過労死等防止対策推進シンポ 岐阜 2017


 2017年11月13日、過労死等防止対策推進シンポシンポジウム 岐阜会場 が行われました。

 岐阜では、

 

  労働局 労働基準部 監督課の佐藤健二課長のご挨拶

  岐阜市で自殺をした公園整備課長の配偶者であった伊藤左紀子さんの報告

  この自殺を受けた岐阜市の取組を、岐阜市の杉原太課長の報告

  私の、地方自治体の過労死防止の取組として豊川市の例の報告

  医師櫻沢博文氏の「職場のメンタルヘルス対策」講演

  過労死遺族の吉田典子さんのお話し「私の陽介はどうして死んでしまったの?」

 

 が行われた。

 約110人の参加で盛況であった。

 平日の昼間という時間帯であったがこれほど多くの方が集まったところにこの問題の関心の高さが伺えた。

 

 岐阜市の過労死等防止に関する取組については、岐阜市がホームページで公開している。

http://www.city.gifu.lg.jp/31020.htm

 

 そこには、「平成29年7月、元市職員の自死が、強い精神的負荷に起因する公務災害と認定されたことを受け、二度とこのような事案が発生しないよう市をあげて再発防止に取り組んでいきます。」との記載があり、過労死等防止の取組が職員の自死について、公務災害と認定されたことが契機であることが明記されている。

 

 そして、「特に元職員の命日(11月26日)を含む後半の2週間を「岐阜市過労死等防止強化週間」と位置付け、様々な取組を実施」

 とわざわざ記載して取組をすることとしている。


 

 

  岐阜の報告があった後、私から、その前の豊川市の過労死等防止対策の取組について紹介した。

 

 豊川市はパワーハラスメント防止対策についてホームページで公開している。

http://www.city.toyokawa.lg.jp/shisei/jinnjishokuinsaiyo/kenshu/komugaisaigai.html

 そこでは、「平成24年2月22日に、元市職員に係る公務外災害認定処分取消請求事件について、最高裁判所は、地方公務員災害補償基金側の上告を棄却し、難度が高くトラブルが発生していた公務の状況と上司によるパワーハラスメントの心理的負荷に起因する公務災害と認めた名古屋高裁判決が確定しました。
 この判決を受けまして、豊川市としてパワーハラスメント再発防止の取組を下記のとおり実施しています。」

 と記載されている。

 

  豊川市は、この内容を当時広報誌にも掲載して市民に公開した。

 「とよかわ」2012年6月版

 

 櫻澤博文先生のお話は、メンタルヘルスの対策について幅広くお話しいただいた。

 

 櫻澤博文先生は、合同会社バラゴンの代表者である。

 メンタルにならない様に、なったときにどうすれば良いか。分かり易く説明があった。

  合同会社バラゴンのホームページ

 

 そして、吉田典子さんのお話。

 お母さんの悲しみが良く伝わってきました。

 司会の方が泣いておられました。

 

 

 参加者は約110名

 昨年より着実に増加しています。

 多くの方が過労死等のこと。過労死を考える家族の会のことを知ってもらいたいともいます。

 名古屋は11月28日午後1時半から開催します。

 

 

ハインリッヒの法則

過労死 パワハラ たくさんの指示 ストレス

 ハインリッヒの法則について次のような記載がありました。

 

「アメリカのハインリッヒ氏が労災事故の発生確率を調査したもので、「1:29:300の法則」ともいわれる。これは、1件の重症事故の背景には、29件の軽症の事故と,300件の傷害にいたらない事故(ニアミス)があるという経験則。また、その背景には、数千、数万の危険な行為が潜んでいたともいう。つまり、事故の背景には必ず多くの前触れがあるということ。(以下略)」(出典:ナビゲート)

 

 「事故の発生に関する経験則。1件の重大事故の背後に、29件の軽微な事故があり、さらに300件の事故につながりかねない、いわゆる「ヒヤリ・ハット」の事象があるとするもの。交通事故、航空事故、医療事故などの分野で,同種の経験則に基づく安全対策が行われている。1929年、米国の損害保険会社のハーバート=ハインリッヒが提唱。」(出典:デジタル大辞泉)

 

 ここでいう労災事故は、例えば機械に巻き込まれて重症を負ったなど事故のことだと考えられます。過労死、過労自殺などについては、軽症の事故、傷害に至らない事故を数えることが難しく、1:29:300なのかどうか実際に分からないと思います。また、そのような研究もなされていないと思います。

 

 しかし、一件の過労死、過労自殺の背景には、多くの長時間労働をしている労働者、パワハラ等のハラスメントを受けて、死に至らないけれども体調を崩したり,体調までは崩さないけれども、大変な思いをしている労働者がいると考えることはできそうです。そして、その背後には、長時間労働、厳しい指導があり、過労死ラインをこす危険がある職場があるということもいえるはずです。

 

 そうだとすれば、いわゆる過労死ラインに至らないような時間外労働や、パワハラとはっきり言えない指導についても、事業主は、問題が大きくならないように、解決しておく必要があるといえます。

 

 現実は、労働については、法律の規制をまもっていれば問題にならない。そこまでは、企業の効率化のためになんとか時間外労働をさせたい、厳しく指導させたいというのが実態のように思えます。

 

 ヒヤリ・ハットの防止をする対策のために長時間労働をしているのであれば、本末転倒です。

 

 長時間労働、パワーハラスメントのほか配転などの仕事の変わり目、休日労働がつづいて休みのない連続勤務等を漫然と行わせることが、過労死、過労自殺の危険に変わりうることを各企業が認めて、対策をして欲しいと思います。

 

 11月は、過労死等防止対策推進法で定められた啓発月間です。職場の状況を見直すことで過労死、過労自殺の防止を考えてほしいと思います。

平成29年版過労死等防止対策白書

 平成29年版の過労死等防止対策白書が発表されました。

 

 過労死等防止対策推進法(議員立法により平成26年成立・施行)に基づき、国会に報告を行う法定白書です。

 

 今回が2回目の閣議決定及び国会報告になります。

 

 

 

 過労死等防止対策推進法(平成26年法律第100号)

(年次報告)

 第6条 政府は、毎年、国会に、我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために 講じた施策の状況に関する報告書を提出しなければならない。

 

 過労死等防止対策白書のポイントは次のように説明されています。

 

「過労死等防止対策白書」のポイント

 

 

 

1.「労働時間を正確に把握すること」が「残業時間の減少」に繋がるとする分析や、過労死等が多く発生していると指摘のある自動車運転従事者や外食産業を重点業種とする分析など、企業における過労死等防止対策の推進に参考となる調査研究結果を報告。

 

 

2.「『過労死等ゼロ』緊急対策」(平成281226日「長時間労働削減推進本部」決定)や「働き方改革実行計画」(平成29328日「働き方改革実現会議」決定)など、昨年度の取組を中心とした施策の状況について詳細に記載。

 

3.過労死等防止対策に取り組む企業、民間団体、国、地方公共団体の活動をコラムとして紹介。 

とあります。

「過労死等防止対策白書」は、厚生労働省ホームページの下記URLからダウンロードできます。 

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000138529.html

 

 

今年も過労死防止対策推進シンポジウム

日時:

 

平成29年11月28日(火)
13:30~16:20(受付13:00~)

 

会場:

 

名古屋国際センター 別棟ホール
(名古屋市中村区那古野一丁目47番1号)

 

定員:

200名

アクセス:

 

・名古屋駅から東へ徒歩7分
・地下鉄桜通線「国際センター」駅下車すぐ
・市バス「国際センター」下車すぐ

 

 今年も厚生労働省主催の過労死等防止対策シンポジウムが行われます。

    今年のプログラムは以下の通りです。

 

[過労死等防止対策白書の説明] 厚生労働省
[講演]
「保健予防福祉学の立場から」 山崎 喜比古 氏(日本福祉大学教授)
[過労死問題をテーマにした落語]
「エンマの願い」 桂 福車

桂 福車
【プロフィール】
1961年生まれ、大阪出身。大阪府立清水谷高校卒。1983年に22歳で桂福団治に入門。古典落語はもとより社会派落語では上方落語界きっての巧者。

[過労死遺族の声]

 

 

今年の愛知会場の特徴

平日開催

 

 今回は、企業の人事関係の担当者、役職者の方に仕事として過労死防止について話を聞いてもらいたいということで平日開催にしました。

 是非、いままでこんなテーマで話を聞いたことがないという方にもお話しをしていただけたらと思います。

 

 

厚生労働省からの白書の説明

 

 厚生労働省の担当者がわざわざ来てくださいます。霞が関での現場で把握している過労死等の実情について説明が受けられます。

 

 

山崎喜比古教授の講演

 

 山崎喜比古教授は、1999年、精神障害の判断指針がつくられたときの専門検討会の委員でした。この判断指針ができてから、精神障害が労災として一般的に認められるようになったのです。保健予防福祉学の立場から貴重なお話が聞けると思います。

 

桂福車師匠の落語

 

 仕事できて平日の午後から落語?とお思いの方もいらっしゃるかも知れません。

 私も、いままで2回聞いたことがありますが、思いっきり笑えます。でも、過労死の家族のことをよく知ってもらっているので、最後は本当に泣けます。過労死で本当に何が問題なのかすっと聞けます。

 笑工房のホームページもご覧ください。

 

過労死家族の話

 

 集まった全てのかたに、家族を過労死で亡くされた家族の話を是非聞いて欲しいと思います。

 どんな思いでいるのか、そこがないと、なくそうという動きがどうしても鈍くなってしまいます。辛いことですが、是非聞いて欲しいと思います。

 

 愛知会場のシンポジウム、是非、多くの方に参加して欲しいです。

 参加は、予約制です。(当日も可能だと思いますが、是非、予め予約をして欲しいと思います。)

 プロセスユニニークさんのホームページでどうぞ。

 

 

 

 

心理的負荷による精神障害の認定基準(基発1226第1号 平成23年12月26 日)「第5 精神障害の悪化の業務起因性」の改定を求める意見書

  過労死弁護団全国連絡会議は、2017年7月11日、厚生労働省あてに、認定基準の,精神障害の悪化の業務起因性の改定を求める意見書を提出しました。(過労死110番 ホームページ参照)  

 

 この意見書は、 現在の認定基準が「特別な出来事」に該当する出来事がなければ、対象疾病が悪化し た場合に業務上の疾病とは扱われないことになっていることについて、「特別な出来事」に該当する出来事がない場合には、一切業務起因性が否定されるのは不合理であるとして改定を求めるものです。

 

 この意見書は、アピコ関連事件・名古屋地裁平成27年11月18日判決、これを不服として国が控訴した同事件・名古屋高等裁判所平成28年12月1日判決をもとにしています。  

 

 いずれも当職らが原告代理人として関わった訴訟です。

 

 国は、上記高裁判決に上告受理申立をしませんでした。  

 厚生労働省は、速やかに認定基準を改定し、認定の在り方を考えなおすべきです。

 

 以下全文を掲載します。


 

意見書

 

厚生労働大臣 塩 崎 恭 久 殿

 

                   過労死弁護団全国連絡会議

 

                    代表幹事 弁護士  岡 村 親 宜

 

                       代表幹事  同   水 野 幹 男

 

                  代表幹事  同   松 丸   正 

 

                    幹事長   同   川 人   博 

 

 平成29年7月11日

 

 

 

 心理的負荷による精神障害の認定基準(基発1226第1号 平成23年12月26 日)「第5 精神障害の悪化の業務起因性」の改定を求める意見書を、下記のとおり、提出する。

 

                  記

 

第1 意見の趣旨

 

  心理的負荷による精神障害の認定基準(基発1226第1号 平成23年12月26日)(以下「認定基準」という。)「第5」につき、

 

 「精神障害の悪化の業務起因性」を認める要件として、「特別の出来事」を要するとしている内容を改め、精神障害の悪化前に業務による強い心理的負荷が認められれば、悪化につき業務起因性を認めることとするよう、改正を求める。

 

第2 意見の理由

 

1 現在の認定基準が不合理であり、憲法、法律の趣旨に反する

 

  現在の認定基準は「特別な出来事」に該当する出来事がなければ、対象疾病が悪化した場合に業務上の疾病とは扱われないことになっている。

 

  しかし、労災認定で問題になっている事案では、「特別な出来事」に該当する出来事がない場合でも、発病について業務起因性が認められるような強い心理的負荷を受け、その結果精神障害が悪化した場合もある。発病したら業務上と認定できるほどの強い心理的負荷があって、精神疾患が悪化した場合に、発病した後であったからといって業務起因性が否定されるのは不合理である。

 

  そもそも、現行の精神障害に関する労災認定基準が、一方で、精神障害を発病していない労働者に対して、「強」の業務上心理的負荷が加わって精神障害が発病した場合には、業務起因性を肯定し労災保険金を給付するとしながら、他方で、精神障害を発病している労働者に対して、同様の「強」の業務上の心理的負荷が加わって精神障害が悪化した場合には、業務起因性を否定し労災保険金を給付しないとしていることは、憲法14条1項、憲法27条、及び障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)第7条の趣旨に反している。

 

  すなわち、憲法第14条1項は、すべて国民は、法の下に平等であって、社会的身分等により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない旨規定している。上記認定基準の上記該当部分は、精神障害を有することを理由にして、労災保険給付という経済的・社会的関係において、差別を行うことを意味しており、憲法の同条項に違反する内容となっている。

 

  また、憲法27条1項は、「すべて国民は勤労の権利を有し、義務を負ふ」と定めている。豊橋労基署長(マツヤデンキ事件)・名古屋高裁平成22年4月16日判決は、「労働に従事する労働者は必ずしも平均的な労働能力を有しているわけではなく、身体に障害を抱えている労働者もいるわけであるから、仮に、被控訴人の主張が、身体障害者である労働者が遭遇する災害についての業務起因性の判断の基準においても、常に平均的労働者が基準となるというものであれば、その主張は相当とはいえない。このことは、憲法27条1項が『すべて国民は勤労の権利を有し、義務を負ふ。』と定め、国が身体障害者雇用促進法等により身体障害者の就労を積極的に援助し、企業もその協力を求められている時代にあっては一層明らかというべきである。」と判示し、身体障害者について本人を基準に業務過重性の判断をすると明示した。この判決は、労働に従事する労働者は必ずしも平均的な労働能力を有しているわけでないから、これを考慮しない労災の認定基準は憲法27条1項の趣旨に照らして相当でない旨判示しているのである。 労働者の中には「精神障害を発病している労働者」もいるのであるから、その者に平均的労働者であれば精神疾患を発病するような「強」の業務上の心理的負荷が加わった場合にも業務上と認めず、労災給付金を給付しないのであれば、このような者が労災補償を受けることができないことを前提に勤務しなければならず、憲法27条1項に照らして問題である。

 

  さらに、憲法27条2項は、「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」と規定し、労働条件について法律で基準を設定することを要請している。「精神障害を発病している労働者」にほとんど労災の給付をしないというのであれば、勤労条件の法定を定めた憲法27条2項の趣旨にも違反する。

 

  さらに、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)第7条は、「行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない」と規定している。同条の趣旨からすれば、障害者の範囲は幅広く解すべきであり、上記認定基準の上記該当部分は、この法律の趣旨にも違反している。

 

  このように現行認定基準が、精神障害の悪化の業務起因性が認められる場合を「特別な出来事」があった場合にのみ限定し、「強」の心理的負荷が認められても、精神障害の悪化の業務起因性を否定することは、憲法14条1項、憲法27条、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の趣旨に違反するものである。

 

2 現在の認定基準には合理性がない、という判決が確定していること

 

  アピコ関連事件・名古屋地裁平成27年11月18日判決は、「前記認定基準によれ ば、健常者であれば、(「特別な出来事」以外の)精神障害の発症及びそれによる死亡の危険性が認められるような心理的負荷の強度が「強」と認められる出来事があった場合には、業務起因性が認められることになるのに対し、既に精神障害を発症している者については、発症後、死亡前6か月の間に同様の心理的負荷が生じる出来事があっても、既に精神障害を発症しているという一事をもって業務起因性は否定されることになる。しかし、このような判断が精神科医等の専門家の間で広く受け入れられている医学的知見であるとは認められず(甲B38の1・5~9頁(引用者注:判決が引用している 証拠は第5回精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会議事録の後半部分である。)、既に精神障害を発症している者に、健常者でさえ精神障害を発症するような心理的負荷の強度が「強」と認められる出来事があった場合であっても、『特別な出来事』がなければ一律に業務起因性を否定するということには合理性がないというべきである。」と判示し、認定基準を批判している。

 

  これを不服として国が控訴した同事件・名古屋高等裁判所平成28年12月1日判決は、「認定基準は、上記別表(認定基準の別表1〔業務による心理的負荷表〕)に掲げられ客観化された各出来事のうち『特別な出来事』に該当する出来事がない場合でも(略)その心理的負荷の評価が『強』と判断される場合を, 労働者に生じた精神障害を業務上の疾病として扱う要件の一つとしている(証拠)。そうすると、その心理的負荷の評価が『強』と判断される業務上の『具体的出来事』(略)は、労働者の個体側要因である脆弱性の程度にかかわらず、平均的な労働者にとって、業務による強い『心理的負荷』であり、精神障害を発病させる危険性を有すると認められるのであるから, 既にうつ病を発病した労働者にとっても、当該『具体的出来事』自体の心理的負荷は『強』と判断されるはずである。」「認定基準が、健常者において精神障害を発病するような心理的負荷の強度が『強』と認められる場合であっても、『特別な出来事』がなければ一律に業務起因性を否定することを意味するのであれば、このような医学的知見が精神科医等の専門家の間で広く受け入れられていると認められないことは、補正して引用した原判決が説示するとおりであり、上記のような疑問あるいは『特別な出来事』がなければ一律に業務起因性を否定することは相当ではないとの考え方は、認定基準の策定に際しての専門検討会での議論の趣旨にも合致すると解される。」と判示し、同様に専門検討会の議論を踏まえて認定基準を批判している。

 

  ちなみに、同名古屋高裁判決理由では、2人の国側精神科医の意見(うつ病悪化事案では脆弱性が強いから健常者と同様に評価することはできない等)との意見を、明確に排斥している。

 

  この判決に対し、国は上告、上告受理申立をせず、確定している。認定基準の「特別 な出来事」がなければ業務起因性を否定するという判断の基準が不合理であることは明白である。

 

3 「特別な出来事」がなければ業務起因性を否定することは相当ではないとの考え方は、専門検討会での議論の趣旨に合致すること

 

  精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会の第5回の検討会(平成23年4月1 4日開催)において、岡崎座長は「今日のところは発病後にも心理的な負荷が非常に強い、ないしは極度の出来事があった場合には業務上であると認めるということでは、先生方のご意見は大体一致したのではないかと思います。」として、発病の際に認定に必 要な非常に強い心理的負荷、ないしは極度の出来事があった場合には業務起因性を認めてよいと議論をまとめている。

 

  名古屋地裁平成27年11月18日判決が、上記のように認定基準について「このような判断が精神科医等の専門家の間で広く受け入れられている医学的知見であるとは認められず」としたのは、第5回の専門検討会の議事録のこの部分を指摘している。名古 屋高裁平成28年12月1日判決は、「上記のような疑問あるいは『特別な出来事』がなければ一律に業務起因性を否定することは相当ではないとの考え方は、認定基準の策 定に際しての専門検討会での議論の趣旨にも合致すると解される。」として、「特別な出来事」がなければ業務起因性を否定することが相当ではないことは、専門検討会の議論と合致すると指摘しているのもこの部分の指摘を示している。

 

  専門検討会においてなされた議論を踏まえれば、「特別な出来事」がなければ業務起 因性を否定するような認定基準は不合理である。上記判決はそのことを指摘しているのであり早急に改正が求められている。

 

 

 

第3 結論

 

 国は、上記名古屋高裁判決に対し、上告、上告受理申立をしなかったのであり、この内容に即して、直ちに認定基準を改正すべきである。

 

 なお、本論点を含め、精神障害・自殺に関する認定基準全般について、当弁護団は、平成21年11月18日付意見書(「判断指針」から現行「認定基準」に変わる前の段階)に貴省に対して意見書を提出しているので、それらも参照されたい。

 

以上

 

名古屋高裁でも岐阜市の職員の自死を公務災害と認める。

裁判所
名古屋地方裁判所,高等裁判所の正面

 名古屋高等裁判所民事第1部(永野圧彦裁判長)は、2017年7月6日、岐阜市の職員が、2007年11月に自死したことについて、公務災害であったと認める判決をしました。

 

 職員の配偶者の方が、この自死について、公務災害だとして、地方公務員災害補償基金岐阜県支部に公務災害として認定するように請求していました。しかし、地方公務員災害補償基金岐阜県支部は、これを公務災害と認めませんでした。

 

 公務災害として認められない場合、遺族は、基金支部審査会に、審査請求という不服の申立ができます。しかし、支部審査会も公務災害と認めませんでした。

 

 そこで、職員の配偶者の方は、再審査請求をするとともに、行政訴訟を提起したのです。

 (現在は、このあたりの手続きの法律が少し変わっています。)

 

 1審の岐阜地方裁判所は2016年12月22日、地方公務員災害補償基金岐阜県支部の公務外認定の処分を取り消す判決をしました。→詳しくはそのときのブログを参照して下さい。

 これは、地方公務員災害補償基金の決定を取り消すもので、この判決が確定すると、地方公務員災害補償基金は、法律上、公務災害だと認定しなければならなくなります。

 

 ところが、基金は、名古屋高等裁判所に控訴しました。そこでこの日の判決となったのです。

 

 名古屋高等裁判所は、1回目の期日で結審し、2017年7月6日の判決期日を指定しました。

 原判決が12月22日ですから、約半年で判決。いわゆる過労自死の事案で、検討する事項はそれなりにあるものですから、この高裁判決はスピード判決といえます。 

 

 私は、この事件に、審査請求の時から関わらせていただきました。関わりをもったのが、2012年頃ですから、それからも5年が経過しました。

 

 この判決は、威圧的な上司の態度、その当時にいくつもあったストレスの多い仕事の内容、出来事について、原告の主張を認めて、総合的に強いストレスがあったとして、自死が公務に起因すると結論づけました。

 仕事の内容は、1審判決よりさらに詳しく認定し、公務災害の認定については、基金の認定基準にあてはめても、公務災害になることを丁寧に判断しています。

 1審判決にまして、事実関係を精査すれば、明らかに公務災害である、と内容を、1審原告の主張に沿って付け加えています。このように厳しく指摘されるのであれば、基金は控訴しない法が良かったと思わせる内容ではなかったかと思いました。

 

 一方、事実の評価は、逆に控えめに評価しています。基金の認定基準は、その基準自体とても厳しく、相当に強いストレスがないと公務災害と認めないことになっています。判決は、事実を丁寧に評価した上で、この厳しい認定基準を適用しても、公務災害と認定できるとしています。

 

 判決は、基金に対し、あなたたちの基準で判断しても公務災害なんだから、もう上告などせずに、早く公務災害と認めて遺族に支払をしなさい。そう言っているように感じました。

 

 この判決を得るまでに10年という期間がかかり、1審原告は、本当に苦労されたと思います。

 

 日本の裁判は、3審制になっていますが、最高裁へ上告するには、要件が定まっています。憲法違反とか、重大な法律解釈の誤りなど、法律の解釈が問題になる場合です。

 

 今回の判決は、事実の評価を適切にしたというものであり、法律解釈の問題ではありません。

 

 1審被告の地方公務員災害補償基金は争うことをやめて、早く公務災害認定の手続きに入って欲しいと思います。

 

    ※7月20日の経過をもって、上記高裁判決は確定しました。【2017年7月21日追記】

 

 

 

 

平成28年度過労死等の労災認定件数発表

 2017年6月30日、平成28年度の過労死等の労災補償状況が厚生労働省から発表されました。

 厚生労働省の発表を見ていきます。

 まずは脳・心臓疾患について、以下引用します。

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1  脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況

 

(1) 請求件数は825件で、前年度比30件の増となった。 P 3 表1-1】

 

(2) 支給決定件数は260 件で前年度比9件の増となり、 うち死亡件数も前年度比11件増の107件であった。 P 3 表1-1】

 

(3) 業種別(大分類)では、請求件数は「運輸業,郵便業」212件、「卸売業,小売業」106件、「製造業」101件の順で多く、支給決定件数は「運輸業,郵便業」97件、「製造業」41件、「卸売業,小売業」29件の順に多い。   P 4 表1-2】

 

業種別(中分類)では、請求件数、支給決定件数ともに業種別(大分類)の「運輸業,郵便業」のうち「道路貨物運送業」145件、89件が最多。 P5 表1-2-1、P6 表1-2-2】

 

(4) 職種別(大分類)では、請求件数は「輸送・機械運転従事者」187件、「販売従事者」97件、「サービス職業従事者」93件の順で多く、支給決定件数は「輸送・機械運転従事者」90件、「専門的・技術的職業従事者」30件、「生産工程従事者」27件の順に多い。  P 7 表1-3】

 

職種別(中分類)では、請求件数、支給決定件数ともに職種別(大分類)の「輸送・機械運転従事者」のうち「自動車運転従事者」178件、89件が最多。 【P8 表1-3-1、P9 表1-3-2】

 

 

 

(5) 年齢別では、請求件数は「5059歳」266件、「4049歳」239件、「60歳以上」220件の順で多く、支給決定件数は「5059歳」99件、「4049歳」90件、「3039歳」34件の順に多い。 【P10 表1-4】

 

(6) 時間外労働時間別(1か月又は2~6か月における1か月平均)支給決定件数は、「80時間以上~100時間未満」106件で最も多く、「100時間以上」の合計件数は128件であった。 【P13 表1-6】

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 支給決定数とは、要するに、労基署が過労死等と認めた件数です。

 支給数、死亡支給数とも減っていません。

 運送業、特に運転手が大変だということがわかります。

 それから、長時間労働で病気になっている人がたくさんいることが分かります。

 

 次に精神障害についてみていきます。

 

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2  精神障害に関する事案の労災補償状況

 

(1) 請求件数は1,586件で前年度比71件の増となり、うち未遂を含む自殺件数は前年度比1件減の198件であった。【P15 表2-1】

 

(2) 支給決定件数は498 件で前年度比26件の増となり、うち未遂を含む自殺の件数は前年度比9件減の84件であった。【 P15  表2-1            

 

(3) 業種別( 大分類)では、請求件数は 「医療,福祉」302件、「製造業」279件、「卸売業,小売業」220件の順に多く、支給決定件数は「製造業」91件、「医療,福祉」80件、「卸売業,小売業」57件の順に多い。【 P16  表2-2

 

業種別(中分類)では、 請求件数、支給決定件数ともに業種別(大分類)の 「医療,福祉」のうち 「社会保険・社会福祉・介護事業」167件、46件が最多。 P17 表2-2-1、P18 表2-2-2】

 

(4) 職種別(大分類)では、請求件数は 「専門的・技術的職業従事者」361 「事務従事者」307件、 「販売従事者」220件の順に多く、支給決定件数は「専門的・技術的職業従事者」115件、「事務従事者」81件、「サービス職業従事者」64件の順に多い。 【P19 表2-3】

 

職種別(中分類)では 、請求件数、支給決定件数ともに職種別(大分類)の「事務従事者」のうち「一般事務従事者」198件、47件が最多。 P20 表2-3-1、P21 表2-3-2】

 

(5) 年齢別では、請求件数は「4049歳」542件、「3039歳」408件、「5059歳」295件、支給決定件数は「4049歳」144件、「3039歳」136件、「2029歳」107件の順に多い。【P22 表2-4】

 

(6) 時間外労働時間別(1か月平均)支給決定件数は、「20時間未満」が84件で最も多く、「160時間以上」が52件であった。 【P24 表2-6】

 

(7) 出来事(※)別の支給決定件数は、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」74件、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」63件の順に多い。

 

 

 

※「出来事」とは精神障害の発病に関与したと考えられる事象の心理的負荷の強度を評価するために、認定基準において、一定の事象を類型化したもの P26 表2-8】

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  請求件数がさらに増えています。

  自殺の件数は減りましたが全体の認定件数は増えています。

 

  専門的・技術的職業従事者が多いのが特徴です。

  

  時間外労働ですが「20時間未満」が最も多いのが印象的です。

  出来事別の支給決定件数は、ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた が多くなっています。

  つまり長時間労働よりもパワハラで精神障害になっている場合が多いようです。

  

  一方で160時間以上も52件あり、2番目に多いのも驚きです。

 

 

  裁量労働の件数も発表されました。問題アリと言うことがわかります。

  一方で、これだけ?という印象を持ちました。

  時間管理がなされていれば、もっと多くの認定がなされるのではないでしょか。

 

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3 裁量労働制対象者に係る支給決定件数

(1) 過去6年間で裁量労働制対象者に係る脳・心臓疾患の支給決定件数は22件で、うち専門業務型裁量労働制対象者に係る支給決定が21件、企画業務型裁量労働制対象者に係る支給決定が1件であった。 【P27 表3】

 

(2) 過去6年間で裁量労働制対象者に係る精神障害の支給決定件数は39件で、うち専門業務型裁量労働制対象者に係る支給決定が37件、企画業務型裁量労働制対象者に係る支給決定が2件であった。 【P27 表3】

 

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 過労死等防止対策推進法が施行されて4年目です。まだこれからということでしょう。

 まずは労災補償されるべきものを労災補償していくなかで、一つづつ対策をしていくことだと思います。

  今まで、発覚していなかったものが発覚しただけで、世の中は確実に進んでいると信じたいものです。

過労死110番 実施できました

 今日は、全国過労死110番を実施しました。

 愛知では、13件の相談がありました。

 

 感想です。

 

 こんなに世の中で、長時間労働が問題になっている、と思っていましたが、長時間労働は、まだまだたくさんあるのだなあ、と思いました。

 

 また、労働基準法が十分に守られていない状況にあることも実感しました。

 労働契約法も十分理解されていない状況にあることも実感しました。

 

 そして、辛いけど、訴えられない、状況にある人がいることも実感しました。

 

 今回、相談しくても、情報に接することができなかった人もいたと思います。

 

 一方で、今裁判で戦っている人についてのマスコミの報道によって、勇気づけられて、自分も立ち上がろうともがいている人がいることもわかりました。

 

 苦しんでいる人、悩んでいる人、今日の電話相談は終わりました。でも面談相談は、いつでも受け付けています。

 

 

過労死110番実施します

2017年6月17日土曜日           10:00~15:00

過労死110番

0120-184-964


弁護士が電話で相談にのります

当日は、過労死の事件の経験のある弁護士が電話で相談にのります。

過労死・過労自殺、働き過ぎの相談にものります。

過労死、過労自殺された方の遺族の補償についての相談を受け付けます。

ご自身、ご家族の過重労働の相談も受け付けます。

相談は無料です。通話料も無料です。携帯からもOK

相談料はかかりません。また、フリーダイヤルですから通話料も無料。携帯電話からもかけることができます。その場合も無料です。


専門家「基準の見直しを」

 本日朝日新聞名古屋版に「労災却下6割超す」「専門家「基準の見直しを」」という表題で精神疾患の労災認定基準についての記事が掲載されました。

 残念ながら名古屋版であり、地域限定ですが、大きな記事になりました。

 

 私のコメントも以下のように掲載されています。

「国の基準の具体例に当てはまらないと、認定されずに切り捨てられる。ストレスには色々あり、対人関係に強いが長時間労働には弱いなど様々だ。より柔軟な評価方法に見直すべきだ。」

 

 認定基準は平成23年に改定されましたが、まだまだ不合理なところがたくさんあります。しかし、平成11年の判断指針よりも分かりやすく、また幅広く改訂されたせいか、裁判所でも、この基準をそのままあてはめるような判決があります。

 

 しかし、人間の心にも個性があり、ある人のには辛いストレスが、他の人にはそれほどではないことはいくらでもあります。それを、切り捨ててしまっていいのでしょうか。

 

 最もこれを乗り越えるには、医学的な根拠や世論の力がいります。

 

 今日は、NHKあさイチでも「大丈夫?家族から見た“働き方”」と題して働き方について議論をしていました。

 過労死弁護団の川人博弁護士と全国過労死を考える家族の会から寺西笑子さんも出演しました。

 新聞やテレビでもこのままではいけないという意識が高まっています。

 救済されていない事例もたくさんあることを知ってもらい、改善にむけて動きがあるといいと期待しています。