が決まらないと労働基準監督署長の手元にある記録をみることができませんでした。不服手続きのスピードが速まることになります。)

 

 審査請求が棄却された場合には、再審査請求をすることもできます。この場合、再審査請求が棄却されてから行政訴訟を提起することもできます。 

  

 不服がある場合には、手続きを取ることをおすすめします。特に一件記録が開示され、どんな資料が収集されたのかわかることは重要です。

 

    審査請求再審査請求の書式はそれぞれホームページでも取得することできます。

(手続きの流れ)

労働基準監督署長 不処分決定

       ↓

審査請求(労働者災害補償保険審査官)

 ↓  (どちらか選べる) ↓      

裁判所への提訴  再審査請求

         (労働保険審査会)

              ↓

         裁判所への提訴 .

 

個人情報の開示請求

 労災の申請について、支給、若しくは不支給の判断が出た場合に、その理由を知ることができます。個人情報開示請求です。請求するための用紙は厚生労働省のホームページに掲載されています。提出先は、各地方の労働局の企画室です。愛知労働局のホームページにもやり方が掲載されています。

 

 開示を請求する文書には

 「・平成○年○月○日被災の労災事故に関し、○○労働基準監督署へ提出した遺族補償給付請求書及び調査復命書と添付書類一式。」

 と記載すればよいです。

 

 労災認定を受けて、会社と損害賠償請求を交渉する際にも役に立ちます。労災認定が受けられなかった場合にも、審査請求する場合にも、不支給の理由となった理由の開示が受けられますので、参考になります。

 ただし、会社が提出した書類や、会社の従業員の聴取書などは開示されません。

 

 開示は、請求してから原則として1か月で受けられます。

 

 審査請求において、文書の写しの交付を求めることができます。この場合も、会社の提出した書類、会社の従業員の聴取書などは、提出した人、供述した人の同意がなければ交付されません。

 

行政裁判

 審査請求をしても、労災が認められなかった場合には、訴訟を提起することができます。(法改正があり、再審査をしなくても訴訟を提起することができるようになりました。)


 この訴訟は、裁判所で労働基準監督署長が不支給とした判断が間違っていることを認めさせるための訴訟です。行政訴訟といいます。

 

 脳、心臓疾患の認定基準も、精神疾患の認定基準も、十分なものではありません。また、認定基準は裁判所を拘束する基準ではありません。認定基準に当てはまらないとして、労災と認められなかった場合にも訴訟で労災と認められた例もたくさんあります。あきらめずに訴訟の道も考えてみるべきです。

 

 裁判にかかる期間は、事案によってまちまちです。ただし、裁判の迅速化に関する法律では、一審は2年間でやるようにと定めています。2年以内に1審判決がでることは経験上も多いと思います。

 

裁判の迅速化に関する法律

(裁判の迅速化)
第二条  裁判の迅速化は、第一審の訴訟手続については二年以内のできるだけ短い期間内にこれを終局させ、その他の裁判所における手続についてもそれぞれの手続に応じてできるだけ短い期間内にこれを終局させることを目標として、充実した手続を実施すること並びにこれを支える制度及び体制の整備を図るこにより行われるものとする。

  

損害賠償請求訴訟

  「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」とされています(労働契約法5条)。


 過労死、過労自殺をさせるような使用者の多くは、この労働契約法で定められた「必要な配慮」を怠ったとしてこの法律違反があり、遺族に補償をする義務が生じます。

 

 労災認定されれば、一定の年金が支給されます。しかし労災により亡くなった方の全損害が賄われるわけではありません。

 

 長時間労働を放置していた場合には、会社に過失があります。そのような場合には、遺族は、会社に対し、慰謝料を請求することができます。労災補償にはそのようなものは含まれません。そこで、労災が認定された場合にも、会社に対しさらに補償を求めることがあります。

 

 大きな企業の場合には、労災が認められた場合に特別弔慰金規程があり、一定の追加補償がされる場合があります。
 会社が、労災が認められたことを重く受け止め、誠意を持って話し合いに応じ、最終的にも話し合いで和解するときもあります。話し合いの解決は、双方にとって利点があり、望ましい解決です。


 しかし、しばしば企業側は、労災認定されていても因果関係を争ったり、過失がないと争うことがあり、訴訟になる場合もあります。

 

 個別の例外があるかも知れませんが、一般的に、労災認定されている場合には、民事上の損害賠償請求においても因果関係が認められ、かつ過失が認められる可能性が高いといえます。

 

損害賠償の計算

 人の命に値段をつけることなどできません。しかし、そうはいっても人が亡くなったことを償うためには金銭に換算する以外に方法がありません。そこで、多くの裁判例によって、人がなくなった場合の損害賠償の計算方法が定められて来ました。実際の人が亡くなった場合の損害賠償の計算は、以下の通りになります。交通事故の場合も同様の計算方法になります。

 

 損害賠償の計算については、いろいろな方について判例で細かく考え方が示されています。詳しくは弁護士に相談してください。

 

1 逸失利益

 その方が生きていたら得られた収入を損害と考えます。 

 一般的には、以下のように計算します。

  

 その当時のその方の現実の年収〈給与収入の場合には前年の源泉徴収票の金額をもとにすることが多い。ただし、年収が少なく、将来、平均的な賃金を得られる可能性があれば、賃金センサスを用いた平均賃金を用いることがあります。詳しくは弁護士などに相談してください。)に

 

 生きていたら自分で使うであろう生活費相当割合を引きます。その人の生活状況に応じて、3割から5割を引きます。

 

 それに、就労可能年数(通常は67歳まで就労可能だとして計算します。)を掛けます。

    

 さらに、毎月もらう給与を、一括で前払いしてもらえることから、利息を控除します。

 

 この利息は、年5%の割合にすることが最高裁判所の判例でほぼ確立しています。

 控除の仕方は、一般的にライプニッツ係数をかけるという方法で行います。

 (ホフマン係数という別の考え方の係数もあります。)

 ライプニッツ係数については国土交通省のホームページ〈自賠責保険の解説)にあります。  

  

  これを計算式で表すと次のようになります。

 

   計算式   (年収)×(1ー生活費控除割合)×(67歳までのライプニッツ係数)

 

 

2 慰謝料

  裁判所では、2000万円から2800万円程度と判断されることが多いです。

  概ねの目安として

     一家の支柱  2800万円

     母親、配偶者 2500万円

     その他    2000万円~2500万円

  としています。(交通事故のいわゆる「赤い本」※)

   ※公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部の民事交通事故訴訟損害賠償算定基準)

その人が、もっと生きられたのに、死ななければならない苦痛、無念の気持ちを金銭にするという考え方です。家族の有無などで違いがあります。

 

大切な人を亡くした遺族の固有の慰謝料が認められる場合もあります。この場合の総額も上記の金額の範囲内とされることが多いです。

 

3 葬儀費用

葬儀をするための費用です。死亡し、葬儀を上げなければならないわけですから、この費用も損害として認められます。もっとも、実額ではなく150万円程度を限度に認められることが多いです。

 

4 弁護士費用

損害賠償を請求するのには、弁護士に依頼して、交渉、訴訟手続きをすることが多いでしょう。日本は、損害賠償を請求するのに弁護士に依頼しなければならないという制度ではありません。裁判をするために弁護士を依頼することが必要だというわけではありません。しかし、損害賠償請求をするためには法的知識や裁判実務についての知識が必要であり、弁護士を依頼することが、望ましいと考えられます。その場合に必要な費用の一部は、相手方に負担させるのが公平だという考え方から、弁護士費用も損害として認められます。

判決では、請求金額の約10%弱が認められる例が多いです。

(判決で認められるのは弁護士費用の全てではありません。弁護士費用のうち、加害者である相手が負担するべき金額がこの程度という意味です。)

 

5 利息

  民法により、損害賠償については、年5%の割合による利息を請求することができます。

利息は、死亡した日から、もしくは請求した日から請求できることになります。請求する法的な構成によって違います。話し合いで解決する場合に、この部分を譲歩することもあります。

 

6 損益相殺(そんえきそうさい)

上記で計算した金額から、すでに労災保険等から受けとったお金がある場合には、これを差し引くことになります。ただし、差し引くことができるのは、遺族補償年金、一時金などです。例えば、労災が認定されると遺族特別支給金として300万円が支給されるのですが、このように、労災保険法が遺族への生活補償とは別に特別に支給する金員は差し引くことにはなりません。

亡くなったことによる損害と、亡くなったことにより外から支給される利益を差し引き計算をすることを、損益相殺(そんえきそうさい)といいます。

 

7 過失相殺(かしつそうさい)

過労死、過労自殺の原因について、亡くなった方にも原因の一端がある場合、公平の見地から民法722条を類推適用して、一定の割合の損害額の減額を命じられることがあります。

 

この点が争われた電通事件で最高裁判決は、「企業等に雇用される労働者の性格が多様のものであることはいうまでもないところ、ある業務に従事する特定の労働者の性格が同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでない限り、その性格及びこれに基づく業務遂行の態様等が業務の過重負担に起因して当該労働者に生じた損害の発生又は拡大に寄与したとしても、そのような事態は使用者として予想すべきものということができる。」と判示しています(最高裁判決平成12年3月24日)。

 

 過失相殺が認められるのは限られた場合だと考えられます。

 

公務員の場合

 地方公務員の場合には地方公務員災害補償法があり、民間の場合と類似の公務災害の認定請求をすることができます。

 地方公務員災害補償基金のホームページをご覧ください。

 

弁護士費用

 弁護士費用については配慮します。

 特に、弁護士費用が支払えないために相談、依頼を躊躇されているのであればご相談ください。

ご相談、依頼の方法

 まずは、事務所にお電話ください。まずは法律相談の予約をしてください。

 費用がご心配なこともあると思います。とりあえず、相談だけでもしていただいてはどうでしょうか。

 相談料は30分5000円と消費税です。