名古屋高裁でも岐阜市の職員の自死を公務災害と認める。

裁判所
名古屋地方裁判所,高等裁判所の正面

 名古屋高等裁判所民事第1部(永野圧彦裁判長)は、2017年7月6日、岐阜市の職員が、2007年11月に自死したことについて、公務災害であったと認める判決をしました。

 

 職員の配偶者の方が、この自死について、公務災害だとして、地方公務員災害補償基金岐阜県支部に公務災害として認定するように請求していました。しかし、地方公務員災害補償基金岐阜県支部は、これを公務災害と認めませんでした。

 

 公務災害として認められない場合、遺族は、基金支部審査会に、審査請求という不服の申立ができます。しかし、支部審査会も公務災害と認めませんでした。

 

 そこで、職員の配偶者の方は、再審査請求をするとともに、行政訴訟を提起したのです。

 (現在は、このあたりの手続きの法律が少し変わっています。)

 

 1審の岐阜地方裁判所は2016年12月22日、地方公務員災害補償基金岐阜県支部の公務外認定の処分を取り消す判決をしました。→詳しくはそのときのブログを参照して下さい。

 これは、地方公務員災害補償基金の決定を取り消すもので、この判決が確定すると、地方公務員災害補償基金は、法律上、公務災害だと認定しなければならなくなります。

 

 ところが、基金は、名古屋高等裁判所に控訴しました。そこでこの日の判決となったのです。

 

 名古屋高等裁判所は、1回目の期日で結審し、2017年7月6日の判決期日を指定しました。

 原判決が12月22日ですから、約半年で判決。いわゆる過労自死の事案で、検討する事項はそれなりにあるものですから、この高裁判決はスピード判決といえます。 

 

 私は、この事件に、審査請求の時から関わらせていただきました。関わりをもったのが、2012年頃ですから、それからも5年が経過しました。

 

 この判決は、威圧的な上司の態度、その当時にいくつもあったストレスの多い仕事の内容、出来事について、原告の主張を認めて、総合的に強いストレスがあったとして、自死が公務に起因すると結論づけました。

 仕事の内容は、1審判決よりさらに詳しく認定し、公務災害の認定については、基金の認定基準にあてはめても、公務災害になることを丁寧に判断しています。

 1審判決にまして、事実関係を精査すれば、明らかに公務災害である、と内容を、1審原告の主張に沿って付け加えています。このように厳しく指摘されるのであれば、基金は控訴しない法が良かったと思わせる内容ではなかったかと思いました。

 

 一方、事実の評価は、逆に控えめに評価しています。基金の認定基準は、その基準自体とても厳しく、相当に強いストレスがないと公務災害と認めないことになっています。判決は、事実を丁寧に評価した上で、この厳しい認定基準を適用しても、公務災害と認定できるとしています。

 

 判決は、基金に対し、あなたたちの基準で判断しても公務災害なんだから、もう上告などせずに、早く公務災害と認めて遺族に支払をしなさい。そう言っているように感じました。

 

 この判決を得るまでに10年という期間がかかり、1審原告は、本当に苦労されたと思います。

 

 日本の裁判は、3審制になっていますが、最高裁へ上告するには、要件が定まっています。憲法違反とか、重大な法律解釈の誤りなど、法律の解釈が問題になる場合です。

 

 今回の判決は、事実の評価を適切にしたというものであり、法律解釈の問題ではありません。

 

 1審被告の地方公務員災害補償基金は争うことをやめて、早く公務災害認定の手続きに入って欲しいと思います。

 

    ※7月20日の経過をもって、上記高裁判決は確定しました。【2017年7月21日追記】

 

 

 

 

平成28年度過労死等の労災認定件数発表

 2017年6月30日、平成28年度の過労死等の労災補償状況が厚生労働省から発表されました。

 厚生労働省の発表を見ていきます。

 まずは脳・心臓疾患について、以下引用します。

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1  脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況

 

(1) 請求件数は825件で、前年度比30件の増となった。 P 3 表1-1】

 

(2) 支給決定件数は260 件で前年度比9件の増となり、 うち死亡件数も前年度比11件増の107件であった。 P 3 表1-1】

 

(3) 業種別(大分類)では、請求件数は「運輸業,郵便業」212件、「卸売業,小売業」106件、「製造業」101件の順で多く、支給決定件数は「運輸業,郵便業」97件、「製造業」41件、「卸売業,小売業」29件の順に多い。   P 4 表1-2】

 

業種別(中分類)では、請求件数、支給決定件数ともに業種別(大分類)の「運輸業,郵便業」のうち「道路貨物運送業」145件、89件が最多。 P5 表1-2-1、P6 表1-2-2】

 

(4) 職種別(大分類)では、請求件数は「輸送・機械運転従事者」187件、「販売従事者」97件、「サービス職業従事者」93件の順で多く、支給決定件数は「輸送・機械運転従事者」90件、「専門的・技術的職業従事者」30件、「生産工程従事者」27件の順に多い。  P 7 表1-3】

 

職種別(中分類)では、請求件数、支給決定件数ともに職種別(大分類)の「輸送・機械運転従事者」のうち「自動車運転従事者」178件、89件が最多。 【P8 表1-3-1、P9 表1-3-2】

 

 

 

(5) 年齢別では、請求件数は「5059歳」266件、「4049歳」239件、「60歳以上」220件の順で多く、支給決定件数は「5059歳」99件、「4049歳」90件、「3039歳」34件の順に多い。 【P10 表1-4】

 

(6) 時間外労働時間別(1か月又は2~6か月における1か月平均)支給決定件数は、「80時間以上~100時間未満」106件で最も多く、「100時間以上」の合計件数は128件であった。 【P13 表1-6】

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 支給決定数とは、要するに、労基署が過労死等と認めた件数です。

 支給数、死亡支給数とも減っていません。

 運送業、特に運転手が大変だということがわかります。

 それから、長時間労働で病気になっている人がたくさんいることが分かります。

 

 次に精神障害についてみていきます。

 

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2  精神障害に関する事案の労災補償状況

 

(1) 請求件数は1,586件で前年度比71件の増となり、うち未遂を含む自殺件数は前年度比1件減の198件であった。【P15 表2-1】

 

(2) 支給決定件数は498 件で前年度比26件の増となり、うち未遂を含む自殺の件数は前年度比9件減の84件であった。【 P15  表2-1            

 

(3) 業種別( 大分類)では、請求件数は 「医療,福祉」302件、「製造業」279件、「卸売業,小売業」220件の順に多く、支給決定件数は「製造業」91件、「医療,福祉」80件、「卸売業,小売業」57件の順に多い。【 P16  表2-2

 

業種別(中分類)では、 請求件数、支給決定件数ともに業種別(大分類)の 「医療,福祉」のうち 「社会保険・社会福祉・介護事業」167件、46件が最多。 P17 表2-2-1、P18 表2-2-2】

 

(4) 職種別(大分類)では、請求件数は 「専門的・技術的職業従事者」361 「事務従事者」307件、 「販売従事者」220件の順に多く、支給決定件数は「専門的・技術的職業従事者」115件、「事務従事者」81件、「サービス職業従事者」64件の順に多い。 【P19 表2-3】

 

職種別(中分類)では 、請求件数、支給決定件数ともに職種別(大分類)の「事務従事者」のうち「一般事務従事者」198件、47件が最多。 P20 表2-3-1、P21 表2-3-2】

 

(5) 年齢別では、請求件数は「4049歳」542件、「3039歳」408件、「5059歳」295件、支給決定件数は「4049歳」144件、「3039歳」136件、「2029歳」107件の順に多い。【P22 表2-4】

 

(6) 時間外労働時間別(1か月平均)支給決定件数は、「20時間未満」が84件で最も多く、「160時間以上」が52件であった。 【P24 表2-6】

 

(7) 出来事(※)別の支給決定件数は、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」74件、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」63件の順に多い。

 

 

 

※「出来事」とは精神障害の発病に関与したと考えられる事象の心理的負荷の強度を評価するために、認定基準において、一定の事象を類型化したもの P26 表2-8】

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  請求件数がさらに増えています。

  自殺の件数は減りましたが全体の認定件数は増えています。

 

  専門的・技術的職業従事者が多いのが特徴です。

  

  時間外労働ですが「20時間未満」が最も多いのが印象的です。

  出来事別の支給決定件数は、ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた が多くなっています。

  つまり長時間労働よりもパワハラで精神障害になっている場合が多いようです。

  

  一方で160時間以上も52件あり、2番目に多いのも驚きです。

 

 

  裁量労働の件数も発表されました。問題アリと言うことがわかります。

  一方で、これだけ?という印象を持ちました。

  時間管理がなされていれば、もっと多くの認定がなされるのではないでしょか。

 

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3 裁量労働制対象者に係る支給決定件数

(1) 過去6年間で裁量労働制対象者に係る脳・心臓疾患の支給決定件数は22件で、うち専門業務型裁量労働制対象者に係る支給決定が21件、企画業務型裁量労働制対象者に係る支給決定が1件であった。 【P27 表3】

 

(2) 過去6年間で裁量労働制対象者に係る精神障害の支給決定件数は39件で、うち専門業務型裁量労働制対象者に係る支給決定が37件、企画業務型裁量労働制対象者に係る支給決定が2件であった。 【P27 表3】

 

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 過労死等防止対策推進法が施行されて4年目です。まだこれからということでしょう。

 まずは労災補償されるべきものを労災補償していくなかで、一つづつ対策をしていくことだと思います。

  今まで、発覚していなかったものが発覚しただけで、世の中は確実に進んでいると信じたいものです。

過労死110番 実施できました

 今日は、全国過労死110番を実施しました。

 愛知では、13件の相談がありました。

 

 感想です。

 

 こんなに世の中で、長時間労働が問題になっている、と思っていましたが、長時間労働は、まだまだたくさんあるのだなあ、と思いました。

 

 また、労働基準法が十分に守られていない状況にあることも実感しました。

 労働契約法も十分理解されていない状況にあることも実感しました。

 

 そして、辛いけど、訴えられない、状況にある人がいることも実感しました。

 

 今回、相談しくても、情報に接することができなかった人もいたと思います。

 

 一方で、今裁判で戦っている人についてのマスコミの報道によって、勇気づけられて、自分も立ち上がろうともがいている人がいることもわかりました。

 

 苦しんでいる人、悩んでいる人、今日の電話相談は終わりました。でも面談相談は、いつでも受け付けています。

 

 

過労死110番実施します

2017年6月17日土曜日           10:00~15:00

過労死110番

0120-184-964


弁護士が電話で相談にのります

当日は、過労死の事件の経験のある弁護士が電話で相談にのります。

過労死・過労自殺、働き過ぎの相談にものります。

過労死、過労自殺された方の遺族の補償についての相談を受け付けます。

ご自身、ご家族の過重労働の相談も受け付けます。

相談は無料です。通話料も無料です。携帯からもOK

相談料はかかりません。また、フリーダイヤルですから通話料も無料。携帯電話からもかけることができます。その場合も無料です。


専門家「基準の見直しを」

 本日朝日新聞名古屋版に「労災却下6割超す」「専門家「基準の見直しを」」という表題で精神疾患の労災認定基準についての記事が掲載されました。

 残念ながら名古屋版であり、地域限定ですが、大きな記事になりました。

 

 私のコメントも以下のように掲載されています。

「国の基準の具体例に当てはまらないと、認定されずに切り捨てられる。ストレスには色々あり、対人関係に強いが長時間労働には弱いなど様々だ。より柔軟な評価方法に見直すべきだ。」

 

 認定基準は平成23年に改定されましたが、まだまだ不合理なところがたくさんあります。しかし、平成11年の判断指針よりも分かりやすく、また幅広く改訂されたせいか、裁判所でも、この基準をそのままあてはめるような判決があります。

 

 しかし、人間の心にも個性があり、ある人のには辛いストレスが、他の人にはそれほどではないことはいくらでもあります。それを、切り捨ててしまっていいのでしょうか。

 

 最もこれを乗り越えるには、医学的な根拠や世論の力がいります。

 

 今日は、NHKあさイチでも「大丈夫?家族から見た“働き方”」と題して働き方について議論をしていました。

 過労死弁護団の川人博弁護士と全国過労死を考える家族の会から寺西笑子さんも出演しました。

 新聞やテレビでもこのままではいけないという意識が高まっています。

 救済されていない事例もたくさんあることを知ってもらい、改善にむけて動きがあるといいと期待しています。

 

 

勝利報告集会

新美南吉 安城市
安城市のオブジェ

 5月28日、安城市内で、担当している事件の報告集会がありました。

 過労死事件で、名古屋高等裁判所で1審を取消、労災と認められた事案でした。

 1審敗訴のあとの逆転勝訴でした。

 原告本人、ご家族、亡くなったご本人のご両親。

 亡くなったご本人は帰ってきませんが、無くなった原因が労働にあると裁判所に認定してもらったことは本当に良かったです。

 

 集会を通して、ご本人はどういう状況だったのか。なぜ、過労死だと思ったのか。どのような証拠があったのか。

 なぜ、1審は敗訴だったのか。どうして高裁では勝訴だったのか。振り返って話をしました。

 

 もともと水野幹男弁護士が担当していた事案で、私も裁判から応援に入りました。

 原告の依頼に応えて良い結果を出し、感謝してもらえる。弁護士をやって良かったと思える瞬間でした。

 

 多くの方が支援する会を作って支援してくれました。多くの人と喜び合えるのもうれしいものです。

 

季刊労働者の権利に掲載

 日本労働弁護団が発行している季刊労働者の権利。この最新号に、原稿が掲載されました。取り上げられたのは名古屋高裁平成28年12月1日判決。判例は裁判所ホームページで閲覧できます。左の裁判の日付で判決のページに行けます。

 

 事案の概要は裁判所が下記にまとめたとおり。

 

 夫が自殺したのは過重な業務に起因するものであるとしてした労働者災害補償保険法による遺族補償給付及び葬祭料の支給請求に対し労働基準監督署長がした不支給処分の取消請求につき,前記夫がうつ病を発症したことに業務起因性は認められないが,その後の同人の業務による心理的負荷と,同人のうつ病の増悪により自殺を図り死亡したこととの間に相当因果関係を認めるのが相当であるとして,前記取消請求を認容した事例(なお,参考として原審判決を別紙1として添付した。)。

 

 精神疾患に関する老妻の認定基準では、発症したうつ病が増悪したとしても「特別な出来事」がなければ業務起因性を認めてないことになっています。

 

 

「発病後の悪化」の取り扱いについて 発病後 悪化」 取り扱 いについて
 業務以外の心理的負荷により発病して治療が必要な状態にある精神障害が悪化した場合 は、悪化する前に業務による心理的負荷があっても、直ちにそれが悪化の原因であるとは 判断できません。 ただし、別表1の「特別な出来事」に該当する出来事があり、その後おおむね6か月以 内に精神障害が自然経過を超えて著しく悪化したと医学的に認められる場合に限り、その 「特別な出来事」による心理的負荷が悪化の原因と推認し 原則として 悪化した部分に 「特別な出来事」による心理的負荷が悪化の原因と推認し、原則として、悪化した部分に ついては労災補償の対象となります。
(厚生労働省のパンフレットより)

 

 この「特別な出来事」とは以下の内容になっています。

心理的負荷が極度のもの

・生死にかかわる、極度の苦痛を伴う、又は永久労働不能となる後遺障害を残す業務上の病気やケガをした  (業務上の傷病により6か月を超えて療養中に症状が急変し極度の苦痛を伴った場合を含む)

・業務に関連し、他人を死亡させ、又は生死にかかわる重大なケガを負わせた(故意によるものを除く)

・強姦や、本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為などのセクシュアルハラスメントを受けた

・その他、上記に準ずる程度の心理的負荷が極度と認められるもの

極度の長時間労働

・発病直前の1か月におおむね160時間を超えるような、又はこれに満たない期間にこれと同程度の(例えば3週間に おおむね120時間以上の)時間外労働を行った(休憩時間は少ないが手待時間が多い場合等、労働密度が特に低い 場合を除く)

 

 判決は一定の場合には、「特別な出来事」がなくても業務起因性を認める事ができるとした画期的な判決です。

 

 控訴審の審理の経過、提出した証拠内容なども詳しく書きました。参考してもらえたらと考えています。

 

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<理念はいま 憲法施行70年>(5)過労死 にコメントが掲載されました。

 5月7日の中日新聞朝刊の<理念はいま 憲法施行70年>に、当職のコメントが掲載されました。

 掲載されたコメントは、以下の通りです。

 

 「労働問題に詳しい岩井羊一弁護士は規制自体は評価しながらも、過労死ラインと同じ上限設定を「死ぬかもしれない時間まで働かせることができる」と批判する。」

 

 記事の内容は、2011年9月に亡くなったトヨタ自動車のグループ会社で、救急車の防振ベッドの組み立てる部門のリーダーだった方のお父さんの思いを綴った内容です。

 事件は、水野幹男弁護士と当職が担当しました。詳細はブログで述べたとおりです。

 

 記事は、「憲法25条で『健康で文化的な最低限度の生活を営む権利』(生存権)を保障する。過労死ラインまで残業を許しても生存権は守られるのか。」と問いかけています。

 

 上記コメントは、若干舌足らずであり、規制がなされないとしても死ぬかもしれない時間まで働かせて、実際に人が亡くなれば、企業は民事責任は問われます。現在でも違法です。ただ、限られた紙面のなかで、上手く趣旨を行かしてもらうためにはこのような表現になるかと思います。

 

 少しでも多くの方がこの記事を読んで、過労死の悲劇を考えて欲しいと思います。

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労災の請求件数・認定件数

 過労死、過労自殺、過労による脳・心臓疾患、過労による精神疾患、これらを労災として請求されている件数、労災として認定されている件数について、毎年厚生労働省が公表しています。毎年6月に公表されているので、現在わかる最も新しい統計はのは2015年、平成27年の分です。

 

 全国で脳・心臓疾患の請求件数は795 件で、前年度比32 件の増。そのうち死亡についての請求件数は283件。支給決定件数は251件で前年度比26件の減となり、うち死亡件数も 前年度比25 件減の96件。

 また、全国で精神疾患の請求件数は 1,515 件で、前年度比59 件の増となり、うち未遂を含む自殺件数は前年度比14件減の199件。支給決定件数は 472 件で前年度比25 件の減となり、うち未遂を含む自殺の件数も前年度比6件減の93件。

 

 認定件数が少し減っています。これがいい傾向なのかどうかはわかりません。過労死等の労災の認定基準は厳しく、いろいろな事情で労災請求が遅かったり、を断念している人もいます。請求から認定までに時間がかかります。すこし長い目で見ていかないと増えた、減ったと判断することはできないと思います。

 

 厚生労働省は、都道府県毎の労災請求数、認定数を公表しています。

 私の住んでいる愛知県はどうでしょうか。

  

 脳・心臓疾患    請求件数    42件  うち死亡17件

           認定件数    20件  うち死亡10件

 

 精神疾患      請求件数    67件  うち自殺10件

           認定件数    10件  うち自殺2件

 

 脳・心臓疾患死の認定件数は全国とくらべると多く、自殺の認定件数が少ないのが特徴です。

 

 ちなみに、全国の平成27年の自殺者数は  24025人

 愛知県の自殺者数は            1301人 

  (出典:内閣府自殺対策推進室 警察庁生活安全局生活安全企画課 )

 

 また、日本の人口は、平成29年4月1日現在(概算値)】<総人口> 1億2679万人

 愛知県の平成29年3月1日現在の愛知県の人口(推計)は、7,509,709人

 

 

 人口から考えると、愛知県は、日本全体の5%、1/20 です。

  もっとも、これだけ認定の母数が少ないと、多い少ないと論評することはできないのかもしれません。

 自殺者が年間3万人をきって、減ってきているのはよいことですが、それでも愛知県下でも1301人もの人が自殺でなくなっています。

 

 警察の調べでは愛知県の自殺者のうち167名は、勤務問題だそうです。

 そのうちの10人しか労災請求せず、認められたのは2名しかないというのは少なすぎるのではないでしょうか。

 

(自殺した年、労災認定請求した年、認定、不支給認定された日はずれていますから、上記表現は正確ではないことをお許しください。)

 

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長時間労働をなくさない時間外労働の上限規制に反対する

. 4月6日、金山北口で、時間外労働の上限規制に反対する街宣活動をしました。

 

 愛労連、愛知働く者のいのちと健康を守るセンター、東海労働弁護団、自由法曹団愛知支部など、当時のさまざなま労働団体と弁護士の団体が共同して行いました。

 

 安倍内閣が「働き方改革」の一環として導入をめざしている時間外労働時間の上限規制をめぐって、「月45時間」「年間360時間」を原則としつつ、繁忙期には「月100時間未満」かつ「2ヶ月ないし6か月平均80時間」とし、月45時間を超える時間外労働は6か月までとすることで、政労使の合意が成立したとの報道がなされました。

 

 労働者の心身を蝕むような長時間労働を根絶するためには、労働基準法を改正し、36協定でも超えることができない時間外労働の上限を定め、違反企業に罰則を科すことが必要です。

 

 しかしながら、報道された案が容認しようとしている「月100時間未満」「平均80時間」などという例外は、厚生労働省が定めた『脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準』(平成13年12月12日基発第1063号)「過重負荷の有無の判断」に記載されている時間外労働の時間(1か月間におおむね100時間又は2か月間ないし6か月間にわたって1か月当たりおおむね80時間)に該当するものです。

 

 このような法規制は、かえって、このようなもし死んだら過労死と認定されるような長時間労働をさせても許されるのだと理解されてしまいます。

 

(誤解がないように指摘しておきますが、36協定がなくなるわけではありません。また、過労死がおきたときに、法律を守っていたとして許されてしまうわけではありません。労災認定はされる可能性が十分にありますし、民事上の安全配慮義務違反の責任が問われることも今までどおりです。)

 

 名古屋高等裁判所平成29年2月23日判決では、虚血性心疾患で死亡した労働者について、「発症前1か月間の時間外労働時間は少なくとも85時間48分であり、この時間外労働時間数だけでも、脳・心臓疾患に対する影響が発現する程度の過重な労働負荷であるということができる。」と判示し、認定基準の1か月の時間外労働が100時間未満の場合でも脳・心臓疾患を発症させる業務の過重性があったことを認めています。

 

 「月100時間未満」「平均80時間」の時間外労働の容認は、過労死をなくす、という観点からは、無意味なばかりか、過労死を助長しかねない規制です。

 

 これが弁護団、家族が反対している理由です。

 上限ができるからいいじゃないか、とは言い切れないのです。

 

 

 ちなみに国際人権規約の社会権規約には次のような条項があります。

 

 第7条 この規約の締約国は、すべての者が公正かつ良好な労働条件を享受する権利を有することを認める。この労働条件は、特に次のものを確保する労働条件とする。

(a) すべての労働者に最小限度次のものを与える報酬

 i.公正な資金及びいかなる差別もない同一価値の労働についての同一報酬。特に、女子については、同一の労働についての同一報酬とともに男子が享受する労働条件に劣らない労働条件が保障されること。

 ii.労働者及びその家族のこの規約に適合する相応な生活

(b) 安全かつ健康的な作業条件

(c) 先任及び能力以外のいかなる事由も考慮されることなく、すべての者がその雇用関係においてより高い過当な地位に昇進する均等な機会

(d) 休息、余暇、労働時間の合理的な制限及び定期的な有給休暇並びに公の休日についての報酬 

 

 時間外労働の上限の規制が36協定しかなかったり、できても100時間未満ということは、いまだ国際人権規約にも合致していないというべきでしょう。

 

 

 また過重労働対策基本法を策定しようと宣言をした2010年。過労死弁護団全国連絡会議は次のような指摘をしています。

 

1 日本国憲法と労働基準法等の理念 

 

 日本国憲法は個人の尊厳(13条)、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利(25条)とともに、基本的人権として「勤労の権利」を保障し(27条1項)、「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準」を法律で定めるとしています(同2項)。 そして、これを受けて労基法は、「労働者が人たるに値する生活を営むための必要を満たすべき」最低基準(1条)として、週40時間・1日8時間労働の原則(32条)、休憩・休日の付与(34条1項、35条1項)などを定めています。

 

2 違法な過重労働の蔓延 

 

 ところが、現在のわが国の労働の現場は、次のように、およそ上記の憲法や労基法の理念とはかけ離れた実態にあります。

 

 違法なサービス労働・賃金不払労働の常態化

 

 会社の職階である「管理職」と、法律上の概念である「管理監督者」(労基法41条2号)は別のものなのに、「管理職」とされただけで時間外手当を支払わない、さらには「管理職」としての権限も処遇もない   

 

 「名ばかり管理職」にまで時間外手当を支払わない

 

 過労死認定基準を上回る時間外労働時間を認める「36協定」が締結され、労働基準監督署がこれを受理している

 

3 過労死・過労自殺の多発 

 

 その結果、過酷な長時間・過重労働が、業種・職種や年齢・性別を問わず、また正社員のみならず非正規労働者にまで広がり、過労死や過労疾患、過労による精神障害や過労自殺が多発しています。

 

 激増する過労死・過労自殺の労災申請・労災認定は、「氷山の一角」にすぎません。(以下略)

 

 

 

 時間外労働に適切な歯止めがない状態は、個人の尊厳、生存権、勤労者の権利を保障した憲法の理念ともかけ離れています。

 現状は憲法や国際人権規約の定めた理念とかけ離れているし、100時間未満までは刑事罰はないなどという規制では、その理念に近づけないというべきです。

 

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